Fate/Grand Order【The arms dealer】   作:放仮ごdz

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ウェルカム!ストレンジャー…2018夏イベ鯖が一人も来なくて代わりにアキレウスが来て普通に落ち込んでいる放仮ごです。夏イベにバイオネタが割といっぱいあって嬉しかったです。ファミパン聖女すごく欲しい。

今回は長くなりすぎたのを分割したため何時もより短いです。これぐらいの長さなら定期的に更新できそう。VS魔神柱バルバトス、そして雷電降臨。楽しんでいただけると幸いです。


雷電降臨だとよストレンジャー

――――――私は、あまねく人々の救済を望んだ。正義の味方を志していた。最初は、そうだったはずだ。だが、魔術王に見せられた未来の私は何だ。生に縋り付き、多を貪るその姿は悪鬼その物ではないか。私の正義など、そこには無かった。我が王は、我が悪を見出した。人々を救わんとする私の中に潜む悪逆の醜さを。

 

それでもと、魔術王に抗おうと試みた。だが、すべては無為と知った。既に人々の生きるはずの世界は焼却された。過去も、現在も、未来も、我らが王は存在を許さないと決めてしまった。すべては未到達のまま滅びる。それでいいと、諦念し「魔霧計画」を主導し、イレギュラーが発生した際もその解決に尽力したと言うのに・・・!

 

 

「安心しろ。私が、彼の王の、そして貴様の望みを果たしてやろう。我が復讐の炎と共に」

 

 

殺された。あっけなく、私の生は、召喚してしまった怪物に貪り食われた。ヒルの餌とするためにアングルボダの傍に放置された。奴は、王の意思とは関係なく暴走を始めた。PとBを謀り「魔霧計画」を進めながらも、その失敗を恐れて自らの子を使ってゾンビを増量し、この時代を根本から破壊しようと目論んだ。無い頭なり(・・・・・)に考えたそれで、魔霧計画は逆に滞る事になったのだが、奴はそれに気付かない。盲目に、何かを目指して暴走していた。

 

そしてそれを、我が王は気に入らなかったらしい。我が骸に再び命を与え、邪魔者の排除と共に一気に魔霧計画を完遂せよと賜った。奴は突如舞い込んだ汽車に潰された。今しかあるまい。―――顕現せよ。

 

 

 

 

 

 

 

『これ以上の無様を、これ以上の生存を見るのは飽きたと、王は賜れた!ならばこそ、滅びた我が身を糧に破滅の空より来たれ。我等が魔神――――七十二柱の魔神が一柱(ひとはしら)。魔神バルバトス。これが、我が悪逆のかたちである!我が醜悪の極みを以てして―――――消え去れ、善を敷かんとするかつての私の似姿たち!』

 

 

アングルボダを傾かせつつ、パラケルススを飲み込んで現れた魔神柱。来たばかりで状況が飲み込めない立香一行であったが、オルガマリーはすぐにその正体に思い至り、声を投げかけた。

 

 

「藤丸!そいつが、多分、本物の「M」!魔術王の手先、マキリ・ゾォルケンよ!」

 

「魔神柱・・・ローマのレフ・ライノール・フラウロスと、オケアノスのフォルネウス・アビスと同等の魔力です、先輩!」

 

「・・・・・・今回は何か混ざってないのか・・・よかった。本物ってのはよく分からないけどやるよ、みんな!」

 

「先輩、言いたいことは分かりますが集中しましょう!」

 

『お前には無理だ!』

 

 

レフ・・・フラウロスと同じ、制圧攻撃が迫るも、立香は慣れた態度でマシュとアシュリーに命じて防いでもらい、攻撃が止んだ瞬間に構えていたディーラーとセイバーオルタ、そしてモードレッドが飛び出した。

 

 

「フォルネウス・アビスだったか・・・オケアノスのアレに比べれば、造作もない」

 

「商売は新鮮味が大事だ。新商品って響きは実にそそるだろう?それに比べちゃ面白味も無い量産物は粗悪品だ、売れ残り必至だぜストレンジャー」

 

 

ハンドガン・レッド9とマシンピストルを手に、触手を連射で迎撃しながら目玉を次々と撃ち抜いて行くディーラー。パターン化すれば、対処など簡単だった。生じた隙に黒い魔力を纏った巨大な斬撃を叩き込み、ディーラーの撃ち漏らした触手も斬って防ぐセイバーオルタ。洗練されたコンビネーションは、ジルにいいコンビだと称賛されるだけはあった。

 

 

「オラア!ブッ込み行くぞ!どこだか分からんが、ヘッドショットだ!」

 

 

そんな父の姿が気に入らないのか、魔神柱の上方に魔力放出(雷)でロケットの如く吹っ飛んで行き突貫。突き刺したクラレントをそのまま振り下ろし、電撃を帯びた巨大な切り傷を生み出してから降り立つモードレッド。ここまでくれば、もはや詰みである。

 

 

「お前を倒してアングルボダを叩き壊す!ただの人間が!死にぞこないの骸が!オレでない癖にブリテンを蹂躙するお前を俺はぜってえ許さねえ!」

 

「お前だろうと私が許さんがな。だが、そこまで言うなら見せてみろ。ブリテンの敵に対する貴様の剣を」

 

「ふん!上等だ、アーサー王。それじゃあ、蹂躙するか!」

 

 

弱り切った魔神柱の前で、背後にセイバーオルタとディーラーを控えたモードレッドは兜を展開、顔を出すと燦然と輝く王剣(クラレント)を両手に握りしめるとその鍔が変形し、剣身を展開。赤雷が迸るそれを高々と振り上げた。

 

 

「我は王に非ず、その後ろを歩む者。彼の王の安らぎの為に、あらゆる敵を駆逐する!」

 

「・・・ほう。愚息にしては、言う様になったな」

 

「いい剣だ。武器商人としての魂が疼く。魔神共と違い、英霊ってのは俺を飽きさせないなストレンジャー」

 

 

静かな凛とした表情で言ってのけたその言葉に、セイバーオルタは感心した声を上げる。青いのは気付いてないだろうが、この愚息は英霊となった事で、確かに何かが変わったのだと。

ディーラーも、これまで見て来た英霊達の武具の中でもとびっきりのそれに歓喜の声を上げた。彼は武器商人だ、いい武器に対しては正直に評価する。騎士王には悪いが、モードレッドが盗んだと言うこの宝剣は、彼女にこそ握られるべきだと、そう思ったのだ。

 

そんな、形は違えど内心認めてくれた二人に見守られ、モードレッドは邪剣に姿を変えた己が剣を力の限り、振り下ろす。

 

 

「此れこそは、我が父を滅ぼせし邪剣!」

 

『全てを知るが故に全てを嘆くのだ……焼却式 バルバトス』

 

「――――我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)!」

 

 

真紅の雷撃が、一直線に魔神柱に向けて放たれる。バルバトスも強力な怪光線を放つも、モードレッドの一撃には遠く及ばず。拮抗するどころか防ぎ切れず、跡形もなく消し飛び、その場にはマキリの姿は既になく、巻き込まれ気絶したパラケルススが倒れていた。

 

 

「魔神バルバトス、完全な沈黙を確認しました。私たちの勝利です」

 

「お疲れ様マシュ。あとはアングルボダを破壊するだけ、かな?」

 

「訳の分からん化物だったが・・・そんなに大したことは無かったな。おう、大丈夫かオルガマリー。それに青い方のアーサー王。どうした、ボロボロだぞ?」

 

「ええ、貴方達が来てくれたおかげで助かったわ・・・」

 

「ふん、大きなお世話です。・・・ですが、助かりました。礼を言います」

 

 

確認し合うマシュと立香に続いたモードレッドの言葉に、疲れた顔で応えるオルガマリーとアルトリア。直接相手しただけあって、ジルや清姫以上に疲労している。ディーラーはそれを確認するとハーブを用意しながら歩み寄る。

 

 

「お疲れ様だストレンジャー。単独行動とは、所長様にしては無茶をしたもんだな?」

 

「余計なお世話よ。通信が繋がらない上に、直ぐにでも塞がれる可能性があったから強行するしかなかった。その結果がこれじゃ笑えないけど。・・・今度は列車を吹っ飛ばしたの?藤丸、頭大丈夫?魔術師でもここまでぶっ飛んだ事はしないわよ?」

 

「酷い。これでも今いるメンバーで最適解を選べたと思ったんだけど・・・」

 

「最適解でしたが最良ではないと思います先輩・・・」

 

 

オルガマリーには頭を心配され頼れる後輩からも駄目押しされてあからさまに落ち込み、その場で体育座りしていじける立香。ちょっと涙を浮かべているところから割とショックだったらしい。

 

 

「ちょっと反省していなさい。それよりディーラー、一緒に来てくれる?」

 

「注文には応えるが、どうした?」

 

 

偶にはいいクスリになるとばかりに言いのけたオルガマリーは歩き出し、それに気付いたディーラーと共にパラケルススへと歩み寄った。

 

 

「・・・コイツは?」

 

「P、つまりパラケルススよ。女王ヒルの正体に気付いて反乱を起こしたみたいなんだけど・・・Bは貴方達が倒したんでしょう?聖杯を手に入れるためとはいえあの機械を壊したらどうなるか分からないから、起こして話を聞かしてもらおうと思って」

 

「俺の商品を使おうと。・・・また無料でか?緊急事態でも無い場合は商売したいんだがな・・・」

 

「分かってるわ。帰ったら私が払うから、救急スプレーをお願い。・・・・・・安いわよね?」

 

「今回は耐久戦ばかりで消費したからぼったくりたいところだが信用第一だ。お安くしとくぜストレンジャー」

 

 

言いながら、何時の間に作っていたのか包帯とハーブを組み合わせた「止血帯」を取り出しててきぱきとパラケルススの処置を始めるディーラーに、ジト目を向けるオルガマリー。準備万端じゃない、と目で訴えており、ディーラーは素知らぬ顔でニッコリ目だけで微笑む。

 

 

「・・・それは?」

 

「間に合わせで探索がてら入手しておいた包帯とハーブを組み合わせた止血帯だ。出血ならこっちの方が効果がある。ハーブ単体分だから救急スプレーより安価だ」

 

「あら、それはお得ね。・・・じゃなくて。意識は戻るかしら」

 

「さあな。清姫の炎でも近くで出したら誰でも起きるだろうよ」

 

「・・・貴方も藤丸に負けず劣らず酷い発想よね」

 

 

似た者同士の主従に溜め息を吐くオルガマリー。願わくば、マシュはずっと純粋なままでいて欲しい物だ。じゃないと自分の身が危ない、と。とある理由からマシュに苦手意識を持っているオルガマリーは身震いした。

 

 

 

そんな時だった。

 

 

 

 

「・・・アングルボダをすぐにでも壊さなかった、それが貴様等の敗因だ・・・」

 

「この声は!?」

 

 

 

 

 

マーカスを、否。女王ヒルを潰した列車が持ち上がり、次の瞬間入り口を塞ぐように投げ飛ばされる。凄まじい重量のそれを両手で持ち上げていたその姿は、まさに異形。人型の巨大なヒル。真の姿からマキリへと姿を変えた女王ヒルはさすがに体力を疲労したのかブルブルと震えながら言葉を紡いだ。

 

 

「もう、遅い。ロンドンに充ちた魔霧の量は既に充分に・・・さあ来たれ、我が野望を成し遂げる星の開拓者、最後の英霊よ。マキリ・ゾォルケン・・・貴様の魔術、使わせてもらうぞ」

 

「星の開拓者・・・さっきも言ってたけどそれってまさか・・・」

 

『なんだって!?それは不味いぞオルガマリー。オケアノスのドレイク船長、そしてこの私レオナルド・ダ・ヴィンチと同じだ!つまり、人類史においてターニングポイントになった英雄・・・それが星の開拓者だ。その時代で該当する人物はただ一人・・・!』

 

「汝、狂乱の檻に囚われし者・・・我はその鎖を手繰る者――――」

 

『不味い、今直ぐ止めるんだ!』

 

「「みんな!」」

 

 

マキリの続ける、英霊召喚の呪文に狂化をもたらす一文を入れた詠唱に反応したロマンの声に、立香とオルガマリーと、それぞれのサーヴァント達が反応。

アルトリア、セイバーオルタが一瞬で距離を詰めて斬り伏せ、二刀両断。上半身を三つに分けられたマキリに、飛び込んだマシュのシールドバッシュが炸裂して吹き飛ばし、清姫の炎とディーラーのシカゴタイプライター、立香とオルガマリーの銃撃+ガンドが追撃。容赦ない攻撃を受けて無残な姿になったマキリは壁に叩き付けられ、爆炎に包まれた。

 

同行組は誰一人加勢することなく、瞬く間に制圧したカルデアの面々だったがしかし、アングルボダの周囲に待機していたヒルが蠢いて複数のプロトタイラントを形作り、ネメシスが再び動き出したことにより失敗した事を悟り、それに気付いたジルとモードレッドを筆頭に同行組も身構えた。

 

 

「ふはは、無駄だぁ・・・例え日中と言えど、濃霧で覆われしこのロンドンで、貴様等に私を殺す術は、ない!―――汝三大の言霊を纏う七天!抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

 

ネメシスを先頭に編隊を組んで歩み寄るプロトタイラント五体が守る様にして、その後ろに彼は蒼い雷光と共に召喚された。身構えるカルデアの面々に蒼く輝く雷撃が襲い掛かり、咄嗟に前に出たマシュとモードレッドが防御。しかしその衝撃に耐え切れず、簡単に吹き飛ばされてしまう。

 

 

「アングルボダで増幅した聖杯の魔力、魔霧の力を集中させた。いわば神代の領域だ、まさに雷電神話。その程度の英霊共で勝てる道理は、ない!」

 

「私を、呼んだな。雷電たるこの身を呼び寄せたものは、何か。天才たるこの身を呼び寄せたものは、何だ?叫びか。願いか。愛か。善か。悪か。なるほど、人ならざる者にして「人」の英霊が私を呼びつけたと言う訳か。人類に新たな神話をもたらした者!インドラを超え、ゼウスさえも超えるこの私を!」

 

 

マーカスの姿で狂笑を浮かべた女王ヒルと並び立つのは、比類無き天才である絶世の美男子。現代のプロメテウスにして発明王エジソンの好敵手、ゼウスの雷霆を地上に顕した、壮絶にして華麗なる叡智の魔人。

 

 

「そのとおりだ。護衛は用意した。奴等に邪魔等させぬ。さあ、我が父の復讐を完遂させろ!ニコラ・テスラ!」

 

「ハハハハハハハハハハハハ!面白い!私は天才であると同時に奇矯を愛する超人である!ならば、よかろう!お前のそのふざけた他人本願な故に尊い願いのままに!天才にして雷電たる我が身は地上へ赴こう!」

 

 

自身の周囲に雷電迸らせるアーチャーのサーヴァント。真名、ニコラ・テスラは高笑いを上げ、掌から蒼い雷撃を次々と飛ばし、反応できなかったディーラーは避けることもできずに直撃。慌てて近寄ろうとしていた立香も余波で吹き飛ばされ、マシュに受け止められた立香の傍に新たなディーラーが出現。その場にいた全員がその力に戦慄した。

 

 

「雷を投げる・・・?Stranger.…Stranger(そいつは反則だ、ストレンジャー)・・・」




魔神柱なんてもはや雑魚である。一柱なら。

・マキリ・ゾォルケンの独白
絶望しながらも女王ヒルの真実を暴いていた有能。「王」の助力と執念でバルバトスになるも、相手が悪かった。今回の元凶にして被害者でもある。

・魔神柱バルバトス
採集決戦最大の被害者。ディーラー曰く新鮮味が無い量産物の粗悪品。レフはともかく、オケアノスのフォルネウス・アビスと戦った立香達の敵ではなかった。

・アーサー王二人に見守られた邪剣の一撃
新台詞が付いてからどうしても書きたかった一幕。今まで活躍できなかった分、ここからモーさん大活躍。

・パラケルスス
しぶとく生き残っているよかれな人。オルガマリーの考えでは「味方側」らしいが・・・?

・止血帯
リベレーションズ2のアレ。包帯は特異点で回収しないといけないためあまり使えない。

・不死身の女王ヒル
生前の末路から、とある方法を使わないと再生し続けるスキルを有している為、そう簡単に殺せない。自分で言っている辺りやはり頭は悪い。

・ニコラ・テスラ
原作の大ボスにして、今章の大ボスの「一人」。バイオ的な強化こそない物の、ボディーガードが付いているため難攻不落の雷電要塞。女王ヒルの事は好ましいらしい。


次回は地下での対テスラ防衛戦。次回もお楽しみに!よければ評価や感想、誤字報告などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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