ドラシール左手部分の街。そこでは今ドラゴンイーターのネバルとウェンディの2人が対峙し睨み合っていた。未だ追いかけているマルクは追いついてはおらず、現状1VS3の構図となってしまっているが…残りの2人、レークとダーツは戦いに参加する気は微塵もなかった。そんな中で、レークの頭の中にスカリオンから念話が入る。
『レーク、聞こえるかレーク』
「なんだいスカリオン」
『単刀直入に言う、キリアとレイスがやられた…キリアは戻って来れそうだがレイスと連絡が全くつかない………撤退だ』
突如として言われる撤退命令。スカリオンは、今現場にいるディアボロス側のリーダーとして動いてくれている。それに従う気はあるが、レークは引っ掛かりを覚える。
「…分かった、その決定には従う前提として…恐らくマッドモールも一緒のはずだ、君達はどうしている?」
『
「…片方は魔人ミラジェーンか?それなら君が苦戦するのもわかる。だがもう1人は覚えている限りミラジェーンの弟のエルフマンかリサーナの筈だ…君やマッドモールが負けるとはとても……」
ここまで考え、レークは1つの答えを思いついた。記憶を読んだ際にでてきた白魔導士。水神竜の様に魔力を吸い取った者の魔力の増減の操作が可能だと。そうなれば、本来であればスカリオンに勝てない人物でも戦うことが可能かもしれない、と。
「……いや、わかった。撤退だったね、ネバル!撤退だ!!」
「……イヤだ、オレ!マユマユ喰ウ!!」
「ネバル!!」
「私はマユマユじゃないですし、食べ物でもありません!!いい加減にしてください!!」
ウェンディの髪が薄紫色へと変貌する。ドラゴンフォース…ドラゴンイーターを含め、
「ドラゴンフォース…!小さいながらに、その力を物にしているか…!」
「……それ、オレもできる」
「っ!!ネバルてめぇ!それは禁じられてるだろうが!!」
「でも、第五世代のは…少しチガウ……!」
「クソ…!こうなったらネバルは止められないか…!」
ネバルは舌なめずりを行い、完全にウェンディを餌として認識している。文脈的に考えれば、ドラゴンフォースを使うのはウェンディにも理解できる……が、レークやダーツが妙に焦り始める。
2人はネバルを制止しようとするが、ネバルは一切言うことを聞かずに…その体から魔力を漏れさせていく。
「くっ…スカリオン!ネバルがドラゴンフォースを使用した!どうする!?」
『━━━これ以上の恥はマスターに報告出来ん。散々暴れさせた後に…ダーツの力で無理やりにでも止められなければ…そのまま捨ておけ、妖精の尻尾も何人か道ずれにするだろうからな』
「…わかった、ダーツ…君が止めろとの事だ」
「奪えってか……面倒言いやがる」
「マユマユ…食べる━━━!!」
その瞬間、ネバルの魔力がさらに膨れ上がる。まるでその糸は、獲物を捕えるかの如くウェンディの体にまとわりつき…そして、獲物を効率よく食べるために溶かしていくかのような不快感のある魔力。
それを感じ始めるのと同時にネバルの筋肉は肥大化していき、髪の色も変色していく。
「あーあ、残るか?あいつの体」
「いいや、恐らく残らないだろうね……今までのネバルはある意味本気では無い…ネバルの本気は、ある意味これからだ」
1回り体が大きくなったネバル。その威圧感、魔力の『圧』はウェンディに恐怖を与える。だが、それをもっと味わせるかのように…ネバルは一気に跳びウェンディとの距離を詰め殴りつける。
「ぐっ!?」
何とか両腕て防いだウェンディだったが、その拳の一振だけで腕が軋み折れそうな程の悲鳴をあげる。耐えきったとしても、もう片方の腕による一撃がウェンディに襲いかかる。
「ハハァ…!!」
「ッ……!!」
腹部に、掌底の一撃が入れられる。しかしただの掌底では無い、ネバルの掌底からは謎の煙と泡立った液が付着しており、それらが纏まった掌底の一撃によりウェンディの服の1部は溶かされ消し飛ばされていた。だが、吹き飛ばされたウェンディよりも早い速度でネバルは跳び上がり……そのままウェンディをたたき落とす。ウェンディの下にあった建物は、その勢いで砕けてしまうが…ギリギリで耐性を付けたことでダメージを抑えることに成功していた。
「げほっ…!!っ…天竜の咆哮!!」
「粘竜のネバネバ咆哮!!」
ウェンディのブレス。だが、それに対してネバルのブレスは風によって切り刻まれるが…すぐさまくっつき、そしてそのままウェンディのブレスを飲み込んでしまう。
「風が効かない!?あっ…!!?」
ブレスが効かなかったことによる驚きが、ウェンディに隙を作ってしまう。ネバルは再び粘着質な糸を飛ばし、ウェンディの手足にくっつけていく。そのまま糸の先は左右にある建物へとくっつけられ…ウェンディは両腕両足を伸ばして拘束されるという状態になってしまった。そして、その拘束され隙だらけとなった体にネバルの一撃が━━━
「全属性耐性上昇!!
ウェンディの体に、ネバルの拳が突き刺さる。耐性を付けていても意味が無い、と言わんばかりにその一撃が意識を失いかけるほどに強く突き刺さる。そこからは……ただの蹂躙であった。
「…ありゃもーだめだな、折れるだろ心」
「………いや、まだ分からない」
腹部に、頭に、顔面に、足に、腕に……ネバルの拳や蹴りがひたすらに与えられていく。全属性耐性は伊達ではないのか、体には骨が折れるほどのダメージは無い。だが、その痛みは着実にウェンディの体力と心を壊していく。
「どうした?なにか思い当たることでもあったか?」
「念の為だ、ダーツ…少し手伝ってくれ」
「何をだ?」
「少し、興味深い魔法があってね…それを僕に付与して欲しいんだ。今から出す3人の魔法…
二人の会話は、戦闘を行っている2人には届かない。その間にもネバルの蹂躙は続いている。そうして暫く殴り続けている内に…ウェンディの首はだらんとぶら下がるようになる。そして、ドラゴンフォースも解けてしまう。
「はぁ……?マユマユ、死んだ?…………よかった、まだ生きてる」
「ん…」
ウェンディの顎を掴み、持ち上げるネバル。その反応から生きていることを確認したネバルは、建物に拘束していた糸の部分だけを解除し…ウェンディの手足に着けていた糸をそのままにして、今度は地面に倒して拘束する。完全に勝ちを確信したネバルは、ウェンディに笑みを向けながら猟奇的な雰囲気をそのままにしていた。
「どこから食べテ欲しい?手?足?お腹?ねぇ……返事しろよマユマユ、オイイ!!」
「ふぐっ!?ふっ…ふっ…!!んー!!」
「息、出来ないよマユマユ……ホラァ」
意識も朦朧としていたウェンディ。しかし、その状態のウェンディを弄ぶかのように…ネバルはウェンディの鼻と口に糸をつける。呼吸の出来なくなったウェンディは、空気を欲しがり声を出し暴れようとする…だが、拘束されている今それは叶わない。
「ふー!!ふー!!んー!!んー!!」
「苦しい?苦しい?マユマユ」
返事ができる状態なのを確認してから、ネバルはウェンディの口と鼻の糸を解除する。そして、舌舐りをしながらウェンディの体をじっくりと舐めまわすように見ていく。
「ホラァ…今度はちゃんと、返事しろよ?」
「ヒッ…!?」
「どこから食べテ欲しい?手?」
ウェンディの手が、反射で動く。しかし糸でまともに動かせない。
「足?」
足がすくみ、動くが……糸の拘束がそれを万全にさせることがない。
「お腹?」
ネバルの目が、ウェンディの体に狙いを定める。その恐怖が、何も出来ない自分が……ウェンディの心に限界をもたらす。
「うっ…うぅ……うぇ…!!」
「あれ、マユマユ泣いちゃった……」
ウェンディが涙を流す。仲間のことを思い出し、友であるシェリアの事を思い出し、常に一緒にいたシャルルの事を思い出し……そして、マルクの事を思い出し……
「困ったなァ……泣くなよ、マユマユ」
「っ………私は、1人じゃ何も出来ない」
ウェンディが唐突に発した言葉に、ネバルはキョトンとしながらじっとウェンディを見る。
「んぁ…?」
「怖いから…涙が出るんじゃない…!自分の力を過信していた自分が、恥ずかしいから…!」
そして、手足を拘束していたウェンディの糸が…ネバルの意思関係なしにちぎれていく。
「これだけは使いたくなかったけど…!私は1人じゃとても弱いから!!
「ッ!!」
ウェンディの体から魔力が溢れる。それは今までの魔力ではなく、全く異質の魔力。しかし、ウェンディはその魔力に身を委ねそして溢れさせていく。
「恐らく…たった1度しか使えない残留思念
纏うは緋色、賢の竜より名を預かっておりウェンディの今までの相手の中でも特に強大だった相手。そして、何の因果か体を奪われた経験がその魔力を付与させる。その者の名は━━━
「
アルバレスト王国、スプリガン
.
「っ…!?この魔力の感じ…なんで…!?」
未だウェンディの後を追いかけているマルク。追っている最中に感じた魔力の質。それは、戦争時に直に相対した人物の魔力。アイリーンの物であった。
「ッ…まさか、ウェンディに何か…!?早く追いつかないと…!」
匂いと耳は、ウェンディの匂いと激しい破壊音を捉えていた。故に、向かう場所にはウェンディが戦っているだろうという確信があった。そこに向かい、マルクは更に早く走り始めるのであった。
.
「マユマユ変身した!!」
「アイリーン・ベルセリオン…かつてこの体を奪われ心と体が入れ替わりました。その時の繋がりが、残留思念として僅かに残っていた…彼女の強大な魔力の全部では無いけれど!その1部を私に付与したんです!滅竜魔法の、母の力を!!」
そのまま、ウェンディはネバルを殴る。先程までとは違う強さに、ネバルは怯み吹き飛ばされてしまう。だが、それだけでウェンディは止まらない。
「はあぁ!!」
その顔に、鋭い蹴りが入れられる。更にもう一撃拳を顔に入れ、顎に掌底を入れる。それらの連撃が、さらにネバルを吹き飛ばす。
「マユマユすご…い……!!すご…ゴゴ……ゴゴゴ……!!!」
「っ!?」
明らかにネバルの様子が一変する。目はあらぬ方向を向き、舌はだらんと口から垂れ下がり、先程までよりも獣のような動きで一気に迫っていく。
「がはっ…!?」
「アアアア!!!」
ウェンディは一撃を貰うが……その瞬間に目撃する。ネバルの体がどんどん異形化していってるのを。額から角は生え、顔に鱗のような模様が浮かび上がり…身体中のあちこちから棘のようなものが生えていく。手足の指は尖っていき…爪は伸び、牙が生えてくる。
「何、この力…!?」
「ヴェ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」
「暴走、してる…!?」
体が異形化していく中で、ネバルは一切気にすることなくウェンディに殴り掛かる。殴り飛ばされても、何とか体制を建て直してネバルを睨みつけるウェンディ。その間にも、段々とネバルの体が変化していく。
「もしかして…これが第5世代ドラゴンフォースの代償!?」
「グガアアアアアアアアア!!!!」
体は異形化……否、ドラゴンへと変貌していく。顔は長くなっていき、尾が生え始める。爪は伸び、体が肥大化し、身体中の棘は更に太く伸びていく。
「竜化の進行が…!」
「グアアアアアアア!!!」
「くっ…!?そんな、アイリーンさんの魔力を持ってしても…押し負ける…!?」
竜化が進行しつつあるネバルの一撃は、アイリーンの魔力を使っているウェンディにもダメージを与えていた。竜化している影響で、魔力にも身体的にも強化されつつあるようである。しかし、それによって今ネバルの意思はまともに残っていなかった。
「ガァァァァァァアアアアア!!!」
「くっ…!」
『━━━何やってるのよおチビちゃん』
「っ!!?」
だが、その中で唐突にウェンディの頭の中に聞こえてくる声。忘れるはずもないその声…紛れもない、今力を借りているアイリーン・ベルセリオンの声だった。
『まだ私の魔力の1%も使えてないじゃないの』
「アイリーンさん!?なんで!?」
『貴方が私の力をエンチャントしたんでしょ?』
「でも、声が聞こえるなんて…!」
『話は後、どうしたいか言ってご覧なさい?私が力を貸してあげるわ』
アイリーンが喋っている間にもネバルはウェンディへの攻撃を辞めることは無い。そして、強力な一撃が与えられ吹き飛ばされたウェンディ。それでもなお、今は諦めることは無い。
「目の前の敵を倒す力を貸してください!!」
『目の前の敵を『殺す』力が欲しいのね?』
「違います!私達は誰も殺しません!!倒す力です!!」
『倒すと殺すは同義じゃないのね?了承したわ……ただ、彼はもう倒れることは無い。あそこまで竜化が進んでしまった滅竜魔導士はもう元には戻らない……殺すしかないわね』
アイリーンから告げられる真実。つまり、ネバルを倒して止めるためには…ネバルを殺すしかない、ということである。
「そんな…!?ダメ……っ!!体が、勝手に!?」
ウェンディの体が、彼女の意思関係なく動き始める。残留思念であるアイリーンが、ウェンディの体を操作しているのだ。そして、これまたウェンディの意志関係なく体に魔力が満ち満ちていく。
「す、すごい魔力…!!駄目です!アイリーンさん!!」
『これが私の魔力よ!!』
「ダメェェェェエエエエ!!」
向かってくるネバルに対して、アイリーンの渾身の魔力が向けられる。だが、ウェンディはそれに対抗できる訳では無い。そのまま魔力はネバルに放たれ……凄まじい爆発が起きる。
辺りは崩れ、ボロボロになった街。土煙が立ち込めているが、それは段々と消えていく……その中で━━━
「う、うぅ……」
「生きてる!!」
ネバルは倒れて意識を失っているものの、きちんと生きていた。戦いの傷でボロボロにはなっているが、それでも致命傷どころか放っておけば死ぬ…という程の傷でもなかった。
『分離エンチャントよ、かつてメイビスからフェアリーハートを取り出したりするのに使ったんだけど……』
「まさか、あの人の魔力を分離したんですか!?」
『そう、これで彼は
「もう、魔法が使えない…ということですか?」
『一時的な魔力欠乏症にはなるだろうけど…魔力自体は消え去ったわけじゃない、いずれ彼の中の魔力も回復するでしょうね……って、誰か来たわよ』
「え!?」
「いた!!!!ウェンディ!!!!」
聞きなれたその声、ウェンディがその声に振り向いたところに居たのは…マルクだった。マルクはウェンディが見つかったことに大喜びしながらよっていき、その体や衣装がボロボロになっているのを見て心配で目を見開く。
「ッ…!!大丈夫か!?」
「い、一応大丈夫だよ…敵は倒したから」
「そうか……ん……?」
「ま、マルク!?何!?」
マルクは何かを感じとったのか、ウェンディの匂いをそれとなく嗅ぐ。さすがに顔をガッツリ近づけて嗅ぐのはウェンディに申し訳ないので、それとなく…と言うだけだが。
「……いつものウェンディだ。けど何か……いや、ウェンディ」
「う、うん?」
「………
「………取り…憑かれ……?あっ!!」
ウェンディは思い当たることがあり、声を上げる。マルクの魔力感知はかなり高い方であり、アイリーンの魔力を使った事で混乱してしまっているのだと理解する。
「ち、違うの!!えっと……」
『……ちょっと、彼の肩に手を置いて?彼の魔力を感じ取る能力は高そうだし…魔力を通したら私の声聞こえるかもしれないわ』
「へ?ご、ごめんマルク…ちょっと、置くね?」
「え?う、うん」
マルクは戸惑いながらもウェンディのやることだから…と特に考えもせずOKを出す。それが確認できたからなのか、ウェンディの中にいるアイリーンが語り始める。
『さて、これでいいわね…』
「なっ!?まじで取り憑いてたの…?!」
『安心して、私から彼女にどうこうはできないから』
「えっ」
先程体を勝手に動かされたばかりだが…というのはウェンディはふと疑問に思いこそしたが、突っ込んでも仕方が無いとあえて沈黙を続けた。アイリーンはそのまま話を続けていく。
「……あ、そういえば結局…なんで私の中に…?」
『そうね…これ、全くの偶然なんだけど…私が死んだと思ったあの瞬間人格だけ貴方の中にエンチャントしちゃったの』
「「えぇー!?」」
驚愕の事実。つまり、あそこで死んでいたと思われていたアイリーンは、意識だけを残して生きていたのだ。今の状態を生きている…というのは変な話ではあるが。
『で、貴方が私の力を使おうとした反動で出てきちゃったって訳』
「ウェンディ!?アイリーンの力使ったのか!?」
「ざ、残留思念が残ってたから…魔力だけ使わせてもらうつもりだったんだけど……」
『ま、その残留魔力も使い切っちゃったけどね。新しい体が見つかるまでしばらくおチビちゃんの中で眠らせもらうわ』
「それはちょっと……」
『大丈夫、必要な時以外干渉しないから……それと、面倒だからエルザには黙っておいて』
「はい……」
黙っておけ、と言われてもそもそも『アイリーンは生きてウェンディの中にいます』はとてもじゃないが言えたものでは無い。というか、説明が面倒である。マルクはそう思い言葉こそ出さなかったが、黙っておくのには同意していた。
『さて、眠る前に白魔導士攻略の魔法を貴方に教えとかないとね』
「え?」
「それって……」
『分離エンチャント……白魔導士を
.
「なるほど…」
「へー、そんな方法が…」
「中々難しいですね……いえ、そんな…はい……」
「いや、謙遜することないって…ウェンディホントすごいし…」
「もー、やめてよマルク…!でも、何となくは分かりました」
「頼むぞウェンディ」
「うん…!」
傍から見たら、存在しない誰かを交えての会話。どう考えても異質な状態なのだが、問題は今この場で傍から見てる当人がいることである。
「なんかブツブツ言ってんぞ2人で…」
「ウェンディとマルクが不良になっちゃった…」
「は!?まさかあの幽霊の敵がまた!?」
影から覗くのはナツとハッピーの2人であった。彼らはドラゴンイーターの1人、霊竜のレイスと戦い勝利してからこちらに紆余曲折あってきたのだが…マルクとウェンディの様子を隠れて見てしまっていた。
「…ん……?」
「マルク?」
「…………ナツさーん!?ハッピー!?何してんのー!?」
「「あっ………」」
マルクは近づいてきた二人の魔力を感じ取り、2人の方へと声をかける。2人はマルク達へと慌てて近づいていき、2人の肩を掴み揺らしていく。
「大丈夫なのか2人ともー!」
「な、なんですか…?」
「なんかブツブツ独り言言ってたから……」
「え、えぇ……」
アイリーンの姿も声も周りからは認識できない。故に、少し見栄えが宜しくない状況にしか見えていなかったのだが…ひとまず無事だと分かると少し落ち着きを取り戻していた。
「あ、あの…少し姿の見えない知り合いとお話してたんですけど…でも、そのおかげで分離エンチャントが使えるかもしれません」
「何だそれ?」
「本来は人と魔法を分離させる魔法なんですけど…この魔法を使えば、二重人格の白魔導士を別々の2人にすることが出来るかもしれないんです」
「……トウカを元に戻してあげられるの?」
「元に…って、ハッピーそれってどういう……っ!!」
ハッピーの言葉、それにマルクが疑問を感じた瞬間……マルクは凄まじい魔力を感じた。何の魔力かは分からない。だが、まとわりつくような、全てを溶かし食らうかのような嫌な魔力を感じとっていた。
「この魔力なんッ…!?」
「うぁ!?」
「うわぁ!?」
「━━━マユマユ…マユマユ…!ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
「ぐぶ…!?!」
全員に糸が付けられる。だが、ウェンディのは凄まじい勢いで飛ばされており…ぶつけられた糸の勢いだけで、一瞬呼吸が出来なくなるほどのダメージを負っていた。
「……まさか、これほど相性がいいとは」
「へへっ、意外なところでお前が強くなれたな」
現れたのはレークとダーツの2人……そして、
「………テメェら!!なんだ!!」
拘束されている糸を一瞬で蒸発させ、抜け出すナツ。その表情は既にかなりの怒りを持っており、ウェンディに不意打ちを入れたことが彼の怒りに火をつけていた。
「ネバルの糸を蒸発させる…記憶の通りだね、ナツ・ドラグニル」
「ああ!?不意打ち入れて……覚悟できて……!!」
「…ナツさん、俺がやります」
怒りのままナツが相手に飛び込もうとした時、マルクがそれを制止する。いつもであれば、ナツは構わず飛び込んでいただろう。だが、珍しくその言葉でナツは止まっていた。
「この先でウェンディの力が必要かもしれません…それに、ナツさんの炎であればさっきみたいに糸を蒸発させれる…この街の教会にシャルルや他の皆が捕まってるんです」
「……」
「…ウェンディに不意打ちを入れたのは…いや、傷つけたのはあいつらだ。ウェンディがボロボロになった今…ナツさんとハッピーで運んであげてください」
「マル、ク…」
「……分かった、また後でな……勝てよ」
「えぇ、当たり前です」
先程のダメージで、意識が少し遠のいているウェンディ。それを少しだけ見て、マルクはナツに連れてってもらうことを選択する。去る直前に、一言だけを送り…ナツはウェンディとハッピーを連れて去っていく。それを、レークとダーツの2人は見届けていく。
「………で、なんでそこに倒れてるやつがもう一人いるんだ?」
「僕の魔法さ…とは言っても…本来の使い方を超えた使い方だが」
「あ?」
「
「奇跡ィ…?」
「僕の魔法の欠点を保管してくれたのさ…僕の本来は『史竜の滅竜魔法』、記憶からとって…そうだな…君たち風に言うのであれば『モード記史竜』と言ったところかな?
簡単に消えず、そして自己で思考し動いてくれる最強の兵隊!それを僕は作れるようになった!!しかも、僕の魔力は再現時に多少減るだけ!!」
「……そうか、よかったな」
マルクの体から魔力が溢れ出る。魔力の吸収を抑える布を外し、存分に魔法を使える状態へと移行する。長々と相手が話してくれていたおかげか、その体には濃くも大量の魔力が溢れていた。
「……とりあえず、3対1でも関係ない…今からてめぇらはぶっ倒す…!ウェンディを、あれだけ傷つけやがって…!!」
「はっ……好きな女を傷つけられて頭に来ているってとこか?」
「だが……残念だね、君の相手は僕達3人じゃない」
「あ?」
「
その言葉と共に、レークとダーツの周りに人影が現れていく。そして、それに混じるかのように暴走しているネバルが飛び上がり影と共に並んでいく。
「君の相手は!!
「……っ!!」
並び立つはナインハルトを除いた11人のスプリガン12。その魔力は凄まじく、記憶の再現であるにも関わらず本物かと思われるほどの圧を出していた。だが、マルクにはもう一つ気になっていることがあった。
「っ……!
「……へっ、それがこの俺…奪竜のダーツの力だ…奪った力を誰かに渡せる力でもある…」
「僕の能力で滅竜魔導士達を再現…そしてそれらをスプリガン12に付与…まぁ数は足りなかったんだけどね?呪力に関しても…
時間が無くて、1人1種類ずつだけだけどね…数も足りなかった」
つまりは、最強のスプリガン12が呪法と滅竜魔法を備えて来たということである。凄まじいまでの超強化。そして、相手のネバルを含めた12人が相手というのが…マルクに緊張を与えていた。
……だが、それ以上にマルクの中では怒りが煮えたぎっていた。
「……お前ら2人は戦う気がないんだな」
「見物させてもらうよ、力を使いこなせているかどうかを確認もしたいしね」
「そうか……そこから下ろしてやるから……覚悟しとけ!!!!!」
怒号。その瞬間、マルクの魔力は弾けるかのように溢れ出す。溜め込んだ怒りが、魔力が、彼に敵を倒す力を与えていく。だが、敵はかつて戦った最強の敵…それらが強化された以上…マルクは苦戦を強いられてしまうであろう事は……誰の目にも明らかなのであった。
モード記史竜の理屈としては、FIRETVスティック付けたらYouTube見れるようになったテレビ
外部パーツでやれること増やしたって考えといてください