のんびり書いてるので基本遅筆です(^^;)
「遥斗くんが引き取ったらどうかな?」
ガブリエルが貼り付けたような笑顔でそういうと、平塚の表情が固まる。
「……局長がその顔を見せるときはなにかしら後ろめたいことがあるときなんですがねそうなんですねまだなにか隠しているんですねそうなんですね!?」
そう言って平塚がガブリエルの頭を手のひらで鷲掴みにする。それはいわゆるアイアンクローと呼ばれるものであり、こめかみに平塚の指がメリ込んでいく。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ痛い痛い僕なにも企んだりしてないよぅホントだよぅ!!」
手足をじたばたと動かして平塚の手から逃れようとするガブリエルだが、平塚の手は緩むことなくガブリエルの頭を締め付け続ける。
「なにも企んでないんだよぅ!!だから放して痛い痛い痛いってぇぇぇ!!」
ガブリエルが涙目になりながら懇願していると、平塚が握力を緩める。
「本当になにも隠してないんですね?」
平塚が優しくそう聞くと数秒の間をとってからガブリエルが平塚から目をそらして
「ウン,ボクナニモタクランデナイアルヨー」
そういった瞬間、平塚の手が閃き、いつの間にか左手にはリンゴが1つ載っていた。
「いいですかガブリエル局長。次に嘘ついたらあなたの頭がこのリンゴのようになりますよ?」
その言葉を言い終わらないうちにリンゴが四散する。平塚が握り潰したのだ。
パシャンと割れる音と共に溢れる果汁を撒き散らし、床に落ち行くリンゴの様は実に美しかった。
……平塚の青筋が浮き出た顔に、般若の如き眼光ととびきりの笑顔との相反する感情が混在しなければ。
「はわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ」
ガブリエルが腰を抜かして座り込むのと、リンゴの果汁がいつの間にか床に置かれていたガブリエルの湯呑みに並々と注がれたのはほぼ同時だった。
「それで?何を企んでいるんです?」
怯えるガブリエルの顔を上から覗きこみながら、平塚は呆れた顔で問い掛ける。
「き、今日の業務は終了って遥斗くんが言ったんだよ!?」
「だからってダルタニャンをぞんざいに扱うわけにはいかないでしょう」
「うぅ……だって、ダルタニャンちゃんだって遥斗くんになついてるみたいだし……」
そう言うガブリエルに対して額に手をやりながら考える平塚。
「………俺は構いませんが……ダルタニャン、君はどうかな?俺に引き取られても大丈夫?」
「だ、大丈夫です!」
平塚はダルタニャンからガブリエルの方に向き直り、深い溜息をついてから答える。
「はぁ………わかりました。ダルタニャンは俺が預かりましょう」
その渋々といった態度で言った言葉を聞いた瞬間、ガブリエルがニヤリと笑う。
「いやー!よかったよかった!僕もう今日は仕事しなくて良いんだね!やったあぁぁぁぁぁぁあああああああああ!?!?」
本音が飛び出したガブリエルが平塚に頭を鷲掴みにされて苦悶する。
「男に二言はありませんが……その隙あらばサボろうとする癖、いい加減治してくださいな?」
そう言いながら平塚が握力を強める。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぎぶ!ぎぶ!治す!治すから!!痛い痛い潰れるぅぅぅぅ!リンゴのようにぃぃぃぃぃ!!」
ジタバタともがくガブリエルを尻目に書類に必要事項を明記する平塚。
「ダルタニャン」
「?」
「俺が引き取るということは、俺とこういうことになるんだが……それでも構わないか?」
そう言って平塚は書き終えた書類をダルタニャンに渡す。
「えーと……」
ダルタニャンが目にした書類にかかれてあったことを把握する。
「つまり……平塚さんはハンターで、平塚さんに引き取られるとハンターのマスターとモンスターの関係になるってこと?」
「んまぁだいたいそんなとこだね。で、どうする?出来ればあまりおすすめはしたくないんだが」
ダルタニャンのかいつまんだ説明を平塚は困り顔で肯定する。
「構いませんよ。働かざる者、食うべからずなんですから。」
自慢げに胸を張るダルタニャンを見て、平塚はにこやかに手を差し出す。
「そっか。んじゃあ、よろしく、ダルタニャン」
ダルタニャンは平塚の手をとるがすぐに離し、微妙な顔をして口を開く。
「あの…ダルタニャンって、少し長いので良かったらシャル、と呼んでいただけませんか?」
「シャル、ね。わかった。んじゃ改めて、よろしく、シャル」
「はい!よろしくお願いします!」
ダルタニャン改め、シャルは平塚の手をとり、書類にサインする。
そこに記された彼女の名は
Charlotte de Batz-Castelmore
シャルロット・ド・バツ=カステルモール
それがその猫の亜人の名前だった。