Fate/Grand Order【The arms dealer】   作:放仮ごdz

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ウェルカム!ストレンジャー…どうも、本日7月23日を以てハーメルンでの初投稿から六周年となった放仮ごです。お久しぶりです。新作やらを投稿していてだいぶこっちの執筆が停滞していました。FGOのイベント多すぎない?

ついに本格的な特異点アメリカでのバトルです。今回は三人称と、途中から立香視点でお送りします。ようやく彼女と立香が再会(?)します。楽しんでいただけると幸いです。


クリミアの天使だとよストレンジャー

 レイシフトした立香達の周りでは二つの勢力が戦争していた。いや、戦争と呼べたものではない。

 

 ロンドンでも見たヘルタースケルターに酷似しているが剣ではなく機関砲を装備した色鮮やかな機械兵と銃を手にした人間の兵隊の一団を、古代の鎧に身を包んで槍を手にしたレトロチックな戦士の集団とリッカー、ハンター、スカルミリオーネ、そして鳥か蝶の様なB.O.W.、見上げる程の巨躯を持ち腰に兵隊の死体を複数ぶら下げたB.O.W.、歩脚も兼ねた4枚の翼を持つ巨大な蝙蝠のB.O.W.が蹂躙していた。

 

 戦士達も銃弾が当たろうがまるで怯まず、口から花弁のようなクチバシを出して兵隊に噛み付いたり、銃弾で頭部が吹き飛ばされると鉤状の突起の付いた肉の触手が飛び出して逆に兵士の首を刎ね飛ばす。

 

 それに対抗すべく兵隊側も機械兵団の軍勢や大砲が導入されているが、それを嘲笑うかのごとくネメシスのそれに似た防弾・防刃コートを着たタイラントが五体と、処刑人の様に頭に黒い布袋をかぶり身体に拷問されたような傷と釘がいくつも付いた巨体で大刃をくくりつけた巨大な斧を引きずった大柄な大男が数体出現。大砲を物ともせずに兵隊を薙ぎ払い機械兵を蹴散らし、大砲を叩き潰してズンズンと進軍してきていた。

 機械兵はリッカーやハンターの斬撃は弾けてもタイラントや巨人、大男の重量級の一撃には耐えきれず瞬く間に鉄クズと化していき、首から上が無い屍と鉄クズの山を踏み荒らして迫りくるB.O.W.の軍勢は悪夢でしかなかった。

 

 

「ば、バカな!ケルト兵でさえ容易に破壊はできない、閣下に頂いた強化外骨格ハードワークMk-2を物ともしないだとぉ!?」

 

「報告に在ったサーヴァントタイプでもないのにか!?」

 

「リッカ―、ハンターと呼称される奴らに対して強化外骨格が通用すると喜んでいたところにこれか!?馬鹿な、強すぎる!」

 

「ええーい、前線後退!援軍が到着するまで大砲で牽制しつつ後退である!急げ!奴等をできるだけ近づけるな!」

 

 

 機械兵があっけなく破壊されると、生身の兵隊達が慄きながらも後退していく。それでも機械兵は進軍し大砲はどんどん発射されているが、関係ないとばかりにB.O.W.が蹂躙していく光景に岩陰に隠れたカルデア一行はどうしたものかと動けずにいた。オルガマリーは二つの陣営の戦力を見比べ、戦況を把握すると近くに広がる森を指差した。

 

 

「この時代側…と思われる兵隊が後退してるわ、私達も急いで下がるわよ、よりにもよって二つの陣営に挟まれる位置で…来る!?」

 

「フォウフォウ!?」

 

「くそっ、マシュとアシュリーはマスター達を守れ!」

 

「こいつは洒落にならない数だぞストレンジャー!」

 

「ちいっ、ゲイボルクでもない槍じゃ致命傷にもならねえか…!」

 

「このままではじり貧だぞ、マスター!」

 

「この人たち、まるで正気を失った民衆の様だわ!止められない!」

 

「余と渡り合える強者までいるぞ!この者達、少なくとも神代の人種だ!」

 

 

 砲弾の雨を掻い潜って突進してきたスカルミリオーネをシカゴタイプライターを手にしたレオンが全身を吹き飛ばして迎撃し、空から飛来した小型飛行B.O.W.をディーラーがハンドガン・レッド9で撃ち落とす。

 

槍を手にしたクー・フーリンが飛びかかってきたリッカーを脳天から串刺しにして炎で燃やしてから打ち捨て、エミヤがハンターの脳天を次々と矢で射抜き、接近してきたB.O.W.は弓を捨てて手にした双剣で切り払う。

 

マリーが歌声による魔力の衝撃波で戦士たちを吹き飛ばし、ネロが大男の振るう大斧を斬り弾いて迎撃する。

 

しかしそれでもまったく減らず獲物だと言わんばかりに立香達に襲いくるB.O.W.の軍勢にたまらず逃げ出す一同。鈍間だからいいが、これにタイラントや巨人が加わったら洒落にならない。

 

 

「くっ…マシュ、みんな!一旦逃げるよ!所長!」

 

「ええ、一度退避よ!すぐそこの森に逃げ込みましょう!」

 

 

 マシュとアシュリーが防ぎ、自分たちも銃を手に応戦していたがタイラントの集団が近づいていることに気付くと迷うことなく逃亡を選んだ立香。アルトリアとセイバーオルタがいない今、タイラントとまともに渡り合えないと判断したのだ。オルガマリーはエミヤが担ぎ、迎撃しながら全速力で逃亡を図り、何とか森に飛び込むカルデアの面々。立香はいつものようにマシュには掴まらず、己の脚力でサーヴァントたちに追従していた。

 

 

「ガナード、それにエルヒガンテ…いや、違う!?プラーガがこんな日中に出てきて溜まるか!?なんだあのB.O.W.は!?」

 

「奴等はクリスたちBSAAのレポートにあったトライセル社が改良したプラーガで生み出された「マジニ」だ。ガナードと違って日中でも寄生体を露出させる。あのでかいのは複数寄生させて生み出した「ン・デス」。エルヒガンテとはしぶとさも強さも段違いだぜ武器商人。飛んでるのは「キペペオ」と「ポポカリム」。サドラーが死んでからもプラーガのサンプルを奪取したある男により改良されたプラーガのB.O.W.が生み出されている。…プラーガとの因縁は終わらなかったってことだ!」

 

「ディーラーよ、オケアノスで戦った魔女のプラーガとやらも日中に出て来ていたぞ?アレの同類ではないか?」

 

「そんなことより、なんでこんなたくさんの種類のB.O.W.が勢揃いしているのよ!?エミヤ、全速力よ!マリーの馬車を出している暇もないわ!あとなんで藤丸は普通についてきてるのかしら!?」

 

「いや、なんか…夢の中の数日で当たり前になってしまって…」

 

「ですがこれなら、先輩の守りに集中できます!」

 

 

 そう言って振り返りながら、飛んできた矢を盾で弾くマシュ。それを射た張本人であるレトロな装備のマジニは即座に、弾かれた矢を手にしたエミヤの返し矢で頭部を貫かれ、出て来た寄生体を、ディーラーから手渡されたレオンの手にしたスナイパーライフルで撃ち抜かれ消滅した。しかしゾロゾロと木々の間を縫うようにしてリッカーとハンターが迫り、その後ろからは弓矢を手にしたマジニが追従する。既にタイラントたちの姿は見えないとはいえ、追跡を振り切るのは困難だった。

 

 

「どうだストレンジャー、やっぱりレトロがいいだろう?」

 

「数がいる時にはセミオートライフルがいいがまあ言いたいことは分かる。商人、奴らの足止めになんかないか?」

 

「足止めならアンタのお得意だろうが。ストレンジャー、ここはレオンに任せて先を急ぐぞ」

 

「確かにアーチャーだから別行動は理想的だけど…レオンさん、大丈夫なの?!」

 

「ああ、奴らの相手は俺の専門だ!」

 

 

 そう帽子を押さえながら不敵に笑って足を止め、シカゴタイプライターを手に銃弾をばら撒くレオン。放たれた弾丸はマジニの脚を撃ち抜いて転倒させ、リッカーとハンターの頭部に当てて怯ませ、空を自在に駆って襲いくるキぺぺオは反動を懸念したのかシカゴタイプライターではなくハンドガンで撃ち落とす。手慣れた熟練の対応に感嘆の声を漏らした立香は、脚を止めてしまっていた。

 

 

「ッ、おいストレンジャー!足を止めるな!」

 

「先輩!」

 

「なにしてるの、藤丸!?そこは…!」

 

「はい?」

 

 

 すぐさま気付いたディーラーとマシュ、オルガマリーが警告の声を上げた物の時すでに遅し。運悪く、立香達に誘導されたタイラントの群れ目掛けて放たれた砲弾がすぐ側に着弾、咄嗟に跳躍した立香はキリモミ回転して吹っ飛び、眼前に迫った木に咄嗟に右腕を突き出して衝撃を緩和するもそのまま右腕が変に曲がって激突。意識を手放した立香の身体はさらに一回転して吹き飛び、何回か木々やら岩やらにぶつかってからクー・フーリンに受け止められて崩れ落ちた。色々飛んでいて見るに堪えない姿になった立香に一行が慌てる中、立香のポケットから転がり落ちた回復薬の瓶をディーラーが拾った。

 

 

「マスターは辛うじて生きてるがどうする、ディーラー!?」

 

「先輩、先輩…ああ、どうすれば…」

 

「ひとまずは拾って集めろ!ロンドンの事を考えればどうにかなるかもしれん!」

 

「でも集めている間に距離を詰められるわ!…レオン、任せられる?」

 

「おいおい。…切り抜けられないとは言わないが、泣けるぜ」

 

 

 気を失った立香を抱えたクー・フーリンにマシュ達が駆け寄る中、足止めを買って出た現代の英雄は、眼前に迫るタイラントの群れを前に立香達とは反対方向に走り出し、帽子を押さえて不敵に笑む。

 

 

「ほら、こっちだ!究極の出来損ない共!」

 

 

 シカゴタイプライター片手に大きな動きで帽子を上空に放り投げ、パフォーマンスするレオン。落ちてきた帽子をキャッチして再び被り、ビシッと無駄に様になるポーズを決めたドヤ顔のレオンに引き寄せられるタイラント達。彼のスキル「挑発効果」だ。パフォーマンスで注目を集め、護衛対象に向けられた敵の意識をこちらに向ける。そして、シカゴタイプライターを魔力に戻したレオンは代わりにロケットランチャーを取り出した。赤いロケット弾頭のそれは、ディーラーのそれとは違い歴然たる宝具であった。

 

 

「結局はこいつに頼る訳か。 これで終わりだ!よく眠りなよ。ファイア!」

 

 

 シカゴタイプライターを半日使えなくなる代わりに使用可能になる彼の宝具【朝日迎える必滅の引き金(ロケットランチャー)】がタイラントの一体に直撃。必然の如く装甲服ごと木端微塵に消し飛ばし、さらに余波で周りのタイラントの装甲服も剥がしてスーパータイラントに変貌されるも即座にディーラーが手にした閃光手榴弾を放り投げて目くらまし。タイラントの動きが止まった間にカルデア一行は逃走することに成功したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「患者ナンバー99、重症。どうすればこんな複雑骨折になるのか…右腕の負傷は激しく、切断が好ましい」

 

 

 あれ、なんで私…意識が…飛んでた…?確か、特異点に辿り着いた直後に…砲弾の雨とB.O.W.の群れに囲まれて、たまらず逃走した…はず。飛来する砲弾と、B.O.W.の群れから必死に逃げて、そして…レオンさんが足止めに出てくれて、それで…あれ、この、聞き覚えのある声は…?

 

 

「左太腿部損壊、右脇腹が抉れていましたが、共に運び込まれてから数分で自然完治。原因を突き止めたいところですがここは放置です。さて、では切断の時間です。本来なら医者の仕事ですが、何しろ軍医が絶望的に足りないので私が代行します」

 

「ちょっと待った待った!?」

 

 

 慌てて起き上がると、そこにはどこかデジャヴを感じる赤い軍服の様な物を着た赤みがかかった銀髪で赤い瞳の女性が立っていた。周りを見ると、テントの中らしく私の他にも負傷者が寝そべっている。野戦病院…?

 

 

「歯を食い縛って下さい。多分ちょっと痛いです。そうですね、喩えるならば腕をズバッとやってしまうぐらいに痛いです」

 

「待って。右腕が変に曲がっているのは分かる、それはいいけど切断は待って。多分きちんと戻せば治るから。私の異常な再生速度は見てるんでしょ?!」

 

「そんなの関係ありません。切ります。切らねばなりません」

 

「なにがなんでも切りたいのは分かったけど待って本当に待って!?」

 

 

 自力で戻せればいいんだけど生憎なんか左腕を拘束されていて何も出来ない。こうなったらできるかは分からないけど拘束を引きちぎるか!?もしくはこのこれ以上動かしたらどの向きになるか分からない右腕でこの人を殴ってでも止めるか!?そんなバカなことを考えながら必死に女性を制止していると、テントの外から見覚えのある鎧姿の少女が入ってきた。頼れる後輩だ。

 

 

「待ってくださーい!ストップ!その人は大丈夫です!」

 

「患者は平等です。二等兵だろうが大佐だろうが負傷者は負傷者。誰であろうと可能な限り救います。そのためには衛生観念を正すことが必要なのです。いいですね?そこを一歩でも踏み込めば撃ちますから」

 

「っ…銃で人を脅すなんて卑怯だと思います!」

 

 

 踏み込んでも無いのに撃ったぞこの医者(?)。はて、その手にある銃にも見覚えがあるようなないような。握ったことがある気もする。しかしマシュが怯えた顔をしているのでやめてほしい、と抗議しようと思っていたらそこにディーラーがやってきた。

 

 

「マシュ、落ち着け。お前はテントの外で所長達にマスターの無事を報せて待っていろ、ここは俺が何とかする」

 

「ディーラーさん…わかりました。先輩、お大事に。私は外で警戒しています」

 

 

 ディーラーに諭され、私の無事を確認して笑みを浮かべた後輩はそのまま出て行った。…マシュ、何かあったんだろうか。

 

 

「さて、それぐらいにしてくれないかメディック。さっきも言ったが腕を元の位置に戻すだけで大丈夫だぜストレンジャーは」

 

「何が大丈夫なものですか。砲弾と榴弾の直撃を喰らって手足が繋がっている方が奇跡です。薬草と包帯を提供してくれた貴方とはいえ、それは聞き入れませんよMr.ディーラー。本来ならば切断して余分なところに血が巡るのを防ぎたいのです。清潔にしていれば、感染症は防げます」

 

「いやだからだな?ストレンジャーの手足は吹っ飛んでたがくっつけて回復薬をジャブジャブかけたら元に戻ったから、多分捩れば元に戻る…」

 

「待ってディーラー。私の手足が吹き飛んだって何?」

 

「言葉通りだ。寝かせる場所が必要だったからここに連れてきたがここまでクレイジーだとは恐れ入った」

 

 

 詳しく聞こうと顔を向けたら青ざめた顔でさっとそっぽを向いたので、それはもう悲惨だったことが窺える。うーん、監獄塔で自覚したとはいえエヴリンになんかされた私の身体、どうなってるんだか。うん?監獄塔?……………あ。

 

 

「安心してください。私は殺してでも彼女を治療します。そう――――私はすべてを尽くしてあなたの命を救う!例え、あなたの命を奪ってでも!」

 

「結果と目的が入れ替わってるぞ!?」

 

「…滅茶苦茶だけど、分かる気はするよ。医療って時には問答無用なものだもんね」

 

 

 思い出した。この人、監獄塔で私が身体を使わせてもらった英霊だ。エヴリン視点の記憶で見た姿だ、目の色が違うけど間違いない。…アヴェンジャーの言っていた、過去現代未来で出会うってこういうことか。…ああ、じゃあ。私が押し潰された、「誰一人見捨てない」という思いはこの人の…ああ、思い出した。私はあの時、エヴリンを救うために宝具を使った、その真名は…。

 

 

「…フローレンス・ナイチンゲール。私は貴女を知っている(・・・・・・・・)。全力を尽くして治療する、それが貴女の信念だとも。でも、貴女も理性では判断できているはずです。私に治療の必要はないと。している暇があったら他を救うべきだと」

 

「……いいでしょう、貴女の治療は一旦保留とします。…先程の盾の少女にも思うところはありますし。ですが貴女の今の言葉はいただけない。まるで自分の命はどうでもいいから、他の人間を救ってくれと。そう言っているように見えました。他人の命にどうこう言いたいのなら、まずは自分の命を最優先になさい。自分が生きないと誰も救えません」

 

 

 止まってはくれたが、図星を刺されて言葉を詰まらせてしまう。ああ、監獄塔で魂を潰されそうになったからか、それとも価値観が真逆だからか、この英雄は苦手だ。言い返せなくて黙っていたところで、ディーラーが歩み寄って来て右腕を掴んでぐりぐりと捩ってはめ込んでくれた。これで治る私の身体はだいぶ人間をやめたらしい。エヴリンのおかげだろうか。

 

 

「これでいいか?ストレンジャー。しかし驚いたぞ、どこでこのメディックと知り合ったんだ?」

 

「ちょっとね…うん、問題なく動くよ」

 

「さあ、終わったら退きなさい!次の患者が来ます!」

 

「あ、はい!」

 

 

 ナイチンゲールに怒鳴られて慌ててテントの隅に寄ってディーラーにここがどこか聞いてみる。私が気絶した後、所長の指示で逃げた先にあったアメリカ独立軍の後方基地の様だ。あの時点でアメリカ側…ロボット兵がいた側は敗北していて、前線を後退させるべく撤退するアメリカ軍についていって所長が私の治療を頼んだらしい。本当に、私なんかと違って頼りになるなあ所長は。

 ちなみにB.O.W.を使役していた相手方の詳細はまだディーラーは知らないらしい。英国軍で無いことは確実だが。…英国と言えばナイチンゲールの出身地だっけ。関係ないかな。

 また、国旗が本来の物と違ったらしく、あのヘルタースケルターと酷似した機械兵といいアメリカ軍も様子がおかしいようだ。ウイルスの類を使ってないだけで私は安心だけどね。

 

 と、ディーラーから情報を得ながらマシュや所長達と合流しようとテントの外に出ると、アメリカ兵の一人が敵襲を報せに来ていて、例の機械兵はいなくて大砲で凌ごうと言うところらしく兵を募っていた。ちょうどそこに所長とマシュを始めとした皆の姿を見つけて、駆け寄った。

 

 

「マシュ!所長!」

 

「いいところに来たわ藤丸。腕は治ったわね?ここはひとまず私達も迎撃に出るわよ。今はアメリカ側に協力した方がいいと見たわ。B.O.W.を使用するあちらを無視できない」

 

「先輩、私達も戦いましょう。ここで前線を維持できなければ患者さんたちが…!」

 

「わかってる、マシュ!所長はここの守りを!私のサーヴァントたちで迎撃します!」

 

「頼むわ藤丸。…このバカのお守は任せたわよ、ディーラー」

 

注文(オーダー)には応えるぜ、マスターの事は任された」

 

「お待ちなさい。私も同行します」

 

 

 所長の許可を得て、マシュ、ディーラー、クー・フーリン、アシュリー、レオンさんを引き連れて迎撃に向かおうとすると、テントの中から出て来たナイチンゲールが私たちを呼び止めた。

 

 

「こう見えて戦いの心得はあります。なにより患者をこれ以上負傷させるわけにはいきません。例え完治していようとです。ドクター・ラッシュ!患者の扱いは先程の指示通りに!ここは我々の聖域です、このテントまで敵は来させません。いきますよ、ついてきなさいそこのマスターとサーヴァント!」

 

「は、はい!」

 

 

 何故かナイチンゲールに先導されてしまう私達。私はどうも、この人には極力逆らえないらしいと項垂れていると、私の前を走っていたディーラーがいきなり立ちどまり、振り返ってリュックの中からそれを取り出した。

 

 

「おっと、そうだストレンジャー。新装備ここで使うか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では治療の時間です。速やかに患部を切除します」

 

 

 B.O.W.の大軍と十数人のレトロ兵で構成された第一波…ハンターの群れとスカルミリオーネの一団と出くわすなり、自ら飛び込んでハンターの口に両手を無理やり入れてちぎっては投げを繰り返したかと思えば、突進してきたスカルミリオーネをサマーソルトキックで上半身を吹き飛ばし、残った下半身の脚を掴んでヌンチャクの様に振り回して電気を帯びた神経組織がレトロ兵を次々と感電させて薙ぎ倒していくナイチンゲール。B.O.Wを相手にすることにかけてはカルデア一であろうレオンさんでさえ惚れ惚れしている無双っぷりだ。

 

 そんな、ナイチンゲールの無双から逃れたB.O.W.を確実に倒していく私達。レオンさんの二丁拳銃とディーラーのサブマシンガンで動きを止めつつ、私とマシュとクー・フーリンで仕留めていくという戦法だ。アシュリーはいつも通り大軍の中に飛び込んで暴れている。

 透明になるハンター…ファルファレルロもいたが、姿を現して「首狩り」しようとしてきたところをレオンさんの速射(クイックショット)で怯んだところをマシュのシールドバッシュが叩き潰した。やだ、私の後輩頼もしい…!そんなことを考えていたら、いつもの様にハンターやレトロ兵を無敵の鎧で殴り飛ばして行くアシュリーから目を離してしまい…

 

 

「えっ、ちょっ!?」

 

「アシュリー!?」

 

 

 いつの間にかハンターに紛れてやって来ていたカエルの様な大口のハンター、ハンターyにアシュリーが丸飲みにされており、他のみんなは手が離せなかったようなので、私は背中に担いでいたディーラーの新兵器…お手製グレネードランチャーに自作の神経弾を装填し、発射。

 

 

「でりゃあ!」

 

「グエェエッ」

 

「ぶはっ!助かったわマスター!」

 

 

 神経ガスを浴びたハンターyが瞬く間に弱ったところに、拳を腹部に叩き込むとべたべたになった鎧姿のアシュリーが吐き出されるなり、アシュリーに頭部を殴りつけられて地面に叩きつけられハンターyはカエルの様に潰れた。

 ついでとばかりに、ナイチンゲールから逃れ、私がこちらの将だと判断したのか突進してきたハンターに続けて装填した焼夷弾を発射。ハンターは炎上し、苦しみながら黒焦げとなり倒れる。うん、ロンドンでジルさんが使っていた時から思っていたけど、色んな弾で色んな状況に対応できるグレネードランチャーは強いな。一発ずつしか装填できないのがたまにきずだけど。敵が隙だらけじゃないと早々使えない。

 

 ナイチンゲールに頭部を吹き飛ばされ、プラーガが飛び出たレトロ兵をハンドガンマチルダの三点バーストで仕留めていると、ドクターから通信が入った。サーヴァント反応を検出したらしい、それも二騎。ハンターたちを率いているらしく、どうやら味方じゃなさそうだ。現れたのは、美形の男サーヴァント二人だった。得物を見るにどちらもランサーだろう。ムカつくほどのイケメンだ。イケメンは嫌いだ、フレデリック・ダウニングみたいにいい顔している裏でどんな悪いことしてるか分からないもの。

 

 

「戦線が停滞するのも無理もない、サーヴァントと…ウェスカー殿と同じ時代の武器があるとは。名を残せなかった者達ではここが限界でしょう、今こそ我らの出番です我が王フィン・マックールよ」

 

「その様だなディルムッドよ。さて、それでは戦おう。なにせフェルグス殿の二の舞にはなりたくないからね!我らフィオナ騎士団の力、存分に彼らに見せつけよう!」

 

「御意。ではご婦人方、お覚悟を。我はフィオナ騎士団の一番槍、ディルムッド・オディナ。ゆくぞ!」

 

 

 そう言ってニ槍を構えた泣き黒子の男、ディルムッドに、不意打ちでクイックショットしてから飛び出したレオンさんのナイフとディルムッドの布が巻かれた槍が交差する。もう一本の槍が振るわれるかと思えば、アシュリーが飛び込んで鎧で受け止め、マシュはディルムッドの奥で優美に構える金髪の男…フィンの元へと向かった。

 真名を自分から敵にばらすのか。アルトリアみたいなTHE騎士みたいな人たちなんだろうか。するとここに来てから何故かフードを被って素顔を隠すようにしていたクー・フーリンが私に近づいて小声で言ってきた。

 

 

「どうやらやっこさん、俺と同郷の様だな。まさかと思っていたが、あちらの兵…ケルト兵か?」

 

「え?それは本当?クー・フーリン」

 

「おそらくだがな。とにかくここは俺に任せなマスター。槍で負ける訳にはいかねえからよ…!」

 

 

 そう笑みを浮かべるとディーラーお手製の槍を手にフィンに向けて駆け出した。…キャスターとランサーじゃパラメータ的にちょっと不安だけど、ここは任せよう。それよりも、クー・フーリンがケルト兵だという残りのレトロ兵なガナード…じゃなかった、マジニが問題だ。

 フィンとディルムッドに反応を示したもののこちらの方が重要だと判断したのか無双を続けるナイチンゲールと、私とディーラー以外の四人がサーヴァント二騎を相手にするわけだから、必然的にさっきまで六人でしていた対処を私とディーラーでやらないといけない訳だ。ナイチンゲール、クラスはバーサーカーなのかだいぶ倒し損ねていて、さらにはサーヴァントの対処もしたいのか動きが荒くなって無事な奴もちらほらやって来ていた。マシュ達に指示を出したいけど、ここを抜かせてしまったらキャンプが危ない。腹を括るしかない。

 

 

「さてストレンジャー。サーヴァントを四人に任せたからこいつらの相手をすることになるわけだが、大丈夫か?」

 

「首を斬られない限りは何とかなるから…!私だけ戦わせないとか、無しだからね!」

 

「だったら所長とマシュに怒られない程度に暴れろ、ストレンジャー!」

 

 

マチルダとナイフを両手に構え、ディーラーの援護射撃を背後からもらいながら私はB.O.W.の群れへと飛び込んだ。この時の私はとても生き生きしていたと後のディーラーは語る。

 

 

―――――ああ、私が求めていたのはこれなのだと、監獄塔に続いて実感した。




キャスニキを召喚した時点で五章に参戦させない訳がないよねって。いきなり無茶ばかりする立香さん。分かる人には分かりやすく説明すると立香は火野映司。ナイチンゲールは伊達明です。共闘は出来るけど相容れない。


・B,O.W.軍団Inケルト軍
ケルト兵が素体のオリジナルB.O.W.「ケルトマジニ」、ちょっと特別性のリッカー、そして通常のハンター、ファルファレルロ、スカルミリオーネ、新登場のキぺぺオ、ポポカリム、ン・デス、処刑マジニ、量産型タイラント、ハンターyと原作以上に過剰戦力なケルト軍。前々回登場している例のアイツが本気を出してきています。正直、ゲームでいっぺんに出されると軽く絶望する面子じゃなかろうか。

・大混乱のディーラー
マジニやら「5」から登場したプラーガのB.O.W.の存在をディーラーは知りません。ディーラーが死んだその後に現れているので。これまでと違い、レオンの知識だけが頼りです。

・パワーアップ立香さん
サーヴァントたちに脚力で追いつき、砲弾で手足がもげても前回作っていた回復薬で治り、変に曲がった腕も無理やり戻し、ハンターyをぶん殴ってアシュリーを吐き出させるという超人立香さん。監獄塔の邂逅でエヴリンの真菌の存在に気付いているので、あまり動揺はしていない模様。逆に守られる必要もなくなって嬉しい。あとフレデリック・ダウニングのせいで変に笑顔ばかりのイケメンは大嫌い。

・レオンのスキル「挑発効果」
ゲーム的に言えば三ターンのみターゲット集中+確率で回避という破格の性能。元ネタは原作バイオハザード4スペシャルコス2でのシカゴタイプライターのスタイリッシュリロード。隙だらけなため敵の注意を惹きつける。見た目がスペシャルコス2なのはそのため。

・レオンの第一宝具【朝日迎える必滅の引き金(ロケットランチャー)
チートな基本武器であるシカゴタイプライターを半日使えなく代わりに一発だけ使用できる最終兵器。必殺宝具であり、当たると確実に殺すことが出来る。台詞はPXZ2から。

・本人初登場ナイチンゲール
監獄塔で立香の意識を押し潰して若干変えた張本人。立香の超人な回復ぷりに驚きつつも治療を止めない鋼鉄の白衣。自分をないがしろにしながら周りだけ守ろうとする立香との相性は最悪である。今回の裏で交渉したオルガマリーの方が相性はいい。人体理解のスキル持ちであるため、人がベースだったり人型のB,O.W.相手には無双する。

・新装備グレネードランチャー
バイオハザード7仕様の、カルデアの倉庫のガラクタでディーラーが作ったお手製グレネードランチャー。ロンドンでのジルを参考にして作成した。所持しているグレネードを利用した特殊弾も同時に開発。立香も独自に神経弾を制作した。一発ずつなため連戦には向いていないが、あらゆる状況に対応可能な武器である。ちなみに、ナンバリング作品ではレオンは一度もグレネードランチャーを使用していなかったりする。

・ハンターy
バイオハザード3に登場するみんなのトラウマ。一見ハンターには見えない外見と、即死技「丸呑み」で殺されたジルは多数。

・フィンとディルムッド
何も改造されてないお二方。ウェスカーを知っている模様。フェルグスの二の舞になりたくないとのことで、激突する。実はこの二人を最初から改造するかどうかで迷って無駄に時間がかかりました、はい。


今回、明らかにクオリティが下がっていたことをここにお詫びします。次回、大統王とレオンの邂逅。次回もお楽しみに!よければ評価や感想、誤字報告などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。むしろ感想くださいお願いします。

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