FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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月落とし

睨み合う三者。異様な雰囲気を漂わせながらも、狙いすます。この場にいるのは狩人とその獲物。だが、三者三様それぞれが睨み合う2人を獲物だと認識している。勝ったものが強者、ただそれだけである。その中で、最初に動いたのは……スザクであった。

 

「………!」

 

納刀された刀の柄に手を添え、足に力を込め、腰を捻り刀を隠す。『斬りかかってくる』という認識をマルクがした直後、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「━━━ッぶねぇ!!」

 

「抜刀術か、面白い」

 

「かわした…それに、防がれた…!?」

 

抜刀術。居合切りとも呼ばれるその剣術は、研ぎ澄ませば研ぎ澄ますほどにその速さが格段に跳ね上がる。まず、刀剣を使う人間でなければその速さには目が追いつくことは無い。当然、それだけ早ければ刀の鋭さであれば鋼鉄でさえも切り裂くことが可能。そして、これら全てが魔力を使わなくてもなせる技術である。

そしてそれを、スザクは魔力を込めて行える。つまり、段違いの威力を誇るのだ。

 

「小細工入れてくるような魔法じゃなくて良かったァ…!」

 

そして、それをマルクは完全な直感のみで防いでいた。腕に全魔力を集中、それにより肥大化したラクリマが高密度に固まり斬撃を肉にまで届かせなかったのだ。だが、その一撃だけで纏ったラクリマは破壊されてしまう。

 

「では、受けるが良い…月明かり照らす神代の炎……月光炎!!」

 

月の神から放たれる炎。その範囲にスザクは勿論、マルクも捉えられる。だが、2人にはなんら問題がなかった。越魔龍であるマルクには魔法による攻撃はほとんど意味をなさず、スザクは━━━

 

「━━━炎を斬るか」

 

「……バケモンかよ」

 

セレーネの炎を、切り裂いていた。炎は散り、霧散する……普通はそうである。しかし、目の前の相手は五神竜と呼ばれた存在。1つの攻撃が、そう簡単に終わるはずないのである。

 

「だが、月は輝きを失わぬ…!舞え、月光蝶!!」

 

「ぐあっ!?」

 

散った炎の一欠片が、全て蝶へと変貌していく。それは触れるものを傷つける月の蝶。抜刀術の弱点である、『一撃の後』それは攻撃した直後には必ず隙が生まれてしまうというものだ。速度を保ったまま連撃を行い、1度納刀した攻撃は再び速度を出さなければいけないために…セレーネの月光蝶を受けてしまっていた。

 

「『食えば』輝けなくなるよなァ!?」

 

「ちっ…!五神竜の魔力を食らって…!」

 

「今はでっかい器があるんでな!そもそもさっき散々温泉で漬けてくれやがった癖に!!」

 

だが、どちらにせよマルクには関係ない。魔法である以上食えば良いだけなのだ。月光蝶を食らい、マルクはセレーネへと迫っていた。

 

「越魔龍の轟砲!!」

 

咄嗟に放たれるブレス。すんでのところでセレーネはかわし、地面へと着陸する。そして、それと同時にスザクも受けながら月光蝶から脱出しようとしていた。

 

「━━━クルヌギ流抜刀術…!冥界落とし!」

 

スザクの魔法により、全ての蝶が切り刻まれる。その中から、傷を負ったスザクが現れるが…セレーネの魔法は完全に斬られ消滅してしまっていた。

だが、それ以上に今はなった魔法でセレーネの様子が一変していた。

 

「クルヌギ…だと…!?そなた……」

 

「滅竜…クルヌギは拙者が食した。そして得たのがこの力、剣聖の滅竜魔法」

 

「剣聖竜クルヌギを…食した、だと…?なるほど、ドラゴンを食らい…ドラゴンの力を得たのか。人間の分際で…」

 

「ッ…?」

 

マルクはセレーネの魔力がブレたのを感じた。スザクが気づかないほどの一瞬。だが、その直後にゆったりと…海流が島を削るかのような…認識できないほどゆったりと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「私も食うつもりなのか?」

 

「否定、そなたは我がマスターに献上する」

 

「……ちっ、悪食ギルドのマスターもやっぱ悪食かよ」

 

「くくく…ここまで思い上がった人間風情は久しぶりよのう…中々に面白い。どおれ、久しぶりに少しだけ本気を見せてやろうか…!」

 

「ッ!!」

 

その時、マルクは地面が明るく照らされていることに気づいた。日が出てきたか?そう思ってしまうほどに、その輝きは増していた。そして、上を見て気づいた。()()()()()()()()()()()()。この世界に来た時も、セレーネの余興の時も、月が大きくなっていた。つまり、セレーネが何かする際は……月が大きく見えるという事だろう。それだけで、凄まじいものである。

 

「月が…!」

 

「月欠けたるは疾風の如し…月影刃」

 

「ッ!!」

 

スザクとマルクの元に降り注がれる斬撃の雨あられ。先程の炎はイグニアやナツの物には程遠く、この斬撃も一つ一つはエルザやスザクの物と比べれば大したことは無いだろう。だが()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「くっ!!速い!」

 

「この程度かァ!?」

 

「ちっ…通じんか…!しかし、それでこそ、か…!?」

 

マルクは魔力を全開にし、セレーネの攻撃を受けていた。直接喰らえばそもそもの無効化は出来るのだが、マルクの魔力性質による減衰では一気に0に持っていくことは難しい。それでも、充分受け切れる程度の威力にまでは抑えられていた。故に、そのままセレーネへと向かい攻撃を行うつもりだった。

それに対し、スザクは刀で弾くしかなく…大量の斬撃の対処がしきれずいくつか受け始めていた。

 

「てめぇらまとめて吹き飛びやがれ!越魔龍の激昂!!」

 

「━━━クルヌギ流抜刀術!!冥界輪廻!!」

 

マルクを中心に魔力による爆発が起こる。それと同時にセレーネの斬撃諸共、スザクはマルクの技を切り裂いて防いでいた。だが、逆にセレーネには防ぐ手段が無かったのか…その爆発に巻き込まれてしまっていた。

 

「……ちっ、まさか今の流れで俺を仕留めにこようとはな」

 

「…お主の技は、拙者には届かん…セレーネにはその限りでは無いみたいだが」

 

「……ふん」

 

……スザクの技は、マルクに届いていた。ナツやエルザほど深い傷では無いが、ラクリマでの防御を咄嗟に行ってもなお皮膚は切り裂かれ、血がゆったりと流れていた。

 

「……踊れ、人間共…月の魔力に」

 

「……踊るのはてめぇらだ、俺に踊り食いされちまえ」

 

「貴様らを斬り…我らが食らう…!」

 

マルクは少し、考え始めていた。今この場における3人の関係、少し気を抜けば相性の悪い相手と戦うことになってしまうのだ。

セレーネの魔法は、物量を持ってしてもマルクには通じない。しかしスザクには物量をぶつけることによりダメージが与えられる。

マルクの魔法は、質量はあっても物量はない。よってスザクに斬られてしまう上に、魔力性質による魔法や魔力の吸収も抜刀術メインのスザクには大して通用しない。直感による防御もそう何度もできる訳では無い。

 

「月影掌!」

 

「越魔龍の激昂!」

 

「奈落落とし!!」

 

つまり……セレーネはスザクに強く、スザクはマルクに強く、マルクはセレーネに強い。下手にセレーネを倒してしまえばマルクはスザクと戦う羽目になり、セレーネがスザクを倒してしまえばセレーネはマルクと相対する事になってしまう。

 

「ちっ…!魔力で慣らしたとはいえ…厄介な性質だ…!」

 

「クソが…!どんだけ斬れ味いいんだよあの刀…!」

 

「ぐぁっ…!強敵…!これ程か、五神竜…!」

 

と、ここまで考えてふと思い出した。マルクはセレーネの手によって、セレーネ自身の魔力に漬けられていた理由。それが未だ判明していないこと、そして…未だこの戦いにおいてドラゴンの姿を現していないのだ。つまり、本気を出していないのだ。

 

「だが……お前の剣閃、実に懐かしい。まるでクルヌギと戦っているようだ。それに…お前の猛攻…ヴァレルトを思い出すが…」

 

「は?ヴァレ━━━」

 

「だが、次の一撃でトドメだ……楽しかったぞ?クルヌギの剣の」

 

突如として出たヴァレルトの名。だが、その詳細を聞く前にセレーネはスザクに声をかけていた。よほどご執心なのか、その表情こそ笑っているものの…目は笑っておらず、その魔力は先程よりも多く揺らいでいた。

 

「否定…拙者はスザク、貴様を討つ者だ」

 

「クルヌギの剣に敗れるのも悪くは無い……それもまた、一つの歪み」

 

「………は、何ほざいてやがる。さっきから魔力ブレブレだぞ?どんな関係性かは知らないが、剣聖竜クルヌギって奴と余程懇意にしてたみたいだな?セレーネ」

 

「何…?」

 

「ッ!貴様……」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()。スザクに集中さえしてもらえれば、不意を突きやすいのは事実である。だが、マルクはどうしても気になっていた。五神竜と呼ばれているセレーネと、ヴァレルト…彼の父親であるイービラーの関係性を。

 

「やっぱりブレた、どういう関係性だ?それに、ヴァレルトって言ったな……あんた、俺の親父とどういう関係だ?」

 

「…親父……?ヴァレルトは、人類を殲滅する派閥だった筈…いや待て、貴様()()()()()()()()()()()()

 

「…何の話を…!」

 

「おっと!!」

 

スザクの抜刀術が、会話中のセレーネとマルクに向けられる。1秒にも…0.1秒にも満たない速度での二撃。セレーネはかわし、マルクは直感でラクリマを分厚くする。

 

「ッ…づゥ…!」

 

「…なるほどなるほど、お前の力はよぉくわかった。傷ついた体で隙を突いた形とはいえ、ほぼほぼ同時の上下左右からの4連撃。人間にしては最上級の強さ……だが、いくら強いと言ってもクルヌギを倒したというのは信じ難い」

 

「は、そんな…?!」

 

マルクは精々が自分とセレーネに向けて、一撃ずつだと思っていた。しかし現実はマルクには一撃、セレーネには4連撃だったのだ。つまり、マルクには『これでいい』と思われているのだ。

 

「肯定、実際に倒したのは我がマスター…真のドラゴンイーターゲオルグ様故」

 

「人間が…ドラゴンを…」

 

思い出されるのは、大魔闘演武決勝の後に起こったドラゴンとの戦い。傷ついた体だったとはいえ、あの時だれもドラゴンに勝てなかった。しかし、そのゲオルグという人物は倒したのだ…ドラゴンを。

 

「ほう…そしてその肉を食ったのがお前」

 

「肯定」

 

「やれやれ…如何なる理由があるにせよ、あのクルヌギが人間に敗れるとはなぁ」

 

「……疑問、そなたとクルヌギは如何なる関係か」

 

スザクもマルク同様クルヌギとセレーネの関係性が気になっていた。この言葉から察するに、過去を知るなにかであろう事は容易に想像がついていた。だが、次に出された言葉を聞き…2人は驚愕に満ちる。

 

「それを知ってどうなる……ま、よいか…お前が食ったドラゴンはな……()()()()()1()()()

 

「ッ!」

 

「危ッ!!」

 

地面がひび割れ、セレーネの魔力が二人に襲い掛かる。だがマルクは咄嗟に魔力でガードをする。しかし、スザクには防ぐ手立てが無かったのか、そのまま吹き飛ばされてしまっていた。

 

「どうしてくれようか…ずっと迷っておった。まずはお前の腸から引きずり出してやろう」

 

「ぐッ…!謝罪…は、せぬ!!ドラゴンは人間の敵ゆえ、我らディアボロスが一匹残らず食す!」

 

「…勝手に決めてんじゃねぇぞ!!ドラゴンにも人間にも色々いるからな、ディアボロスも五神竜も…俺らの敵なら全員倒す!!」

 

何度目かも分からないぶつかり合い。セレーネはマルクに、マルクはスザクに、スザクはセレーネに…それぞれダメージを負わされていた。故に、次のぶつかり合いで決めるつもりで、全員が魔力を放とうとしていた。

 

「滅竜奥義!!」

 

「クルヌギ流抜刀術!!」

 

「貴様如きがクルヌギの力を使おう等と!!」

 

「越魔━━━」

 

()()━━━」

 

今までの型よりも腰を低く。足を広げ、突破力を高める。スザクの魔力が黒く溢れ、周りの空気がスザクを中心に荒れ狂う。その勢いに、セレーネは驚いていた。

そして、マルクは腕に魔力をひたすらに貯め、まるで竜巻のように回転させる。エーテルナノ同士の擦れあいが摩擦による電撃と熱を巻き起こし、()()()()()()()()()。雷の魔法と比べればちゃちなものかもしれないが、しかしこの電撃は魔力を食らう。

 

「これはクルヌギの型ではない…!?それに、この紫電は…!」

 

「独自に編み出した改良型也!!」

 

「強い敵を倒す為に作った技だ!!参考人は炎と雷と天の仲間だ!!」

 

セレーネに向かって、スザクとマルクが飛び込む。決して協力している訳では無い為に、セレーネとお互いを対象とした技になっているが…それでもこの強力な技のぶつかり合いは、セレーネに大きな傷を与えることが出来るかもしれない。

 

「冥界黒煉斬!!!」

 

「紫電一閃!!」

 

「ぐぁああああああああああああああああ!!!?」

 

強力な技のぶつかり合い。三者全員が深くは無いダメージを負ってしまい、満身創痍となっていた。マルクとスザクは何とか着地することは出来たが、セレーネだけは地面へと落下してしまっていた。

 

「ば…バカな……この私が…人間、如きに…!人間如きに…!」

 

「逃がすか…!!」

 

「くっ…!?てめぇら待ちやがれ…うぐっ…!」

 

セレーネは水の翼(アクアエーラ)を開き、どこかへと逃げようとしていた。それを追い、足を引きずりながらスザクも追いかけようとする。マルクも追いかけようとしたが、痛みにより膝を着いてしまい……そのまま2人が通った瞬間アクアエーラは閉じてしまった。

 

「マルク!!」

 

「ナツさん…!?ハッピーまで…どうしたんですか……」

 

「おい!あの二人どこいった!?」

 

「…正確な場所は分かりませんが、恐らくは…別の世界に行ったかもしれません……だからセレーネは居なくなった…この世界から…そのはずなのに…」

 

マルクは天を見上げる。セレーネが近くにいた事で気づかなかったが、来た時よりも魔力が膨張しているように感じていた。何か今起こっているのだけは、何とか理解が追いついていた。

 

「…何が起きてるんです?」

 

「魔力が暴走してやがる、あっちこっちから『手』が生えてきてよ」

 

「…セレーネは居なくなった、けど暴走は静まってない…暴走し始めたらセレーネは関係なくなるのかもしれません…導火線に火をつけた奴を倒しても導火線の火は消えない…みたいな感じで」

 

「一体どうしたらいいんだ!?」

 

「一旦皆の所に戻りましょう…セレーネがこの世界に居ない以上、セレーネよりもこの世界の暴走を止めないと俺達が巻き込まれてしまうから」

 

「うし、そうすっか!」

 

そうして、ナツとマルクはハッピーと共に一旦別れたみんなの元へと戻るのであった。




単に相性の問題なだけで、セレーネ(人間体)が弱いとかでは無いです。
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