「どこなんだここ」
「知らねぇよ、必死に逃げてきたからな」
五神竜が一人、水神竜メルクフォビナを封じるためにエルミナの街へとやってきたナツ達。その街は住人が魚に変身する街であり、満潮時には街が海に沈んでしまう場所だった。そして今、何故か住人達に追いかけられ、ナツ達は身を潜めていた。
「水神の話をした途端、奴らの態度が変わった」
「祀っていた、という話は本当だったんですね」
「でも、『かつて』祀っていた…って言ってなかった?今でも水神信仰が続いてるってこと?」
「……それに、仮に今も祀っているにしても全員が全員信仰しているっぽく感じましたね……あの感じは…祀っていると言うより……」
「……つーかよー、マフラー返してくれよルーシィ…後マルクはいい加減俺らの方向けよ…壁だぞ向いてる方向」
水着の上を取られたルーシィ。そして、その際の光景をガッツリ見てしまったマルクはいつまで経っても水着の女性陣を見れないでいた。
「しょうがないでしょ、水着取られちゃったんだから」
「星霊の服に着替えたらいーだろー?」
「………そっか!」
「………もう一つ気になることがある。どうやら俺達以外にも人間がいたらしい…そいつはどうやら…俺たちが追いかけられたのと似た理由で捕まってるみたいだけどな」
グレイは止まったホテルの受付の男性(魚)のことを思い出す。彼は『水神様を狙う敵』と言っていたのだ。
「━━━つまり、実はこの街はその人間のせいでピリピリしてる状態で…気づかない間にやぶ蛇してしまってた…と……で、多分…水神竜メルクフォビナは信仰対象というより…この街の王族に近い気がします」
「…マルク、どういう事なの?」
「幾らなんでも…全員が怒るって言うのは中々無いでしょう…単に生物としての格が違うから神のように信仰されていると言うだけで、実態は…もっと近い存在だと思います…それこそ、何かしらの形で確実に顔を見れるような…そんな存在」
マルクの推理に一同は納得する。であれば、狙う敵を追いかけ回すのも理解出来るためである。だが、それが判明しても現状の打開策が存在しない。
「さて…どうしたものか」
「全員まとめて焼き魚にしちまえばいいんだ」
「だめよ!あの魚達は自分の信仰を守っているだけじゃない、そんなに悪い人達にも見えなかったし………私の水着を奪ったやつ以外はね!!」
「確かに悪い奴らじゃ無さそうだ、じゃなきゃ水中で息ができる薬なんて渡さねーだろうしな」
全員が魚たちに同情的になる。悪い奴らならば、遠慮なしに倒せていただろう。しかし、今回に関してはどちらかと言えばこっちが加害者になる可能性が非常に高い。それにより、皆のモチベーションが若干下がっていた。
「でも俺たちの目標は、水神竜を倒す事だ。ここの奴らに恨まれようが、それが仕事だ」
「……その事、なんだけど…エレフセリアの言葉を思い出してみて?『5頭のドラゴンを封じてみせよ』…最初、私も倒すのが目的だと思ってたけど…封じるって言葉の意味自体は色んな意味に取れる」
ルーシィの話に、マルクがはっとする。倒す、とは確かに明言されていなかったのだ。封じる、という曖昧な表現だったからこそ、逆に気づかなかったのかもしれない。
「…そっか、水神竜を文字通りの封印…もしくは魔力を消したり、魔法を封じたりしても封じることには繋がりますね…」
「そう…つまり、何を持って封じるかの定義がなされてないの……例えば水神が荒ぶる神として祀られていたら…それを説得して、怒りを抑えるのもまた封じることだと思うの」
「…!平和的な解決方法があるんですね!」
「可能性の話だけどね」
水神竜を倒すことに、一番乗り気でなかったウェンディが顔を輝かせる。平和的な解決方法があると言うのは、それだけでありがたい話なのだ。
「…………」
「そう明らかにつまらなさそうな顔をするな、お前が1番わかっているはずだ……全てのドラゴンが悪では無いと…倒すことじゃない、生き抜くことこそが私達の戦いなのだと」
つまらなさそうにしていたナツの頭を、エルザが掻き回す。それに恥ずかしがりながらも、大きくため息を着きながら…視線を上へとあげる。
「わーったよ!!この先ドラゴンの正体が分かるまで手は出さねぇ!!だけど少しでも仲間に傷をつけたら……滅竜する、必ず…!」
その目は覚悟の決まった目であった。そして、一同は改めてやるべき事を明確にしていく。
「そうと決まればまずは情報収集ね、水神竜は敵か味方か…この街はなんなのか…そして、私達より前に現れた人間の行方」
「サンキュ、シャルル……まとめてくれて助かる」
「つっても……街に戻って魚達の誤解を解くしかねぇよな…」
「話を聞いてくれればいいけど…」
「任せて!!あたしにいい考えがあるの!!」
こうして、ルーシィが発案した作戦を元に行動が起こされることとなったのであった。
,
「これ…魚に見えてんのか?」
「え?完全に魚じゃない……」
「ルーシィさん星霊のプルーのことも犬っていいますけど…どういう風に見えてるんですか…?」
ジェミニの力を借りて、姿を変えることに成功した一同。変身するのは彼自身の能力ではなく、その能力を他人に変身させることにも使えるのだ。そして、小動物程度になら複数人可能のようだ。但し━━━
「どうして私だけクラゲなんですか〜…!」
「ごめんね、魔力切れで…」
魔力が切れると、中途半端になってしまうらしい。中途半端と言っても…そもそも全員頭は人間の時と変わらないので、人面魚そのものになっているのだが。
「……まぁ、だからこそ俺は最後に回してくれて助かりましたよ」
そして、ウェンディの時点で魔力が切れてしまったのでマルクは自前で変身することになってしまった。モード悪魔龍
「……と、とりあえずこれで情報収集はできるわね!」
「この姿ならばバレることは無いだろう」
「本当にバレねぇとでも思ってんのか……?」
「……?」
こうして、情報収集を手分けして行おう…と思った矢先に、マルクは何かを感じ取る。だが、今ここで言うべきでは無いと思い全員と別れて離れきったのを確認した後に…人型に戻る。
「……こっちを見てるの、バレてんぞ……匂いの処理は出来ても、魚達とも違う魔力の感じ…そして、皆が離れてもここから離れなかったあたり…俺が目的か?」
「━━━━ふっ!よく分かってるじゃないか!!悪なる者よ!!匂いは消していたはずなんだが…なるほど魔力を感知したか!悪なる者らしいな!!ならば!!!この俺が!!!!裁いてやろう!!!!」
……現れたのは、金髪の男だった。だが、その肩にはギルドマークがありどこかのギルド所属だということは分かる。しかし、狙われる理由が思いつかないくらいには目の前の男に、マルクは見覚えがなかった。
「……なんだよ、悪なる者って…というか誰だあんた」
「冥土の土産に聞くがいい!!俺は。第5世代型
喋る度にポーズを取る男に、マルクはため息を着く。妙に既視感があるせいで心にしこりが出来てしまうのだが、明確にわかっていることは…目の前の男は敵だという事である。
「水神竜を倒しに来たか?なるほど結構!しかし悪魔でありながら人間のフリをするなど言語道断!!それが……貴様の1つ目の罪だ!!」
そのセリフの瞬間、男の手の甲に刻印が現れる。それはまるで、罪を認識させるかのようにくっきりとマルクに見えていた。そして、既視感の正体もついでに考えていく。
「2つ目!貴様の体からは滅竜魔導士としての気配も感じる!まさかそんなごまかしすらしようとは!それが2つ目の罪!!3つ目の罪は……自らを罪ある者と認識していないこと!!」
「お前の主観すぎるだろうが、法はもっと公平になれ」
「俺が法だ!!!!」
面倒臭いのに絡まれた、というのが後のマルクの談。相手の様子を伺いながら見ていたが、『マルクの罪』として数えた罪の分手の甲の刻印が強く輝いていく。しかし、罪云々は兎も角としても聞き逃せない単語がいくつか混じっていた。
「……第5世代…それにドラゴンイーター、だと?」
「あぁ!そうさ……!!」
・第1世代:ドラゴンに魔法を教えてもらった世代、これの該当者はナツ、ガジル、マルク、ウェンディである。
・第2世代:体の中に滅竜魔法のラクリマを埋め込み、魔法を使えるようになった世代。該当者は毒竜のコブラ、そしてラクサスである。因みに元イシュガルトップの八竜のゴッドセレナは8つも滅竜魔法のラクリマを体に埋め込んでいる。故に、8属性を扱うというとんでもない魔導士だった。アクノロギアに一蹴され、ギルダーツにも一蹴されたが。
・第三世代:ドラゴンに魔法を教えて貰いつつ、体の中にラクリマを埋め込んでいる世代。該当者は
・第4世代:滅竜魔法を使えるようにした人造兵器、該当者はなし。
「第5世代型は、ドラゴンを食べそしてその力を使えるようになった存在!!つまり、ドラゴンを食らうことで強くなれる存在なのだ!!」
「……………なるほど、ご親切にどーも………ん?あ、思い出した。お前ゴッドセレナみたいなんだ」
「ゴッドセレナ…確かイシュガルから逃げ出したみっともない奴だったな……俺が、やつと似ているだと?」
「シュバババッ!って感じのポーズがな……まぁ、ゴッドセレナも強かったが…唯一違う点があるとすれば…」
『ドラゴンを倒せる実力がある』または『ドラゴンを倒せる実力の者』がいるという所だけだ。そして今、その様なギルドのメンバーと相対しているということである。しかし、突如としてマルクが笑みを浮かべる。
「……ふっ…そう考えると…お前らのギルドは竜化の対策が出来てないってことか?」
「……」
滅竜魔法には、副作用がある。それは魔法を使い続けるとドラゴンになってしまうということだ。しかし、第一世代と第三世代の滅竜魔導士達は親のドラゴンによってそのリスクを回避している。第2世代のメンバーはその加護は無いが…ラクリマのみの為か竜化の話は彼も聞いた覚えがなかった。そして、話を聞く感じ第5世代に食べられたドラゴンが第一世代や第三世代の親のようにするのも考えづらい。つまり━━━
「無言か……じゃあ、使えるような対策はあまり出来てないんだな」
「さて、どうだろうな?どちらにせよドラゴンを喰らい、力を得る。そしてドラゴンを殲滅させる……それが我らディアボロス、滅ぼすのは正義!滅ぼされるのは悪!……それだけの話だろう」
「……で、そのディアボロスが一体なんの御用件で?」
「水神竜を喰らいに来た……つもりだったが、あぁ嫌な匂いが鼻につく…悪魔がいるとは思わなんだ……滅竜…ならぬ滅悪をしに来た」
「滅竜魔導士が悪魔を滅する?冗談も大概にしとけ」
「いいや、裁竜の力はそういう力だ……俺が悪だと思ったものを滅する事が出来る力なのだ」
その言葉で、お互いに2人は黙る。スァーヴァクは、完全にマルクを敵として認識しており…マルクも応対するために緊張を高めていく。そして、最初に動いたのは…スァーヴァクであった。
「裁竜の
「モード悪魔龍!
黒き鎧を纏うマルク。スァーヴァクの拳から放たれた魔法は、その鎧に撃ち込まれていた。このモードは魔力を伴った攻撃であれば直ぐに適応し、ダメージを無効化することが出来る………が、マルクは気づいていなかった。撃たれた箇所が、若干凹んでいたことを
「効かねぇぞ、お前の魔法は」
「なるほどなるほど……魔法を無効とは、あまりにも無法!!そうして自分が傲る為の力!!まさに傲慢!四つ目の『罪』だ!!」
手の甲の刻印は更に力を増す。だが、それでもマルクは安全策を取って鎧を解除することは無い。何故なら、相手はドラゴンを倒した可能性があるのだから。それ即ち、相当な実力者という事になる。
「そして……5つ目の罪!!
「だから魔法は…!!」
スァーヴァクは、マルクに飛び込んでくる。更に輝いている拳を振りかぶってくるが、それを鎧で防ぎつつカウンターを決めようとしていた。だが、それはあまりにも悪魔の力に頼りすぎている作戦だった。
「ぐっ!!」
「がはっ…!いいパンチだ……だが、悪魔ごときがいいパンチを打つなど言語道断!!6つめの罪!!」
クロスカウンターが炸裂する。思っていたよりも相手が頑丈だった故に、マルクのパンチでも相手は殴り飛ばされることは無かった。だが、マルクもマルクで魔法を無力化してだのパンチだけを受けた……と思っていた。
その瞬間、マルクの鎧に
「ッ!?なんだこれ…」
「裁竜の刻印は、相手に打ち込む技……相手の悪なる部分を食らって進み、そして溜め込んだ悪をその持ち主にダメージとして打ち返す……お前の罪は6つ、そして悪魔であることを加味すると…その鎧を上回れると考えている」
そして、鎧の殆どに龍の刻印が広がると……鎧は砕け散った。その事に、マルクは驚きを隠せなかった。
「悪魔因子の無効化……いや、浄化だな……汚水に付ければ聖水となり、悪意のある人間に放てば聖人となり……悪魔は、消滅する…!それが裁竜の力!!」
「鎧を破壊した程度で…!モード悪魔龍
マルクの体が肥大化していく。この形態は、単なるパワータイプ。だが、積み重なる怒りのようにその力は段々と強くなっていく。マルクは守りよりも、攻撃を重視する。そうでなければやられてしまうと思ったからである。しかし、これは悪手であった。
「デカイ!俺を見下ろすな!!7つ目の罪!!ん…?七つ、七つか…!貴様はそこまで罪を犯してしまったか!!」
「お前の法なんざ、知るか!!」
「いいや!!!知らねばならない!お前の罪を!!その為の、裁きの時間だ!!!滅竜奥義━━━━」
「させるか!!憤怒龍の
「━━━━
瞬間、スァーヴァクの体から7つの巨大な光が放たれる。そして、その光はマルクの体を飲み込み……マルク自身も予想だにしない程の激痛を与えていく。
「ぐ゙ゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔ!!!!!!?」
肥大化した体は削られていき、元の大きさへと戻っていく。炎で焼かれているかのような熱さ、傷口に手を入れられているかのような激痛。それが身体中に広がる。
「さて、我が仲間の元へと連れていこう…裁竜の力は俺が仲間と認識した奴らの元へと連れていく事も出来る…キリアが動いているのが確認できた…きっと、水神竜はもう既に終わっているだろう」
そして、いつの間にやら近くに寄ってきていたスァーヴァクは元に戻り動けなくなっているマルクの頭を掴む。
「くくっ…きっとお前の仲間もいるだろう……罪人の仲間は得てして罪人なのだ、その顔を拝ませてもらおう……」
「ぐっ…!」
そして、スァーヴァクはマルクを掴み…光に包まれたかと思うとその姿を消す。マルクは一瞬目の前が眩しくなった……と感じた直後、気づいたら別の場所へと移動していた。
「なっ…!?」
「マルク!?」
「お?戻ったかスァーヴァク」
「あぁ、キリア…水神竜はどうだった?」
「どうもこうもないっちゃ、この水神竜は偽物らしいっちゃ」
「おや…そうだったのかマッドモール…通りで君がいると思った…なるほど、大方キリアがこいつの仲間と遊んでいたかな?それで君が迎えに来たと」
「そうっちゃ、ついでにいきなり飛び出したスァーヴァク殿の回収も任されてるっちゃ」
そう言いながら、スァーヴァクはマルクをナツ達の元へと投げる。メンバーが駆け寄るが、その警戒心は目の前にいる敵達へと向けられていた。
「ふむふむ…むっ!!!そこの黒髪!!」
「あ?俺か?」
「貴様…悪魔因子持ちだな!!匂いでわかるぞ…!」
スァーヴァクはその場にいたグレイを睨みつける。その理由はグレイの体にある悪魔因子…滅悪魔法を習得しているグレイに、確かに存在するものだった。
「なんだテメー……やる気か?」
「臭いと言っているのだ!!悪魔因子、体に悪魔の力を宿すとは…!罪だ!!罪罪罪罪!!!」
「いいぜ…マルクをこんなボロボロにしやがって…!てめぇを滅竜して━━━」
一触即発の雰囲気。だが、それを遮るかのように彼らの上から凄まじい光がこぼれる。そしてその瞬間、
「今度は何よォーッ!!!」
ルーシィの悲鳴が、マルクの耳に響く。だが、それ以上に割れていく海にこの場にいる全員が巻き込まれていく。各々がそれに巻き込まれ、流されていく中で……割れた海の中心に1つの人影があった。
「す、水神竜様ーッ!!!」
「私の海が騒がしいな……」
「━━━人間……ッ!?」
青く、長い髪。どう見てもアクセサリーには見えない大きな角。しかし、どう見ても人間とそっくりなその姿は水神竜と呼ばれる存在とは思えない。
だが、海を割り現れたこと。いつの間にかいたホテルの受付の男(魚)の言葉。そう考えれば目の前にいるのが水神竜だというのは、恐らく事実だろう。
ボロボロになったマルクは、水神竜と呼ばれた男を見上げて…これだけのことが出来る存在を、今から倒す可能性があるのかと…緊張で体を強ばらせるのであった。
聖痕は自分(と仲間)に対しては裁竜と同じ属性を与えかつ威力をあげる(重複可)バフ、相手に対しては裁竜の滅竜魔法に対しての耐性を下げる(重複可)デバフとなる割と使い勝手いい魔法です。
刻印は悪魔因子持ちや悪魔には問答無用で大ダメージ、スァーヴァク(と仲間)に対して敵意や殺意などの害なす者はそれより弱い程度のダメージを与えます。
動きはゴッドセレナの3倍くらいやかましいです。