Fate/Grand Order【The arms dealer】 作:放仮ごdz
今回は大統王、そしてコサラの偉大な王に最強の傭兵と新キャラが続々登場。楽しんでいただけると幸いです。
「私こそがサーヴァントにしてサーヴァントを養うジェントルマン!大統王トーマス・アルバ・エジソンである!」
「アダム!?」
「パパ!?」
「おお、我が友レオンに我が愛娘アシュリーではないか。君達がサーヴァントとして現れて心強いとも」
エレナさんの説明によると現在のアメリカの状況はこうだ。曰くただ滅ぼすしか能がない野蛮人なケルト人の東部と、エレナとカルナたちアメリカ軍を率いるアメリカ西部合衆国の、全く未知の二つに分離して絶賛内戦中の南北戦争ならぬ東西戦争。それがこの特異点アメリカを襲っている異変なのだという。
しかし当初はまだ真面だったケルト側がB.O.W.を持ち出して来て戦線は混沌を極め、トップクラスのサーヴァントであるカルナがいても数と質の暴力で蹂躙されアメリカ側は敗色濃厚らしい。
そして、エレナさんとカルナの言う王様が勝った場合、どこの次元からも分離した大陸となって彷徨い続けるのだという。救いはあるだろうがそれは、アメリカ以外を見捨てて切り捨てるということだ。カルデアとしては看過できない。絶対にノーだ。そうオルガマリー所長が言ったところ、エレナさんに敵とみなされてカルナをけしかけられて、戦力差を悟った所長が降伏。王様に出会ってからどうするか決めろと言われ、連れてこられたアメリカにあるまじき城塞で出会ったのは、発明王を名乗る白いライオンの頭部を持つスーパーヒーロー染みた赤と青のスーツを纏った異形の大男。それを見るなり、知り合いにでもあったように声を上げるレオンとアシュリーに親しげに話しかけるその声は、すごい声量だけど見た目に反して理性的であった。
「…アンタはアダム、なのか?いや、だが…アシュリーはグラハム大統領だと…」
「ラクーン事件の全てを話す…私の悲願は果たせなかったね、レオン。だが我々はこうしてまたアメリカのために立ち上がった。私は、トーマス・アルバ・エジソン。アダム・ベンフォードでもあるし、アシュリーの父親でもある。アメリカという国家を支えた歴代大統領が「エジソン」という概念を補強する一種の礼装として使われているのだ。此処にいるのはエジソンであるが、大統領たちとも言える」
だから大統王なのかと納得する。しかし話を聞いていくと、アメリカを生かす為なら手段を選ばず、人間の限界を無視して機械化兵団を酷使して世界を救おうとしている。機械化兵団は元は国民らしい。…それは、プラーガでガナードを作って兵士にしていたサドラーと何も変わらないのではないか。
「単刀直入に言おう。マスター達よ。四つの時代を修正したその力を活かして、我々と共にケルトを駆逐し聖杯を奪い取るべきではないか?アメリカを永遠に生かすのだ」
「それは…」
「所長、ごめんなさい。…大統王。貴方のやっていることはアメリカ嫌いのサドラーと違わない。嫌な予感しかしない。それは、看過できない」
「藤丸!?」
「…藤丸立香。私も貴方と同意見です。その目をした人間は、必ず全てを破滅へと導く!そして最後に「こんなはずではなかった」と無責任に宣まうのだ!例え他の人間が承諾しても私が許しません!」
私の人生、ナイチンゲールの人生、二つの人生からの結論を述べる。同意するナイチンゲールに頷く。例え正しく見えようと、それは間違っていると断言できる。理性的に考えればひとまず手を組むのがいいんだろう。所長はそうしていたはずだ。だけど、こればっかりは看過できない。
「…意外と言えば、意外な答えだ。裏で何を策すにせよ、共闘は承知すると思っていたが。その誠実さ、真摯さ。トーマス・アルバ・エジソンとしては許すべきなのだろう。しかし、残念だ。例え友が、娘がいようと。大統王としての私はお前たちをここで断罪せねばならん。…やれ!」
「そう来ると思った!」
命令が下るなり、所長に襲いかかろうとした機械兵を渾身の飛び蹴りで蹴り飛ばす。頭部がひしゃげたガラクタが崩れ落ち、それを合図に囲んでいた機械兵をディーラーとレオンのシカゴタイプライターが蜂の巣にし、それでも突進してきた機械兵はアシュリーの鉄拳で潰され、ネロとエミヤに斬り伏せられる。理解が追い付いてないらしい所長以外の皆は既に戦闘態勢だ。レオンとアシュリーには酷だが、サドラーと同じと言った時に覚悟を決めた顔をしてくれた。感謝しかない。
「所長、しっかりしてください!」
「マシュ、私はいいから所長を守って!みんな、ここから脱出するよ!」
グレネードランチャーの硫酸弾で退路を切り開きながら叫ぶ。次から次へと現れる機械兵全てを相手にする必要はない。一度逃走して、体制を立て直す。問題はカルナだけど…
「させん…!」
「それはこちらの台詞だ。
対の中華剣を投影したエミヤが剣を投擲すると同時にカルナの目の前で大爆発させて妨害。確か、投影した宝具を自壊させた魔力を利用した
「我が自慢の機械歩兵がサーヴァントのみならずマスターの少女にさえ負けるだと!?お、お前は一体何者だ!?」
「通りすがりのただのマスター、アメリカの生んだ負の遺産、だよ!」
吠えるエジソンに、機械兵を文字通り蹴散らしながら言い返す。バイオハザードを生んだのは間違いなくアメリカだ。エヴリンの特異菌に感染した私はその末路と言っていい。なんか別の力も起因している気がするけど!
「おのれ、逃がすな!」
「出口がないなら作るまで!ディーラー!手榴弾ちょうだい!」
「何考えてるか知らんが、受け取れストレンジャー!」
ディーラーから投げ渡され危なげなくキャッチした手榴弾を、窓の横の壁に向けて投擲。ハンドガンマチルダで狙い撃ち、爆発。大きな穴を作り上げる。こんなに呼び寄せて、まさか外にまで配置しているはずがないでしょう!
「みんな、こっち!婦長も来て、今はその時ではない!」
「ええ、いいでしょう!」
「えっ、え?」
「させん!」
「マシュ!お願い!」
「はい、先輩!」
混乱に次ぐ混乱で動かなくなった所長をお姫様抱っこで抱き上げ、襲ってきたカルナをマリーの歌声の援護でマシュが防ぎ飛ばした隙を突いて飛び降りる。
「マリー!」
「ええ、立香!私達のマスターをしっかりお願い!」
そして展開された共に飛び降りたマリーの展開したガラスの馬車に飛び乗り、サーヴァント達も全員乗り込んで走り出し、逃走に成功した。
「…まさか、逃がしてしまうとはな」
「すまない。油断した。カルデアは恐るべき相手だった」
「あのマスター、とんでもなかったわね…」
「はあ、はあ、逃げ切った……?」
「そのようね。…しかしやってくれたわね藤丸」
砦からしばらく走った先にあった町の側で止まった馬車から降りて追手がいないことを確認。同じく確認していた所長に邂逅一番お叱りを受ける。
「すみません所長。でも、サドラーみたいな人間と協力することはできません」
「わかっているわよそれぐらい…でもね、もし捕まっていたらどうするつもりだったの」
「どっちにしろナイチンゲールは承服しませんでしたよ。私から断った方がいい」
「私のため、ですか?」
「うん。まあ絶対協力はしないんだけど、もし私達だけ協力してもナイチンゲールだけは拒否していたでしょ?私は絶対貴方を見捨てない」
「…少し、誤解していた様です。愚かだと他の誰かは思うかもしれませんが、貴方の振る舞いは誰に卑下することもない高潔なものです。藤丸立香」
どうやらちょっとナイチンゲールに認められたらしい。今までの印象とは大きく異なる優しい笑みが、とても美しかった。
「しかしあの数は反則だがこっちのストレンジャーの判断力が勝ったな。あそこで飛び蹴りとは恐れ入ったぞ」
「同感だ武器商人。だがあれは英断だった。初手を間違えればあっという間に包囲されて捕まっていただろうからな」
「ディーラーにレオンまで言うなら仕方ないけど…これからどうするのよ。さすがにこの面子だけで二つの軍と戦うのは無謀というものよ。ロマン、なにか策は?」
『もちろんない。万策尽きたと言ってもいい。サーヴァントは一騎で軍隊とも戦えるけど、あの二軍は異常だ。片や機械の歩兵。片や古代ケルトの兵隊を素体にしたと思われるB.O.W.正直、現代の戦争に出されたら蹂躙できる戦力だ』
『しかも現在療養中のアルトリアとも互角に渡り合えるタイラント級がうじゃうじゃといる。慣れているレオンがいると言っても、正直カルナが味方だと頼もしかったんだけどねえ』
「…なんか、すみません」
カルデアの二人に苦言を呈され、さすがにちょっと罪悪感を抱いて項垂れる。…そうだ、相手は軍隊。これまでの様な烏合の衆とは違う。すると、誰もいなかった所長の背後から黒人が姿を現し立っていた。
「…まあ、無茶ではあるな」
「サーヴァント!?先輩、所長、離れて…!」
「まあ待て。私は敵ではない。そうだな、名を明かさねば信用もされまい。だが私の真名を知る者は誰もいまい。故にこう名乗ろう。ジェロニモ、そう呼んでくれ」
「ジェロニモ…アパッチ族の
「厳密には精霊使いとは程遠い存在だがね。私はただの戦士でしかない」
「…なら貴方はエジソンに従うはずがないわね。それにケルト側とも思えない」
「ああ、私は君達の敵ではない」
ジェロニモと名乗ったそのサーヴァントが言うには、自分はカウンターとして召喚されたサーヴァントであるという事。他にも仲間がいるが戦力不足で迂闊に動けないこと。他にも様々なサーヴァントが召喚されているであろう事。そうこう話しながら彼の道案内で辿り着いたのは、西部の小さな町だった。ケルトの猛攻のせいで町人は避難しているらしく、ジェロニモの同胞が集結しているとのことだ。サーヴァントだけでなく、ごく普通の人間の兵士たちもいた。
そして運ばれてきたのは、重症の赤毛の少年サーヴァント。ナイチンゲールとディーラーに治療してほしいらしい。…私も腹部ごっそり抉られたことがあったけど、何で生きているのか不思議なくらいの重傷だ。
「ひどい…」
『心臓が半ば抉られているじゃないか!?よく生きているな、彼!?』
「まあ…頑丈なのが…取り柄だからな…」
「…ストレンジャー。こいつは俺のハーブや救急スプレーじゃ無理だ」
「ええ、私もこんな傷は初めてです。ですが、見捨てることはしません。安心しなさい少年、地獄に落ちても引き摺り出して見せます」
「あ、イタタタタ!き、貴様もうちょっと手加減できんのか!?余は心臓を潰されているのだぞ!」
「心臓潰されて喋ってる方が驚きだけど…諦めた方がいいよ。あ、切断はなしねナイチンゲール」
「余は切断されるのか!?」
「むっ…貴方には借りがありましたね。ならば尽力させていただきましょう」
「礼を言うぞ、そこのマスター。余はラーマ!コサラの偉大なる王である!」
ラーマ…確か、インド神話ラーマーヤナの英雄の名だ。そんな大英雄がここまでやられる相手…それほどか。そしてナイチンゲールが言うにはもうほぼ手遅れの状態らしく、追いかける死の速度を鈍くはできても止めることはできない、とのこと。それでも諦めないナイチンゲールには頭が上がらない。
「だけど…一体、誰と戦ったらこんな深手を負うの?カルナかしら?」
「カルナ…我が祖国の大英雄たる彼ではないさ。だが仕方あるまい…何しろ相手は…クー・フーリン。アイルランド最強の英雄だ」
「なんだって?」
その言葉に一斉にキャスターのクー・フーリンに振り向く私達。当の本人は予想していたのか神妙な顔だ。
『うぁぁ…いるよなあ、メイヴ、フィン・マックール、ディルムッドとケルトの戦士たちが相手なんだから、絶対いるよなあ』
「女王メイヴの反応から予想はしていましたが…」
「クラスはランサーかしら。その傷からしてゲイ・ボルクを持っているとして…キャスターのクー・フーリンだと相手が悪いわね」
「ちっ、余計なお世話だ。だが、それだけじゃないだろう。あのメイヴの反応だともっと悪い」
「その御仁もクー・フーリンか。同じサーヴァントが同じ聖杯戦争に召喚されることもあるとは聞くが…不思議なものだな。だが、そこの彼とはまるで違う。奴は…怪物だ。クリス殿と分断されたとはいえ、一対一でこの余が、完全に敗北してしまった」
「クリスだと?」
その名前に反応したのはレオン。クリス、その名前って確か…すると、ジェロニモの背後から一人の男がやってきた。黒いコートを身に包み、薄い赤髪で悪そうな顔だがその手に持つ食べかけのリンゴがその印象を緩和する。その男を見てさらに驚くレオン。知り合いかな…?
「そうさ、レオン。あの野郎が捕まったんだとよ」
「お前は…ジェイクか!」
「ああ。ライダーのサーヴァント。ジェイク・ミューラーだ。よろしく頼むぜ、マスター殿?」
ジェイク・ミューラー。彼の存在が、この第五特異点を引っ掻き回すことになることを私達はまだ知らない。
バイオ6の主人公の一人、ジェイクが参戦です。レオン、そして今回名前が出たクリスが出たら表の主人公勢ぞろいですね。
・大統王エジソン
6での大統領アダムと4での大統領グラハムが融合しているバイオ世界ならではの大統王。レオンとは友人でアシュリーの父親、もう訳が分からないことになってます。
・立香VSエジソン
そんなエジソンをサドラーと同じだと断じ、敵対する立香。ナイチンゲールの記憶を知っているからこそ、一番の理解者としてふるまいます。飛び蹴りで機械兵を蹴り飛ばし、グレラン片手に大暴れ。こいつ1人でいいんじゃないかな?台詞は某世界の破壊者から。
・ジェロニモ
原作とは異なり助けに来る理由がなくなってしまったため普通に合流したキャスターのサーヴァント。
・ラーマとクー・フーリン
カルデアのキャスターのクー・フーリンとは異なる怪物と称されるクー・フーリンに腹部をごっそり抉られる重傷を負わされたラーマ。前回のメイヴの台詞から何となく察していた我らがキャスニキ。彼の存在がどう影響するのか、こうご期待。
・レオンとジェイク
お姫様の保護者と、愛娘の騎士様。この二人の関係性と信頼がなんか好きです。そして捕まっているクリス。彼らが揃うのは何時なのか。
次回、ジェイクと立香の共闘。次回もお楽しみに!よければ評価や感想、誤字報告などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。むしろ感想くださいお願いします。