Fate/Grand Order【The arms dealer】   作:放仮ごdz

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ウェルカム!ストレンジャー…どうも、年が明けてから七日も経ちましたが今年初投稿になります放仮ごです。初課金となる福袋で嫁王を引きました。エクストラクラスを狙った初課金でこれはちょっと悲しかったりします。
長くなったので切るところが見付からなかったので無理矢理まとめました。ロンドン編の序盤は説明が長い。

本格始動ロンドン編。題名で分かる人は分かる彼女達といきなり対決。まずは相変わらずちょっぴりデンジャラスなカルデアからお送りいたします。楽しんでいただけると幸いです。


アンタも家族だストレンジャー

「次の特異点はロンドン。そして、藤丸が見たロンドンの夢を無関係と断ずることは出来ないので、それを想定して対策を練ります」

 

「とりあえず技術班から前回得た情報の解析報告だ。七十二柱の魔神・・・そう呼ばれる術式を操るソロモン王の時代の観測だね」

 

 

ロマンの報告によると、ソロモン王の時代に異変は存在せず、七十二柱の魔神を名乗るモノ達とソロモン王は無関係だという結論に至ったらしい。もっともソロモン王がサーヴァントとして誰かに使役されていた場合は別なのだが、ロマン曰くソロモン王がそんな悪事に加担するとは思えず、悪人には呼ぶ事もできないとの事。

 

 

「…つまりは、他の時代に異変が無い訳だから残り四つの特異点のいずれかの時代に黒幕が潜んでいる可能性が高い訳ね」

 

「そう言う事だ所長。では今回のオーダーの詳細を説明しよう。第四の特異点は19世紀、七つの特異点の中で最も現代に近い特異点と言えるだろう。けれど文明の発展と隆盛、この時代に人類史は大きな飛躍を遂げた訳だから道理ではある」

 

「つまり産業革命か。人類史のターニングポイントと言っても過言じゃないな」

 

 

19世紀と言えばバイオハザードの元凶である製薬会社アンブレラの原型、トラヴィス商会が誕生した年代だ。ある意味バイオハザード由来でもターニングポイントと言える時代にぽつりと漏らしたディーラーの言葉に頷いたロマンはそのまま続けた。

 

 

「ああ、ディーラーの言う通りだ。そして具体的な転移先は、どういう訳か先日立香ちゃんが夢に見たという、絢爛にして華やかなる大英帝国。騎士王たちには所縁深い場所、イギリスの首都ロンドンだ。今まで広範に渡っていてこんな狭い範囲に特定されている」

 

「藤丸の夢が本当ならば、ロンドンは焼却される前にバイオハザードで滅びる。異変はそれだけじゃないかもしれないけど、まずはそれを食い止める事を目的とするわ。…ダ・ヴィンチちゃん、例の物は?」

 

「もちろん完成しているとも。まあ未知のモノには効果は薄いかもしれないが勘弁してくれ」

 

 

そう言ってダ・ヴィンチちゃんがマスター二人に手渡したのはカルデアの紋章が描かれたチョーカーだった。立香は青、オルガマリーは赤だ。

 

 

「…この魔術礼装、ちゃんと機能するんでしょうね?」

 

「私を誰だと思っているんだいオルガ。ごく薄い魔力の結界を表面に張ってウイルスやら悪意ある魔力やらの影響を受け難くする。アトラス院礼装を参考にしたから効果は御墨付さ。直接打ち込まれでもしない限りはシャットできる」

 

「それは凄い」

 

 

素直に感心しながら身に着ける立香。自分はバイオハザードを解決して来た人間達と違い天性の抗体持ちではないから空気感染しないだけでもありがたいのだ。

 

 

「あ、あとそれぞれの礼装の強度も上げといたよ。オルガの着ているカルデア戦闘服の強度はサーヴァント以外の攻撃なら物ともしないだろう。少なくともゾンビの噛み付きやウーズの引っ掻き程度なら防げる。ハンターの首狩りとかいうのはさすがに無理だから注意してくれ」

 

「俺の売品であるアーマーを参考にしたらしいからまあ信頼は出来るぜストレンジャー」

 

「その上でディーラーのアーマーを着込めばサーヴァントの打撃程度なら死にはしないさ!多分!」

 

「そこは断言しなさいよ!?…ったく。それで藤丸?今回貴方が召喚したサーヴァントだけど…」

 

「あ、はい」

 

 

恒例の問題に背筋が固まる立香を睨みつけるオルガマリー。オケアノスで多少精神にも余裕ができたと判断され今回召喚を任された立香であったが、毎度の如くあるだけ注ぎ込んで案の定オルガマリーの分が無くなり、お冠の上司に目を泳がせた。

 

召喚は出来た、出来たのだが…問題があった。そのためまだマシュとディーラーにしか知らせていなかった。

 

 

「…貴方がどんな英霊を呼んだのか吐いてもらうわよ」

 

「…来て、アヴェンジャー」

 

「あいよー!最弱英霊アヴェンジャー、お呼びと聞いて即参上!」

 

「「「………」」」

 

 

しぶしぶ立香が呼び出したそれに、オルガマリーとロマンとダ・ヴィンチちゃんは固まった。

 

復讐者(アヴェンジャー)商人(ディーラー)追跡者(チェイサー)裁定者(ルーラー)と同じ本来召喚されないエクストラクラス。それはいい、いいのだが…霊体化を解いて現れたのは、黒い人型の影だった。目だけがはっきり見えてきょろきょろ辺りの反応を見て楽しんでいるのがどこか不気味だ。

 

 

「…召喚に応じてくれた、アンリ・マユ、です」

 

「……は?」

 

「………アヴェンジャーってだけでも問題なのに君って奴は・・・」

 

「一つ疑問だけどゾロアスター教の邪神が何で最弱なんだい?」

 

「名前はゾロアスター教の神様だけど殆んど生贄だから人間相手にしか戦えない最弱だそうです」

 

「ただの戦力外の雑魚じゃない」

 

「ぐはっ!心にもない言葉、響くねえ~なあ、アンタも弱い弱い言われてたんだよなディーラー?!」

 

「アンタの商品価値言ってやろうか?マイナス振り切ってるぜストレンジャー」

 

「おうっ、コイツは手厳しい」

 

 

ディーラーにも辛辣な言葉を受けたアンリマユはケラケラ笑うが、それとは対照的に顔を暗くする立香と、怒りとか失望とかが入り混じって真顔になったオルガマリーと、その間で右往左往するマシュ。冬木から変わらず唯一の癒しであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「特異点ロンドンは近代のイギリスだという事で編成は私がアルトリアと清姫、藤丸はディーラー、セイバーオルタ、アシュリー、マイクで行くわ」

 

「おっ、今回も俺の出番はなしか」

 

「残念だったなキャスニキさんよ。…あれ、新参者の俺は?初登場補正とかあるかもだぜ?」

 

「やかましい。今回は単純にイギリス所縁の英霊と近代の英霊で構成したのよ。ウーズ相手なら清姫で十分だし…いやほんと、イギリスでも近代でもないのに何でいるのかだけど。できれば炎が使えるネロが好ましいんだけど」

 

「ネロさんが倒れていたのですからしょうがありませんわ旦那様」

 

「……………大火傷でな(ボソッ)」

 

 

ディーラーの言葉で思い出した、今朝オルガマリーの自室の前で発生した不可思議な事件の犠牲となったネロへ同情を送る立香達。笑顔で清姫に言われたオルガマリーは、一応知っているらしいが目を逸らしているアルトリアに何も聞かないで目を瞑る事に決めた。

 

 

「……ま、それもそうね。ディーラーの救急スプレーで治しても意識が戻らないって相当だし。清姫も頼りになるし問題ないわ」

 

「ええ。旦那様に近付く不埒な輩は一人残らず焼き払って見せましょうとも」

 

「…では私はマスターの背中を守ります」

 

「ま、任せたわ」

 

 

震え声でアルトリアに頼んでいるオルガマリーに「なんかさらに感情豊かになったなぁ」と感傷に浸っていたロマンは、全員がコフィンに乗った事を確認するとレイシフトを開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、藤丸立香は地獄の中で意識が覚醒した。

 

 

「レイシフト、成功しました。…これは。視界が……阻害される程の濃度の煙です。いえ、霧でしょうか?」

 

「ここが、ロンドン」

 

 

目の前に広がるのはところどころ血に塗れた街並みと、放置され炎上する車体の群れ。カビに覆われた裏路地と、その中で跋扈する異形の群れ。そして周囲は視界を塞ぐ濃厚な霧に包まれた、華やかなる大帝国とは無縁とも言える、人がまるでいない、廃墟の様な静かな光景だった。街路沿いに確認できる限りは戸や窓が閉められているので誰もいないという訳ではないと思い至ったが…

 

 

「…ッ」

 

 

周囲から唸り声が聞こえ、トラウマから気を反らすべく思わず上を見る立香。霧に隠れて全体は見えないが、これまでの特異点でもあった『光の環』を見付け、此処は特異点なんだと気を取り直して辺りを確認する。マシュ、ディーラー、セイバーオルタ、アシュリー、マイク。自らのサーヴァント全員がちゃんといた。

 

 

「・・・この独特の腐敗臭、そして異常なまでの湿気。ゾンビとウーズの野郎がうようよ湧いてるな。霧に隠れて見えないが直ぐそこに居るかもしれない、警戒しろストレンジャー。迂闊に突っ込むなよ?」

 

「う、うん。さすがにしないよ。…この街の人達は無事なのかな…」

 

「無事を祈りましょう先輩。大丈夫です、人間はそう簡単には死なない。それを証明してみせたのは先輩じゃないですか!」

 

「…まあ、あの大英雄の攻撃の余波を受けて寝込んだだけで済んだぐらいだしね…私だと一発で死にそう」

 

「俺達凡人とは比べ物にならないぞマスター」

 

「そんなことないよ…運がいいだけの向う見ずだし」

 

「…ん?警戒するのはいいが、オルガマリーは何処だ?」

 

「え?」

 

 

散々な言われようのサーヴァント達にげんなりしていた立香だったが、セイバーオルタに言われて辺りを見渡す。オルガマリーとそのサーヴァント二人の姿は何処にもなかった。

 

 

『大変だ立香ちゃん!レイシフトの際、何者かの干渉を受けて所長と別々の場所にレイシフトされてしまったらしい、至急合流してくれ!』

 

「わ、分かりました!マイク、お願い!」

 

「了解だマスター」

 

 

ロマンからの通信が入るや否やマイクに頼んで飛んでもらう立香。音を殆んど消して移動できるマイクはこの状況に好ましい。ディーラーも一緒に周囲を散策してもらっている間、ダ・ヴィンチちゃんからも通信が入った。

 

 

『とりあえずオルガの方は無事だよ。それと、その霧から異常な魔力反応を確認したよ。産業革命の頃は珍しくも無い霧と煙だけど、これは濃すぎる。大気に魔力が充満している様だ。生体に対して有害なレベルだ。深く吸い込めば命にも関わる。ロンドンはもはや魔力の霧に包まれた危険な死の都市と化している。そのチョーカーの防護機能でも通じるかどうか・・・』

 

「私も先輩も割と大丈夫です。私と融合している英霊の加護か影響はありません。それよりも腐敗臭が酷くて・・・霧の影響で亡くなった人たちの物でしょうか…」

 

『その割に死体が一つもない所を見ると、やはりほとんどがゾンビ化しているらしいね』

 

『だけど周辺の建物に相当数の生体反応を確認している。恐らく無事なロンドン市民の物だろう。君達が聖杯を入手、もしくは破壊すれば異常なロンドンの存在自体が修正される。そうなれば命を落とした人間達も元に戻る、はずだ』

 

『確定事象じゃないけど希望は持った方がいいね。こちらでワクチンを何とか作成して物資として送ってはみるが…これは最悪の事態と言っていい。まずは安全なベースキャンプを見付けよう。そっちはどうだいディーラー?』

 

「駄目だな。オルガマリーの姿どころか安全な場所も見当たらない。辺りかしこにゾンビの山、あとそれを駆逐しているよく分からん機械人形や出来損ないの人型みたいなのがうじゃうじゃいる。アレは一度に相手するのはヤバい。さすがのシカゴタイプライターも物量には勝てん。現地のサーヴァントを見付けて合流するのが早いだろう」

 

『なるほど。恐らくオートマタとホムンクルスだろう、いや恐らくそれだけじゃない。こちらでは魔力系の反応感知は完全に混乱状態だ。せいぜいが動体感知のみ、これは困った』

 

「無理矢理なら突破もできるが騒げば確実に集まるぜ。そうなればストレンジャーを守れるか不安だ。何せこの霧だからな、奇襲なんか受けたらひとたまりもない。マシュとお嬢様はしっかり守って置けよ?」

 

『すまないマスター。霧でまるで何も見えない。もう少し散策して何も見当たらなかったら帰還する』

 

「分かった、気を付けてねマイク」

 

 

ディーラーの報告と、マイクの念話を聞いて顔を険しくさせる立香。正直、何もできないのが現状だ。管制室との通信で何とかオルガマリーと合流するしかないか、と結論したところで立香はマシュの背後に立つそれを見た。

 

 

「マシュ、危ない!」

 

「ッ!?」

 

 

立香の言葉を受け、背後から振るわれたナイフをギリギリで防ぐことに成功したマシュはアシュリーと共に立香を守る様に構え、そして驚愕した。

 

 

「奇襲!?何も、感じなかった・・・!」

 

「この距離で、私が気付かなかっただと…!?」

 

「冬木のとは違う、ローマでのウェスカーと同じアサシンの気配遮断だ!…いや待て、こいつらに囲まれても気付かなかったってのかストレンジャー…?」

 

「…これ、ゾンビ?間違いなくガナードじゃないけど…ウーズでもないわよね?」

 

 

己の直感が通じなかった事に驚くセイバーオルタ、何時の間にか囲まれていた黒い異形の群れを相手にマグナム二丁を手に構えるディーラー、とりあえず構えながらも敵の正体を訝しむアシュリー。立香達を取り囲んだのは、鋭い牙と爪を持つ漆黒の人型の異形と、マシュに奇襲したであろう銀髪の少女であった。

 

 

「…あなたは、ねえ、なんだろう?人間?それとも魔術師?魔力の霧だけじゃない、わたしたちの霧の中でぜんぜん平気でうごいて」

 

「これは・・・ガハッ」

 

「ディーラー!?」

 

 

突如として胸を押さえ、倒れるディーラーに駆け寄る立香。マシュは気付いた、自分達を囲むこの霧は魔力だけではなく、硫酸も混じっているという事に。まだ死んではいないが、それも時間の問題だろう。

 

 

「…まさか、まさかと思いますがジャック・ザ・リッパー・・・?十九世紀末のロンドン市街で数多くの女性を解体した連続殺人鬼・・・」

 

「……つまり、この時代に置いては最も力を持つ英霊という事か。商人がやられたのは?」

 

「恐らく硫酸の霧、ロンドンを襲った膨大な煤煙によって引き起こされた硫酸の霧による大災害、恐らく宝具です。私達は対魔力で影響は少ないですがそれが無いディーラーさんでは耐えられません」

 

 

マシュの言葉に顔を綻ばせるジャックに、立香は言いようのない感情を抱く。

 

 

「わたしたちのこと、知ってるの?ふうん、うれしいな…じゃあわたしたちが何をするのかも知ってるよね?うれしいな。うれしい…な!」

 

「させるか…!」

 

 

マシュの腹を掻っ捌こうとナイフを構えて突進するジャックに、何とか立ち上がってマグナムを構えたディーラーが乱射。しかしナイフでマグナムの弾を防いだジャックはモールデッドの群れの中に飛び退き、モールデッドたち共々倒そうと飛び出したセイバーオルタとマシュに続く様にマグナムを構えたディーラー。

 

 

「ディーラー!?」

 

「なんだ、ストレンジャー・・・!?」

 

 

しかし唐突に、黒い腕に肩を掴まれて振り向くと、そこには真顔で黒い異形の拳を握りしめたジャックと同じくらいの少女がいた。

 

 

「…お前も家族だ(ファミリーパンチ)

 

「なあっ…!?」

 

 

綺麗にクリーンヒットをもらい、意識が飛ばされたディーラーが最後に見たのは、小柄な身体から伸びた黒い腕を自由に伸縮させこちらを見下ろす少女の姿だった。

 

 

「あれ、死んじゃった。…まあいいや。こいつ、私達に銃を向けた。ママになってくれないなら殺そう、ジャック」

 

「うん、殺しちゃおう」

 

「っ…」

 

 

ナイフを構え、モールデッドの影から襲い掛かってくるジャックと、黒く染まった腕を変形させて迫らせる黒い少女。

 悪夢で見た少女達を前に、たじろぐ立香を守る様に円陣を組むサーヴァント達。そして、考え得る限り最も最悪な組み合わせが容赦なく襲い掛かった。




ちゃっかり登場した癖に参戦しなかったアンリマユの出た理由はそのうち分かります。

怪奇オルガマリー所長の自室前焼身英霊事件の被害者となったネロの代わりに清姫が参戦。一体誰が犯人なんだ……

そしてやっとロンドン本格突入して前回と並行する藤丸side。立香の前情報のおかげでショックが少なかったりします。
所長と離ればなれとハプニングがおきながら遭遇してしまった悪夢の幼女コンビ。モールデッドという無駄に耐久力のある雑魚を引き連れた彼女達はいきなり強敵です。

「お前も家族だ」とよく分からない事をほざいた幼女に殴り殺されたディーラーはもはや様式美。彼女の正体(棒読み)とその能力や如何に。ちなみにこの通称ファミパン、一応宝具ではありますが彼女の宝具ではないです。

次回はオルガマリー、そしてロンディニウムの騎士との合流まで描きます。次回もお楽しみに!よければ評価や感想、誤字報告などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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