Fate/Grand Order【The arms dealer】   作:放仮ごdz

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ヴェルカム!ストレンジャー…どうも放仮ごです。今回は予定変更して初の番外編となります。
一言評価で「主人公が感情移入できない」という意見をもらい、ディーラーのことか立香のことかオルガマリーのことか分からなかったため、元々書くつもりだった日記形式の藤丸立香の独白を徹夜で書いてみました。

時系列は四章後なのでちょっとしたネタバレがありますが、ネタバレしないネタバレなのでご安心ください。


ウェルカム、ディーラー(番外編)

2016年〇月△日 藤丸立香

 これから特異点を修復する旅が始まるので今日から日記を付ける事にする。快適な雪山での夏休みのバイトだったはずなのに、初日から爆破テロに巻き込まれ、色々あって人類最後のマスターというものになって人類の存亡の鍵を握る羽目になった。

 バイオテロじゃなくてよかった、私一人で人理修復するとなったら、絶対にできないと自殺する自信がある。さっき召喚に応じてくれたのに自害させてしまったチェイサーに処刑してもらうのもありかも知れないとマテリアルを見たら思う。

 

 今はもうどうでもいいが、結局生き残ったオルガマリー所長もマスター適正があったらしいので人類最後のマスターではないと主張するとダ・ヴィンチちゃんに「オルガは厳密にはゾンビみたいなものだから生者としては君が人類最後のマスターで間違いない」と言われた。ゾンビと言われた所長が泣いてたので宥めた。可愛い。

 

 マシュ・キリエライトという自称後輩と、武器商人だと言うディーラーの二人が新米マスターの私を守ってくれるサーヴァントだ。これからは二人を支えて行かないといけない。頑張ろう。最初の特異点はフランスだ。凱旋門とかエッフェル塔とかあるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

2016年〇月✕日

 フランスの特異点を修復したのはいいけど、最後に戦ったディーラーの宿敵オズムンド・サドラーの宝具でT‐ウイルス以外の物に感染…というより寄生されたらしい。もしもの時の為とディーラーとダ・ヴィンチちゃんが作成していた機械で何とかなったが、私もガナード…ゾンビの様になっていたと思うとゾッとする。

 ディーラーもガナードだが、商人魂の様な物で自我を残すような芸当は、そんな信念を持たない私には荷が重たかった。ディーラーによるとマシュならば自分と同じように耐えられる精神を持つのだとか。やっぱりマシュは凄い。

 

 ところで、サドラーの宝具なのに奴が倒された後でも何で私達に残っていたのかとダ・ヴィンチちゃんに聞いて見たら、何でもプラーガ自体が宿主の魔力を媒介に文字通り寄生する宝具の様だ。本人が死んでも残るなんてバイオハザードにも程がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

2016年◇月〇日

 ローマの特異点を修復して来たが、今回は本当に全滅を覚悟した。ウイルスを投与され変異したサーヴァントが現れたのだ。改めてウイルスの危険性を理解できた。正直、レフ教授の変貌した魔神柱?なんか比でもないぐらいに脅威だった。

 ダ・ヴィンチちゃん曰く現代に幾度となくバイオハザードが起きたこのクソッたれな世界だからこそ召喚される現代のサーヴァント達の影響らしいので、あんなのがこれからも出て来るとなると気が滅入る。

 

 ああ、それと。巻き込まれただけのあの時とは違う、バイオハザードの元凶だとも言えるサーヴァントとも遭遇した。アルバート・ウェスカー。ろくに話もできなかった上に所長と違って興味がないとも言われた。多分アレは私の天敵だと思う。もし彼がカルデアに召喚されでもしたら理由を問い質した上で一発殴る。

 

 私のミスで殺されてしまったアシュリーとマイク/カークは許してくれたが、私としては悔やまれる。これからは積極的に戦いに参戦して援護しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2016年✕月△日

 恐らく史上最悪とも言える魔窟だった第四特異点ロンドンにて、人理焼却の首謀者ソロモン王と邂逅した。新たに仲間になった彼女のおかげで辛うじて撃退は出来た物の、私とカルデアの完全敗北だった。

 

 今は自室でベッドに入っているが、罪悪感と無力感が過去最高に圧し掛かる。私は私が許せない。吐き気がする、悪寒が酷い。精神が病んでしまったのか、心配してきたマシュに皆の前で怒鳴ってしまった。死にたい。後でちゃんと謝らないと。どうにかしないと、このままじゃ人理修復も儘ならない。

 

 …そう言えば最近、ロンドンの途中辺りから感情を露わにする事が多くなってきた傾向がある。様々なウイルスが蔓延していたし何かに感染してしまったのかもしれない。ドクターに再度診断してもらおう。

 

 

PS

 マシュ曰く帰還してから私が話も聞かずに呆け顔をする事が多くなったらしい。確かに時折、監獄とその中で迫り来るクリーチャーの幻覚がフラッシュバックのように見える様になったがその時の状態だろうか?どうやら寝不足の様だ。悪夢しか見れそうにない。

 

 

 

 

 

 

2016年✕月▲日

 ソロモン対策のミーティング中、所長が、次の特異点は休めば?と心配して言ってきたが丁寧にお断りした。一人だけ安全なところにいるなんてできないし、所長とそのサーヴァント達だけに戦わせる訳には行かない。今までもギリギリだったんだ。また所長を見殺しにしてしまうのだけは嫌だ。

 

 そのためにも体を回復させなければ。今もベッドで横になってこれを書いているが、体調は酷くなる一方だ。彼女も心配しているし、これ書き終わったらロマンやダ・ヴィンチちゃんにまた相談しないと。ディーラーから青ハーブをもらうのもいいかもしれない。ハーブは正直苦手だがこの際しょうがないだろう。

 

 そうだ、今の弱った私なら、少し頼めば絶品だと言う金の卵をもらえるかもしれない。

 アレはセイバーオルタ曰く極上の卵らしいが、ディーラーの機嫌がいい時を見計らって頼まないと貰えない希少な物だ。卵ご飯にして食べれば元気がでるかも――~~~

 

【ここで文章が止まっている】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例えどんなことがあっても誰かを見捨てない。私は、もう守られたり助けられたりするだけは嫌だ。逆に助けて、戦って、一緒に生き残るんだ。

 

それが、11年前から私がずっと抱いてきた、我儘とも言える、守られるしかなかった無力な自分が許せない、心の底から渇望している原初の思いだ。

 

そんな我儘に付き合ってくれるサーヴァントがディーラーだ。私が誰かを助けるために、見捨てないために必要な、武器を与えてくれる武器商人。

 

 

 

 

 

私は一般募集でカルデアに来たけど、普通の一般人という訳ではない、だからって魔術の存在も知らなかったからオルガマリー所長の様に魔術師でもない。ロマンみたいに医者の様な特殊な職業でもない高校生だし、ダ・ヴィンチちゃんの様な英霊では断じてないごく普通の一般家庭の生まれで、ちゃんと高校にも通っているごく普通の女の子だ。……正確に言えば、5歳までは普通の女の子だった。

 

 

英霊エミヤを召喚して、彼の過去を夢で見て分かった事だけど、私と彼の過去、いや原点はよく似ている。ただ違うのは、記憶を失わなかった事と、恩人の(呪い)を引き継がなかった事、そして何よりも恩人が魔術師かそうでないか、だ。彼を助けた人物は魔術師だったから彼は魔術を習い、私を助けた人は海兵だったから私は銃の扱い方を学んだ。

また、私が全てを失った年が2005年で、彼の戦いが始まった年が2004年だったりするのも何かの縁か。そう言えば特異点Fも2004年だった。ここまで来ると運命すら感じる。

 

 

 

幼少時、忙しい両親が珍しく一緒に長期休暇がとれたため行われた初の海外旅行。アメリカ中西部の工業都市ハーバードヴィルの空港に訪れ、手続きに少しもたついたために巻き込まれてしまった惨劇。それが今の私の原点だ。両親ともに、ハーバードヴィル近くに存在していたラクーンシティの惨劇を冗談半分だと軽く考えていたのも原因だと思う。

 

それは、一人のデモ民衆がゾンビのマスクを被って上院議員を脅かしていた、という子供でも分かるおふざけの様子から発端した。本当にゾンビが客の中に紛れ込んでいて、止めようとして噛まれた警備員が感染しゾンビ化、さらに直後にゾンビの巣窟となって不時着した旅客機が突っ込んで来て一気にパニックが広がったのだ。

 

当時は本当に訳が分からなかった。逃げる途中で父が「こうなるなんて夢にも思わなかった」と謝罪しながら私達を逃がすために飛び出して行って、母と共に安全な場所を探す途中でゾンビ化した父と遭遇。襲い掛かって来た父に私が竦んでしまい、庇った母が噛まれてしまい、助からないと悟った母に私は無理矢理入れられた部屋の扉で分断されて、しばらく泣き叫んで母の声が聞こえなくなったところで死んだことを悟り、生きるために逃げ出した。

 

 

ダクトにも入ったし、銃声が聞こえて誰かが生き残っていると分かっても迂闊に近付いたりせず、ひたすら隠れる事に徹して逃げ回っていた。いっぱいいっぱいだったのだ。それに、誰かを頼って私を守って犠牲になるのをもう見たくなかったとも言える。途中、母親の声…とも言えない声が聞こえて思わず感極まって出てしまったが、ゾンビ化した両親を目の当たりにして後悔と絶望を感じ、必死に逃げた。母親を諦めきれなかったのは子供の性だろうか。

 

逃げて、逃げて、逃げて。時間も分からなくなった頃に、力尽きてゾンビに襲われそうになっていたところに、ようやく突入して来た海兵隊に発見され無事救助された。感染していたらしいT‐ウイルスもハーバードヴィルに研究所を誘致しデモの原因にもなっていたという巨大製薬企業ウィルファーマ社の支給したワクチンで事なきを得た。

しかし空港や研究所で起きたバイオハザードの首謀者がウィルファーマ社の主席研究員フレデリック・ダウニングだったと言うのだから打たれたワクチンに嫌悪した事もあった。…テレビで穴が開くほど見たその顔も忘れてしまったが、一度ぶん殴ってやりたいとは今でも思う。

 

 

 

そのまま元々親戚がいなかったため天涯孤独となった私は海兵隊の一人のところに預けられて6歳までの一年間を過ごし義務教育のため日本に帰国、施設に入って現在に至る。

だからちょっとだけ英語が喋れたりするのが小さな自慢だったりするが、正直に言うと両親がいない他、死生観が違い過ぎて冗談の「死ね」でも過剰に反応してしまう私は学校では割と浮いていた。

虐めにならなかっただけでもありがたいが逆に言うと干渉が無かったため、友人作りが苦手だ。

 

話せる後輩もマシュが初めてで、先輩と言われた時は何か感動した。その後に事故でマシュが死に掛けて、また絶望と無力感を味わった。所長が死んでいると聞かされた時にまず思ったのがウイルス感染だったのは正直許して欲しい。幽霊よりもゾンビの方が納得いく。

 

……所長の死に、最初そんな事しか考えられなかったのは、トラウマが刻み込まれている事からだと分かるが、カルデアスに吸い込まれそうになり助けを求める所長に手を伸ばす事しかできなかったのはきっと、死んでいるから見捨てるしかないんだと思ってしまったからかもしれない。

そんな偽善で手を伸ばした私と違い、しっかりと自分の意思を持って助けだし、生き返らせてしまったディーラーは本当に凄い。そんな彼の姿に憧れた。

 

 

 

あと、一般の日本人と違うのは、銃の扱いを一通り知っている事もだ。海兵隊の保護者から、ここ数年アメリカどころか世界中でバイオテロが頻繁に起きていると説明を受け、念のための護身用として、と銃の扱い方を習った。ハンドガン、ショットガン、マシンガン、ライフル。その内で握ったのはハンドガンだけだが、5歳の身ではそれでも十分すぎたと思う。

 

そんな私でも久々に握ったハンドガンは相変わらず重かった。今や片時も離さない相棒になっているハンドガン・マチルダはある程度知っていた私でも扱えたし、三点バーストでマシンガンの様に扱えるのも魅力的だ。でもこれは所長やマシュみたいな初心者だと無駄弾が出て直ぐに弾切れになる欠点があるため、ディーラーは最初から私が銃を握った事があると分かっていたのだろう。

後から聞いて見たら、「武器を求めたのに扱えない訳がないだろう?」と返された。私が求めたのは一人で私と所長を守ろうとしていたマシュを支えられるサーヴァントだったのだが…というか魔術の存在を聞いて私自身が戦うなどとは露にも思わなかったのではあるが…結果オーライだと言えばそうだ。銃を手に、後輩や上司を守れるなんて思ってもいなかった。

 

 

 

 

 

 

私にとって、ディーラー/武器商人は本当に頼もしいサーヴァントだ。すぐ自分が死ぬような作戦を立てるのが許せなくて毎度の如く怒っているが、決して私の前からいなくならない、と思っている相棒だ。…フランスでは冷や冷やしたが、結局生き残った。

 

マシュは私や皆を、身を挺して盾を手に守ってくれる。

 

セイバーオルタは私達の矛となってディーラーと共に敵を薙ぎ払ってくれる。

 

クー・フーリン、メディアさん、アシュリー、マイク/カーク、それに皆も私なんかの召喚に応じてくれた頼りになるサーヴァントだ。

 

その中でもディーラーは皆と違って、私を守ろうとしながらも、求めたら武器をくれて一緒に戦ってくれる。死んでしまうかもしれない無茶でも、必要となれば押し付けてくれる。それが私には嬉しいんだ。下がっていろと安全な所に入れられ守られるのは嫌だから。

 

マスターとしては間違っているかもしれないけど、皆だけに戦わせてそれを見守るなんてこと私にはできないんだ。守られるだけなのは嫌だ。戦うために必要な武器をくれるディーラーは、私の人理修復の旅には欠かせない。

 

マシュや彼を失ったら、私はもう何もできなくなるほど落ち込む。それは確信できていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

独白をどうも、人類最後のマスター。そうか、先輩(・・)。それが貴様の抱く罪か。

 

傲慢、強欲、色欲、暴食、怠惰、嫉妬、憤怒。そのどれでもないがそれは立派な貴様の罪だな。その自覚はあるか、先輩?

 

 

ヒッヒッヒェ、いい武器があるんだストレンジャー。クハハハッ、俺と言うサーヴァントだ。不服か?

 

 

「…不服じゃないけど、全然似てないよ。巌窟王(アヴェンジャー)

 

 

奴に会いたいか?奴が居なくて心細いか?よろしい。ならば俺はこう言うしかあるまい。

 

待て、しかして希望せよ。

 

 

――――ヴェルカム!藤丸立香。悦べ、お前の願いは、ようやく叶う。




ついでに活動報告でもぼやいていた、書くかどうか迷っている監獄塔もちょろっと書いてみた。バイオキャラをいっぱい出せるので魅力的なイベントなんですよね…

僕の書く小説の主人公系キャラは大概過去に酷い目に遭っている件。これだからドSだと言われるんですね、今更自覚しました。今までのに比べたら立香はまだマシな方です。

そんな訳でディジェネレーションから派生した自称一般人、藤丸立香の独白でした。書いてみて分かりましたがこれ、確かに逸般人過ぎて感情移入できませんね。士郎以上に歪かもしれない。他人優先なのは士郎と変わりませんけど。
ちなみに本文でエミヤを召喚した、と書いてありますがそれはありえたかもしれない可能性の話です。召喚していたらめんどくさい事になると思います。ディーラー以上に運命的なサーヴァントです。こればかりは本気で偶然。ディジェネレーションを調べ直したら近い年だった。第五次聖杯戦争の2004年はバイオ4の時期。運命かな?

日記形式はかゆうま的なのが書けたのでこれで満足。好評だったらまた書こうかなと思います。まあ最後のは寝落ちなんですが。

誠意作成中の次回は予定通り、黒髭海賊団との決着戦です。意外と長くなったのでちょっと難航して書き直してたりします。どうかお待ちください。

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