FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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アクノロギアを

ルーシィの先祖、400年前からエクリプスを通って時を渡った女性アンナ。彼女は滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)達の先生であり、そしてアクノロギアを倒すために策を弄していた。

そして、彼女は現代の今この時間において『時の狭間』という場所にアクノロギアを押し込んでこの時代から存在を抹消するという手を思いついた。

そこは、時間の流れも光も闇もない無の空間。そして、そこの入口は誰であろうと触れた瞬間に吸い込まれ、この時代から消滅してしまう。アンナは、それにアクノロギアを押し込むつもりだったのだ。

大きさは掌に乗るみかん1つ分と彼女は例えた。そして、それほどの大きさならば、体の大きいアクノロギアは見えないだろうと言う確信もあった。

だが、時の狭間がある場所にアクノロギアを誘導できたと思っていたが、時の狭間はアクノロギアを飲み込まなかった。

時の狭間が、何らかの原因で閉じていると分かったアンナは、時の狭間を自分の力で開く事にした。しかし、そのためには時間稼ぎが必要だった。

そのために、ジェラールとマルクがアクノロギアに向かって行ったのであった。

 

「くっ……ガルルァ!!」

 

「無駄無駄…!」

 

空を飛びながら、アクノロギアとマルクは殴りあっていた。時折マルクは呪法を使いアクノロギアを攻撃するが、アクノロギアはそれを尽く回避していく。

マルクがこの力を未だ使いこなせていないのもあるかもしれないが、敵は全てのドラゴンを倒しているのだ。そもそもの経験値が、実力差が違うということなのだ。

 

「ぐうぅ!!」

 

「マルク!くっ…!」

 

アクノロギアは、凄まじい速度でマルクを翻弄していく。マルクもアクノロギアと同じほどの大きさになっているが、それでもなお翻弄されてしまう。

 

「ガァッ!!」

 

「ぐっ……」

 

マルクの攻撃も時折当たるものの、それはただの物理的な攻撃だけであり、呪法は念入りにかわされていた。

自分を倒せる可能性がある呪法は、アクノロギアはひたすらに警戒しているようだ。

 

「やっぱ強いな……」

 

「悪魔が幾らかかった所で、勝てぬ。真に勝ちたいと望むのであれば…黒魔導士でも連れてくるんだな。」

 

「その黒魔導士は、倒す予定なんでな!!」

 

「ふん、一介の魔導士では勝てんさ……それこそ、我や貴様のような人智を超えた何かを呼ばない限りはな。」

 

「……お前を倒すためには、ゼレフの力がいる…けどゼレフを倒すためにはお前や俺みたいなやつの方がいい?

矛盾してるぜ、お前のセリフ。」

 

「貴様らには、どちらも倒せぬという事だ!!」

 

「ほざけ!!」

 

アクノロギアが拳を振るい、マルクもそれに合わせて拳を振るった。2人の力が打ち合って、強烈な衝撃波が生まれる。

 

「マルク!!」

 

ジェラールが、アクノロギアの首元に高速で突っ込んで蹴りを入れる。衝撃は伝わったのか、アクノロギアは少し怯んでいた。

 

「っ!!はあぁ!!」

 

マルクは、アクノロギアを殴り飛ばす。無論、時の狭間がある方向にである。

だが、突如として異変が起きる。アクノロギアや、マルクのサイズでも認識できるような大きな黒い球体が現れたのだ。

否、マルクがそれがなんなのかすぐに理解できた。時の狭間である。みかんほどの大きさしないと聞いていたが、どうやら何か異常なことが起こっているようだった。

 

「時の狭間が、見えて……」

 

「なんだあれは…?」

 

「━━━いや!!」

 

マルクは、確かに一瞬焦った。アクノロギアに時の狭間がバレてしまえば、確かにこの作戦は台無しである。だが、バレたとしても成功させればいいだけの話だ。そう、()()()()()()()()()()()

 

「はあああ!!」

 

「ぬぅっ!?」

 

マルクは、アクノロギアに突進をした。凄まじい速度から繰り出されるその突進は、時の狭間を見て隙を見せたアクノロギアに、直撃した。

そして、そのままマルクは時の狭間へと目掛けて飛び込んでいく。

 

「待ちなさいマルク!貴方何をする気なの!!」

 

「このままこいつを押し込みます!」

 

「あれに触れたら貴方まで飲み込まれるわ!!」

 

「他に方法はありません!!直ぐに、こいつを押し込まないと勝機は無くなってしまう!!」

 

アンナが必死に静止させようとするが、マルクは止まらない。彼はもう、止まる訳には行かないのだ。

 

「我は魔を喰らいし竜、我は魔竜アクノロギアぞ。貴様如きの力で…!」

 

「その如きの力に、お前は負ける!!」

 

一瞬、ちらっとだけマルクは後ろを向いた。そこには、海に不時着していくクリスティーナの姿が。

あの破損状況では、復帰は恐らく難しいだろう。ウェンディのことが気がかりだったが、しかしアクノロギアを葬りウェンディが安全な世界に生きていけるのであれば、マルクはそれだけでよかった。

 

「ぐ、ぐうぅ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━えっ?」

 

マルクの姿が、元に戻った。呪力が、ここで切れてしまったのだ。アクノロギアは、無論時の狭間には触れさせていない。

触れさせていなければ、アクノロギアは倒せない。だが、今のマルクは悪魔の力を使うことは出来なくなっている。呪力が尽きてしまった以上、回復しなければ使うことは難しい。それは、今このタイミングでは間違いなく不可能なことである。

 

「所詮、もどきの力如きではそこが限界という事だ。大事な時に、何も出来ない弱さがあるのだ。」

 

「がっ!!」

 

マルクは、その体をアクノロギアに掴まれてしまう。その体は、アクノロギアによって簡単に砕かれようとしていた。だが、その時に一筋の光が、マルクを掴んでいるアクノロギアの腕を攻撃した。

 

「━━━マルクを離せ!!」

 

「ぬうぅ……!」

 

「ジェラール!!」

 

「マルク、今君はここで死ぬべきではない!!ウェンディを守るんだろう!!最後の最後まで、守り通せ!!」

 

ジェラールの不意打ちの攻撃により、アクノロギアは腕の力を緩める。ここがチャンス…マルクはそう確信した。

無論、逃げるチャンスではない。このタイミングならば、アクノロギアを無理矢理にでも時の狭間に押しこめるチャンスである。

 

「その言葉!そっくりそのまま返してやる!ジェラールだって、エルザさん救わなきゃなんねぇだろうが!!」

 

「それは━━━」

 

そんな2人をまとめて海に落とすかのように、クリスティーナがアクノロギアに特攻していっていた。既にボロボロとなっているその船体は、今にも爆発しそうな程だが……乗っているのは、感じられる魔力反応からしてたった2人。

 

「一夜さん!?アンナ先生!?」

 

「マルク!貴方はウェンディのそばにいなさい!」

 

「ジェラール君!君にはエルザさんという女性がいるだろう!!」

 

その言葉を最後に、クリスティーナはアクノロギアを時の狭間に押し込んでいく。

マルクが稼いだ距離を、ジェラールが稼いだ時間を、クリスティーナが埋める。そこに乗っている一夜とアンナが、アクノロギアに最後の引導を渡す。

 

「これで終わりよ!竜王の時代は終わったの!!」

 

そして、アクノロギアは遂に……時の狭間にその体を触れさせられた。必死の攻防により、ついに作戦は成功したのだ。

 

「これは…!?体が……!うぉ…がはっ……!」

 

「一夜さん!アンナ先生!!」

 

マルクは、落ちながら2人の名前を呼ぶ。時の狭間は、アクノロギアがぶつけられたことによる衝撃が原因なのか、大きく発光し始める。

そして、弾けるようにその発光をさらに大きくしたあと……何事もなかったかのように、その姿を消していた。

初めから…時の狭間も、アクノロギアも、アンナも一夜も……そんな存在はいなかったとでも言うかのように、その姿は全て消え去っていた。

 

「消えた…アクノロギアも、一夜さんもアンナ先生も……みんな、時の狭間の中に……」

 

海に浮かぶマルク。その体を、ウェンディがぎゅっと抱きしめる。心配を、またかけてしまったとマルクは反省する。

だが、ウェンディの顔は見ない。今ウェンディの顔はきっと涙で溢れているだろう、その顔を見ては自分も一緒に泣いてしまいかねなかったからだ。代わりに、ぎゅっと強く抱き締めてその頭を撫でる。

 

「マルク、マルク…!」

 

「……払った犠牲は大きかったけれど、俺達は勝った、勝ったんだ。」

 

その言葉に、勝利の余韻などはない。ただあるのは、払った犠牲の大きさによる悲しみだけである。

しかし、これで勝てたのだ。もう、誰も魔竜であり竜王であるアクノロギアを見ることがないのだ。時の狭間に押し込まれた存在は消える……その事だけは、アンナが言っていたのだから間違いがないと、マルクは確信するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海に落ちたものの、一同は一旦近くの陸に上がってその身を休めていた。アクノロギアを倒したものの、アンナと一夜という犠牲を払ってしまったため余り喜べないでいた。

 

「一夜さんと、アンナさんの分まで…生きなきゃ……」

 

その一言が、皆の心に虚しさを広げる。勝ったのはいい、勝ったのはいいのだが……尊敬する者の死は、答えるものがあったようだ。

 

「……空が、青━━━」

 

それを見上げていたマルクが、ふと何気ない一言を発しようとした瞬間。その瞬間に、マルクは強大な魔力を感じとった。

場所は、すぐそこ…そう、時の狭間があった場所から、強力な魔力を感じとったのだ。

そして、その直後に空に小さな亀裂が入る。

 

「空に、亀裂が……」

 

「━━━ふざけ……ふざけんなぁ!!」

 

段々と大きくなる亀裂。そして、その亀裂が完全に広がりきる前にマルクはその体に呪力を覆い始める。

マルク以外の者達は、信じたくなかった。せっかく倒したはずの敵が、今まさに蘇ろうとしている事に。

 

「亀裂が、広がって━━━」

 

「モード悪魔龍!罪なる七悪魔(セブンシンズ)!」

 

呪力を纏いきったマルクは、亀裂に向かって飛ぶ。今となっては、自分がどうにかしなければならないのだ。

時の狭間から出てこようとするならば、そこに押し込めばいい……たった、それだけの話である。

 

「出てくんじゃ━━━」

 

亀裂に向かって、ブレスを吐こうとするマルク。なるべく近い距離から浴びせようとしたために、時の狭間との距離は全くないと言っても過言ではない。

だが━━━

 

「がっ……!?」

 

「マルク……!?」

 

今のマルクの体で言うところの胸の部分。そこを、マルクは貫かれていた。巨大な、黒い腕によって。

 

「力が満ちる…かつて滅竜の道を、極めたかのように。我はさらなる王となった。」

 

マルクを貫いた腕が、引き抜かれる。掴んだゴミを、離すかのように粗雑に投げ捨てる。

 

「この世界の全ては、我のもの。」

 

時の狭間から出てきたアクノロギアは、時の狭間に入れられる前よりも強く、そして強大なものとなっていた。

理由は明白である。食らったのだ、無の魔力で溢れている時の狭間の魔力を。

 

「おぉ……これが時の魔力、時の力……溢れる力が制御できぬ。滅せよ人間共。エナーナルフレア。」

 

たった一言。その魔法の詠唱はそれでよかった。どこからともなく溢れてきた光弾は、その場にいる者達への攻撃ではなくフィオーレ中に対しての攻撃となっていた。陸を焼き、街を破壊し、世界を壊していった。

時の魔力を喰らい、最早別の次元へと昇華されたアクノロギア。この男に勝てる術は、あるのだろうか。




次回…か次々回には最終話だと思います。
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