昼食を済ませた3人は、ガブリエルの淹れた緑茶をすすっていた。
この緑茶はガブリエル自身が取り寄せた茶葉をガブリエルの手ずから淹れたもので、程好い苦味と仄かな甘味があるのが特徴である。
「ダルタニャンちゃん、僕の淹れたお茶、美味しいかい?」
言うまでもなく幸せそうな顔をしていたダルタニャンに、ガブリエルがそう声をかける。
「とってもおいしいです!昨日平塚さんのところで飲んだ、ほうじ茶?も美味しかったですけど、こっちの方が好きかもしれません!」
「満足してくれたみたいで嬉しいなぁ♪僕、普段はミカエルちゃんやラファエルちゃん、遥斗君ぐらいにしかご馳走できないからさ~。一人だとなんだか味気ないし。だから、今日ダルタニャンちゃんにご馳走できて僕も嬉しいよ♪」
そういって、ガブリエルはお茶をすする。その様子を見て、平塚が口を開く。
「そういえば、そのラファエルさんは何処に?いつもならここで一緒にお茶すすってますよね?」
ガブリエルはアホ毛を?にして周囲を見渡す。
「あれ?そういえばどこにいるんだろ?おーい!ラファエルちゃーん!どこにいるんだーい!」
そうすると、入り口の近くの書類の山からくぐもった返事があった。
「こ、ここです!だ、出してくださーい!!」
山のてっぺんにラファエルのものとおぼしき両腕が突き出てきた。
平塚は山に近づくと、腕をしっかりとつかんで引っ張りあげようとした、のだが。
「なんか嫌な予感が」
そう言った平塚の予感は見事に的中した。
両腕が平塚の腕をかわし、あろうことか平塚の頭をがっしりとつかみこんで書類の山に引きずり込んだのだ。
「遥斗君つかまーえた!」
そう言いながら女性が書類の山から顔を出す。
水色の長髪の女性の胸には平塚の頭が埋もれている。
「ん"ー"ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"!!」
「相変わらず遥斗君に熱心だねぇ、ラファエルちゃん」
胸に埋もれて苦悶する平塚を見ながらガブリエルが呆れ気味にそう言うと、ラファエルは身体をくるくると回転させながら笑顔で答える。
「だって遥斗くん可愛いんだもの!」
ダルタニャンはその光景を目にしておろおろしている。
「だ、ダルタニャン!助けてくれぇっん"ん"ん"!!」
なんとか胸から逃れようとする平塚がダルタニャンに助けを求めているが、その願い叶わずラファエルに万力のごとき力でホールドされる。
「むぅ!私というものがありながら他の女の子と話すんですか!」
そう言いながら頬を膨らませるラファエル。
普段の彼女は大人しく、真面目な女性なのだが。こと平塚遥斗に関することでは執念深さというか、愛着というか、独特な愛情表現のしかたをして来る。
「あのー、ラファエルちゃん?そろそろ遥斗君離してあげてくれないかな?その、とってもぐったりしてるというか…」
ガブリエルが助け船を出す。ラファエルは渋々、といった表情で平塚を解放する。
解放された平塚は青い顔で床に転がった。ガブリエルが様子を見る。
「……うん。これはあれだね、俗にいう所の心肺停止というやつじゃないかな?」
「「えっ!?」」
非常に困った表情でガブリエルがそう言うと、ダルタニャンとラファエルが驚愕の声をあげる。
「ごめんなさい!私が助けることができなかったせいで!」
「きつく抱き締めちゃってごめんなさぁい!!もうしないからぁ!!」
横たわる平塚の体に泣きつく二人の後ろで、神妙な面持ちでガブリエルが言う。
「天におわす我らが主よ、また一人あなたのもとに御霊が還りました。その御霊に安らぎを。amen」
つられて二人も手を胸の前にあわせて言う。
「「amen」」
ダルタニャンは涙目で手を合わせている。
すると、平塚の身体に紫電が疾り、跳ね上がる。
咳き込みながら平塚が目を覚まし、
「勝手に殺すな!」
と、開口一番文句を垂れる。
その姿を見て、平塚に飛びつくダルタニャン。
「ど、どうしたの?ダルタニャン?」
「良かった!良かったよぉ!心配したんだから!死んじゃったかと思ったんだからぁ!」
ダルタニャンは涙を流す。己が恩人の無事を喜ぶ。
その姿を見て、ラファエルとガブリエルは微笑んでいた。