「あの、ガブリエルちゃん」
「なに?シャルちゃん」
「ガブリエルちゃんがさっき言ってたのってもしかして、遥斗さんの肩書き…?」
「あー、うん、そうだよ。極東異種族共存特区最大の守護者集団(ハンター・ギルド)トリスメギストス。その実質的な長を任されてるのが彼、平塚遥斗なんだ。」
無い胸を張ってガブリエルが鼻を鳴らしながら説明すると、シャルは驚きのあまりあんぐりと口を開ける。
「思ってた以上に凄い人だったんだ…」
「それだけじゃないよー。ハンター育成学校の臨時教官でもあり、この国最大の戦力でもある。でもその実…」
「その実、それらは全部副業でさ」
質問責めにされたのだろう、平塚が割とげっそりとした顔で戻って来た。
「あ、遥斗君おかえりー」
「副業…?じ、じゃあ本業はなんなんです?」
「あー…と」
何気ない問いに言葉を濁した平塚が口を開こうとするとガブリエルが思わず口を挟む。
「本業はシュフだよね?」
「えっ!?主婦!?」
「違うぞ、シャル。ふの字が間違ってる。そしてそれは本業じゃない……と、あー、係の天使さんに呼ばれてるんだった。じゃ、また後で」
ぱたぱたと荷物を抱えて駆けていく遥斗を見送りながら、シャルとガブリエルは談笑を続ける。
「改めて、よろしくダルタニャン」
「さっきはごめんなさいね、主席殿の新パートナーの事で皆気が気でなかったから……。勿論歓迎するわ」
エントランス内の人もまばらになって来た頃、マーカスとステラが話しかけて来た。
「よ、よろしくお願いします…」
先程のやり取りから若干のやりにくさを感じたのか、シャルの声には緊張の色が伺える。
「……あー、もしかして緊張してる?ほら、ステラ、恐がられてるぞ?」
「あ、アンタのその厳つい面のせいよ!なにその犯罪者面!強面どころの話じゃないじゃない!」
「お前こそその髪型どうにかしろよ!なんなんだその悪の幹部然とした悪そうな顔は!子供に泣かれでもしたらどうする!」
「アンタにだけは言われたくないわよ!」
「喧嘩は良くないよう」
口論を始める2人の間に両の手に握った牛串をぱくつきながらガブリエルが割って入るが、2人は互いを睨みつけている。
「アンタら、いい加減にしないか!いつもいつもケンカしやがって!」
という、突如としてエントランス内に響いた声は啀み合っていた2人はおろか、手続きをしていた平塚や職員達でさえも震え上がらせた。
「か、佳那さん!?」
「「姐さん!?」」
一同が目線を向けた先には、大荷物を引き摺りながら肩で息をあげる鰻佳那の姿があった。
「おう、遅れちまったわ」
「あ、姐さん……これは……」
佳那の登場は予想外だったのか、問題の2人の表情がガッチガチに固まる。
膝や肩は小刻みに震え、ダラダラと脂汗をかいている。
蛇に睨まれた蛙とはいうが、今の2人の状況はまさにこれである。
「アンタら、シャルをいじめたら承知しないからね」
佳那の睨みに2人がシュン、と落ちこむと、シャルが狼狽えながら佳那に近づく。
「あ、あの佳那さん?どうしてここに?」
「どうしてって……コイツらの武装を届けに来たのさ」
シャルの質問に佳那が親指で大荷物を指しながら答える。
白い布に包まれた佳那の身の丈に迫る程の__シルエットから推測するに大剣の類だろうか。
「整備依頼されたバスターブレードと手甲、確かに納めたからね。代金は鐚一文も負けないから」
包みを床に置き、腕をぐるぐると回しながら請求書をそれぞれ依頼人であるマーカスとステラに渡す。
「シャルは?銃の方はなんともない?」
「え、あ……と、うん。問題ないよ」