サッカーバカとガールズバンド(仮題)   作:コロ助なり~

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大変遅くなって申し訳ないです。





第13話

 

 

「飽きた」

 

千聖によくわからない約束をさせられてから思った言葉を口に出した。

 

「何が?」

 

「皆との出会いを話すのが」

 

「あー、まあ確かにアタシもずっと聞いてるだけじゃ退屈かなー。なんか気分転換でもしよっか」

 

そういう時は俺からすればサッカーが一番であるが、生憎今はサッカーボールを持っていない。最初はもちろん持っていこうとしたのだが、リサに止められ敢え無く断念した。それに今回の目的はあくまで花見。一人だけサッカーをしていては空気が読めない奴になってしまう。

 

「皆で出来る遊びとかないかな?」

 

彩の提案に誰もが頭を悩ませてしまう。

 

皆で出来る遊びか。

 

「クイズでも出すか」

 

ほぼサッカー一筋と言っていい人生だったためあまりそういうことに詳しくわないのだが、たまたま思い浮かんだものがあった。

昔同じ日本代表の仲間から教えてもらった遊びだ。

 

「信号の色を答えて欲しいんだ。ちなみに色は赤か青の二種類だけね」

 

他に誰も他の遊びを言い出しそうにないので俺はそのまま続ける。

 

「じゃあ、行くよ。あなたは家を出て真っすぐ歩きます。右に曲がります。また真っすぐ進みます。更に真っすぐ進んで左に曲がります。さあ、あなたの目の前にある信号は赤と青どっちだ?」

 

「全然わかんないよー!」

 

早速あこが諦めていた。

 

「そもそも問題がおかしいです。どこの道を歩いているのかもわからないですし、信号の色なんて時間によって変わるじゃないですか」

 

紗夜は問題全否定で無理だと言ってきた。

 

「はいはい、文句は一切受け付けません。ちゃんと問題として成り立ってるし、俺は()()()()()()()()()よ」

 

子供がするような遊びだから頭の固い紗夜には解けなさそうだ。ついでに答えを聞いた後で納得しない姿が想像できてしまった。

 

「あ……私……わかった……かもしれないです」

 

「アタシも~!」

 

燐子と日菜が答えに辿り着いた。

二、三分待ってみたが、結局二人以外はなにがなんだかさっぱりと言った様子だ。

 

「燐子と日菜は何色だと思った?」

 

「青だと思います」

 

「青だよねー」

 

「正解」

 

「な、なんで!? どういうこと、りんりん!?」

 

答えを聞いたあこが先程よりも余計に困惑しだした。

子供の遊びにここまで反応してくれるのはそれはそれで出した側としては嬉しい。

 

「あこはもう少し考えなさい。どうやってわかったか聞いてもいい?」

 

燐子の傍によって皆に聞こえないよう小声で耳打ちしてもらう。

数名、何か言いたそうな視線を送って来た。

 

『(距離が近い……!)』

 

大方答えを盗み聞きでもしようとしてるのだろう。

 

「最初に“行くよ”と言ったのが……青になるんじゃないかなと思ったんです……。合ってましたか?」

 

「うん、完璧。よくできました」

 

ちなみに赤の場合は“待って”や“止まって”などが最初に来る。

 

「ありがとうございます」

 

元の位置に戻ると友希那が険しい目つきで睨んでいた。

 

「燐子との距離が近いと思うのだけれど」

 

「そう?」

 

「そうよ。恋人でもない異性と触れ合える距離というのはあまり良くないことなの。それに燐子はハルが近くに寄ったことを不快に感じてるに違いないわ」

 

「えっ!? い、いえ……私は……別に……」

 

「不快に感じたわね?」

 

「あ、はい……」

 

なんか無理矢理言わせた感があるんだけど、まあ、いいか。

いや、燐子が不快に思ってしまったのだからこれから気を付けないといけないな。

 

絶対に嫌われてはないと断言できないが燐子とは普通に話せる関係だから大丈夫だと思いたい。

 

「だとしたらこれからは友希那やリサと一緒に寝たりしない方が良いよね?」

 

『!?』

 

途端に友希那とリサがこの世の終わりでも見たかのような顔になった。

 

「そ、それはまた違うんじゃない? えっと、ほら、幼馴染は特別っていうか……」

 

「……合意の上なら問題ないわ。私達はあなたが傍にいることに不満はないもの」

 

幼馴染は特別であることはわからないでもないが、この間は合意とか俺の意思とか諸々無視して一緒に寝ましたけどね。

 

「なるほど。ワタシのハグもシショーが拒否しない限りは問題ナシということですね!」

 

確かにそうだ。友希那の言う合意になるのだから問題ない。……なのにどうして友希那がそんなに苦虫を噛み潰したような表情をするのかは俺にはさっぱりわからない。

 

「……ともかく、異性にむやみやたらと近づくのも近づけるのもダメよ。いい?」

 

「うーん、まあ、納得いかない部分がないわけじゃないけど出来るだけ気を付けるよ」

 

「ええ、そうして」

 

「(コイツ、将来恋人や奥さんの尻に敷かれる未来しか見えない……)」

 

カズの哀れむ視線に首を傾げながら他の問題を色々出題していった。

マッチ棒(は無かったので代わりに割り箸)を使った問題や引っ掛け問題、穴埋め問題等々。

基本的には燐子と日菜がほとんど正解していて、時折彩やリサが、その他はぼちぼち。紗夜に至っては難しく考えすぎなのか全く正解できていなかった。

俺が出題した問題全ては解くために勉強の良し悪しは関係ない。

現にあまり勉強が得意ではないらしい彩は解けていたし、逆に常日頃から勉強している紗夜は解けていなかった。

 

「気分転換も良い感じにできたから過去話に戻ろっか」

 

俺の出したクイズはそこそこ盛り上がった。紗夜だけは答えられなかったのが余程悔しいようだ。

 

「ハイハーイ! 次はアタシがいい!」

 

日菜が挙手をして自分自身を押してきた。

 

「うん、わかった。日菜との出会いね。日菜と出会ったのは……羽丘女子の文化祭だったな」

 

 

 

 

 

去年の秋頃、リサや友希那が通う学校―――羽丘女子高校の文化祭に行った。

男子と接する機会が少ない女子校にとって、文化祭のような部外者を招くイベントは繋がりや恋人を作るチャンスでもあるとリサが言っていた。結構マジな話でもあるとか。

二人もそうなのかと尋ねたら何故か無言で腹パンされた。

女子達の頑張る云々はさておき、俺の案内の前半をリサが、後半を友希那が担当してくれるそうだ。

 

「案内よろしく」

 

「まかしといて♪」

 

リサと正門前で集合し、受付を済ませてから校舎内を回っていく。

 

「最初はどこ行く?」

 

「リサのクラス」

 

「早速!? いやー、アタシのクラスは……」

 

あまりお勧めできないような反応だ。

よくよく考えてみれば今の時間だとリサのクラスに行ったところでリサが何かをしてるのを見られない。

リサはリサで俺とは違う理由がありそうだが、ともかく今は遠慮しておこう。

 

「リサのクラスはあとにする。最初は……」

 

ふと目に入ったのは夜空に瞬く星と天文部の文字が書かれたポスターだ。

 

「ここにしてもいい?」

 

「天文部? ハルが入りたいならいいけど……ホントにここに入る? 学校じゃ変人の住処なんて言われてる場所だよ?」

 

「ふーん……まあ、それは入ってから判断するよ」

 

天文部の部室の扉を開けて中に入る。

部室の中は一切明かりが点いてなかった。更に暗幕で日差しを遮っていたので真っ暗の状態だ。

暗くなっているのは天文部だからプラネタリウムでもやるからだと思う。

 

「まだプラネタリウムの時間じゃないからもうちょっと待っててねー」

 

やけに間延びした声と共に声の主が俺達のいる出入口付近までやって来た。

遠くだと暗くて見え辛かったが、出入口から入る光が近づいてくる人物を照らし出した。

声の主はパステルブルーの髪色の少女だった。

初対面なのに不思議とどこかで会った気がする。そして誰かに似てる。

 

「あ、リサちー!」

 

「え、日菜?」

 

どうやらリサと日菜と呼ばれた少女は知り合いらしい。

アイコンタクトで尋ねると少女のことを紹介してくれた。

 

「この子はアタシと同じクラスの氷川日菜」

 

「氷川……?」

 

「紗夜の妹」

 

今のだけでなるほどと納得してしまった。

どこかで会った気がしたのは紗夜に似ていたからだ。

姉妹ということだけあってホントにそっくりだ。

 

「リサちー、隣にいる人彼氏?」

 

「ううん、残念ながら」

 

「ふぅーん……って、君、サクラ君?」

 

「サクラ君? ハル、日菜と知り合い……そしたらさっきの質問はおかしいか」

 

俺が彼女を知っていたのならば名前なんてリサに聞いていない。

 

「テレビでサッカーの試合見たことあるからアタシが一方的に知ってるだけ。サクラ君のサッカーを初めてみた時にるんっ……いや、るらるんっって感じがしたんだよねー」

 

るん? るらるん? よくわからないが褒められてるのだろうか?

 

独特な擬音語に思わず首を傾げる。

 

「で、二人はなにしに来たの?」

 

ようやく最初の話に戻った。

 

「ハルが天文部見たいって。展示はいつ?」

 

「まだ準備が終わってなくて展示の時間は未定だよ」

 

「え、今日文化祭なのにまだ準備終わってないの?」

 

暗い部屋なのでわかりにくいが、見えるところを見ただけだとあまり作業が進んでいるようではなさそうだ。

 

「いや~、最近仕事で忙しくて。それに天文部はアタシ一人しかいないからね」

 

『えっ!?』

 

俺とリサの驚きの声が同時に上がった。それ以上に彼女から悲壮感もなにも感じられないのが少しだけ辛い。

 

「……手伝えることはある?」

 

ほとんど無意識に口を動かしていた。

 

「いやいや、それは悪いよっ」

 

「でも、このままじゃいつ始めるかわからないままだけど?」

 

「…………じゃあ、机と椅子の移動をお願い」

 

状況が状況だけに数秒迷ったのちに指示をくれた。

 

「アタシもなんか手伝うよ」

 

「えっと、リサちーはこのメモに書いてあることを黒板に書いて。アタシはプラネタリウムを作るから」

 

三人で顔を見合わせて頷き合うなり、すぐに作業に取り掛かった。

 

「できた~!」

 

白紙だったはずの画用紙が三十分もすれば無数の穴があけられ、一面が正五角形の十二面体の形になっていた。

ミス一つなくできたのは彼女の異常なまでの集中力と手先の器用さに他ならない。

 

「二人共ありがとー!」

 

「どういたしまして」

 

「お礼に二人には最初に見せちゃうね」

 

開始時間から遅れたものの、完成したプラネタリウムでの展示が始まったのだった。

 

 

 

 

 

「とまあ、ここまでかな」

 

「アタシたちはそこから仲良くなってRoseliaのライブをちょくちょく一緒に見に行くようになったんだよね」

 

だからなのかいつの間にか連絡先を交換していて、ライブ以外でも合うようことが何度かあった。

 

「……ライブの日を教えてないのにどうして日菜がいるのかと思っていましたが、桜木さんの所為だったんですね」

 

余計なことをしてくれたと言わんばかりの紗夜の視線が俺を突き刺す。

まあ、だからといってこれからもライブの日程を教えることに変わりはないし、たとえ俺が伝えなくてもリサがいるから結果は変わらないだろう。

 

「反省も後悔も全くしてないから!」

 

とびっきりの笑顔とサムズアップを紗夜に返しておいた。

 

 

 

 

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