FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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フェアリーテイル再建

未だ再建されていないギルドの跡地で、ギルドメンバー達は一生懸命土木作業をしていた。

その中で、マルクも丸太を持ちながらせっせと仕事に勤しんでいた。その中で、ウェンディが暇そうにじっとしていたのでマルクがそのまま話しかけに行く。

 

「あ……マルク。えっと、これは……」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)を新しく作るにあたって、俺達が初めにやる仕事だな、うん。」

 

「初めにやる仕事?」

 

「まぁ……ひとまず、ギルドの作り直しだよな。そうじゃないと何も出来ないから。」

 

「けど、ウェンディに力仕事は無理よ?」

 

シャルルがマルクに向かって話しかける。力仕事が無理なのは、大抵の女子陣がそうなのでマルクもそれは肯定しながら話を進めていく。

 

「それは分かってる、力仕事は俺の分野だ……だから、ウェンディには怪我した場合の治療担当を頼みたい。」

 

「怪我の治療……頑張るよ!」

 

「よし、頼んだ!」

 

単純な会話だけをしてから、マルクとウェンディはそれぞれ自分のやる事を行い始める……が、そうそう怪我をする人物がいない。ウェンディはもう暫くは暇になるだろう。

 

「……これ1本ずつ運んでたら時間かかりません?」

 

「つってもな、エルフマンみてぇにパワータイプの魔法がねぇと中々難しいしよ。」

 

マックスと共に、丸太やその他資材の束を運んでいくマルク。エルザが、それら全てを板に切り刻むことで幾分かの、作業バランスが整っていた。

 

「パワータイプ……いや、なくてもいいでしょ。マックスさん砂で運んでるじゃないですか。」

 

「あ、バレたか。」

 

「隣でされてたら嫌でもわかりますよ。」

 

「ま、無理に運んでいく必要がないってのは、確かにあるけどな。勝手に運んでいったりなんてすりゃあ、今のバランスが崩れちまうし。」

 

「それもそうですね……で、ルーシィさん何やってるんですか。」

 

マルクは、マックスから視線を外して、何故か隣でプルプル震えながら丸太を運ぶルーシィに話しかける。

 

「いや、何故か成り行きで……」

 

「成り行きで丸太運ぶ人初めて見ました。俺が運びますから、ルーシィさんは休んでてください。」

 

「ありがと……」

 

マルクはルーシィから丸太を受け取って持ち運ぼうとする……が、思いのほか片手で1本というのは、未だ成長途中の彼には難しいものだった。

 

「うぉ……?」

 

「はは、無理するからだよ……しゃあないから俺が運んで━━━」

 

「うおらぁ!!」

 

マックスが運ぼうとした時、マルクが上空に向けて盛大にブレスを吐く。唐突な出来事だったので、周りの者達も皆全員マルクに視線を向けていた。

 

「なんで急に魔法使うんだよ……」

 

「あぁいえ、1回使い切らないといけないから……」

 

「え、ちょ……どういう事だよ。」

 

「えーっと、こういう事です……モード悪魔龍、憤怒怒り(フューリーラース)。」

 

マルクは、あのブレス1回で魔力を使い切りそしてそのまま流れるように悪魔龍化を行う。体は呪力から変換された魔力によって、倍以上に大きくなりその筋肉量も魔力によって増量していく。

 

「これなら何本も運べると思って。」

 

「……」

 

「マックスさん?」

 

「いやお前成長期とはいえ、幾らなんでも成長しすぎだろ。」

 

「あ、そう解釈しちゃいます?」

 

そのままマルクは丸太を運んでいくが、それを見て他の男達が何かを感化されたのか、一斉に丸太を何本も運び始める。

 

「ビーストソウル!!」

 

「む……」

 

エルフマンも、自身の魔法によって何本もの丸太を運び始めていた。それを見て、マルクは自分の方が丸太が少ないと思い、さらに腕いっぱいの丸太を運び始めていた。

 

「……マルク、随分と楽しそうだね。」

 

「そうね、前まであんな事しなかったのに……今じゃあ男連中に混じって馬鹿やるようになったわけね。」

 

「ふふ、私はちょっと嬉しいよ?マルク、私達以外にはずっと1歩下がって見てる感じだったし。」

 

「……確かにそうね。ある意味、この1年間で色々あってふっ切れた結果かしら?」

 

そんなマルクの様子を見て、ウェンディ達が楽しく微笑んでいた。マルクが楽しそうに他の者達と張り合っているのが、どことなく嬉しかったからだ。

 

「……蛇姫の鱗(ラミアスケイル)にいた頃も、あんな楽しそうにはしてなかったよね。」

 

「まぁ、マルクは半年しかいなかったんだけど。」

 

「シャ、シャルル……」

 

「━━━まぁ、実際本当にそうだしな。」

 

と、シャルルとウェンディの2人が話し合っている間に、マルクは仕事を終えたのか元の姿に戻って2人のところに来ていた。

 

「あら、もう仕事はいいの?」

 

「なんかやたら丸太運んだせいで、仕事なくなっちゃった。」

 

「アホね。」

 

「ま、否定はしない……ん?」

 

冗談を言い合いながら、マルクはふとかけてうんうん唸っているレビィを見つける。

 

「あれ、レビィさん?」

 

「ほんとだ……レビィさん、何してるんですか?」

 

「ちょっと書類の整理をね……」

 

「うわ凄い量……これ何の書類ですか?」

 

「実はね……ギルド復活って言っても実は言葉だけじゃあどうにもならないの。評議院に認可されなきゃ闇ギルドと同じだからね。これは、それらの書類。」

 

かなり積まれた書類を見ながら、マルクはレビィに素直に感動していた。ある意味、ギルドを建てることよりも重要な仕事であるからだ。

 

「ま、その点に関して言えば俺たちが一年かけて根回ししておいたからな。」

 

「気が利くじゃない。」

 

「だから表向きにも妖精の尻尾は完全復活と言える。」

 

「「ありがとうございますレビィさん……!」」

 

何故かウェンディは涙を泣きながら感謝し、マルクはレビィの手を持って祈るように感謝を捧げていた。

しかし、レビィは感謝を受けることこそしたが未だ悩んでいるところはあるようだ。

 

「あとは…この欄を埋めるだけなんだけど……」

 

「迷うわね。」

 

「迷う?」

 

「……『7代目ギルドマスターを誰にするか』」

 

「……7代目ギルドマスター。」

 

ウェンディとマルクは息を呑んだ。確かに、今それを決めることはかなり重要なことである。

6代目……マカロフ・ドレアーがいない今、帰ってくるまでの暫定的なものだが。

 

「別にオレは……どうしてもって言うなら……」

 

「父ちゃん早めてくれ!!」

 

「ロメオ、どうどう。」

 

「ギルダーツでいいじゃねぇか。」

 

「あんなどこをほっつき歩いているかわからねー奴を、マスターに出来るか!!」

 

それぞれ、思惑を言っていくがどうにも反対意見が出てしまう。マカオも、ギルダーツもマスター経験があるとは言え苦い思い出があるマカオも一日どころか1時間もマスターをしていなかったギルダーツも、はっきり言ってしまえば向いているとは言えないだろう。

 

「6代目が帰ってくるまでの暫定でしょ?誰でもいいじゃない。」

 

「俺も同意見だ。」

 

「でも、今回は今までのギルドとは違う…… 6代目がいないこいつらを、誰がまとめられるのかって話しさ。」

 

カナが、少し視線を奥に飛ばす。そこでは、エルフマンとナツが殴りあっていた。

 

「あぁ……そう言われてみれば確かに━━━」

 

ウェンディが少しだけ呆れながら、頷きかけたその瞬間だった。喧嘩の影響で色んなものが飛び交っている中で、ウェンディに向かって工具が飛んできたのだ。

 

「ふんっ!」

 

「ま、マルク?」

 

「危なっ!?誰よ今工具ぶん投げたの!!」

 

無論、当たる前にマルクが叩き落として事なきを得た。それに対して、レビィは珍しく怒って向かおうとしていたが、それよりも先に飛び出す影があった。

 

「今投げたやつ出て来いやぁ!!てめぇの脳天かち割りながら反省させてやらァ!!」

 

「ま、マルク!?」

 

「……脳天をかち割られたら、反省も出来ないと思うのだが。」

 

「ほっときなさい、あれに無用なツッコミを入れると死ぬわよ。今ウェンディに危害が及びかけたから、ブチ切れてるんだし。」

 

マルクがウェンディを守りきるとわかっていたのか、シャルルは落ち着いた態度で、接していた。

 

「やけに落ち着いているな、ウェンディの事になったら怒るのはお前も同じだろうに。」

 

「あら、無事だと分かりきってるのに怒るのもね。」

 

「ふ……確かにな。」

 

そう言って、リリーとシャルルの2人は喧嘩しあっている者達を防傍観していく。しかし、だんだんと喧嘩に入ってくる人数が多くなっていく。知らぬ間にグレイやカナ、ロキなども混じって喧嘩を始めていく。

このままではせっかく作りかけであるギルドも再び壊されてしまう……そう他人事のように喧嘩していない者達が考えた瞬間、大きな足音が響く。

 

「━━━仕事しろ。」

 

「はい……」

 

エルザのその足音と一言で、場が静まり返った。それだけ、今のエルザの足音とと声が彼らを威圧するレベルだったのだ。

そして、その様子を見てレビィは少し微笑んでから書類に最後の記入事項を埋めていく。

 

「クス……やっぱりこれしかないよね。7代目ギルドマスター『エルザ・スカーレット』」

 

それを聞いた一同は、簡単の声を上げる。だが逆にエルザは焦って首を横に降り始める。

しかし、もう既に決まってしまっているのを覆すことは、エルザであっても容易ではないだろう。

 

「ちょ、ちょっと待て……私がマスターだと?それは……」

 

「━━━お前しか適任者はいねーだろ。」

 

突如として、そんなナツ達に声をかける存在があった。全員、そちらの方を向くがマルクを除いては変な反応を繰り返すばかりである。何せ、()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだから。

 

「お前は……!」

 

「えーっと……あれ?」

 

「だれでしょうか……」

 

「いや…ウチのメンバーだ……けど、名前が思い出せない……?」

 

マルクは全員の様子を見ながら、少し困惑していた。少なくとも、天狼島を出た時には全員覚えていたはずだからだ。

しかし、ならば考えられる手段はひとつしかない。

 

「……また記憶をいじったのか。」

 

「お前には、魔法が通用しないからな………この時を待っていた。皆が再び集うこのときを。

6代目マスターマカロフを助けられるのは、お前しかいない。」

 

「_どういうことだ説明しろ。」

 

「まぁ待て、全員の記憶を元の状態に戻しながらお前には口頭で説明する。」

 

そう言って、『彼』は少しだけ魔法を使う。その様子を、マルクはじっと眺めていた。

 

「まずひとつ……俺の名前だ。」

 

「ドランバルトじゃないのか?」

 

「いや……天狼島で使っていた名前、メスト・グライダーというのが本名だ。」

 

「ややこしいな……つまり、評議院にいた時の名前は偽名だったのか?」

 

「その辺も、語るよ。だがその前に……『7代目ギルドマスター』にはついてきてもらいたい場所がある。」

 

そう言ってドランバルト……否、メストはエルザに視線を向ける。エルザは真面目な顔でメストの言うことを一旦聞いていた。

 

「なんでエルザだけなんだよ!」

 

「後で説明してやる。今は我慢しておいてくれ。」

 

そう言ってメストはエルザをどこかへと連れていく。勿論、彼のもう1つの魔法であるワープを使って、だが。

 

「……クソっ!なんでエルザだけなんだ!!」

 

「わざわざ7代目ギルドマスターって言ったってことは……つまりマスターじゃないと入れないところがあるってことですよね。」

 

「そういうことになるな……」

 

「えーっと,……メストさん、は…どこに行ったんでしょう……」

 

「分からないわねぇ……ねぇマルク、魔力の痕跡とかで辿れない?」

 

ルーシィがマルクに質問するが、マルクは首を横に振る。ダイレクトラインという魔法は、そういうものでは無いのだ。

 

「そうよね……」

 

「けど、案外近くにいると思いますよ。わざわざギルドマスターを指定したんですから……案外この跡地になにかあるかもしれません。」

 

「うしっ!エルザ達の臭いがする所探すぞ!!」

 

ナツは意気込んで猛ダッシュで跡地を捜しまわる。いくらかしてから、謎の地下への入り口を発見した一同は、そのままその地下へと足を運ぶことにしたのであった。


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