サッカーバカとガールズバンド(仮題)   作:コロ助なり~

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第9話

いつものように部活に励んでいた時のことだ。

グラウンドの片隅でウロウロしている挙動不審な少女が目に入った。

 

あれ? なんであの子がここに?

 

少女は俺と目が合うと不安そうな表情が明るなり(恐らく俺に向かって)手を振って来た。

俺も手を振り返したいところのなのだが、生憎今は練習中だ。

 

どうしよ……。

 

『桜木(先輩)ー! あの美少女との関係はなんだ(ですか)!?』

 

「うおっ!」

 

どう反応したらいいか困っていたら部活の先輩・同輩・後輩・マネージャーのキャプテンを除く全員に問い詰められた。

息が合っていて部活内での仲が良さそうでいい事だとは思うのだが、練習を止めると監督やキャプテンに怒られること間違いなしだ。

 

「おい、お前ら! 練習に集中しろ! それから桜木、監督が呼んでるぞ」

 

早速キャプテンから言伝をいただいた。

 

「俺が怒られるのか……」

 

重い足取りで監督の下に向かった。

 

「桜木、あの子との関係は?」

 

監督も部員達と同じなのか!? と一瞬思ってしまったが監督に対して変な態度は取れない。

 

「友達……? いや、知り合い……です」

 

連絡先知らないし、そこまで仲が良いとは思ってない。知り合いぐらいが妥当だと思う。

 

「そうか。今は練習中だから休憩中に行ってやれ」

 

「わかりました」

 

まさかのお咎めなしで練習に戻された。それどころか、休憩中に行ってこいとは予想外だ。

 

まあ、花音の性格というか雰囲気を考えれば心配になるか……。

 

そんなことを考えながら練習に戻り、彼女には両手を合わせて謝るジェスチャーをしておいた。

 

 

 

 

 

「こんなところで何してるの、花音?」

 

休憩時間になると真っ先に彼女の元に向かった。

花女の制服を着ている水色の髪をサイドポニーにした少女―――松原花音。

 

「助けて、遥君!」

 

俺が話しかけると、涙目になって助けを求めてきた。

 

「助けるのは構わないんだけど、何をしたらいいの?」

 

「み、道に迷いました……」

 

花音の困っている理由に思わず項垂れてしまう。

実は彼女、かなりの方向音痴だ。

俺も機械音痴というのを持っているから彼女の苦労はなんとなく理解できる。

 

「スマホで地図は調べられないの?」

 

「今充電がなくて……」

 

となると連絡を取る手段もないことになる。

 

「花音はこの後に予定はある?」

 

「ないけど……それがどうかしたの?」

 

「俺の部活が終わるまで待てる? 出来るなら家まで送る」

 

俺が千聖に連絡出来ればいいのだが、生憎連絡先は持ってないし、仕事だったら心配をかけるわけにはいかない。

 

「で、でもそんなの悪いよ……!」

 

「そうでもしないと花音が帰れないでしょ?」

 

「うっ、それは……」

 

図星を突かれて花音は言葉を詰まらせた。

これ以上何も言わなくても彼女は反論しないだろう。

 

「はい、決まり。あと一時間もしない内に終わるからその間はベンチで見てて」

 

監督に話を付けておけば大丈夫だと考え、早速花音を連れて監督に頼み込んだ。二つ返事で了承してくれて、マネージャーがいる近くのベンチで見学となった。

 

 

 

 

 

「ありがとね、遥君」

 

練習後に寄ってたかって花音との関係を聞いてくる部員達を巻き、花音を送るために学校を出た。そんな帰り道の途中で花音からお礼を言われた。

 

「花音の方向音痴はわからないでもないから」

 

「あ、そっか。遥君って機械音痴だっけ?」

 

「そうそう。……ってなんで笑うの?」

 

「ご、ごめんさい! そういうつもりじゃなくて! ……ただ、サッカーしてる時とそうでない時の差が可愛くて、つい……。それに私達二人共音痴だから親近感が湧いちゃって」

 

花音が話してくれた理由を聞いている内に俺もなんだか可笑しくなって笑えて来てしまった。

確かに機械音痴と方向音痴は両方とも音痴だ。

それにしても前から思うのだが、サッカーしてる時とそうでない時の差が俺自身今一ピンとこない。

 

「あのね、サッカーをしてる時はなんていうか……憧れちゃうんだよね。誰よりも楽しんでいて、かっこよくて、気が付けば目で追ってる自分がいるんだ」

 

「そうじゃない時は?」

 

「うーん、しいて言うなら……どこか抜けてる感じがする、かな?」

 

「あー……なるほどね」

 

サッカーをしている時の俺については「?」という感じだったが、そうじゃない時の抜けているというのはなんとなくわかる気がする。

周りの人曰く、“天然”らしい。

 

「でも、そう言う花音もいつもどこか抜けてない?」

 

「そ、そんなことないよ! …………多分」

 

「はっきり否定しないんだ」

 

「自分では大丈夫って思ってても、千聖ちゃんにどこか抜けてるから心配だってよく言われるから……。今日だって千聖ちゃんがお仕事で一緒に帰れないからすごく心配されて」

 

その話を聞いて千聖が花音の母親に思えてきた。

元々、花音のオドオドした性格は花音が美少女ということも相まって、周りからすれば庇護欲をそそるのだ。

花音が一人っ子だと聞いているが、もしも兄か姉がいたら、その人は世間一般的に言うならブラコンとかシスコンになるだろう。

 

「実際に千聖の懸念通りになったわけだ」

 

「……今日のことは千聖ちゃんにはナイショにしてくれないかな? 聞かれたら千聖ちゃんが―――」

 

 

 

「私がどうかしたのかしら、花音?」

 

 

 

「ち、千聖ちゃん!?」

 

声のした方に振り替えれば、たった今話に出ていた千聖がいた。

手入れの行き届いたパステルイエローの長髪に、凛とした佇まいが上品な雰囲気を醸し出していてる少女―――白鷺千聖。

幼少の頃か子役としてドラマや映画に出演する女優だ。今はPastel*Palettes(パステルパレット)というアイドルバンドにも所属している。

 

花音は千聖に聞かれたくなさそうだから、ここはなんとか誤魔化そう。

 

「今日はお仕事?」

 

まずは日常的なことを話題にして話を逸らす。

 

「ええ、そうよ。……それよりも先程私の名前が二人の会話に出ていなかったかしら?」

 

「俺達の共通の知人って言ったら千聖だから、自然と千聖の名前が出るのは仕方ないんじゃないかな?」

 

「それもそうね。変なことを聞いてしまってごめんさい」

 

何とか上手く誤魔化せたみたいだ。

内心でホッとしていると千聖が俺達に並んで歩き出した。

 

「ところで、どうして二人が一緒にいるのかしら?」

 

『!?』

 

再び歩き始めて僅か3秒で立ち止まった。

全然話題は反らせてなかった。

 

ま、マズい……。このまま答えていたら、最終的には花音が道に迷ったことを知られちゃうんじゃ……。

 

「た、たまたま帰り道で会ったんだよ!」

 

「たまたま? 二人の家は反対方向じゃなかった?」

 

早速花音が自爆した。

千聖は春休みの時に俺の家に来ていたことがあったからすぐに気が付いたのだ。

 

「(花音!?)」

 

「(遥君の家の場所なんて知らないよ! それよりもなんとかフォローして! あと今度家に遊びに行ってもいいですか!?)」

 

「(無茶振りにもほどがある! それと最後のは今言うことじゃないよね!?)」

 

千聖がいるので花音とアイコンタクトを取る。

 

「今日はリサから買い物を頼まれててさ、ここら辺にあるスーパーに行こうかなって。そしたら花音に出くわしたんだ」

 

もちろん嘘だ。スーパーに行く予定もないし、場所だって近所のしかわからない。我ながらよくこんな嘘が口から出るもんだと感心してしまう。

 

「スーパー? それならもう過ぎているわ。戻らなくていいの?」

 

そして俺も自爆した。

 

「(遥君!?)」

 

「(スーパーなんて近所のしか行かないからこの辺のは知らない! 悪いのは近くにないスーパー!)」

 

「(言ってることすっごく理不尽だよ!)」

 

「花音との会話に夢中で気が付かなかったみたい。アハハ……」

 

「も、もうっ、遥君ったらおっちょこちょいだね!」

 

チラリと千聖の様子を窺ってみた。

 

「…………」

 

半眼になって俺達が何かを隠してると疑っていた。

 

「(全然誤魔化せてないんだけど!)」

 

「(流石千聖ちゃん……。私、女優のあなたを侮っていたみたい……!)」

 

「(なんで主人公を強敵認識するライバルキャラみたいになってんの!?)」

 

「ねぇ、あなた達さっきからおかしいわよ」

 

「そ、そそそそんなことはないんじゃないかなぁ?」

 

花音、動揺し過ぎ!

 

「うんうん! 千聖、気のせいだって。疲れて神経質になってるだけじゃないかな?」

 

「今日は打ち合わせだけで疲れるようなことは何もしてないわ」

 

今日の仕事はそれだけ!? いや、ここから仕事の様子でも聞けば逃げ切れる!

 

「他のメンバーの様子はどう?」

 

「どうもなにもいつもと変わらないわ。彩ちゃんは空回りすることが多いけどレッスン頑張ってるし、日菜ちゃんは演奏は凄いけど遅刻魔だし、イヴちゃんは相変わらず武士道だし、麻耶ちゃんは機械いじりに夢中」

 

個性的なメンバーであることはとりあえずわかった。

そこから何とか話題を変えることが出来て、次に行われるイベントや新曲を練習中だと聞かされた。

 

「あ、私の家この近くだからここでさよならだね。バイバイ」

 

自然に会話が出るようになっていたらいつの間にか花音の家近辺まで来ていたらしい。俺達に別れを告げるとそそくさと走り去ってしまった。

無事に帰れたのだから良しとしよう。

 

「……あの子、ホントは道に迷ったんでしょ?」

 

二人だけになった途端に千聖が言い放った。

 

はい、全部バレてました。

 

俺達が頑なに話さなさそうだと思って内心呆れながらも話題を変えなかったのかもしれない。

 

「花音を送ってくれてありがと、遥君」

 

「どういたしまして」

 

「さ、私達も帰りましょうか。花音を送って私を送らないわけないわよね?」

 

要するに送れということだ。わざわざ遠回しに言わなくても断るつもりはない。リサや友希那は遠回しどころか俺の意思に関わず家に上がり込むけど、聞いてくるだけマシだ。

二人並んで千聖の家にまで歩き始めた。

 

「あ、そうだ。もしよかったら今度花見なんてどうかしら? パスパレメンバーも一緒よ」

 

「どうしたの唐突に」

 

まだ四月の初旬で桜は綺麗に咲いてる。多分、苗字の桜木から花見を思いついたのだろう。

 

「わかった。予定が合えばいいんだけど、楽しみにしてる」

 

「ええ。それじゃあ、私はこっちだから。またね、遥君」

 

「じゃあね、千聖」

 

千聖と別れ、元来た道を戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遥君、また道に迷っちゃいました」

 

「なんでさ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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