「少し、昔話をしよう」
そう言って、平塚は話を切り出した。
モンスターが暴れて人的被害が出たこと。それは実は人類史に残る大事件だった。
最初はゲートが開いた一部の地域的な問題とされ、すぐに事態は解決すると思われていた。だが。
1つの国家が一夜にして滅んだ事で、事態は一気に悪化した。
ゲートから来たモンスターの一派によって、都市は壊滅し、すぐに連絡がとれなくなった。
夜が明け、破滅した国家への調査で国連から派遣された調査団は最悪の光景を目にする。
調査団が目にしたのは。
昨日まで、この世界に存在していた者達。笑い、喜び、怒り、悲しんでいた者達。
そのおびただしい数の亡骸。
老若男女問わず、小さな子供や赤子さえも見るも無惨な姿にされていた。
その亡骸達を喰らう者達がいた。
蠢く影のような姿の者や、牛人ともいうべき者達がものいわぬこの世界の同胞の頭蓋を割り、血肉をすすっていた。
その異形の姿と惨状に誰かが言った。
モンスターがいる、と。
その時、その一団の長と思われるものが調査団の前に顕れ、告げた。
“ごきげんよう、家畜の諸君。私は月嶋尋(つきしまじん)。我々はこの世界を植民地にするために来た。君達は我々の食料だ。イヤか?拒むのならば仕方がない。…戦争だ!”
月嶋尋。そう名乗った白髪の少年は自身が滅ぼした国の言葉で、心底楽しそうにそう言ったという。
まるで、好奇心に満ち溢れた子供のようだった、と。
唯一、その場で生き残った日本人がそう語った。
調査団は月嶋の手で一瞬にして壊滅させられた。
生き残りには目的を果たした後に爆散する呪いがかけられた。
情報の伝達の手段として、ただのきまぐれでその日本人は生かされた。
国連はその生き残りから知り得た限りの情報を引き出した。
一つ、モンスターに既存の兵器は効果がない。
一つ、モンスターを倒せるのはモンスターだけである。
一つ、例え人型であってもその力は2-5倍以上はあると思われる。
一つ、モンスターは種族ごとに固有の能力を有すると思われる。
最後に。
次にモンスター達が来るのは10年後である。
そう言い残し、その日本人は爆散した。
あたりには彼の血と彼の掛けていたレンズの割れた眼鏡が落ちていた。
そのレンズには彼の血と、彼の死に際に溢した涙が光っていた。
国連はこの情報をもとに、対策手段をとった。
すでに始めていたゲートの向こうの世界の調査として、あちらの人間と接触し、情報を集めていった。モンスター達にも国や文化があり、派閥もある。今回の事件を起こしたのは過激派のトップ集団であるらしい。
国連の認可のもと、様々な対モンスター撃退法が研究者達によって編み出された。『モンスターストライク』プログラムもその一例である。
だが、それよりも前に半実用化された対策法があった。
モンスターの細胞を胎児に移植し、モンスターの固有能力を人間の身で使えるようにするという『モンスターチルドレン計画』である。
モンスターの細胞は大人には馴染まない。拒絶反応で被験者が命を失う。赤ん坊や少年少女には馴染むが、すぐに拒絶反応が出てしまい、被験者が絶命してしまう。
だが。胎児に移植すれば。生まれつき耐性を持ち、成長と共に能力を発現し、その能力でモンスターを狩る事が出来る。
そう発言した研究者のもとに胎児だった頃の平塚たちが被験者として集められた。