FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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炎神竜イグニア

「死ぬ、間違いなく死ぬ…!」

 

ならばどうするべきか、五神竜と思われるドラゴンから放たれたのはただの炎の塊にあらず。強大な魔力から生み出された火球。ならば、その炎には魔力が込められているだろう。

 

「けど、俺は魔力が食えても…その魔法自体は…!多少の耐性はあっても、ナツさんレベルの耐性はない…!」

 

しかし、食うしかない。ナツ・ドラグニルが神の炎や雷を食べたように。ガジル・レッドフォックスが影を食べたように。別の属性の魔法を食べる様に、魔法ごと魔力を食うしかない。

 

「っ…!けど、それは暴食の力がないと…!今悪魔龍は使えない…!」

 

『それでもやらなくちゃいけない』と分かっている。悪魔の力抜きでも、食わねば死ぬと。ウェンディに会えなくなると。下手をすれば、そのウェンディを守れずに死んでしまうと。

 

「くっ…それだけは、それだけは…!嫌だ…!俺は…俺は━━━━」

 

そして、マルクは大きく口を開け…いつもよりも魔力を、魔法を吸い上げる。口の中が火傷を超える勢いだが、それでもなお喰らい続ける。

この大陸では、フィオーレにいた時よりもエーテルナノが濃い。故に平時ではマルクにとっては最早毒となるほどの大量の魔力に満ちていた。だが、それは『器』が耐えられなかっただけ。ならば無理矢理その器に収めてしまえばいいだけ。

 

「あぐっ…!はぐっ…!あぐっ…!!んぐ、んぐぐっ…!」

 

喰らい、喰らい、喰らい続ける。魔法は糧にしかならないのだと、自らに言い聞かせ全てを食らっていく。かつて戦ったアクノロギアの様に、暴食のグラトニーの様にひたすらに食らっていく。食らって、喰らって……そして━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ…はあっ…!?」

 

「おぉ、食ったか俺の炎を」

 

「マルクが…あの炎を…!?」

 

のぼせてる、を通り越して血液が沸騰していると勘違いするほどに高くなった体温。思考は全くまとまらず、体の操作が全くできない。口は閉じることが出来ず、入る空気が極寒のように冷たく感じる。『今すぐ死ぬ』という予感がマルクの中にあった。故に、咄嗟に魔力を消耗しようと動き始める。

 

「てめぇ!!何が手助けだよ!街を焼き尽くして…マルクまで焼こうとしやがって!!」

 

「が、ぐっ……ぐうぅ…!」

 

全身から、魔力をゆっくりと放出させる。強大すぎる魔力が、詰まりを起こしてしまっているのだ。だから、マルクはドラゴンフォースを発現させる。皮膚が鱗のようになり、魔力がより強く立ちのぼる。だが、それでも足りない…その中でも、状況は刻一刻と動いていく。メルクフォビアが海から水を撒き火を消していく。完全に消しきれていないものの、火を消すその姿に……巻き込まれていたエルミナの住人は喜びの声を上げていた。

 

「……さっきまで水で攻められていたのに、おめでたい連中だ…あれは街を守っているんじゃねぇ、自分を守っているんだ……なぁ、ナツよ。どんなに相性が不利でも、水をも燃やす炎は存在している…俺の炎のようにな」

 

「いいから!街の火を消せ!!」

 

「お前が消すんだ」

 

「……は?」

 

「いいのか?ボーッとしてるとメルクフォビアに全部消されちまうぜ?それに、時間をかければかけるほどあのガキが苦しむ事になる……お前へのプレゼントだよ。持続性は無いが、一時的に力を得られる。だろ?炎の滅竜魔導士……炎を食って消すんだよ、俺の炎を食らってなぁ!」

 

ナツはマルクに一瞬視線を向ける。マルクは未だ苦しんでいた。体内温度は凄まじく、体内から出される物も高温となってしまっていた。

口から垂れた唾液は余りの自らの温度の高さで蒸発し、汗も同じように蒸発していた。マルクの周りだけが、メルクフォビアの水の影響を全く受けておらず、乾ききっていた。

 

「誰が、お前の炎なんか…!」

 

「贅沢言ってる場合かよ……お前が炎を喰わなきゃ、街も助からねぇしメルクフォビアにも勝てねぇ……因みに、俺はメルクフォビアとはやらん…それじゃあお前が成長できねぇ」

 

「お前、何が目的なんだよ」

 

「おれはな━━━」

 

ドラゴンとナツは地面に降り立つ。そして、会話を続けていく。馬の耳に念仏とはよく言うが、マルクの耳に聞こえるだけ聞こえていた会話がそこで完全に聞こえなくなる。

だが、そんなことは今のマルクには関係がなかった。魔力を、一刻も早く消費しなければならなかったからだ。体から漏れる魔力が、段々と濃縮されていく。濃縮に濃縮を重ね……()()()()()()()()()()()()()

 

「マルク…!」

 

「ヴェン…ディ゙……来゙る、な゙…!」

 

「ゔっ…!?」

 

シャルルに連れてきてもらい、マルクの傍までやってきたウェンディだったが…彼の周りのあまりの暑さに、これ以上近寄れないでいた。

 

「なんて暑さなの!?あんた、無茶しすぎよ!!」

 

「はぁ、はあっ……!離れ゙、てろ゙ッ…!」

 

魔力で出来た結晶が大きく固まっていく。それさえも熱を発し、赤熱化していく。口の中に炎を、熱を溜め込み…渾身のブレスを放とうと構える。結晶は大きくなっていき…腕の周りで固まっていた。

 

「魔゙龍ゥ゙……の゙ォ…!咆哮ォ!!!!!!!」

 

「きゃっ!!」

 

魔龍、と言うにはあまりにも高温の一撃が放たれる。まるでレーザーの様なブレスは、メルクフォビアに向かって飛んでいく。その衝撃で、マルク達のいた建物にヒビが入っていく。そしてその一撃は……メルクフォビアの顔面に直撃していたが、直撃ではなく掠っていた程度だった。それだけでも、魔法の衝撃だけで怯ませ吹き飛ばしていたが。

 

「当たらな……ッ!?」

 

「違う!シャルル!!見て、上の海!!」

 

「あっ…!?」

 

「ッ!!」

 

あまりにも高温のブレス。それは上にあった海を…一気に全て蒸発させた。メルクフォビアを倒せるほどの火力はなかったにしろ、上の海を失ったことでメルクフォビアの攻撃方法を少しだけ減らすことが出来ていた。そして、一気に出された魔力によって先程まで感じていた高温も体調不良も結晶も砕け全て解決したが……代わりに脱力感が生まれてしまっていた。

 

「かはっ……!はあっ、はあっ…ウェンディ…今のうち…離れるぞ…」

 

「う、うん…!」

 

ウェンディはシャルルに掴んでもらい、そしてウェンディはマルクを抱きしめることでゆっくりと地面に降り立つ。そして、ふらつく足でグレイたちと合流していた。

 

「マルク!!無事か!?さっきの魔法お前が……」

 

「そんなことより…ナツさんの降りたとこに…向かいますよ……あのドラゴンと、一緒だと思います……」

 

マルクのその言葉にグレイ達も顔を見合せ頷き……ナツと謎のドラゴンがいるところまで移動するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━俺はな、お前と戦いたいんだよナツ。もっと強くなったお前と……どっちかが消し炭になるまで徹底的になァ」

 

ほんの少し時間を戻し、今はドラゴンとナツが降り立ってからの事。降り立った瞬間からドラゴンの体からは、煙が立ちこめていた。

 

「もう気づいてるだろ?俺の匂いに」

 

そう言いながら、煙は強く立ちこめる。そして段々とドラゴンの体を見えなくしていき……()()()()()()()()()()()。そこにいたのは、どこからどう見ても人間…しかし魔力の感じは先程までのドラゴンと同じ姿。

 

「俺の名は炎神竜イグニア……イグニールの実の子だ」

 

━━━今までの既視感は、当たり前である。何せナツからしたら…親の息子、つまりは兄弟のようなものなのだから。

 

「イグニールの子供だァ!?ふざけんなイグニールの子は……」

 

「知ってる、お前を我が子のように思っていたことは……だが俺こそが実の子、炎竜王イグニールの息子だ」

 

ナツはイグニアを睨む。頭では、匂いや見た目…魔力の質や炎の竜というのがそれを事実だと認識させている。確かに、目の前のイグニアはイグニールの血縁関係者だと言うのは、ナツでも理解出来ていた。しかし、心はそうもいかない。

 

「イグニールは純粋な竜だ!人間に変身したりなんかしねぇ!!」

 

「ドラゴンは皆これくらいの変身は出来る、水神竜も人間になれるだろう?ドラゴンには……お?」

 

その瞬間、ナツとイグニアは同じ方向を見る。マルクのいた方向からレーザーが放たれ、メルクフォビアに一撃を入れ上の海を蒸発させていたからだ。

 

「あの人間、中々やるな…多少『混ざり物』の様だが……」

 

「マルク……!」

 

「俺の魔力を食らって、そのまま吐き出したみたいだ。中々やるようだ……っと、話を戻すか」

 

炎に焼かれている街を見ながら、イグニアは再度ナツに視線を向け笑みを向ける。

 

「ドラゴンには家族を形成する習慣がねぇ、繁殖期に子を作り母親が育てる……父親とは二度と会わないのは当たり前だ。だからイグニールが人間と共に未来に行って勝手に死のうが俺には何の感情も湧かない。」

 

イグニールに対しての思い。ナツは拳を握るが、しかしナツもその言葉が事実だと言うのはなんとなく察していた。今まで関わってきた滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の親のドラゴンは、皆ドラゴンの家族を持っていなかった。つまりは、家族を形成する習慣がないというのはおおよそ本当のことなのだろう。

 

「俺達は400年前にアクノロギアから逃げて、このギルティナに来た。そして、生き残った五頭が五神竜としてこの地に残った。その力はやがてかつて恐れたアクノロギアを凌ぐほどに増した」

 

イグニア自身も、認めている事実なのであろう。今でこそ恐ろしく強い五神竜だが、彼らもアクノロギアに恐れていた時期があった。事実、今のナツ達でさえも1人でアクノロギアに勝つことは不可能だと認識しているからだ。あの男の恐ろしさは強さも技術もそうだが…竜を必ず滅するという命よりも大事と思われるほどに強い思いがあるだからだ。

 

「アクノロギアは俺が殺すはずだった。イグニールの仇なんかじゃねぇ……己の力を試すために……!!だが、アクノロギアは倒された…人間の手によって。

そのアクノロギアを倒したってのがイグニールの息子って言うからちょっと様子を見に来て見りゃ……弱すぎて話にならねぇ、大方複数の滅竜魔導士の力で倒したってところか」

 

「……仲間の力こそが、俺達の力だ」

 

「それじゃあダメだ、1対1(サシ)でやろうぜ…いずれな?だが今のままじゃ何も面白くねぇ、もっと強くなれ…もっと強くなれ…!燃えるような戦いをしようぜ?」

 

イグニアの願いは、ナツと1人で決着をつけること。それはイグニールの為でもなんでもない、自らの為の願いである。そのために、ナツに強くなることを願っていた。

 

「大丈夫、その気がないならやる気を出させてやるよ……その大切な仲間とやらを1人ずつ殺してでもなァ…?!」

 

その瞬間、ナツは飛び出していた。勢いよく飛び出し打ち込まれた拳を……イグニアはいとも簡単に受け止めていた。今、ナツの中でイグニアは敵となった。冗談ではなく、本気で殺されると直感で感じたからだ。

 

「ほう、感情で力が増幅するか…この力をメルクフォビアに使え」

 

「くっ…!」

 

「さもなくば、俺がやるまでもなく水神竜に仲間は殺される……じゃあな!また会おうぜナツ!!」

 

そう言いながら、イグニアは空へと帰っていく。ナツには睨むことしか出来なかったが……そこに仲間達が駆けつける。

 

「ナツー!!大丈夫ー!?」

 

「ナツさん!!」

 

「マルク!!お前体は…」

 

「ちょっと力抜けてますけど…大丈夫です」

 

「つーか…何だったんだアイツ」

 

「何か話していたようだが…」

 

「ナツさん…知り合いですか?」

 

その言葉にナツは悩む。知り合いと言われれば初対面の薄い関係、関係性と言われれば義兄弟という濃い関係。説明するには少し面倒な為にナツは悩んでいた。

 

「説明は後だよ!!あいつはナツにこの炎を食えって言ったんだ!!」

 

「そっか!あの炎を食べてパワーアップ!!」

 

「でもあんな奴の炎なんか食いたくねぇ!!」

 

ハッピーが説明し、皆は納得しているが…ナツだけが納得しない。無理もない、仲間に手を出そうとしている…というかマルクも殺されかけている以上、ナツは素直に炎を食べるのが嫌になっていた。

 

「そんな事を言ってる場合じゃないでしょ!?」

 

「ナツ!今はこの炎を使うしかないよ!!」

 

「ぐぬぅぅぅ…!」

 

ハッピーとシャルルに言われて唸るナツ。しかしそれだけイグニアの炎を食べるのはナツからしたら嫌なのである。だが、それではエルミナの街は燃えているばかりである。

 

「早くしろ!!状況わかってんのか!!」

 

「ナツさん!癪に障ってるのは何となく察しますけど……今は…!」

 

「ぐぬぬぬぬぬぬ…!!ちくしょー!!!」

 

グレイとマルクからも促され、いやおうなしにナツは炎を食べ始める。街のあちこちを走り回り、炎を食べながら走り続ける。その姿はさながらまるで━━━

 

「━━━なんか、ああいう虫いそうだよな…」

 

「虫って……」

 

そして、ナツは街を燃やす炎を食べ終わり……力を増した。その炎は正しく全てを焼きかねない、業火の炎であった。

 

「悔しいけど…この炎……イグニールの匂いがする…!おおおおおおおおお………!!力が湧いて来たァ!!燃えてきたぞォ!!!」

 

「ドラゴンフォース…!?いや、でもこれは…!」

 

マルクはナツの魔力の異変を感じていた。先程のドラゴンの炎を喰らい、いつものように力が湧いてきたことは分かる。しかし、魔力の質がいつものナツとは違って感じたのだ。

 

「っ…!」

 

マルクは、ナツが先程の炎を食ってパワーアップしたことは察していた。だが……その炎の質、魔力の感じに、少しの恐怖を抱いていた。これからメルクフォビアを倒さないといけないという覚悟を決めつつ、マルクはナツに少しだけ警戒心を抱いたのであった。

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