木神竜アルドロンの両手両肩背中の5箇所にそれぞれ点在する街、ドラシール。そこの左手部分の街に…彼らはいた。
「ドラゴンを眺めながら喰う飯は格別じゃのう」
「これから我々に食われるとも知らずに…」
「可愛い寝顔っちゃ」
「可愛いは、罪!!!!!!」
「やかましいっちゃ」
「まぁ、そもそも俺は可愛いとは思ってないが!!!」
「何なんじゃお前ほんと」
ドラゴンイーターのギルド、ディアボロス。そこには4人のドラゴンイーターがいた。スカリオン、キリア、マッドモール、スァーヴァクの4人である。ドラシールの左手の街のカフェで、アルドロンの寝顔を見ながら飯を食べていた。
「…というかちょっと待て、ワシ等今…アルドロンの左手の上におるんじゃろ?つー事はこの地面食えるのか?」
「試してみるっちゃ」
「よせ……木神竜アルドロンは心を読むと言われている。力を封じる前に下手に手を出せば何が起こるかわからん。だからこそ、5つのオーブを壊してアルドロンの力を封じる必要がある」
「全部レーク調べだけどな!!!!」
現在ドラシールの街では、白魔導士に操られた
「それにしてもワシ等以外にもオーブを壊そうとしている連中がいるとは……」
「放っておいても全てのオーブは壊れるかもしれんな…」
「動いてる4人は取り越し苦労っちゃ」
「ネバル、レーク、ダーツ、レイスだな…レイスだけは他3人と別行動しているようだが?」
「それはまぁ…置いていてもいいだろう………どちらにせよ、オーブの破壊という目的が共通していても、それ以降邪魔になる可能性がある。消しておかねばならない」
「そういうことならワシも一暴れしようかのう…ワシの『ペットの』匂いが微かに伝わるんじゃ」
「……ともなれば、俺も動こう…どの町にいるかまでは分からないがな…あの悪魔もセットでいるだろう」
キリアとスァーヴァクは、そう言いながらお互いに立ち別々に移動を始める。その姿を2人で見ながら、マッドモールとスカリオンも立ち上がる。オーブの破壊、そして同じようにオーブを破壊し回っている妖精の尻尾の抹殺である。
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ドラシール右肩の街。ここにはウェンディとシャルルがやって来ていた。オーブが放つ光の柱、それを見つけたウェンディは教会へとやって来ていた。
「光は…この協会からみたいね」
「待って…!シャルル、この匂い…!?」
やってきた2人が見た光景、それは謎の糸のような物に絡まれたギルドメンバーであった。このような魔法をギルドで使う人物は見た事がない……そもそも、ウェンディの認識では操られていないのは100年クエストに来ていた一同とジュビアくらいである。
「ウォーレンさん!マックスさん!ナブさん…!皆…!!なんなの、このドロドロ……」
「ウェンディ!触っちゃダメよ!!」
「……おや、この匂い…」
「またキタ…!」
「新しい獲物か」
2人の前に現れたのは3人の男。今の状況下で、敵では無いと判断する方が難しいだろう。
「…ネバル、相手するなら君の方が有利だ。風…いや、天空の滅竜魔法では君の魔法は破れない」
「……ワカッタ、コイツ…ドラゴンのニオイがする…!」
「っ!?私の魔法を…!?貴方達が皆をこんな風にしたのですか!?」
「ンベッ!!!」
一人の男…ネバルと呼ばれた男が口から粘着質の糸を吐き出す。即座にこの男がメンバーを拘束した張本人だと理解し、ウェンディは一気に戦闘態勢へと移っていく。
「これは…!きゃっ!」
「蜘蛛の糸、みたいな…!っ!しまった…!!」
「ぐるぐるぐるぐる」
そして、一瞬の隙を突いてネバルは2人に糸を当てる。そして両腕腕を胸の前で回しながら、まるで幼児のように言葉と動きを合わせていく。
「ダメ…!動けない…!」
「この糸、体に張り付いて…!」
「ぐるぐるぐるぐる」
「この…!天竜の翼撃!!」
ウェンディは糸を斬るために魔法を放つ。確かに、一旦は風によりネバルの放った糸はちぎれて散り散りになっていくが……
「無駄だ、放たれた直後のネバルの糸はどちらかと言えば液体に近い…乾燥すれば話は別だろうけどね」
「風の力じゃあ、液体は途切れさせても分ける事は出来ねーってこった」
「そんな…!?」
「ぐるぐるぐるぐる」
再び繋がった粘液により、ウェンディとシャルルは段々と身動きが取れなくなっていく。そして、ある程度粘液が絡んだところで…ネバルは2人を壁に貼り付ける。
「良くなったネバル……さて、自己紹介をしようかウェンディ・マーベル」
「どうして、私達のことを…!」
「僕の名前はレーク・イーシー、史竜のドラゴンイーターだ。史、と言ってもまぁ分かりづらいだろう…歴史、記憶、情報、記録……そう言った物を扱うドラゴンイーターさ……その力で、君達の記憶をこっそり覗かせてもらった」
「ドラゴンイーター…!?まさか、ディアボロス!?」
男の1人…レークと名乗る男が自己紹介をしながらウェンディの頭を掴む。撫でる優しさでもなく、握り潰そうとする厳しさでもない。ただ掴むことを目的とした掴み方だった。
「ウェンディに触らないで!!」
「情報は見るより、直接触れた方が細かいところを読み取れるんでね…ま、触れてる分だけでも問題は無いが使える時間が短い…まぁその間自己紹介をさせてもらおうか…君と今戦っていたのは粘竜のネバル…君とは相性が悪いというのは理解出来ただろう?」
「くっ……」
「そして、最後に残った一人が奪竜のダーツ。全てというわけにはいかないが、触れた相手の奪うことが出来るドラゴンイーターさ……まぁ手足とかを物理的には奪わないから安心してくれたまえ…さて、情報の読み取りは終わりだ」
「貴方達は何が目的なんですか!?」
ウェンディの言葉にキョトンとした顔をするレーク。まるで、そのような質問をされるとは夢にも思っていなかった…とでも言わんばかりの表情である。
「…今更それを聞くのかい?木神竜アルドロンを食らうためさ…その為にオーブ破壊をこなそうと思っていてね……で、そしたら今あそこでグルグル巻になってるヤツらが来たもんだ」
「丁度いいからってんで、ネバルに拘束して貰ったんだよ。そしたら俺とレークに旨みがあるからな…ま、こいつら程度の魔法じゃあたかが知れてるがな」
「しかし、記憶はどんな人物でも万物役に立つ。アルバレスとの戦闘は大いに役に立った…君達の記憶も遠目で見て読み取らせてもらってね、いやはや…実にいい記憶を見た」
ククク、と不気味な笑い声をあげるダーツに対してレークは満足そうな表情を浮かべていた。だが、レークもダーツも…そしてネバルも同時にウェンディの方へと視線を向ける。
「しかし、まぁ…君は
「っ…!」
「オレたち…オマエ、くう…!」
「っ!ウェンディ!何とかしなさいよ!!」
「ダメ!!動けない!!」
「オマエのチカラ、モラウ…風の竜、タベル」
「風じゃないです!天竜です!!」
「ぶっちゃけどちらでもいいけどね…ネバル」
「ぐるぐる」
そして、再び粘着質の糸によってウェンディは体をさらに拘束されていく。まるで本当の蜘蛛の糸のように巻き付けられていき…段々とその姿が見えなくなっていく。
「わっぷ…!?」
「ぐるぐるぐるぐる、ぐるぐるぐるぐる」
「シャ━━━━」
「ッ!!ウェンディー!!」
「見事な繭だね」
「最初の一口は譲ってやんよ」
体全体が覆われ、完全に姿が見えなくなり声すらも発声出来なくなってしまったウェンディ。そして、そのウェンディを壁から引き剥がしネバルは大きく口を開ける。
「イタダキマー……ガグッ!!」
だが、糸が絡み繭のようになった『それ』から足が飛び出してくる。そして、手も出て…顔の所も割れてウェンディの顔だけが露になる。
「コイツ…!!」
「へぇ…頑張るじゃん」
「伊達に滅竜魔導士を名乗っていないという事だね……」
「ウェンディ!!」
「ぷはーっ……!今度はこちらの番です!!全力でいきますよ!!」
と、言ってネバルに向けて走り始めたウェンディだったが……出せたのは手足だけで、未だ全身自体は繭となってしまっているのでバランスを崩しコケてしまう。
「全力でいきますぅ……!!」
「……ぐるぐるなのに、コイツ…動いた……」
「ネバル!一旦そいつは放っておいて下さい!どうせ貴方には敵わない!!」
「…………お前、何竜?」
ネバルは1度レークを見た後に、直ぐに視線を戻してウェンディに尋ねる。だが、質問の意図が読めなかったために改めてウェンディは伝えていく。
「私は天竜…天の滅竜魔導士です!」
「違う、繭竜……マユマユ」
「天竜です!!」
子供のような掛け合いを見ながら、ウェンディとネバル以外は呆れた顔でその光景を見ていた。だが、そんな様子からもネバルはすぐに攻撃体勢に入る。
「もう一度ぐるぐる」
「二度も同じ手は通じません!!」
「転がったマユマユ」
ウェンディはその繭となったからだを生かし、床を転がっていく。少し見栄えは宜しくないが…しかし、移動速度が早いのも事実である。ネバルはそんなウェンディに感心したのか、拍手しているが…その大きな隙をウェンディは見逃さない。転がった勢いでそのまま飛び上がり━━━
「天竜の鉤爪!!」
「ガッ!!」
「トドメ!!」
地面に叩き付けられるネバル。そのまま追撃を入れようとしたウェンディだったが、あまりダメージが入っていなかったのかネバルは糸を指から出して瞬時に移動していた。移動した先には……アルドロンのオーブが存在していた。
「オマエ、オモシロイ……だから今タベナイ……本当の目的、はたす…!ぐるぐる……どっかーんっ!!」
「オーブが…!」
「しまった…!」
「ニィ…!」
オーブを破壊したネバル。その瞬間、アルドロンが再び揺れ始める。これにより破壊されたオーブは2つ……残り三つを守るために、一同は動かねばならない。
「では、残りのオーブの破壊と行きますか……史竜の再現」
「おうよ……いくぞネバル!!奪竜の奪取!&奪竜の
レークが魔法を発動させた瞬間、彼らの目の前の瓦礫やネバルの乾燥した糸、石畳が変化していき……ハッピー、シャルル、リリーの3人となる。しかし、その目は虚ろでありまるで生きているとも思えない状態であった。
そして、その3人にダーツが触れたと思った瞬間3人から魔力の塊のようなものが現れ……そしてレーク、ダーツ、ネバルの3人に分けられる。
「ウ…」
「シャルルが…もう1人…!?」
「僕の魔法は…記憶や情報を元に人物を生み出す魔法…まぁあくまで魔法で生み出されたから、まるで意思なんて存在していないけどね」
「そんで俺の魔法は…相手から魔法や魔力を奪い…自身や味方に分ける技だ…この3匹の猫の魔法はお前らがよく知ってんだろ?」
「│翼《エーラ》…!」
ハッピー達エクシードの魔法は、羽を生やし空を飛ぶという単純な物。だが、戦闘能力を持つこの3人が翼を独自に得る事はかなり強力な武器となってしまうのだ。
「僕達はこのまま飛んでいかせてもらうとするよ」
そして、3人は羽を広げて別のオーブのある場所へと向かい始める。ウェンディは捕まったままのシャルルを見て、助けようとするが……
「ウェンディ!!先に行って!!このままだと他のオーブが壊されちゃう!!あの3人は危険よ!!」
「っ…!わかった!後で助けに来るから!!!」
「えぇ!!」
そうしてウェンディは、3人を追ってオーブのあった教会から出ていきこれ以上オーブを破壊させない為に動いていく。シャルルも、自分でなんとか抜け出せないかを試し始める。
「っ…!ほんとに、抜けないわね…!」
「━━━━シャルル!!っ!?み、みんな!?」
だが、そうやって試行錯誤してしばらく時間が経った頃に…マルクがやってくる。もう少し早ければウェンディと合流出来ていたのだが、どうやら入れ違いになったらしい。
「あんたウェンディと会わなかったの!?」
「匂いを追ってたらここに辿り着いたんだよ!!」
「なら街中のどこかにいるわ!!相手はディアボロスのメンバー3人よ!!厄介なのしか居ないから、行ってあげて!!」
「っ…!なんか全員ぐるぐる巻きになってるけど、その理由がディアボロスだな!わかった!!行って……うおぉ!?また……ッ!!ウェンディ!!」
そして、3度目の揺れ。恐らくまたオーブが破壊されたのだろうと2人は悟る。そして、破壊されたオーブがもしウェンディが追っていたディアボロスのメンバーだった場合……と考えたところで、マルクが全力で走り始める。
「すまんシャルル!!」
「えぇ!ウェンディをお願い!!」
そうして、ウェンディを助けに向かうためにマルクは走っていく。状況は教会内に入った時にある程度察したが……改めて情報を聞かされた時に、マルクはさらに焦り始める。幾らウェンディでも3VS1は危ないかもしれない、と思っているのだ。故に、疾走する。最悪の状況も一瞬頭に思い浮かんでしまうが…それを振り切って、マルクは行くのであった。
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ドラシールの右手部分の街。そこでは2人の魔導士が相対していた。妖精の尻尾最強の魔導士、ギルダーツ。そしてディアボロスのドラゴンイーター、スァーヴァクである。
「おや、こんな所でアイツらと同じギルドのメンバーと合うとな!!!」
「あ?何だテメェ……」
「ふむ……汝に罪ありき!!裁竜のドラゴンイーターの名誉にかけて!貴様を裁くとしようか!!他のお前らのギルドメンバー諸共な!!」
「ドラゴン…イーター…?ナツ達とはまた違ぇな…だが、敵ってのは何となくわかるぜ……そんで、カナに手を出すつもりなら…テメェ…俺がてめぇを『捌』いてやるからな」
「ほう!!俺と戦うのか!!罪を重ねているお前が!!」
「罪罪うるせぇな…来るなら来い、相手してやるよ」
手招きをして挑発するギルダーツ。それが挑発だとはスァーヴァクも分かっていたが……敢えて乗っかっていた。
「いいだろう!!その選択…後悔することになるぞ!!」
この街で今、ギルダーツとスァーヴァク2人の魔導士がぶつかろうとしていた。
史竜の再現:知識や情報、記憶にある物を無機物有機物関係なく再現できる能力。しかし、有機物…特に生物などを作ってしまうと指示されない限り微動だにしない。細かく指示出ししないとまともに動かない。
史竜の学習:技としては発動してないが、これを発動してる間は相手に触れたり相手を見ることによって記憶を覗くことが出来る。これを仲間に共有する技もある。見るだけでもいいが、触れたりしているとより長い間その情報を自分の魔法で使用することが出来る。
奪竜の奪取:触れた相手から魔法を奪ったり魔力を奪ったりできる。魔法を奪うと言ってもどちらかと言えばコピーして自分も使えるようにする魔法、というのが近い
奪竜の分前:魔法で奪った魔法や魔力、その他諸々を味方に分け与えることが出来る。尚奪ったものをそのまま渡す能力なので、1つ奪ったら渡せるのは一つだけである。1つの魔法を2人以上に渡すことは出来ない。