「らっしゃい遥斗くん!今日も良い魚はいってるよ!」
髭面の壮年男性が道行く平塚に声を掛ける。
「鰻さんとこの魚はうまいからなぁ、帰りに寄らせて貰いますね!」
「そうかい!ところで、その後ろのかわい子ちゃんは遥斗くんのコレかい?」
鰻と呼ばれた魚屋の店主は、ダルタニャンを見て年甲斐もなく小指をたてて見せる。
「どうでしょうね?ご想像にお任せしますよ」
それを平塚は軽くあしらって魚屋を後にする。
ちなみにこの魚屋、名を鯲(ドジョウ)というのだが、店主が鰻という名字のせいで魚屋鰻と呼ばれるようになって久しい。店主はもう諦めたようだが。
晴れ渡った空といつもの賑わいを見せる商店街を歩く平塚。
その後ろをキラキラした目で周囲を見渡しながら歩くダルタニャン。
平塚にとっては馴染みの商店街でも、異世界からきたばかりの彼女にとっては目新しいものでいっぱいなのだろう。
商店街を抜け、広々とした公園にはいる。
管理局までは公園を抜ければすぐだ。が。
「そうそう、ダルタニャン」
そう言って、平塚は歩みを止める。
「にゃ?」
「さっき君が聞こうとしてたハンターだけど」
「?」
「ハンターっていうのは、野良モンスターを狩ることを生業にしている人を称してそう呼ぶんだ」
「狩るってどういうこと?」
物騒な表現だったためか、ダルタニャンが聞き返した直後だった。
数秒前までそこにいた平塚が20メートル離れた自動販売機に激突した。
「平塚さん!?」
「あーらら、外れちったにゃ」
振り向くと、平塚の立っていた場所に片足を振り抜いた状態で立っている獣人のような格好をした女性が立っていた。
「いっつぅ…」
平塚が痛みに苦悶する。
「あーらら、完全な不意討ちだったのに防がれてたか」
また別の声がして振り返ると少し離れた木の上に座る金髪の男がいた。
「誰ですか!?」
「今お前らが話していただろ?噂のハンターってヤツだよ」
ハンターと名乗る男は木の上から地面に降り立つとこちらを指差しながら言った。
「んでおまえを狩るのはご存知この俺、C級ハンター底前誰雄(そこまえだれお)様だ!あの世に行ったら自慢しなァッ!!」
底前誰某が自己紹介を終えた瞬間、
「ハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」
盛大な笑い声とともに平塚が立ち上がる。
「溢れんばかりの小物感とモブ感だな、この腑抜け野郎。不意討ちで狙うべきは顎だとアカデミーで教えられなかったのか?」
「んだとぉ!!?」
その簡単な煽りに簡単に乗る底前某。
「テメェは俺がこの手でぶっ○す!」
「物騒な発言は控えろや金髪鼻ピアス。無駄にキャラ立てようとすんなや、ポッと出のくせにいきってんじゃねぇ、てめえの自慢の鼻ピアスごと鼻毟んぞ」
容赦ない罵倒に顔を真っ赤にして怒る底某。
「もう容赦しねえ!○ねや!行け!バステト!」
手元の端末の画面に指をつけ、空中まで引っ張り、さながら弓のようにこちらに向かって放つ。途端、
「怨むならご主人を怨めよー人間!」
そう言ってバステトと呼ばれた獣人が猛スピードでこちらに突進してくる。
そのとき、平塚の身に変化があった。
ごきり、と。平塚の首がなった。否、平塚が首に手をやり、自身の首をならしたのだ。
途端。
周囲に紫電が疾る。
一瞬の閃光。
光が収まり、両者は背を向けて向かい合う。が。
膝をつくバステトに対して、平塚は欠伸をかいていた。
その一瞬で起こった事に誰もが状況を理解できずにいた。
当の本人、平塚とバステトを除いては。
「お、おまえ、なかなかやる……ニャ」
バステトは相言い残すと、その場で崩れ落ちた。