「普通の人間だったら死んでたぞ」
平塚は服についた土をはらいながらつまらなそうにそう言った。
「どういうことだよ!?お前人間じゃないのか!?」
驚愕の声。当然だ。常人の2倍以上の力をもつモンスターの攻撃をいなし、しかも戦闘不能にしたのだ。
「人間だよ。ただ、ちょいと特別製でな」
≪M・C計画≫は国連レベルでので情報規制が行われているため、一般人には流布されてはいない。
「こんな馬鹿な話があってたまるか!バステトが、モンスターがたかが人間に負けた!?そんなこと嘘だ、大嘘だ!!」
「何も特別なことはしてないが。ただ」
1拍おいて平塚は事実をそのまま言った。
「アンタのモンスターに強めの電流を流し込んだ。それだけだ」
帯電体質の平塚にとっては電流を流すことは息をするよりも容易い事で、何より簡単なことである。が、そんなことを知る由もない某は状況を呑み込めずに
「で、電流?そんな物、人間が出せるわけがないだろ!」
「そりゃそうだ。仮にできたとして、人間だけの電気ではモンスターには傷ひとつつけることができない。」
それは大前提の1つであった。
モンスターを倒せるのはモンスターだけである。
「だがな、モンスター由来のものであれば人間でもモンスターを倒すことは可能なんだよ。俺みたいに、な」
そう言うと平塚は掌から高圧の電流を迸らせ、収束させて見せた。
「な、なんだよそれ…お前ほんとに人間かよ!?」
「人間だって言ってるだ……ろ!」
平塚は腕を振り下ろす。
「ひィッ!?」
「安心しろ、身体は斬っちゃいないさ」
そう言って、平塚は歩き出す。
「………!?……!?…!?」
目を白黒させてヒタヒタと自分の身体を触る某。
身体はどこも斬られていない事を確認すると
「こ、これで勝ったと思うなよ!!覚えてやがれ!」
そう見事な捨て台詞を吐き捨て商店街の方に駆けていく。
「さぁ、行こうかダルタニャン」
「う、うん…」
地面に座り込んだままのダルタニャンを立たせて管理局への道を進む。
「ねぇ、さっきの人、身体“は”斬っちゃいないって言ってたけど」
ダルタニャンが不思議そうに聞いてきた。
「あー、まぁ、これからのお楽しみということで。…あ、そろそろかな?」
丁度その時、商店街の方向から悲鳴が聞こえた。
「ねぇ、あれって…」
「まぁ、そうだねぇ…俺が斬ったのはあいつが着てた服、さ」
半笑いの平塚がネタバラしする。
「正確にはあいつの金髪とピアス、服全部だけど、ね?」
「そこまでする必要あったの…?」
意外という風な体でダルタニャンが聞いてくる。
「ああいうのは少し痛い目を見ないと成長しないんだよなぁ…」
「ふーん…」
そう言って、ダルタニャンは立ち止まる。
「あれ?ちょっと待って?今服全部って言った?」
「言ったけど」
さらり、と平塚は答える。
「全部って、どこまで………?」
「全部は全部さ。そこまで器用じゃないし、パンツだけ残すだなんて俺には不可能だよ」
ダルタニャンは額に手をあてて
「さすがにかわいそうになってきたよ………」
そういいながら、平塚の後をついていく。
一方数分前、平塚に斬られた事を知らない某君はというと。
「ったく、酷い目に遭ったぜ…」
商店街の道をフラフラと歩いていた。
「バステトは回収できたし、結果的にあまりダメージがないのが不幸中の幸いってやつか?」
ケッケッケ、と、わざとらしい笑いを浮かべつつ、精肉店に向かう。
お気に入りの看板娘と話し込むためである。
「いらっしゃい……って、またアンタか」
「そうつれないこと言うなよー」
相変わらずのそっけない態度で対応されるも、某にとっては慣れたものなのか、とびっきりの笑顔で話しかけようとする。
が。
はらり。はらり。
「うわっなに!?アンタその顔!その格好!!」
見ると、足下になにやら金色の毛のようなものや、派手なアロハシャツの断片がたくさん落ちている。
「あれ?どっかで見たぞ?この組み合わせ」
そう思ってしゃがみこんだ途端。
ばさり。
某の身に付けていた衣服という衣服がすべて切れ落ちた音だった。
その落ちる様はさながら満開の桜が風で散っていくように。
とても、綺麗だった。綺麗だったのだ。
残されたのが全裸の男の艶姿でさえなければの話だが。
「キャーーー!!」
「ゲッ!?なんじゃあこりゃあ!?」
「いくらなんでもクールビズ過ぎやしないかい?」
「若いって良いわねぇ?」
「あー、君?署までご同行願いますよ」
「えっあっ待ってくださいコレには深い理由がアッー!」