「報せがあって駆けつけたが…」
そう言ったウリエルの口からは驚愕の声が伺えた。
処は監理局地下の独房、つい先程までカオトリが捕らえられていた筈の場所だった。
つい先程まで、と言うのは既にそこにカオトリの姿は無く、大きくひしゃげた鉄格子が残るばかりであった。
「平塚君の話じゃ夜明けまでは動けないって話だったけど」
ウリエルが現場に駆けつけた時にはカオトリなど見る影もなく。痕跡を調べる部下達の忙しそうな様子を目にしながらそんな事を呟くと、房の中からその呟きからの返答があった。
「おそらく第三者の介入だろう。治りかけの力だけでは壊せる筈が無い」
「あら」
凛とした声と共に暗い房の中から女性が現れる。
「あら、じゃない。今までどこほっつき歩いてたんだ」
不機嫌そうにそう言った女性の見た目はウリエルの特徴と酷似しているが、少しばかり切れ長の目つきに凛とした印象を覚える。
「ごめんなさいね、来客があったのよ」
「それは知っている。問題は現場の指揮を私に押し付けて今まで何してたかって事だ」
「それはー、そのぅ」
ウリエルが手をもじもじさせていると、部下の天使が1人足早に駆けてくる。
「隊長、副隊長」
「どうした」
「監視カメラにこんなものが」
そう言った天使が空中に映像を投影すると、そこにはまさに異形とも言える影が牢をこじ開け、無抵抗のカオトリを連れ出す姿が映し出された。
「これは……」
「オリジナルタイプ、しかもゼロシリーズ……にしては違和感が……?」
通常のゼロシリーズとは違い、大きく発達した角と影の内部に何か見えている。
「……月嶋は異形……一族の逸れ者ばかりを集めていたそうだな?」
「これも特異性の片鱗?」
「かもしれない、という話だ」
2人のウリエルが唸っていると、部下の天使達が目を見合わせながら指示を仰いでいる。
「そうね……とりあえず、牢の補修が終わったら今日はもうあがって頂戴。明日も朝から忙しいんだし、各自はやく帰って寝るように。良いわね?」
隊長の指示に従って行動を開始する天使達を尻目に、2人は翼を広げて上層へと躍り出る。
「ところで……今日はどうしてそんなに肌の色艶が良いんだ?ウリエル」
「……あのねぇ、2人の時は別にウリエルって呼ばなくてもいいんだよ?どっちもウリエルなんだから。ね?穂斑(ほむら)」
「……旭陽(あさひ)姉さん。一応、ここは職場な訳なんだからそういうプライベートな事は慎んだ方が」
「あーもう、全く固いんだから!誰に似たのかなぁ、こういう変に真面目なところ」
「それは耳タコだよ……それで、その肌。どうしたの?」
「ふふーん、それはねー」