FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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三対の竜

「━━━ファリス達との合流が無かったら、この場で黒月山(こくげつやま)吹っ飛ばすんですがね」

 

「どんだけキレてんだ……まぁ気持ちはわかるけどよ」

 

「それに私達の消耗も軽くは無い……ん?」

 

「この感じ…」

 

黒月山での一件後、一同は山の洞窟から無事脱出することが出来ていた。しかし、消耗もそれなりにある中でファリスとトウカと合流しないまま決戦をするのも少し危険だと感じる一同。マルクの魔力感知もあり、少なくとも山に居ないことだけはわかっているのでどこかに探しに行くしかないのだが…その時一同の目の前から一人の男が歩いてきていた。

 

「確認…黒月山とはここだろうか……ム?」

 

「何だこいつ」

 

「相当な実力者ってのは魔力の感じからして分かりますし…」

 

「刀…剣士か」

 

「くんくん…この匂い、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)か」

 

剣士で、滅竜魔導士で、実力者。だが敵意がないのは気配で察知しているので、一同は周りに対する少しの警戒だけで目の前の男性にはあまり警戒心を抱いていなかった。

 

「肯定、そなたらは……いや待たれよ…推理……上半身裸…変態とその仲間」

 

「この人天然タイプだ」

 

「大人しいだけのナツって感じ」

 

「いい人そうですね…」

 

目の前の男に少し呆れているマルク、ルーシィ、ウェンディ。だが、ナツは気にすることなくそのまま会話を続けていく。

 

「俺ァナツ・ドラグニル。炎の滅竜魔導士だ……にしてもまさかこっちの世界にも滅竜魔導士がいたとはなァ」

 

「否定…拙者、アースランドより参った者…いや召喚されし者……異世界転生ゆえ!」

 

「…?」

 

「「いせかいてんせー…?」」

 

「物語の一種ね…私達とは違う世界に召喚されたりした人が活躍する話なんだけど……似合わないわねぇ…」

 

「「へー……」」

 

ルーシィの説明により納得したウェンディとマルク。だが、どうにもウマが合うのかナツと目の前の男性はそのまま楽しく会話を続けていた。

 

「俺らもアースランドから来たんだ」

 

「奇遇!拙者はセレーネを討つ為に…」

 

「目的同じかよ!」

 

「奇遇!!」

 

「……五神竜の1人を討とうとする…滅竜魔導士…?」

 

少し警戒度を上げるマルク。エルザとグレイも同じだったのか、その表情は少し険しいものになっていた。何故ならば、セレーネという存在自体があまり知られていないにも関わらずその名を知っている事。そしてそれを狩ろうとする滅竜魔導士……可能性としては、目の前にいるのはディアボロスの一員というものであった。だか、明確な答えが無い以上警戒をあげるだけに留めていた。

 

「じゃあもう仲間じゃねーか!」

 

「それはさすがに…困惑……」

 

逆に…ナツは一切の警戒をしていなかった。無論、目の前の人物が今まであった人物とは違うかもしれないが…現状敵対ギルドという状態だ、警戒はするに越したことはないのである。

 

「……って、そういや名前聞いてなかったな!」

 

「ッ!!失礼した、拙者スザクと申す」

 

「というか…召喚って言ってたけど、星霊魔法みたいに?」

 

「誰が呼んだのでしょう……」

 

「考えられるとしたらエレンティアの人達だろうけど…」

 

なにせ、水の翼(アクアエーラ)という世界を超える魔法を使えるのだ。そして、ここに来る直前に起こったアースランドからエドラスに行った際もマルク達は転移した形であった。つまり、エレンティアには安定した異世界人の召喚が可能な技術があると言うことである。はっきりいえば、途方もない話だ。

 

「それより変態って言ってるけどよー…俺らの格好見て変態と思うのは時期尚早ってやつじゃねーのか?単に上半身脱いでるだけだろ」

 

「テメーは今全裸だけどな」

 

「うおっ!?いつの間に!」

 

「今すぐ服着てもらっていいですか?ウェンディに見せないでください」

 

「きゃー!」

 

「………ぷっ…ぶくく…ぶくっ……全裸…ぶぶっ…」

 

ウェンディの目を塞ぐマルク。そう、突然にグレイが全裸になっていたのだ。上半身の服は捕らえられた時に奪われているために、普段の脱ぎ癖が悪化しているという事だろう。しかし、それが面白かったのかスザクと名乗った男性は噴き出していた。

 

「妙にツボに入っちゃってるんだけど…」

 

「感性が思ってたより幼いですよこの人」

 

「グレイ!服を着ろ!」

 

「愉快!なんて愉快な者達…!ぶくく……」

 

「そんなに面白ぇか?」

 

「…………………………全裸」

 

「ッ━━━━!!」

 

ボソッと呟くハッピー。それがより笑いを誘ったのか、遂に声に出せないほどのツボに入って背中を向け笑っているスザク。辛うじて、呼吸を少しだけ整えた後にこちらに視線を戻す。

 

「ふ、風呂敷しかしてない猫が…ぜ、全裸て……ぷぷ…愉快!愉快すぎる!!ぷぷっ…!」

 

「全裸ネタに弱いみたいだね」

 

「ウェンディ、近づいちゃダメよ」

 

「と、ところで……そなた達…黒月山というのはここで合っているだろうか」

 

「……まぁ、一応ここだと思う。セレーネ本人が言ってたし…勝手に飛ばされて説明されただけだから、違うかもしれないけど…セレーネもここにいるはず」

 

「感謝」

 

セレーネ本人が言っていたことを全面的に信じるのであれば、ここは黒月山ということになる。 その説明を聞いて納得したのか、スザクはぺこりと頭を下げていた。

 

「拙者、討ち取って来ますれば」

 

「ちょっと待て!そいつは俺達の仕事なんだ!」

 

「そなた達は愉快な者だが…こればかりは譲れぬ故。モタモタしておれば、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に先を越されるやもしれず」

 

「「「「「!!!!」」」」」

 

「ふぇ…妖精の尻尾…?」

 

「ウム、我らの敵と聞いておる」

 

この言葉で、疑いを持っていた者は確信の答えに辿り着いていた。目の前のスザクは、第5世代滅竜魔導士ドラゴンイーターのみが所属するギルド…ディアボロスのメンバーである。

 

「炎の滅竜魔導士に、黒髪の氷魔導士、赤髪の女剣士、金髪の星霊魔導士、小さい子供2人…藍色の髪の滅竜魔導士と紫髪の滅竜魔導士、猫2匹…………あ………………妖精の尻尾とはまさか!困惑!!」

 

「そこまで情報与えられて今気づいたのか……」

 

「ちょっと待ってよ!あたし達別に敵じゃ…!」

 

人数が少し多いので、それで気づけなかった可能性もあるのかとマルクは考えたが、猫二匹はどう考えても分かるネタだろうという答えにも達してしまったため、つい呆れてしまっていた。

 

「ディアボロス…それが我がギルド…」

 

「あ、あいつらの…!」

 

「愉快な者達なれど、我がギルドの仲間を傷つけた敵…覚悟」

 

刀に手を添えるスザク。その瞬間感じた、魔力のゆらぎ。マルクは攻撃が来ると感じ取り、山勘で防御をしようとする。しかし、それよりも早くエルザが飛び出した。

 

「グッ!!」

 

「エルザさん!!」

 

瞬間に鳴り響く甲高い金属音。だがエルザは構えて防御したのに対して、既にスザクは納刀を終えていた。見えぬ一撃、エルザはそれを防御したが…刀はその一撃のみで砕かれていた。だが、それ以上に━━━

 

「ぐあっ!?」

 

「我が剣に反応した、だと…?」

 

エルザの腹部から、血が噴き出す。エルザはスザクに斬られてしまっていたのだ。防御しきれなかった訳では無い筈だが、それを理解できるのはスザクとエルザのみである。

 

「エルザー!?」

 

「きゃあああああ!?」

 

「ウソだろ!?エルザが一撃で!!」

 

「ッ…!エルザさん失礼します!!ウェンディ!治療を…!」

 

エルザを担ぎ上げ、ウェンディのところに連れていこうとするマルク。咄嗟のこととはいえ、今1番近いところにいるマルクにスザクが攻撃しない理由は無いのだ。

マルクは担ぎ上げた瞬間に理解した、『斬られる』と。それでもエルザを捨て去る理由は無いし、自らの命を諦める理由にもならない。

 

「お前…!ふざけんなよ!!」

 

「ナツさ━━━!?」

 

「よせナツ!!こいつ格が違う!!」

 

それに応えるかのように、ナツがマルクを通り過ぎスザクに向かっていく。だがエルザですら反応しきれなかった攻撃を、今の疲弊したナツが受け切れるとは限らない。マルクは一瞬で頭を回して、答えを出す。

 

「━━━━我がギルドの仇!切捨御免!!」

 

「が、は…!?」

 

気づいた頃には、ナツは大きく斬られ血を吹き出していた。そしてスザクは納刀を終わらせており、誰も剣筋を見ることは叶わなかった。

 

「ハッピー!シャルル!」

 

マルクはエルザを投げる。一瞬で意図を察したのか、シャルルは綺麗にエルザの背中を掴んでキャッチに成功していた。そして、今度はナツを回収しようとした矢先……()()()()()()()()()()()

 

「おやおや、これは邪魔をしてしまったかな?」

 

「セレーネ!!」

 

現れたのは月神竜セレーネ、そして配下の2人。対してこちらは怪我人が2人と敵がもう一人。治すのにウェンディが手を回さなければならないのでそれで1人と、守るためにもう1人。シャルルとハッピーはもちろん戦えない。つまりは2人しか現状戦闘要員になれないのだ。圧倒的に不利な状況である。

 

「どちらが先に私を倒す等という物騒な話が聞こえたものでな…やれやれ、天下の五神竜が狩りの獲物とは…まったく、おもしろくない話しよのう」

 

「こやつがセレーネ…」

 

「…!今だ!ハッピー!」

 

「あいさー!」

 

マルクは瞬時にナツを放り投げる。それをハッピーがキャッチして、ルーシィが担ぐ。エルザもグレイが担ぎ直していた。だが、その瞬間に状況が一瞬にして動き始める。

 

「ナツとエルザの怪我がひでぇ!退くぞ!」

 

「はい!」

 

「マルクも来い!!」

 

「ハクネ、ミミ、逃がすな」

 

「はっ」

 

「押忍!!!」

 

「行かせるか!!」

 

先にグレイ達が逃げる。それを追う為にセレーネの部下が動く。マルクは一同に合流して逃げるつもりだったが、ハクネとミミと呼ばれたセレーネの部下2人に対して距離を詰め攻撃を仕掛ける。

 

「させぬよ」

 

「なっ…!?」

 

だが、それはセレーネの魔法によりマルクがセレーネとスザクの間に転移させられたことで失敗となった。マルクは瞬時に頭を切替える。こうなればもう仲間に追いつく術は無い。

 

「すー……ウェンディ!!2人を頼んだ!!」

 

「ッ……!わかった!!」

 

逃げながら、ウェンディはそう返事をする。そうして3人がこの場に残された。だが、どれも癖のある強者である。睨み合いと圧の掛け合いで、大気が震えていた。

 

「最期の別れはしないのか?」

 

「ああ?最期じゃねーよ、俺はもう…絶対ウェンディのとこに戻るって決めてんだ」

 

「見栄っ張りを…そんなに大事か?」

 

「惚れた子だ、大事も大事…泣かせないために、五体満足で絶対に帰る」

 

「面白い…ならばそこの剣士諸共頂こう」

 

クスリと、笑みを浮かべるセレーネ。だが、その笑みとは裏腹に立ち上る魔力は五神竜と言われても遜色ないほどに大きく濃い魔力であった。それに対してスザクは先程までとは比較にならないほどの魔力によって、刀を抜くつもりであった。先程までに掛けられていた重みとは、全く別次元の重さである。

そして、マルクは既に越魔龍の力を解放しており得た魔力も遠慮なく出し惜しみするつもりもなく使うつもりだった。魔力の量だけで言うのならば、このふたりと遜色ない程だった。

 

「すまぬが…竜を喰らうは我がギルド、五神の竜が首……そして我がギルドの仇の首…貰い受ける…いざ尋常に…!」

 

「ほざけ悪食(ドラゴンイーター)。てめぇを倒して、セレーネも倒す。ディアボロスには今までの狩りを返すし、セレーネは今ここで討伐する…魔龍の力も、七悪魔の力も…ここで食って腹壊しておけ…!」

 

「さぁおいで……月の魔力がお前らを殺す」

 

睨み合い、圧を掛け合い、魔力で押し合い……三者三様とも呼べるこの戦い。全員が目の前の敵を全て倒すと覚悟を決めながら……今、戦いの火蓋が切って落とされたのであった。

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