「がおがおー!」
「早ッ…!」
ディアボロスの黒滅竜騎団の1人、白虎竜のハクとマホーグの戦い。ハクは自らの魔法と、受け取ったウェンディの天空の滅竜魔法を使いマホーグへと向かっていた。
対してマホーグはショートワープと未来視の力により何とか攻撃を避けれていたが、天竜の力と元々の白虎竜とやらの力により凄まじい速度を手に入れていたのだ。
「白、虎竜……のッ…!力、使わ…ない、の…!?」
「使う必要も無いでしょ、僕のもう1つの魔法とウェンディの魔法だけで十分戦えるもん」
「あっ、そ…!」
ハクの魔法、それは糸を伸ばして相手を包み込んだりする魔法である。だが、その力はただそれだけの魔法では無いのだ。それが何となく理解できているからこそ、マホーグはそれをひたすらに避けていた。
「そうそう、僕ねぇ…もう二人倒してるから…ピンクの髪のお兄ちゃんと…金髪のお姉ちゃんの2人をね、人形にしたんだ!あ、あと猫さんも!」
「ピンク…金髪……猫…」
連れてこられたメンバーで思い当たるのは、ナツとルーシィ、そしてハッピーの3人。あの二人も相当な実力を持っていて、しかし負けているということは人形にする魔法自体はほぼ避けることは難しいという事である。そもそもナツは下手に燃えるもので戦おうとしても、魔法ですら燃やすか溶かすかして無力化してしまうために並大抵の魔導士は相手になる事すらない。それどころか並大抵と比べて強い魔導士であっても、まともな方法では魔法は通じないだろう。つまり
「ほーら、お人形にしてあげる!」
「だから、当たらない…って…!」
そして、マホーグの未来視はそれを予知する事が出来る。魔法であるが故に、使えないような場所では発動はしないが…彼女の未来視は常に発動している。彼女自身に危機が訪れる時、それを察知し彼女に届けてくれるのだ。そして、それを彼女はショートワープ等で対処する。故に避けることが出来ていた。
「おー…お姉さん凄いねえ」
「褒め、られても…嬉しく…ない」
「けどね、単に力を受け取っただけじゃないよ…これでもディアボロス黒滅竜騎団の1人…単に使う魔法が強いから、なれた訳じゃない」
「へぇ……どうでもいい、けどね…!」
マホーグはショートワープで一瞬でハクの後ろへと回り込む。彼女の持っている武器は大剣、それを縦に分割して使う双剣、そして柄が剣先へと変形する大槌へとなる。この武器に触れた魔法は、例外はあるが基本破壊される。今回は大槌によってハクの頭を叩こうとしていた。
「━━━強いのは
「ッ!?」
自身の目では何も見えていない、相手は何も動いていない。ただの指の1本すらこちらに向いていない。なんなら、目すらこちらに向いていない。しかしそれでも、マホーグは感じていた。『避けねば』と。
咄嗟に大槌を地面に当てて、横へと逃れるマホーグ。離れても、何か起こることも無く、何かある訳でもない。だがマホーグは感じていた。『今動かなければやられていた』と。
「ちぇっ、避けちゃったか」
「何、を……」
「言ったでしょ?僕の魔法には今…ウェンディの力があるって」
「……で?」
「単にある訳じゃない、天竜の力の1つは風を動かす力……
「ッ…!?」
「お姉さんの魔眼…未来を見る能力ってさ、相手が攻撃しようとしたら発動するんでしょ?それで、先に叩き潰すわけだ。
なら、ずーっと攻撃を飛ばしとけばいいんだよ。風に乗せて、ぴゅーっとね!」
簡単に言ってくれる、とマホーグは心の中で舌打ちをしていた。自分自身すらも分からなかった弱点、確かに攻撃の瞬間を読みそこを叩いて潰すことでマホーグは戦っていた。それが、魔法をずっと行うことで回避されるとは思ってもみなかったのだ。
ハクの魔法の1つは、相手を人形にすること。だがその魔法は一瞬で終わる。発動するという動作はあるが、それはマホーグが未来視出来ていたのだ。先に結果を知っているからこそ、ショートワープによるずらしで回避が行えていたのだ。その魔法を、風に…空気に乗せて今も尚漂わせている。発動してしまえば、あとは不可視の魔法がぶつかるまで待てばいいだけなのだ。
「け、けど…風を起こしてるところなんて、未来視じゃ…」
「同じ事だよ…ずっと風をゆっくり出してるんだ。壁に当たり、反射して…天井や床にも当たって反射して…ゆったりと、この辺の空気は動いている。見えない魔法に、意識を割かれ続けるといいよ」
「ッ!!」
瞬間、3回連続で発動する未来視。自分が人形にされる未来が3回も見えたのだ。当然、それに合わせて避けるマホーグ。だが、さっきハクが言った言葉が本当ならば…既にこの空間には人形化の魔法がうじゃうじゃと飛んでいることになる。仮に武器を振り回したとしてもその魔法を壊せるとは限らない。壊せたかどうかの確認も分かりづらい。更に振り回し続けたとしても、無駄に体力を使うだけ。
「ッ……面、倒ッ…!」
「何度でも言うよ……僕はディアボロス黒滅竜騎団の1人なんだ、強いんだよ」
「……仕方、無い…真似っ子…だけど…!」
そう言いながら、ハクを睨みつけながら陣を描く。それはさながら六つ星が描く星座の様。そう、彼女は僅かな間だがジェラールとメルディ…
「━━━
「わっ…?!」
咄嗟に避けるハク。驚いた様だが、しかしそれだけだった。避けられない訳では無い、そもそもジェラールの物と比べればその威力は慣れてないというのもあり格段に劣っていた。
「へぇ…!他の魔法も使うんだね!!」
「━━━マギル、ティ……ソドム…!」
「ッ!!うああああああ!!!」
そして、魔力で出来た剣を正面から飛ばし…同時にショートワープして直接握った同じ剣で切り裂くマホーグ。これはメルディの魔法だが…痛覚に直接作用する魔法である。幾ら強かろうが、当てれば激痛も伴う魔法。あまり慣れていない為に、2人の魔法を使うのは気が乗らなかったが…慣れていないものでも使わないと勝てないと判断したのだ。それに、使えること自体知っているのはジェラールとメルディの二人だけ…マルクやウェンディ、当然他の誰にも言っていない。これならば勝てる……マホーグはそう考えていた。
「━━━なんてね」
「え…!?」
完全に切り裂いた…そう思っていたが、彼の背中にはいつの間にか大量の人形が覆い被さっており、痛みを届ける剣は届いていなかったのだ。
「あのね…お姉さん達の情報は、僕の仲間が全部出してくれてるんだ…知らないことがあるとすれば、アルドロンの上にいなくて…尚且つアルドロンの上にいたメンバーの誰一人として関わってない間だけ…お姉さん、アルドロンの上にいたんでしょ?」
「ッ…!」
「なら…ぜーんぶ、知ってるから…!お姉さんの使う魔法も、全部ね!」
「ッ…!け、ど…それで…負けるなんてこと、無い…!」
「知ってたら対策は取れるのさ、けど知らなかったら対策は取れないでしょ?
「何を…ッ!?」
気づいた時には、マホーグの足元には大量の人形がいた。人形単体では…と思ったが、振り払えない。どうやらハクの操作する人形はかなりの力を持っている様であり、一気に掴まれると逃げることが難しくなるようだ。
「その人形達にはね…綿以外にも詰め物があるんだよ」
「…だから、何…!」
「中に入ってるのはウェンディの魔法…つまり、僕とウェンディの共同作業って事なんだ〜!」
「ッ…!」
歯ぎしりをしながら、睨みつけるマホーグ。だが、逃げる事は出来ない。目の前の少年は、年齢に似合わない慎重さと強さを持ち合わせている。故に、きちんと魔法の対策を行いきちんと戦っているだけなのだ。
「…お姉さんの魔法ってさ、いっぱいあるよね。同じギルドの2人の魔法、未来視、その武器、短距離での瞬間移動、未来視と武器を扱う為に使う単純な筋力強化…ほんとにいっぱいだ」
「だか、ら…何…?」
「今、感覚を共有する魔法を仕掛けようとしたでしょ。人形化する前にボクにかけて…人形になったら、ボクも人形になるように」
「………」
「残念、人形は体が変わるだけで感覚には一切関係がないんだ…その魔法で痛みは背負うけど、傷を負う事が無い様にね」
メルディの魔法、マギルティ=センスは単純にいえば感覚の共有である。魔法の対象となった人物が怪我を負い痛みを負えば、もう片方の対象も痛みを背負う。つまりは痛みの共有…しかし、ダメージはそうでは無い。死んだ場合はその死が共有されるが、傷は共有される魔法では無い。そして、ハクの魔法によって人形にされた場合は…人形化は、共有されないとのことである。
「ッ…!」
「じゃ…お話はここまで……バイバイお姉さん、楽しかったよ」
そう言って、ハクは手を叩く。そして同時に人形達が破裂し…中にあった人形化の魔法…プラッシュドールが発動する。それを防ぐにはショートワープしかない。人形たちが破裂した瞬間にマホーグはショートワープを決行する。
「………!やった…避けれた…!」
何度目だろうか。ハクの後ろへと行き、人形化を回避するマホーグ。尽く使える魔法が通じないと判明しつつあったこの状況…それでも、と何とか打てる手を取り続けていたマホーグ。ギリギリの状態で、それでも相手の魔法を避けれたことに……
「
「あっ…!?」
その瞬間、マホーグの体は人形へと変貌する。武器は人形化しないままに床に落ちてしまい、完全に身一つと成り果ててしまった。床に落下した際に、子供の持つ音のなる人形のような音が鳴るが、マホーグはショックで動けなくなっていた。
「あはは!お姉さんも可愛くなったね!」
「そんな…私、人形…に…!?」
「うんうん!これで三人目…お姉さんも、さっきの3人も…僕のお部屋に飾ってあげようかなぁ〜」
マホーグは必死に頭を回す。どうやって勝つか、どうやってこの魔法を解除するか、どうやって戦うか。
人形にされても魔法は出せるが、今のこの体で出せる魔法の威力はたかが知れているだろう。焦り、絶望…それらがマホーグに突き刺さる。
「あ、そうそう…どうしてお人形になったのか…なんて分かってるよね?同じ理屈だよ…人形から爆発して飛んでった魔法が、あっちこっちにあたって跳ね返って…その内の一つがお姉さんに当たったんだ」
「くっ……」
「何を考えても無駄だよ、お人形になると立つことさえままならない…ウェンディの魔法みたいに状態異常の回復もできないし、マルク・スーリアみたいに魔法が効きづらい体質じゃない」
「ぐ、ぐうぅ…!」
マホーグは歯がゆい思いをしていた。事実、その2人ならばハクの人形化の魔法は無いに等しいものだろう。自分では、あの二人の助けになることさえできないのか…と泣きたくなる思いだった。しかし流せぬ涙は心の中に更に悔しさとなって募っていく。完全に折れたと判断したハクは、そうやって人形となったマホーグを掴み持ち上げていた。人形となったマホーグには、掴んだ腕にダメージを与えることさえできやしない。
「くっ…この、このっ…!」
「あはは、それくらいじゃあダメージなんて与えられないよ」
「ううぅ…!」
ヤケクソでマギルティ=センスを発動させるマホーグ。しかし、これもメルディ程使える訳では無い。マホーグは、これを相手に触れないと…しかも、触れた部位の感覚の共有しか出来ないのだ。
「手首に発動させてどうするのさ?ぬいぐるみだと、感覚が鈍くなるから……感覚共有もろくに働かないよ?」
「うぁ…!?や、やめっ…!」
まるで魔法の効果を確かめるかのように、人形のマホーグを揉みしだくハク。しかし、彼の言った通り幾ら揉まれても痛みどころかまともに触られてる感覚はなく…感覚共有は働くことは無かった。
「さーて…次は誰をお人形にしようかなー!ウェンディは…多分ならないかもしれないけど…でも、お人形になったところ、見てみたいよねー!」
最早握られてしまっているマホーグ。どうすればこの状況を打開できるかを必死に考えながら、ついでに一泡吹かせてやろうとも考えているのであった。
.
「ハッハー!!しかしまぁ、随分と強くなったものだ悪魔が!!」
「やかましい」
こちらはスァーヴァクとマルクとの対決。ハクと同じ様に、他の魔法を得て強くなったスァーヴァクがマルクに襲いかかっていた。マスターゼロの生命力を奪う魔法と、ファリスの
「そもそも、ファリスは兎も角マスターゼロの力を使うなんてな……それこそ『罪』って奴だろ」
「正義を成すには、相応の罪も使わねばならない!死刑を与えた者は、殺人罪で問われない様にな!!」
「ちっ……ホントご都合主義だなお前」
舌打ちをするマルク。1度勝った相手とはいえ、スァーヴァクの扱う剣はどちらもマルクは相手したくなかったのだ。マスターゼロの剣だけならば、一切問題は無い。少し脱力する程度の上、なんなら取り込んだ魔法を返せるからだ。だが、問題は白滅の力だ。あれに斬られるとダメージこそないが、魔力を持っていかれるのだ。そうなると、現在使用している越魔龍の力も魔力不足で足りなくなってしまう。
「なんとでも言うがいい!法とは!!正義とは!!それを成す者の都合でできているのだ!!」
「ただの俺ルールだろうが」
「フッ!!!」
「腹立つな……」
だが、現状はスァーヴァクに若干の有利がある事にマルクは気がついていた。どうにかして倒す為には、2種類の剣を無力化しなければならない。だが、相手も分かっているのか白滅の刃を先んじて出してしまうためにマルクを攻め込ませないようにしているのだ。
「…………仕方ねぇ、何としてでも倒す為には…考えすぎないようにしとかねぇとダメか…!」
「それでこそ悪魔!!馬鹿みたいに何も考えないでくるといい!!」
「その声も喋り方も魔法も全部見飽きた聞き飽きた!お前はまだ前座だ!!一気に突破……させてもらうぞ…!」
マルクの魔力が高まっていく。それに合わせて、スァーヴァクも剣を構えてマルクへと向かっていく。だが、斬られるよりも先に、マルクの魔法が発動する。
「越魔龍の━━━━」
.
「━━━激昂!!!」
「きゃああああああああ!!!」
「ぐあああああああ!!!」
マルクの魔法により吹き飛ばされる……ウェンディとリリー。彼女達は今、ディアボロスのレークとダーツ…が後ろで見ている中でレークの生み出したマルクの偽物と戦っていた。
しかし、偽物と言えどマルクはマルク。彼にはほとんどの魔法が通じず、頼みの綱の物理攻撃が可能なリリーでさえも吹き飛ばされてしまっていた。
「ハハハ!これで終わりだな!!」
「マルク・スーリア!!一気にとどめを刺してしまえ!それで終わりだ!!」
「おう」
そう言って、マルクはウェンディを壁際に叩きつけて首を掴む。その目には、ウェンディを敵として認識しているマルクが…ウェンディ自身の目に映っていた。
「く、ぅ……」
「ぐうぅ…!ウェンディ…!やめ、ろ…!マルク…!」
「無駄だ、洗脳されている訳では無い…そもそもがそういう指示をして従ってるだけだ!」
首を絞める力が強くなっていく。ウェンディが辛うじて目を開けると、目の前には紫色の
「はぁはぁ……」
「これで、終わりだ」
『まだ終われない』『諦められない』『やられるわけにはいかない』と、ウェンディの闘志はまだ燃えていた。だが、魔法を食らう相手をどうするかなんて…ウェンディには全く思いつかない。
思いつかない………が、次々と浮かんでくる記憶があった。雷を食ったナツ、影を食べたらしいガジル、同じく影を食べたらしいスティング。次々と浮かぶ。そして、目の前にはマルクの魔力そのものとも言える物がある。
「……はぁー……!」
「…?何を……」
『一か八か』……マルクの魔力は正確には属性ではない。食べたところで、他の
大きく口を開け、目の前の偽物が首を傾げるのも気にかけず……
「ッ!?俺の体から生えた魔水晶を…!?」
「ははは!馬鹿め!気が狂ったか!?マルク・スーリアの魔力を帯びたその魔水晶を食らったところで、何も起こりはしない……それどころか、奴の魔力に体内の魔力を食われて…死ぬ」
「か、は…!」
体内に走る熱。何かを食われているような感覚、痛みは無いが喪失感はある。頭から熱が体内へと移っていき、その熱が冷めていく。頭の先から冷たくなっていくような感覚が急速に訪れる。
「……離してやれマルク・スーリア。最早使い物にならん」
「あぁ」
そう言って、話され地面へと落下し倒れるウェンディ。それを見届けて…3人はその場を後にしようと離れていく。最早、リリーとウェンディが相手ではないと判断したのだ。
「最早天竜の力は残ることは無いだろう。ならばそのまま…愛する男の力に食われて死ぬがいい……その猫は知らないが……本人には、君は死んだ、と伝えておくよ」
「馬鹿な真似したもんだぜ!自分の魔法を使えば助かったかも知れないのによ!」
「それは酷と言うものだよ。この迷宮は魔法による破壊は一切行われない…そして、マルク・スーリアには魔法が通じずらい…天竜の魔法では怯む事もないだろうね」
「ハハハ!そりゃそうだ!!」
そう言って離れていく3人。だが、彼らは気づいていなかった……倒れているウェンディの髪色が…深い藍色から、紫色へと変わっていくのを……
マホーグは攻撃する瞬間の未来視は出来ていますが、対抗できない時はどう足掻いても対抗できません。見えていたとしても、ラクサスの速度に追いつけないみたいな感じですね。
ジェラールとメルディの魔法を使えますが、規模は恐ろしい程に下がってます。ジェラールの魔法はその場で陣を書いて、打ち出す程度…それでも本気出したエルザに切り飛ばされる程度です。
メルディの魔法はほとんど触れないと発動しません。しかも、触れた部位の感覚だけになります。
手首に触れたら手首だけ、という事ですね。
ハクの人形魔法とウェンディの天空の滅竜魔法があわさった結果、人形化の魔法を風に乗せてふわふわ飛ぶ物に変えれました。速度はありませんが不可視かつ、反射しまくるせいでどこから来るか分からない爆弾になりましたね