あれから5年がたった。
モンスターチルドレン計画によって集められた被験者100名の胎児達は全員が順調に能力を発現した。
が、その多くが自らの力に耐えきれずに死んでいった。
最初の一年で100名いた子供達は、64名に。
2年目では43名、3年目では36名、4年目では18名。
ついに5年目には10名になっていた。
皆が明日死ぬかもしれない。そんな恐怖に慣れていた。
力のコントロールを少しでも誤れば自分も死んでいった兄弟達の仲間入りだった。
それでも子供達は訓練という名の実験を生き抜いた。
その訓練は、お世辞にも人道的とは言えないものだった。
暗く、狭い低酸素空間で、高速連射される極小のゴム弾を避け続ける。
自身の能力をもって捕獲されたモンスターを殲滅する。
投薬された空腹の猛獣を自身の肉体だけで無力化する。
そこに優しさは存在しなかった。
情けをかけたら、やられるのは自分なのだ。
平塚を含む10人の兄弟の能力は火、水、木、光、闇の素因子に関するものだった。
平塚は光の部類。帯電体質として体内で電気を生成することができる。
他の兄弟、レンカは発火、セイジは鍛冶(生成)、マヤは凍結、カイトは重力、ソウマは自然、リゼルは治癒、タツヤは太陽、リエは死、メドキは再生の能力をもっていた。
能力は基本的にモンスターの能力に起因している。
モンスターの能力をもつ少年達は人間ではない。
ましてや、モンスターでもない。
人間とモンスターの狭間に在る者。
その証として、強靭な肉体と類い稀な再生能力を有している。
簡単には死なないのだ。
頭を吹き飛ばされようと、心臓を潰されようと。
その器官を直ちに再生させて生き返る。
彼らが10歳という子供でありながら最前線でモンスターを狩る事ができるのはこの能力が一番の理由である。
だが、彼らにも弱点がある。
細胞の分裂限界が原因で陥る〈咎堕ち〉と呼ばれる現象である。この現象に陥ると「モンスターチルドレン計画」被験者を襲い、喰らう事で疲弊した細胞を再生させようとする。この現象は、本人の意思とは関係なく起こるものである。
四年後。
9歳となった子供達に、巨大なゲートが開いたとの報せがはいる。
そのゲートから現れた膨大な数のモンスターを10人はいとも容易く粉砕していく。
凶悪なモンスターをモンスターの力をもって制圧していく。
その様から10人は素因子〈エレメンツ〉と呼ばれるようになる。
そして、その一年後。
エレメンツは月嶋尋の一団との壮絶な殺し合いの末、彼の言う植民地化を阻止することに成功した。
が。
その終戦直後、メドキが咎堕ちする。
自身を再生させながら戦うというスタイルのせいで、他の兄弟の倍以上の速さで細胞分裂限界が起きてしまった。
セイジとカイトが犠牲になるなか、レンカが自身の能力でメドキを焼き殺してしまう。
激昂する平塚と殺し合うレンカ。
「レンカァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」
「ハルトォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!」
互いに己の身の事など気にすることなく能力を行使する。
実験によって鍛え上げられた四肢が相手の腹を抉り、肌を切り裂く。鮮血が噴き出しては、再生能力でその傷を癒やす。
片方が限界を続くかと思われた戦闘の終わりは、突如として訪れた。
ブチンッ!!
一際大きな音と共に、双方の右腕が宙に舞う。赤き血潮を撒き散らし、元の腕の持ち主が左手で受け止める。
「……いい加減にしろ」
片腕を喪ってなお戦い続けようとするレンカと平塚をソウマが自身の能力で制止する。
何もなかった所に一瞬で大樹を形成し、二人を巻き込んで押さえつける。
「なにすんだソウマ!」
「………」
ソウマはなにも言わない。寡黙な彼らしいのだが、こんな時くらいは何か言って欲しかった。
リゼルがなにも言わずに両者の腕の治療をする。
治療を受けながら、平塚は胸のうちを吐露する。
「兄弟とこれ以上殺し合うくらいなら…俺は……俺はこの世界で生きることはできない」
「……そうかよ」
レンカは通信機を取り出すと
「E1から本部へ。戦闘終了。E2…E4…E7はロスト。E10は…咎堕ちしたために処理した。以上、報告終わり。これより帰投する」
「………ごめん」
レンカは鼻で嗤ってから言う。
「…何処へでも行っちまえ」
その言葉は少しだけ湿っぽかった。