Fate/Grand Order【The arms dealer】   作:放仮ごdz

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ヴェルカム!ストレンジャー・・・どうも、何とかバイオハザードDCをクリアしたもののヒロインを助けられなかった放仮ごです。…ラスボス相手に弾を撃ち尽くしてハンドガンでちまちま削っていたら…ごめんマヌエラ……このヒロイン、大好きです。

今回はカーク達も合流した総力戦。水着を解禁した二人が大暴れ。全員に見せ場を作れたと思いますが若干いつもより長いです。楽しんでいただけたら幸いです。


皇帝特権の乱用だなストレンジャー

「―――童女謳う華の帝政(ラウス・セント・クラウディウス)!」

 

 

薔薇の花弁が舞う黄金劇場の中心で、動きを制限された異形と化した女神へと炎を纏った大剣による斬撃が叩き込まれた。叩き込んだ張本人である小さな紅き皇帝は確かな手応えを感じて、黄金劇場の展開を解く。

 

 

「余の独壇場だったな……ど・く・だ・ん・じょ・うだったな!」

 

「ええ、ええ。貴女の独壇場だったわ。敵の能力を制限するってエクスカリバー程の火力は無くてもそれだけで十分に脅威ね…」

 

 

満足気に頷くネロと共に一瞬にして暗い艦橋へと光景が戻り、オルガマリーは一息吐いて肩に乗っていた熊のぬいぐるみを見やった。

 

 

「…倒せたと思うけど、本当によかったの?」

 

「ああ。俺にできるのは看取る事と一緒に死ぬことぐらいだ…」

 

「っ!?」

 

 

瞬間、咄嗟にオルガマリーの前に出たアルトリアの鎧が砕け、オルガマリーの頭上を吹き飛んで行く。そして慌ててネロが構えたのを横目で見て、前を確認すると、そこには倒したはずのアルテミスウーズが起き上っていた。左腕が無い所を見ると分離させてぶん投げてアルトリアをダウンさせたらしい。

 

 

「そんな…弱点である炎を纏った一撃を浴びてまだ…!?」

 

「だが、確かに弱っているぞ。武器も失っている今なら…!?」

 

 

再び、炎を纏った剣を叩き込むネロであったが、アルテミスウーズは凄まじい速度で回避、ネロの体勢が崩れているところにオルガマリー…否、その肩に乗るオリオンに向けて突っ込んできた。しかし足取りはふらふらで、もはや声すら出ていないところから見て疲弊していると気付いたオルガマリーは静かにブラックテイルを構える。

 

 

「アルトリア、霊体化して傷を癒して。ここは私が…!」

 

「…嬢ちゃん。右だ、よく狙えよ…」

 

「オリオン?」

 

 

瞬間、船が大きく揺れ、右へずらしていた照準にアルテミスウーズがよろけ、発砲。眉間を撃ち抜き、崩れ落ちたアルテミスウーズの体が黄金の粒子となって消滅して行った。

 

 

「ありがとうな所長さん、アンタとサーヴァント達のおかげでアイツを楽に出来た。…ここでお別れだ、俺とアルテミスは二人で一人のサーヴァントだからな。コイツが死ねば俺も続くよ」

 

「…いいえ、彼女を解放できたのは貴方の力よ。私、やっぱり何もできなかったから」

 

「そうか?だったらいいんだけどな…ん?」

 

「…あれ?」

 

 

すると消えていくアルテミスの輝きが同じく消滅途中だったオリオンを包み込み、消滅が止まる。スキル:女神の寵愛が働いたためだった。

 

 

「消えて…ない?」

 

「…そりゃあ、せっかく助けたのに一緒に死なれたら困るんじゃないかしら?生前、貴方を殺した負い目があるのかも」

 

「…アイツに限ってそれは無いと思うが…生きて仇を取ってくれって事か?…俺に何ができるか分からないが同行させてくれ。きっと力になる」

 

「ええ。こちらこそよろしくオリオン。それより急ぐわよ、この揺れ…」

 

「うむ。外で何かが暴れているな」

 

 

オリオンを肩に乗せ、急いでエレベーターに向かうオルガマリーとネロ。その後に不可視の巨人がゆっくりと迫っていた事に彼女達は気付いていなかった。

 

 

「…汝、一切の望みを棄てよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、あと一歩のところでゴーストシップを脱出するところだった立香達の前に海中から出現した超巨大B.O.W.マラコーダ。侵入者を決して逃がさない宝具の片鱗が、人類最後の砦に牙を剥く。

 

 

「そこぉ!」

 

 

マシュの盾で触手が弾かれ、セイバーオルタの斬撃で切り払われた瞬間に、クジラの側頭部から生えている触手の付け根目掛けてロケットランチャーを発射する立香。衝撃で半ば吹き飛ばされるが壁を背にしていたため何とか踏みとどまり、放たれたロケランが触手の付け根に直撃し触手がうねって高速で引っ込んで行く。

 

 

「ナイスだストレンジャー!いくら動き回る奴でも付け根は避けようがない。次だ、しっかり狙え」

 

「無限ロケランは?」

 

「アレは反動がストレンジャーには耐えられん。そいつで我慢しろ」

 

「分かった。マシュ、ディーラー。移動するよ。セイバーオルタはドレイク船長たちを守って!」

 

「了解だ。さっさと仕留めろマスター」

 

 

クジラの外装は意外と堅い。銛でさえも浅くしか突き刺さらない程であり、つまりこのマラコーダは天然の鉄壁の外装により守られている。エクスカリバーではダメージが通らないだろうという判断であった。召喚時に得られる現代の知識様様である。

 

 

「やっぱりロケランはハンドガンと違って反動が大きいね…」

 

「先輩、やはりここは私が…」

 

「いいや。俺達サーヴァントでないと奴の攻撃をろくに止められない。下手したらストレンジャーは即死する、働いてもらうしかないな。本人も望んでいる様だ」

 

「うん…マシュ達だけに戦わせない…私も、やる!」

 

「まあ防ぐにしてもギリギリだがな…」

 

 

そう言いながらキラー7を放ち、頭上から襲い掛かって来た触手を退かせるディーラー。クジラの側面部から次々と生えてくる触手群は今も増えており、さらに時折先端から弾の様な物が発射されて意志を持っているように襲い掛かってくるため、完全に囲まれるのも時間の問題であった。

 

 

「せめてカークの固定銃座があればな…」

 

「メディアさんの魔術の援護も欲しい所ですね…」

 

 

ぼやきながらも確実に襲って来る物だけを捌き、破壊された船首のラウンジ側の通路を横へ横へと移動しながらロケランを次々と撃って行く立香達。いつの間にかセイバーオルタはドレイクと部下をラウンジ側に押しやって割れた窓から迎撃させていて、ラウンジ側への攻撃のみを捌いていた。

 

 

「商人!海賊共にお前の武器は貸せないのか?」

 

「駄目だ、使い勝手が違い過ぎる!フレンドリーファイヤしてもいいなら貸すが?」

 

「なら私にセミオートライフルとやらを貸せ、私もマスターと共に迎撃に移ろう」

 

「…やれるのか?」

 

「ふっ、愚問だな」

 

 

半信半疑ながらもリュックから引っ張り出したセミオートライフルをセイバーオルタにぶん投げながら、襲ってきた弾をハンドガンで撃ち落とすディーラー。手荒ながらも右手に持ったエクスカリバーで触手を斬り飛ばして左手にセミオートライフルを握ったセイバーオルタはスコープから狙わず発射。スキル:直感が働いて触手の付け根を撃ち抜き、怯ませていく。

 

 

「この程度造作もない。むしろレッド9より反動が弱くて扱いやすいぞ」

 

「普通はそうは使わないぜ。アンタはやっぱり化物だ」

 

「余所見しながらもマシュの分までカバーして撃ち落としている貴様に言われたくないな」

 

「二人共!集中して!」

 

「海中からも来ました!触手の数…最初の四本からすでに16本にまで増えています!」

 

「ちっ、どうすればいい商人!?」

 

「デルラゴの場合は殺せば死ぬんだ。こんな増え続ける奴を倒す術なんか思いつかん!」

 

「ええ!?」

 

 

まさかの策無しのディーラーに驚きを隠せない立香。それでもやるしかないため撃ち続ける。プラーガに関しては優秀だが、ハンターなどそれ以外に関しては適当にも程があるのがディーラーの短所だと再認識するが今更遅かった。もはや数の利は完全にあちらにあり、例えオルガマリー達が合流しても絶望的である。そんな時だった。空から放たれた銃弾の雨がクジラの頭部に炸裂し、その興味を空に浮かぶそれに向かわせたのは。

 

 

『メディアの姐さん!しっかり狙え、狙いに当たってないぞ!』

 

「ああ五月蠅いわね!これでも必死に狙ってるわよ!ていうか、こんな重い物をキャスターに使わせないでちょうだい!」

 

「カーク!メディアさん!」

 

 

それは、高速でヘリを操縦し触手の攻撃を掻い潜るカークと、その動きに振り回されながらも必死に捕まっている固定銃座を撃ちまくっているメディアがいた。筋力Eには辛いようでぜーぜーと荒い息を吐いていた。

 

 

『ようマスター。遅くなったが、マラコーダが現れたのが見えたから急いで救援に駆け付けたぜ!まず怯ませて俺のヘリに乗り込め!メディアの姐さんじゃ話にならん!』

 

「悪かったわね!?本領発揮してやるわよ!…これはどう?」

 

 

突如放たれた紫の雷撃に怯み、怖気付いて弾をまばらに撃ち出すマラコーダ。しかしそれもヘリの後部座席に出現した魔法陣から放たれた炎が焼いて迎撃し、魔力の光線が触手の一体の先端を撃ち抜いて引っ込ませた。コルキスの王女、本領発揮である。

 

 

「つ、強い……メディアさん、かっこいい…」

 

「チャンスだストレンジャー!マシュと一緒にカークのヘリに乗り込め、あの機動力を保つには三人ぐらいが限度のはずだ」

 

「っ…分かった、ディーラーもセイバーオルタも無茶しないでね!」

 

 

メディアに圧倒された隙をついて立香、ディーラー、セイバーオルタ、ドレイクの一斉射撃を受けて全ての触手を引っ込ませてマラコーダが完全に沈黙している隙を突き、下ろされたタラップを使ってヘリまで登る立香とマシュ。そして、立香が登り終えてマシュが登り終えるかと言う所でマラコーダが一斉に触手を出し、怒涛の猛攻を仕掛けてきた。

 

 

「っ、ヤバいぞ!」

 

「援護するぞ、海賊!」

 

「ああもう、しょうがないねえ!」

 

 

マシュが登り切らない内に回避を始めたヘリを援護する様に銃を放つディーラー達。

 

 

「マシュ、掴んで!」

 

「先輩…すみません、マシュ・キリエライト。先輩を守るためにちょっと無茶します!やああああああっ!」

 

 

するとマシュが何を思ったのか、振り回されたタラップから遠心力を用いて飛び降り、渾身のシールドバッシュをクジラの頭頂部に叩き込んだ。渾身の一撃にクジラの巨体が揺れ、マシュが落ちて来たのをドレイクの部下がキャッチ。暴れるマラコーダに、メディアから替わった立香の固定銃座の銃撃が襲い掛かる。

 

 

「早く倒してマシュ達と一緒に脱出するんだぁああああっ!」

 

『あ、落ち着けマスター!そんなに撃ったらオーバーヒートを起こして…』

 

「『あ』」

 

 

一気に撃ちまくったためにオーバーヒートを起こして沈黙してしまった固定銃座に、固まる面々。ヘリからの援護というアドバンテージ。それを失ったらどうなるか。

 

 

『メディアの姐さん!』

 

「分かってるわよ!」

 

 

たまらず、再びメディアの魔術で不可視になったヘリから興味を失ったマラコーダの触手による薙ぎ払いが船を襲い、ディーラーはそれにロケットランチャーを叩き込んで怯ませ無理矢理回避する。

 

 

「カーク!メディア!ストレンジャーを連れてさがっていろ!」

 

「言っている傍からまたミスをするとはな。マスターは人の話を少しは聞くべきだ」

 

『…ごめんなさい』

 

「皆さん、来ます!心なしかさっきより増えている気がします!」

 

「無限に増殖するタイプか、どうしようもないぞこれは!」

 

『ああそうだ、忘れていた。ドレイクって海賊はいるか?』

 

「私だけど何だい?」

 

 

話に付いて行けず、とりあえず迎撃に徹していたドレイクがカークに呼ばれてどこに居るかも分からないため空を仰ぐ。そして、それに気付いた。

 

 

『近くの島で停泊してアンタの合図を待っていた船を連れて来たがよかったか?』

 

「いいじゃないか!野郎共、アタシの声が聞こえるかい?砲撃よーい!ここが命の張りどころってね!」

 

「「「「おおおおおーっ!」」」」

 

 

ドレイクの呼びかけに応え、現れた海賊船…『黄金の鹿号(ゴールデンハインド)』から雄叫びと共に集中砲火がクジラの側面に炸裂、その巨体を横転させた。

 

 

「よくもアタシの部下をやってくれたねえ、聞くところによると亡霊船って話じゃないか!倍返しと行かせてもらうよ!さあデカブツ、アタシの名前を覚えて逝きな! テメロッソ・エル・ドラゴ!―――太陽を落とした女、ってな!」

 

 

さらに追撃。生えてくる触手を片っ端からつぎ込んだ大砲で打ちのめしていく光景に思わず絶句するディーラー。断っておくがこれは宝具ではない、生前のフランシス・ドレイクという海賊の力である。

 

 

「…英霊でもないのにこれほどか。これだから英雄様は…」

 

「あそこまでの力を生前で出せるのは一級の英雄だろう。英雄を支えるお前が卑下する必要はない」

 

「ですが、これでこちらの優勢です!一気に攻め込めば…」

 

「だが火力が足りない。何発ロケラン、大砲を撃ち込んだところで奴はあのクジラの中で無限に増殖し続ける。クジラごと吹き飛ばせる火力、それこそ英霊の宝具級の物があればなあ?」

 

「エクスカリバーは無理だぞ。あの皮膚、宝具として変質したのか防御力だけは我が城壁にさえ匹敵する。青いのと合わせた物でも倒し切れるか分からん。貴様の宝具はどうだ?」

 

「似た様な物だ。せめて奴がプラーガならとっておきがあるんだが…」

 

「アレは恐らくクジラに寄生するハダムシです。以前見せていただいたプラーガとは明らかに違います!」

 

「だよなあ…」

 

 

しかしそれでもジリ貧。クジラの分厚い皮膚を貫く宝具。そんなもの、範囲攻撃が得意なカルデアのサーヴァント達には存在しなかった。

 

 

「まだ諦めるには早いわ!」

 

「オルガマリーか。早かったな」

 

 

すると、肩にオリオンを乗せたオルガマリーがラウンジから出てくる。ゴールデンハインドの砲撃の嵐と巨体を持つマラコーダに圧倒されている様ではあるが、確かな勝算がその顔に浮かんでいた。

 

 

「ええ。ネロの一撃で倒し切れなかったんだけど、この船が大きく揺れたところに私がオリオンの指示で…今はその話はいいわ。必要なのはあのクジラの巨体をも消し飛ばす火力ね?」

 

「ああ。だがそんなもの…ん?皇帝サマやセイバーオルタは何処だ?」

 

「あそこよ」

 

「「?」」

 

 

オルガマリーに指差された方向…マラコーダの真下の海面を見やるディーラーとマシュが首を傾げた。何やら姿が変わったネロと、高速で水面を移動する彼女の傍に浮かんだ黄金のパイプオルガンの様な何かに掴まって同じく水面を滑走しているセイバーオルタの姿があった。問題は、その容姿である。

 

 

「…水着?」

 

「しかもなんか兵装が追加されているぞ?」

 

「ネロのスキルよ。皇帝特権。主張すれば何でもできる…変質したGカリギュラでもアレだったけど、元々が何というか…クラスチェンジできるぐらいに凄いわ」

 

「凄いってレベルじゃないぞそれ」

 

 

高速で水面を滑走するネロの姿は赤と白のボーダーカラーの水着であり、髪型がツインテールに変わっていた。滑走し、セイバーオルタと分かれたと思えばクジラの懐に潜り込んで炎を纏った斬撃を連撃で叩き込み、さらには一回転して勢いを加えた拳を叩き込んで吹き飛ばす。終始笑顔のネロの圧倒に、触手群もディーラー達を狙うのをやめてネロを狙って一斉砲火するも立ち止まって振り返ったネロのパイプオルガンから放たれた光弾が相殺、寄せ付けない。

 

 

「ふっふっふ!あれは何だ? 美女だ!? ローマだ!? もちろん、余だよ♪此度はキャスターだが、な!」

 

「ふざけている余裕があるとはな。だが水上での強さは明白だ。私にもやらせろ」

 

「うむ!うむ!余は今満足している!共に()こうぞ!」

 

 

ペカーッと輝き、セイバーオルタの姿も黒のビキニを基調としつつパーカーを羽織り、エプロンとホワイトプリムを装着している、いわゆる水着メイドという物にシフト。

何故かモップになったエクスカリバーと、背中にかけてあるセミオートライフルとは別に新たに追加された小銃、セクエンスを握っている。セイバーオルタ改めライダークラスのメイドオルタである。何処からともなくバイクを召喚し、水辺を走って銃撃する姿はもはや理解不能の産物であった。

 

 

「もう訳が分からん」

 

『奇遇だね、私もだよディーラー。あ、オーバーヒートが終わったよ。援護がいるように見えないけど』

 

「まったくその通りだが念のために援護はやっておけストレンジャー。どんなにあいつ等がデタラメでもあの巨体はそれだけで脅威だ」

 

『分かった。やるよカーク、メディアさん!』

 

『え、ええ…アレをキャスターと認めたくない私がいるわ…』

 

 

再びヘリからの援護も再開し、上から下から攻撃を受けて完全にディーラー達へ対する攻撃を止めたマラコーダ。その隙を突き、ディーラーは提案する。

 

 

「今のうちにさっさとこの船を出るぞ、あのデカブツめ完全に狙いが俺達から奴等に移っている」

 

「そうね。船長、とりあえず貴女の船に逃げさせてもらえる?」

 

「しょうがないねぇ。元々そうするつもりだったけどさ」

 

 

何時の間にかクイーン・ディードの近くまで寄せて来ていたゴールデンハインドに乗り込むディーラー達。そして、オルガマリーがクイーン・ディードから離れると端末の音が鳴り、ロマンの姿が映し出された。

 

 

『よかった!やっと繋がった!無事かい立香ちゃん、マシュ、所長!』

 

「あら、ロマン。忘れていたわ。私の心配が最後なのは覚えて置くわ」

 

『え、僕忘れられていた!?えっと…それは忘れて置いて欲しいなって。清姫だって何とか誤魔化して大変だったんだから…』

 

「嘘ついたら後から報復があると思いますが何だか久しぶりですドクター!何故今更通信を!?」

 

『なんだかマシュまで辛辣だなぁ!いや、こちらから反応は掴めていたんだけどレイシフトした直後から映像も繋がらないやら音声も拾えないやらで僕らでも何でかさっぱりで』

 

『やあやあダ・ヴィンチちゃんだよ。恐らくだけど、結界か何かで疎外されていたと考えるのが妥当だ。心当たりはあるかいオルガ?』

 

「レイシフトした直後からたった今までサーヴァントの宝具と思われる船の中に居たわ。それのせいかしら」

 

『ええ!?まさかそんな偶然が重なるなんてなあ…』

 

「それよりこちらの情報を伝えるわ。現在巨大エネミーと戦闘中で、現在フランシス・ドレイク船長の船に乗っているわ。仲間になった現地のサーヴァントは現状戦力にはならないオリオンだけよ」

 

「…そう言えば何でオリオンが生きているんだ?」

 

「…アルテミスの置き土産さ。それより俺の直感だがディーラーさんよ、いっちょ乗る気はないかい?」

 

 

オルガマリーとマシュがカルデアに現状を報告している間に、ヘリから下ろされた梯子を登っていたディーラーの肩に何時の間にか乗っていたオリオンが提案して来て、ディーラーはニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

「オリンポス神話屈指の弓兵の提案か。乗るしかないだろうストレンジャー」

 

「あのデカブツも間接的だがこの船…宝具の一部なんだろう?アルテミスをあんな目に合わせた宝具だ、ネロの嬢ちゃんたちだけにさせてたまるか」

 

「そういう無力を痛感した叫び、嫌いじゃないぜ」

 

 

そう言ってヘリに乗り終え、何やら叫んでいる立香を無視してヘリの後部座席からスティンガーミサイルを取り出して構えるディーラー。

 

 

「チャンスは一度だ。俺とアンタの手で決めるぞ」

 

「ああ…!」

 

「ストレンジャー、セイバーオルタに念話を頼む。止めは俺達が刺すってな」

 

「…分かったよ。でも揺れるヘリに登って来るなんて危ない真似もう二度としないでよ!」

 

「ああ、分かった分かった」

 

「アンタも女の尻に敷かれるタイプか」

 

「残念な事にな。俺はこのストレンジャーにだけは弱いらしい」

 

 

オリオンの同情のような声に肩を竦めるディーラーに、死なない程度にチョップを浴びせた立香はすっきりした顔であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…だ、そうだがどうする?」

 

「ふむ、我らが引き立て役か。何時もなら主役を張れないと主張するところだがオリオンめの覚悟はしかと見た。応えてやらればな」

 

「奇遇だな。私も、商人のやりたい事ならば異論はない」

 

 

現在、並走しながら触手群を惹き付けていた黒と赤の王は立香から伝えられたディーラーの言葉を聞き、ネロが不敵に笑みながら空中に浮かび、パイプオルガンから放った光線で誘導して来た弾を全て撃墜すると、メイドオルタも笑ってバイクの上に立ち、水流を纏ったモップを振り回して触手を弾き飛ばす。

 

 

「オリオンに対しては何も無しか、冷血よな。…では派手に決めるぞ冷血メイド!」

 

「ふん、注文には応えよう。メイドだからな。派手好きなのは趣味ではないが火力こそ正義だ、援護してやるからさっさと決めろ劇場女!」

 

 

そう言ってセクエンスを撃ちながらネロから離れて行くメイドオルタ。触手の大部分はそちらに向かい、こちらに飛んでくる弾も抜かりなく撃ち落とされる。趣味は合わないが今、誰よりも信頼できる者を信じ、紅き皇帝は魔力を猛らせた。

 

 

「劇場は、海より来たり―――!」

 

 

出現するは、先程使った物と同じく黄金劇場。しかして巨大な管楽器…否、パイプの形をした砲門が追加され、声を砲撃に変えるという現在の彼女の戦法を最大限に生かす大野外ステージになったそれの中心にネロは立っていた。

 

 

「豪奢!荘厳!しかして流麗!見るが良い!これぞ、誉れ歌うイルステリアス!即ち、余の!黄金劇場である!――――誉れ歌う黄金劇場(ラウダレントゥム・ドムス・イルステリアス)!」

 

 

全ての砲門から放たれた、無敵の防御を貫く特性のある「音」の砲撃がクジラの巨体に炸裂。星の聖剣では成しえない大ダメージを与え、クジラは激痛のあまり大口を開け、その前方に浮かぶヘリにその中心をさらけ出した。

 

 

「そこだ…外が堅い怪物は中が弱いって俺の経験談が言っている!」

 

「アレが触手を無限に増殖させていた中枢か。そんじゃまあ、手古摺らせてくれたな」

 

 

ディーラーがスティンガーミサイルを構える、と同時に、その反対側でロケットランチャーを構えた立香が、船の展望台から跳び出してきたそれを見た。それはタイラントに似た、海洋生物の特徴を持った巨人で。

 

 

「逃がさん…!我が名はアヴェンジャー、ジャック・ノーマン…ヴェルトロの名の下に貴様等を裁く…!」

 

「……裁かれないと行けないのは、ドレイクさんの部下の人とアルテミスを殺した貴方だ」

 

Goodbye.GhostShip(成仏しな、亡霊共)!」

 

「今だ!」

 

 

侵入者を逃がす、それが船の持ち主であるサーヴァントのどうしても許せない事だと見抜いたオリオンの指示で、めんどくさい関係の主従二人が同時に引き金を引いて。…大海原(オケアノス)での初戦はようやく終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあて野郎共!この所長さん…カルデアってところの船長(キャプテン)との契約だ。まずは宴だ…と言いたいところだけどどうやら急いでいるらしい。アタシ等としてもこんなつまらない海を永遠に航海するのも勘弁だ。所長さん方の足として協力してやろうじゃないか!」

 

 

ジャングルがあったかと思えば地中海の温暖な海に出たり、海流も風もしっちゃかめっちゃかで大陸が見当たらない大海原を、星の開拓者の船と共にカルデアは駆ける。

 

カークから交替したマイクのヘリで偵察し発見した島を片っ端から探るという船旅は、とある島にて一旦中断される。そこは、巨大な迷宮の存在する島だった。




※水着ネロの宝具は「無敵貫通」持ちです。マラコーダのクジラはゲーム的には無敵です。

アルテミスウーズはオルガマリーの力を借りたオリオンの手で撃破。さらにノーマンが迫っていた事にも気付いていたオリオン、非力ながらも戦士の経験は健在です。女神の寵愛で無理矢理現界し続けるというごり押しですがこれしか思いつかなかったんです勘弁してください。

最初はマスターがメイン射撃という劣勢でしたがカークが連れて来た黄金の鹿号の参戦で形勢逆転。何でサーヴァントでも無いドレイクの船の攻撃が通じているのかというと、彼女の所有している聖杯の影響です。大砲が当たれば勝てるという思い込み。地味に難しいドレイク船長の台詞は考えるのが大変です。

そして堂々参戦、水着になった赤王と黒王。水上戦では無類の強さを発揮します。出発前にカルデアで二人だけで話していたのはこれですね。黒王の提案です。青王は諸事情でダウン。持ってないからしょうがないね。

クイーン・ディードにより通信ができなかったロマン達。きよひーを抑えるのに忙しかった模様。オルガマリー達が此処にレイシフトされたのは割と適当に座標を選んだロマンの失態なのでオルガマリーもマシュも地味に怒ってます。

不可視(霊体化じゃない)になってオルガマリー達をストーカーし、最期は脱出を阻もうと飛び出してきたクイーン・ディードの主であるヴェルトロリーダー・ノーマンさん。地味にディーラーの取引先だったりしますが、オリオンの機転で立香の手により撃破。クイーン・ディードは海の藻屑となりましたとさ。ちなみにゲームだと弱点に当てなければロケランの直撃を受けても死ななかったりします。初見時はロケランで仕留められると思っていたので本当にビビりました。

最後は割合ですが、オルガマリーが既に交渉を行ってスムーズに事が運んでいます。大海原で燃料の心配がいらない飛行手段って本当に便利。地図もいりませんね。

次回は迷宮と、黒髭海賊団参上。やっとオケアノス本編に進みます。次回もお楽しみに!よければ評価や感想などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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