「ナツ様、早く帰ってこないかな〜」
雨のマグノリア。そこを行くは新しい
だが、そんな彼女の目の前に現れる2人の影。
「やっと見つけたぞ…白魔導士トウカ」
「…はい?」
「とぼけても無駄だ、何故妖精の尻尾に近づく」
青い髪を持つ青年、ジェラール。そしてマホーグ。二人の青年少女が、トウカの前に真剣な表情で現れていた。
「何故ってそれは…ナツ様がいるから…キャッ、言っちゃった」
「ナツだと?」
「そう!!あれは1年とちょっと前━━━」
ナツとの出会いをトウカが語ろうとした瞬間、マホーグの武器が振り下ろされる。整備された道には、ヒビが入る。その雨にも負けない大きな物音が、トウカを黙らせていた。
「
「あ、あの…誰かと勘違いしていませんか?確かに私はトウカという名前ですが、白魔術なんて知りません…私、水の魔導士です」
「その水の魔法は何処で手に入れたんだ?」
依然として睨みをきかすジェラール。その言葉に、トウカは答えなかった。少し黙ってから、ジェラールは再び口を開く。一つ一つ、事実を丁寧に話していく。
「調べは着いているんだ…その力はドラゴンから奪った物だろう。この所、各地で何者かに魔力を奪われるという事件が多発している。魔力を奪われた魔導士は、最悪魔力欠乏症で死に至る。そんな事件がここ数ヶ月で100件以上、犯人は
「な、なんの事だか…私……」
「…来い……!」
「いやです!!やめてください!!嫌っ!!」
ジェラールがトウカの腕を握り、連れ去ろうとする。その瞬間、マホーグの未来視の魔眼が直後に現れる未来を察知。空中に駆け、武器を振るう。その瞬間に
「━━━ウチのもんに、何してんだ」
「ラクサス…!!」
「た、助けてください!!この方々が妙な言い掛かりを…!」
「い、言い掛りかどうかは…ッ!?この…!」
何かを察知したマホーグは、ラクサスに向けて武器を振るう……つもりが、それよりも早くラクサスの一撃によって叩き落とされてしまう。
「きゃっ…!?わ、私の…未来視より、早い…!?」
マホーグの未来視は、どれだけ先を見ようとしても単位が『秒』から離れることは無い。だが、未来を見て相手の出方を潰し自らは攻撃を入れる。そういう戦法を得意とする。だが、ラクサスには通じなかった。つまりは
「その女を渡せ」
「理由もなくウチのモンは渡せねぇな」
「その女は危険だ、近づいてはならない」
「ギルドの紋章入れてるからにはどんだけ危ねぇ奴だろうと家族なんだよ」
ジェラールとラクサスの睨み合いは続く。家族を渡すつもりは無いラクサスと、危険人物を妖精の尻尾から離そうとするジェラール。どちらも、善意からの行為である。
「身辺調査はしたのか?何者か知ってて入れたのか?」
「身辺なんて誰1人知らねーよ、大事なのはもう仲間の一員って事さ」
「……例え、それが悪だとしてもか?」
「てめぇらも悪だろ?……ま、俺も正義の味方じゃねぇが…ギルドのモンだけは守るって決めてんだ」
雷鳴が鳴り響く。二人の男が睨み合う。妖精の尻尾最強の男と、かつて聖十大魔道の1人だった男。その強さは、聞けば誰でも強さを感じるだろう。
「━━━━マルクを、置いておけない。そい、つを…放って…おく、危険な…場所に、は…」
「へぇ……オドオドしてる、ってのは聞いていたが…芯が強えか?けどな…………
ラクサスがマホーグに睨みをきかせた瞬間、彼女の魔眼が…今までの彼女が感じた事の無い程に警鐘を鳴らす。幾つもの未来を、同時に見せる。しかしどれも同じ結末だ。一気に未来を見たせいで、マホーグは片膝を着く。
「ぐっ…!?」
「マホーグ!?」
「
攻撃潰し『潰し』。未来を読むことを自らの一手とするのであれば、マホーグは
「俺ァよ…ナツ達と違って甘くねぇ…てめぇがエルザとどんな関係であっても、ギルドのモンに危害を加えんなら……『殺す』」
再び雷鳴が鳴り響く。二人の男が睨み合う。だが、ジェラールは少し苦虫を噛み潰したような表情をしながら……妥協をした。
「━━━しばらく、マグノリアにいる。その女から目を離さんからな」
「いい落とし所だ、ここでやり合ったら互いにタダじゃすまねぇからな」
「…行くぞ、マホーグ」
「う、うん……」
マホーグはよろけながらも、ジェラールについて行く。彼女自身、自らを変わったと…多少は強くなったと思っていた。事実、彼女は強くなっていた。だが、ただ単純な事実が一つだけある。単に
そして、2人は雨が降るマグノリアの中を進んでいき…宿へと入っていく。
「……ジェ、ジェラール…どうする、の?」
「見張るしかないだろう」
「違…そうじゃ、なくて……あ、あの女…ほんとに、白魔導士…?」
「……」
ジェラールも、マホーグの言うことに一理あると思っていた。何故ならば、いくら何でもトウカが本気で怯えているように見えたからである。
「…見張っていれば、わかる事だ」
「それ、は……確かに、そう……幾ら、なんっ…でも……」
マグノリアでボロを出したくなかったのか?はたまた別の理由が?彼女を白魔導士トウカとしても、不自然な点が気のせいで済まされないほどにある。
「……幾ら考えていても答えは出そうにないが…」
「よ、様子を…見るしか、ない…って事、だね……………ジェラール…誰か、来た」
何かに反応して、マホーグは構える。扉がゆっくりと開けられ……そこに居たのは、先程まで対峙していた存在…トウカだった。
「まさかお前の方から来るとはな…白魔導士トウカ」
「貴方達は私のことを知っているのですね」
「色々調べたからな」
「ならば話は早いですね…邪魔ですわ、貴方達」
先程とは違い、ジェラール達を睨みつけるトウカ。その威圧感は先程までの怯えた少女とは到底思えないものだった。マホーグは武器を構えたまま、トウカを睨みつける。
「何故妖精の尻尾に近づく?」
「予想は着くでしょ?強大すぎるからですわ……あれほどの魔力が1つの場所に滞留している、大きすぎる魔力は破壊と混沌を産む。白の教義に反する者達……無に、返さねば。妖精なんて御伽噺なのですから」
「魔法を悪というなら、貴様はどうなんだ」
「魔法を悪とは言っていませんわ、大きすぎる魔力の滞留が悪なのです……というか、議論するつもりはありませんの」
そう言いながら、トウカは片手をあげる。未来視は見えていない。しかし、何かをしようとしているのは事実…ならばとマホーグはショートワープにて一気に詰め寄る。
「あなた達も、無になるのだから」
その瞬間、マホーグ達の力が抜ける。まるで、吸い取られているかのような感覚。そう、実際に吸い取られてしまっているのだ…魔力を。
「なっ…!?」
「ぐっ…うっ…!?」
「あぁ…貴方たちの魔力が流れ込んでくる。強大な魔力は『黒』を産む。そう、ゼレフのように。そうなる前に私は……世界を白く染めるのですわ」
段々と魔力が、力が抜けていくジェラールとマホーグ。だが、動こうにも凄まじい脱力感がそれを許してくれないのだ。
「このまま、だと…!!」
「━━━ぐっ…!?くああっ…!!!」
だが、突如としてトウカは叫び倒れてしまう。脱力感から開放された2人だが、突然起こった出来事にただただ困惑するしか無かった。だが、起き上がったトウカは…先程までとはまるで別人の…否。ラクサスに庇われていた時のような雰囲気を出していた。
「逃げ…て……今の、うちに……私の中の『アイツ』が…また、出てくる前に…!」
「ど、どういうことだ…!?」
「まさか…二重、人格…!?」
「早く…!ずっとは、耐えられ……!
同じ声にも関わらず、同じ一人の人間であるにも関わらず……聞こえてくるのは2人の人間の口調。この異常さに、2人は脱力感もあってか動けないでいた。だが……
「逮捕だァー!!!」
後ろから現れたガジルによって、腕を背中に回され拘束されていた。そしてあとからジュビア、レビィ、リリーが入ってくる。どうやら、ギルド側でも何か起こっていたらしい。
「ガジル!!今のうちに鉄で拘束するんだ!!」
「オウ!てめぇやっぱり黒だったな!!いや、白魔導士だから白か?ま、どっちでもいい…!」
「まさか本当にガジルの予感が当たるだなんて…!」
「お二人共無事ですか!?」
即座にガジルの鉄での拘束。だが、そうするまでもなく彼女は気絶しているようで一切の抵抗をしていなかった。
「…気絶しているようだな」
「……あ、あの……いっ…一旦、ギルド…行かない?」
マホーグの言葉に、全員が納得する。今のギルドにはマカロフも、ミラジェーンも、ラクサスも、ギルダーツもいる。余程の事がない限り、大丈夫だと判断したのだ。
そして、その余程も起こることはないだろう……と。そう思いながらトウカを連れて全員ギルドに向かうのであった。
.
ギルドに連れて帰り、全員が警戒する中で……トウカは目を覚ます。そして、腕を動かそうとして、支柱ごと両手で拘束されていることに気づいた。
「目が覚めた様だな」
「今はどちらのトウカだ?」
「わ、私です……白魔導士ではありません」
「……た、多分…ほんと……」
マホーグが警戒を続けるが…恐らくこの場で1番人の態度を見切るのがうまい人物の言葉に、全員がほんの少しだけ警戒を緩める。因みに、ウォーレンの念話はカウンターで何かをされそうという判断の元控えていた。
「さて…どういうことが説明してもらおうか」
「ジュビア達を騙していた理由です!!」
「妖精の尻尾に来た理由はなんなの?」
「白魔導士は強力な魔力が集まっているのを消す為、と言っていたな……『お前』は」
周りからの警戒と質問、それに少し押されながらもトウカは従順に従い説明していく。
「わ、私は……ナツ様に会いたいのは本当です。ですがもう一つ…付加魔法のエキスパートがいると聞いて……」
「エンチャント?」
「ウェンディの事か?」
「た、確か…アルバ、レス…との戦闘の、時っ……スプリガン12の…アイリーンの、技をッ……盗んで…せ、成長…したっ…て……」
ウェンディのエンチャント。それは単純なスペックの強化や属性の付与、そして耐性の上昇が出来るサポート魔法。だが、使い方によっては直接的な攻撃や人格付与なども行える魔法である。
「そうです…その方ならもしかして『分離
「なんじゃそりゃ」
「ほ、本来のエンチャントとは…逆の、使い方…つまり…何かを、外す魔法……」
「私の体は白魔導士に乗っ取られているのです…!分離付加術を使えば私の体から白魔導士を追い出せるかと…!だから、私は━━━」
ここで、トウカがまるで意識が途切れたかのように顔を俯かせる。いや、実際に意識を失ったのだ。それにより首がかくんと下を向き、俯いているような状態となる。
「━━━余計なことを言わないでくださる?『トウカ』」
「白魔導士か…!」
瞬間、拘束具を一瞬で破壊し立ち上がる白魔導士。ゆらりと立ち上がったその姿に、全員が一気に警戒を高める。
「トウカは知らないだろうけど…そのハイエンチャンター……丁度、私の下僕の近くにいますのよ?片付けておきましょうか…『水神竜様』………さぁて、貴方達も白に染まりなさい。私の下僕になるといいですわ」
「今、始末する…!」
マホーグがショートワープで飛び出す。体は『トウカ』の物でも、今意識に出ているのは白魔導士なのだ。止めなければ危ないと、マホーグの直感が騒いでいた。彼女が味わったあの脱力感は、未来視では予測できない。彼女の未来視は基本的に攻撃の意思を読み取り、マホーグ本人に警鐘として示す物。それがないということは、攻撃の意思は無いのにも関わらず与える魔法ということだとマホーグは予想していた。
そして、その考えに至ったのがもう2人。
「申し訳ないが…!」
「止まれ…!」
ジェラールとラクサス。速度に関しては、恐らくこの二人は最速だろう。3人が、一気に白魔導士を止めようと動く。だが、それよりも早く白魔導士は同じように腕を上げて………
ギルダーツは原作だとこの場面いませんがミスじゃないです
居ます、居てしまっています