サッカーバカとガールズバンド(仮題)   作:コロ助なり~

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第16話

 

 

 

「……彩に言いたいことがあるんだ」

 

「な、何かな?」

 

満開の桜の木の下で向かいあう俺と彩。

 

「実は、俺……」

 

「うん」

 

彩が息を吞む音が聞こえる。

それだけで彩が緊張していることが手に取るようにわかる。

対して俺も手汗が凄いことになってる。

だが、そんな状況でも俺は自分の想いを彩に告げなければならない。

一度深呼吸をしてから口を動かす。

 

「好きなんだ」

 

「ッ!」

 

 

 

 

 

「―――サッカーが好きなんだ!」

 

 

 

 

 

「わっ、私も…………は?」

 

「ふぅ……緊張した~!」

 

「……え? ちょ、……は?」

 

何か言いたそうにしてる彩を放置して座っていた場所に戻る。

 

「どう? ちゃんと“告白”したでしょ?」

 

『いやいやいやいや! 今のどこが告白!?』

 

「王様の判定は?」

 

「うーん、ホントはもう一回って言いたいけど、彩ちゃんの面白い顔見られたからOKにしてあげる!」

 

「だってさ」

 

「うぅ~! 色々納得いかない! もう一回! もう一回ちゃんと告白してよ!」

 

戻って来た彩が頬を膨らませて文句を言い始めるが、王様である日菜がOkを出したのだからもう一回などない。

 

「さあ、王様ゲームを続けようか」

 

周りのほとんどが納得していない中、強引に次へと進めた。

 

 

 

 

 

さかのぼる事、十数分前。

それは日菜が唐突に提案したことだった。

 

「王様ゲームやろうよ!」

 

過去話に飽き始めていたから、タイミングとしては悪くない提案だ。

ただ、一つだけ問題があった。

 

「王様ゲームって、確かクラス中に命令が書かれたメールが来て、それに従わないと死ぬ奴だよね?」

 

「あながち間違いでもないけど、そんな物騒なのやってたまるか!」

 

どうやら俺の知っている王様ゲームと違ったようだ。

所詮、本の内容はフィクションだから当たり前と言えば当たり前か。

日菜がそんな物騒なことを言いだすとも到底思えない。俺の勘違いで済んでよかった。

 

「俺の知ってるのと違うのはわかった。で、どういうルール?」

 

「そんなに難しいわけじゃないよ」

 

ルール自体は俺の知ってる王様ゲームと大体同じ。王様が命令して、指名された人はそれに従う。違うところは王様が一度命令するごとに変わるところか。

スポーツのように複雑なルールがあるわけじゃないので誰にでもすぐに覚えられる。

余っていた割り箸に王様の印と番号を付けて、俺がまとめて持つことになった。

人数が多いのでこの王様ゲームでは番号の書かれていない箸がいくつかある。しかし、番号がないからと言って参加できないわけじゃない。

『番号のない箸を持つ人は○○する』というように命令すれば、それを持ってる人が全員やらなければならないのだ。

準備が整ってゲーム開始。

ほんの一瞬だけ、数名程目つきが怖くなっていたのは気のせいだと思いたい。

 

『王様だーれだ!』

 

俺の手から一斉に割り箸を引き抜いてゆく。

王様の印がある箸を手に入れた人が挙手をする。

 

「私……です」

 

最初の王様は燐子だ。

 

「えっと……3番が5番に……デコピンする」

 

「3番アタシ!」

 

「うぅ……5番です」

 

手を上げた日菜(3番)(5番)

 

「い、痛くしないでね……?」

 

「大丈夫大丈夫。彩ちゃん行っくよ~!」

 

大人しくおでこを差し出す彩に、力の限り溜め込んだデコピンを喰らわせた。

 

―――バチンッ。

 

「痛いっ!」

 

音もそうだが彩の真っ赤になったおでこを見て、本当に痛いと分かってしまう。

 

痛くしないでねと言っていたのをあっさり無視!

 

「もうっ、痛くしないでねって言ったのに!」

 

「アハハ! ごめんごめん!」

 

誠意の欠片も感じない謝罪に恨めしそうに睨むが、日菜がそういう性格だと分かりきっている所為かそれ以上は何も言わずに黙ってしまった。

そして、二回目の王様になった日菜が俺が彩に告白するという命令を出したわけだ。

 

「さてと、気を取り直しまして―――」

 

『王様だーれだ!』

 

「私です!」

 

手を上げたのはイヴだ。

 

「王様の命令です! 1番と2番の人はハグしてください!」

 

「あ、1番は俺だ」

 

「あこ2番だよ!」

 

『…………ッ』

 

一斉に小さな舌打ちが聞こえた。

 

「どのくらいハグしてればいい?」

 

舌打ちは聞かなかったことにして時間を聞く。

 

「そうですね……三十秒程でお願いします!」

 

「オッケー」

 

あこの傍によって背中に腕を回す。

抱き締め返してきたあこの小さな体が俺の中にすっぽりと収まる。

 

「……思ってたよりもハル兄って大きいね」

 

「どうしたの、藪から棒に」

 

「小さい頃から知ってたけど、こうして触れ合うとやっぱりハル兄は男の子なんだねって思っただけ」

 

「俺はそもそも男だぞ」

 

「アハハ、そうだね♪ ……ねえ、ハル兄」

 

「ん?」

 

「あこは昔よりは女の子らしくなったかな?」

 

「なったんじゃない?」

 

「うわー、チョーテキトー。……ハル兄らしいけど」

 

期待して損したと言わんばかりのジト目が向けられる。

俺にそんなことを聞いたところで返ってくる答えなんてわかりきっているだろうに。

 

「まあでも、Roseliaに入りたいって踏み出した時から成長したと思う。いや、それよりもネットゲームで知り合った燐子と出会った頃からか? ともかくそういう意味じゃホントに成長してるよ」

 

巴に引っ付いていたあこはもういない。巴が大好きなのは変わらないままだが。

 

「そっか。ハル兄がそう言うんだったら間違いないね!」

 

そんなやり取りをしてるとあっという間に三十秒が経過した。

名残惜しさは特に感じることはなく、笑いあって離れた。

友希那やリサに何かを言われる前に割り箸を回収して次の王様を決める。

 

『王様だーれだ!』

 

「王様はあこ! ふっふっふ、ついにこの時がやって来た。汝らに命令する……えーっと、えーっと……お菓子を持ってまいれ!」

 

厨二っぽいセリフを言いながらもその命令内容はとても可愛らしい。

そんなあこに誰もが微笑ましい眼差しを向けながらお菓子を渡していく。

 

『王様だーれだ!』

 

「あら、私ね」

 

『!』

 

「どうして私が王様になった途端に皆して身構えるのか小一時間程問い詰めたいところなのだけど、まあいいわ。遥君、番号は?」

 

「ん? 3番」

 

あら? 番号聞くのってアリなの?

 

「ありがと。命令するわ、3番は私がいいというまで私と握手すること」

 

千聖の意図が全く読めない命令だ。顔を見ても余裕の感じられるニコニコ笑顔。

首を傾げながらも差し出された千聖の手を握る。

十秒、二十秒と時間が経過してゆく。

そんな中、視線が集まっていることに気が付いた。

この場で命令を実行してるのが俺達二人なのだから当たり前ではあるのだが、他の意味が含まれているような気がする。

 

「ねぇ、千聖。いつまで握ってればいいの?」

 

「さあ? 遥君が嫌なら今すぐにでも離しても構わないわ」

 

「別に嫌じゃないんだけど」

 

ただね、三十秒過ぎたあたりから両サイドから脇腹に攻撃を受け始めてるんです。徐々に痛くなってるんです。

 

『……………………』

 

一分近く経った頃についにしびれを切らした人物が現れた。

 

「そろそろ離してもいいと思うんだけど」

「いつまで握っているつもり?」

 

ほぼ同時にリサと友希那が沈黙を破った。

 

「はい、おしまい」

 

千聖は反論一つすることなく俺の手を離した。

 

「なにがしたかったわけ?」

 

「ただの興味本位よ。おかげで面白いことがわかったわ」

 

「面白いこと?」

 

「ええ。最初に割って入って来た人はとても焼きもちなの」

 

『ッ!』

 

「へぇー、つまりリサと友希那は焼きもちなんだ」

 

「は、はあっ!? べ、別に焼きもちとか焼いてないから!」

 

「ええ、そうよ。芸能人といつまでも握手してるから止めただけであって、それ以外に意味はないわ」

 

「ふーん、そっか。それならそれでいいや。次の王様決めよっか」

 

割り箸を回収してる際、二人が「……鈍感」と小さく呟く声が聞こえたが、なんだか聞ける雰囲気じゃなかったのでそそくさとゲームを進めることにした。

 

『王様だーれだ!』

 

「私ね」

 

今度は友希那が王様になった。

 

「……ハル、何番?」

 

俺に視線を向けて番号を聞いてきた。

 

「6番だけど」

 

「そう。命令するわ、6番は王様とポッキーゲームしなさい」

 

『なッ!?』

 

ポッキーを一本用意した友希那はそれを口にくわえて俺に差し出してきた。

ポッキーゲームとはなんなのか説明してもらいたいのだが、千聖が待ったをかけたので無理そうか。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい。いくらなんでもそれは行きすぎじゃないかしら?」

 

「ハルは嫌?」

 

「別にそんなことはないよ。ポッキーゲームがなんなのかわかんないけど」

 

「本人は反対しないから問題ないわね。ハルは反対側をくわえていればいいわ」

 

話すために一度離したポッキーを何食わぬ顔でもう一度くわえて俺に向ける。

言われた通りに俺もポッキーの反対側を口にくわえた。

そして、ポッキー噛み砕きながら徐々に友希那の顔が迫って来る。

あともう少しで互いの唇が触れ合う―――ことはなかった。

 

「はい、そこまでー」

 

リサが割り箸を使ってポッキーをへし折ったせいだ。

 

「友希那ー、いくらなんでもやりすぎじゃない?」

 

「…………」

 

リサと視線を合わせず不機嫌そうにそっぽを向く。

なんとなく場の空気が悪くなったことを感じ取った皆は、努めて明るく次のゲームを始めた。

千聖と花音が歌ったり、氷川姉妹に互いの好きなところ言ったり、イヴと麻弥に即興の漫才をしたりと色々面白い命令がたくさん出たおかげで、さっきまでの悪くなっていた空気はいつの間にかなくなっていた。

 

『王様だーれだ!』

 

「あ、俺だ」

 

ここにきてようやく王様か。

しかも恐らく時間的にはこれが最後になるだろう。

 

「王様から全員に命令。また来年も花見をしよう」

 

『うん!』

 

返って来たのは肯定の返事ととびっきりの笑顔だ。

色々あったけどこうして今年の花見は幕を下ろしましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言っておくけど、王様ゲームで番号聞くのって反則だかんな」

 

「やっぱりそうなの?」

 

「それから……俺、一度も王様になってないし、命令もされてないんだけど!」

 

「それは知らん」

 

カズの叫びを流して片付けを進めるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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