FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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越えられない壁

「いい加減鬱陶しいな」

 

「そうだな!お互いの技で決着をつけるとしようか!!」

 

スァーヴァクとマルクのぶつかり合い。しかしお互いの技はそれぞれ避け合っている今の状況は、彼ら自身も面白く感じていなかった。そろそろ決めたいと、そう考え始めていた。

 

「ハッ、人様の力…しかも2人分も借りておきながら互いの技、か」

 

「今やこれも俺の力だ!!」

 

「そうかよ…」

 

スァーヴァクの持つ計八本の剣。半分は生命を奪い、もう半分は魔力を奪う。どちらも魔法だが、魔力を奪う剣の存在がマルクには天敵となっていた。

 

「越魔龍の(アギト)!!」

 

「裁竜の白聖剣!!」

 

マルクの頭部から、魔水晶(ラクリマ)で即座に映えるように形成された竜の頭。スァーヴァクを食いちぎらんとするその一撃を、難なく彼は4本の白い聖剣により魔力を奪いながら破壊していく。

 

「本命はこっちだ…越魔龍の轟砲!!」

 

「ぐうぅ!?」

 

だが、破壊した中からマルクはブレスを吐く。そのブレスを避けようとしていたスァーヴァクだったが、片腕が巻き込まれてしまう。消し飛ぶことこそなかったが、勢いに飲まれ吹き飛ばされ…持っていた白い剣がいつの間にか無くなっていた。

 

「……まずは1ぽ…ん…!?」

 

「………は、はは…いつ、俺が…()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()…!」

 

膝を着くマルク、その彼の胸部には…黒い剣が深々と突き刺さり貫通していた。しかし、出血は無い。単に生命力を奪うだけであり、物理的な攻撃力を持っている剣では無いのだから。

 

「…いつの、間に…!」

 

「ブレスを吐いた瞬間…投げたのさ、お前の胸にな…!」

 

つまりは相打ち。魔法が効きづらいと言っても、こうも直接的に刺さってしまっていては効果が出るレベルである。それでも、本来であれば即死も有り得たであろう物を耐えれているのは越魔のおかげと言わざるを得ない。

その証拠と言わんばかりに、マルクの体に剣は吸収されていた。

 

「…白い剣を黒の剣に変えたってことか」

 

「そういうことだ…しかし、今ので腕をやられてしまったか…忌々しい…!」

 

「……魔力を奪い、生命力を奪う。なるほど、確かに普通の相手ならかなりの脅威だろうな。実際俺も魔力を奪う相手とは戦いたいとは思わない」

 

「……何が言いたい」

 

「だが、それで倒せるのはせいぜい俺くらいだ。ナツさんは魔法を溶かす、エルザさんとはそもそもの剣の腕が違う、グレイさんは魔法ごと凍らせれば済む。ルーシィさんなら、星霊を出して自分はエトワール・フルーグを使っときゃ片手拘束した上で倒せる…そもそも星霊衣(スタードレス)がある」

 

そう言いながら立ち上がり、マルクは満身創痍となったスァーヴァクを見る。睨むでもなく、それ以外の何かを思うことがある…ということも無い。ただ、見ているだけだ。だが、それがスァーヴァクにとっては屈辱的であった。

 

「なんだ、なんだその目は…!結局、何が言いたい…!」

 

「お前は俺くらいしか倒せないって言ってんだ……そもそも、そんな剣だけで勝てると思ってるのが浅はかだ」

 

「何だと…!?脅威と感じて避けている癖して…!」

 

「どんな戦いでも攻撃は避けるよ…それに、いつまでも何かに固執しているようじゃ…もう俺には勝てないぞ」

 

「なっ…!?」

 

そう言って、マルクは越魔龍を解除した。悪魔龍ですらない、本来の姿のマルクとなる。スァーヴァクからすれば、完全に舐められた態度。

 

「ディアボロス…お前達がした事は、俺の中でお前らを完全な敵と認定するのに充分だった。だから戦う事になるのなら、確実に叩き潰す」

 

「一度勝った程度で!!調子に乗るんじゃないぞ悪魔が!!」

 

「けど、今の俺達は忙しいんだ……五神竜を討伐し、100年クエストを完遂する」

 

「滅竜奥義!!」

 

「だから、こんなとこで倒されるどころか……苦戦する訳にはいかない。苦戦してしまわないように、俺達は常に強くなり続ける」

 

「破邪!!裁竜剣(さいりゅうけん)!!」

 

「だから俺も…もう負けるつもりは…サラサラない━━━!!」

 

黒と白が入り交じった大きな聖剣。この魔法では触れた瞬間悪魔の力は永劫消し飛び、悪魔そのものは灰さえ残らず消滅する。そして、人間であっても竜であっても…堅牢な鎧を身にまとっていても、まるで豆腐を斬るかのように抵抗なく切り裂くだろう。その聖剣が、マルクに向かって振り下ろされる。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「はっ…!?」

 

「魔龍の…!鉄拳!!!」

 

「ごはっ…………!?」

 

そして、マルクの拳がスァーヴァクの鳩尾へと叩き込まれる。深く、深く突き刺さった拳が抜かれて…スァーヴァクは意識を朦朧とさせながら、しかし膝を着くことなく最早執念だけで立っていた。

 

「……しつこいな」

 

「貴様を…!貴様を倒して…!ナツ・ドラグニルも、グレイ・フルバスターも倒すんだ…!!」

 

「……あぁ、そうか…ナツさん元々悪魔だっけかゼレフ書の」

 

最早今となっては、ナツはナツであり其れ以外の何者でもない。そう認識していた為に、マルクはそこに納得を示していた。だが、最早作業のようにスァーヴァクに近づいて行く。

 

「ふっ…!馬鹿のように近づいて、この距離ならば剣が届く!!」

 

「いいや、届かねぇよ……!!魔龍の翼撃!!」

 

何本も飛んでくる剣。それら全てを…マルクは魔龍の力だけで弾き、壊していた。スァーヴァクと出会った最初は、悪魔の力を行使してでも魔法を叩き込まれ破壊された力だが…今では最早逆にその力を砕くようになっていた。

 

「ぐああ!!ばか、な…!?なぜ、強く…なった……のに………!!」

 

「さてな…けどまぁ、1個だけ教えといてやるよ」

 

「何、を……」

 

「お前は俺と互角にやり逢えてたと思ってた様だけど…一撃しか攻撃を当てられず、そんでずっと避けられてた割に…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「っ……!」

 

確かに先程は一撃を受けたマルク。しかし致命傷にはなっておらず、少し生命力を削られただけで終わっている。そして、何よりこの戦いにおいて越魔を使いこそしたものの、その力は殆ど振るわれていなかったのだ。そして、今ではその力を使わないまま…翼撃によって地面に倒れ込まされていた。

 

「そして、今じゃこうやって砕かれる……他人の力を借りて、それで勝とうとする。それを自分の力だと豪語して、強くなったと過信する……ま、これ以上何かを言う気は無いよ。お前はどうして負けたかでも考えておくんだな」

 

「待、て………」

 

「待つかよ……さっさとセレーネ倒してエレフセリアを解放しなきゃいけないんだ…そこで寝ときな」

 

そして、マルクは離れていった。スァーヴァクは怒り、憎しみ、悔しさ…色々な感情が混ざりながらも、その感情を発散させることが出来ないまま…意識を失うのであった。

 

「……あぁ、そうだ。聞こえてないだろうが最後に一つだけ……今のお前は、この迷宮に来ている誰にも勝てねぇよ。ラクサスさんやガジルさん……それに、マホーグやウェンディにもな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんの少し前、マルク、ウェンディ、マホーグがディアボロスの面々とぶつかり始めた時の話。迷宮の一場所でディアボロスの2人…鎧竜のマッドモールと骸竜のスカリオンがボロボロで倒れていた。

 

「う、うぐ…なんだ、この強さは……」

 

「ま、参ったっちゃ…」

 

「……こんなもんか、急に巻き込まれたが…」

 

レークによってマッドモールは鉄竜…ガジルの力を、スカリオンは影竜…ローグの力を得ていた。だが、それを発揮する間もなく……ラクサスによって叩きのめされていた。対するラクサスは、一切の本気を出すことはなく……軽くため息をついていた。そんなラクサスの後ろから、一人の男が寄ってくる。

 

「キ、キリン様…お気をつけを…!」

 

「こいつ、化け物みたいに強いっちゃ……!」

 

「……ふー、よっこらせっと」

 

キリン、と呼ばれた男は背負っていた物…棺桶を下ろす。まるで大きさを見比べるかのようにラクサスを観察し、そして困った様に声を出す。

 

「参ったなぁ…君の体格じゃこの棺に入らないかもなぁ……バラバラにして入れるか…?いや、それはグロいな…」

 

「ハッ、無用な心配だ……そこに入るのはてめぇ自身だからなァ」

 

「俺?俺が棺に!?いやぁ……考えたこともなかったなぁ……ユニークだよ君ィ」

 

そう言った瞬間に、キリンは指を鳴らす。その瞬間、ラクサスの傍の()()()()()()()。凄まじい力で、体が吹き飛ぶ程の威力だったが……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「うおっ…!?なんだ、今の攻撃は…!?それに、俺はなぜ吹き飛ばない…!?」

 

「ほーら、次だ」

 

「ぐおおっ!?」

 

更に指を鳴らす。今度は1度だけでなく連続した爆発が起こる。だが今度も吹き飛ばない。何かをしているのはわかるが、現状何を起こしているのかまではラクサスには理解ができなかった。

 

「見えない魔法…!?ちっ…!」

 

ラクサスは何も分からないままに、電撃を放つ。手をこまねいて待つよりは、この方が確実なのは確かである。しかし、その電撃はキリンに届く前に……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「何っ!?」

 

「俺の魔法は大気の圧縮と歪みさ…そんでもう1つが━━━」

 

喋りながらも指を鳴らし、息もつかせぬ連続の爆破をお見舞いするキリン。ラクサスはなんとか脱出しようと上に飛び、拳で殴り掛かる。だが、雷を纏った拳は……キリンの目の前で止まり、届くことは無かった。

 

「なっ…!?ぐはっ!!」

 

「『重力』だ。まぁこっちは貰いもんなんだけどな…遠距離で倒すのが難しいと見るやいなや、近寄ってきたヤツを叩き落とすのには便利さ」

 

重力……キリンがレークから受け取ったのは、元悪魔の心臓(グリモアハート)の1人、ブルーノートの魔法を貰っていた。先程からラクサスが満足に動けていないのは、この魔法のせいであった。

 

「大気の魔法で如何なる攻撃も受け付けず、近寄った敵や逃げ出す敵は重力によってたたき落とす。そんで、一気にとどめを刺す……こんな風にな!」

 

「ぐあああ!!」

 

大気を操作し、ラクサスにダメージを与えるキリン。その周囲には、操作している大気が渦巻いており…対するラクサスはダメージによって地面に横たわっていた。

 

「これで…如何なる相手も棺に収めてきた」

 

「さ、流石キリン様…」

 

「ウチらが手も足も出なかった奴を……」

 

「━━━なるほど、おもしれぇ魔法だが…攻撃が当たらねぇってのは、盛りすぎたな」

 

「…?」

 

立ち上がり、よろけながらキリンの方に視線を向けるラクサス。キリンは彼が何を言いたいのか分からず、困惑した表情を浮かべていたが……

 

「電気ってのは、結構色んなところを走るもんだぜ……例えば、地面とかな」

 

「うおおおおおお!!?」

 

その場で軽く足踏みをして…電流を地面に伝えさせキリンに与えるラクサス。電流は空気を通っていた為に、大気を歪ませられる事で避けられていたが…地面であれば大気は関係なく、そして重力の影響を受けることもない。それにより、キリンには大きなダメージを与えることに成功していた。

そしてその隙を縫って攻撃を仕掛けにいくラクサスだったが、キリンは直ぐに向き直り攻撃の構えを取る。

 

「アトモスディストーション!!」

 

「ぐっ…!」

 

大気が歪められ、ラクサスの体からあちこち流血が迸る。攻撃であり防御、大気を歪めることによって物理攻撃さえも防げるキリンの魔法。しかし、ラクサスの持つ力には…まだ及ばない。

 

「━━━そして!赩い雷は大気を切り裂く!!」

 

「何っ!?」

 

ラクサスの体から溢れる流血。それは彼の雷を帯び、雷を赤を超え赩へと変貌させる。それは、歪められた大気さえも切り裂き敵に向かって飛ぶ必殺の一撃。

 

雷汞(ライコウ)赩御雷(アカミカヅチ)!!」

 

「ぐおおおおおおおおお!!!」

 

赩き雷がキリンの体に迸る。そして、そのままの勢いで吹き飛ばされたキリンは地面に落ち、その一撃で完全に満身創痍と成り果てていた。

 

「ば、馬鹿な…」

 

「キリン様が…!」

 

「………いやぁ、驚いたよ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)にはこんな奴もいるんだな。確かに……これは俺の方が棺に入る可能性もあるって訳だ……気に入ったよ君ィ…少しだけ、本気を見せて上げないとね…!」

 

その言葉と共に溢れ出すキリンの魔力。ラクサスはそれに少しだけ圧倒されながら、既視感を覚えた。圧倒されるほどの魔力量…そう、彼ですら勝つことは難しい…ギルダーツの様な強者の雰囲気を、ラクサスは感じとったのである。そして、その圧倒されている様子が…完全に大きな隙と成り果てていた。

 

「ぐはっ!?」

 

「よそ見はいけないな、君ィ……」

 

「が、ぐ…ぁ……!な、何が…起きたんだ…!?」

 

ラクサスすら理解できないほどの一瞬で、彼は吹き飛ばされていた。そして、目の前には平然と立っているキリンの姿が。何か動いた様子もなく、一体何をされたのか全く理解できないラクサス。何とか立ち上がろうとするが、どうすればいいのかの手立ては全く浮かんでいなかった。

 

「これが黒滅竜騎団だ……ほれ、次だ」

 

「っ!!」

 

セリフの後、簡単な動きだけをするキリン。だがこの攻撃はラクサスにも見破れるようになっており、すぐに受ける体勢を取ることができた。飛んできたのは…最初に担いでいた棺であった。

 

「さっき食らっていたのは、この棺だったのか!!」

 

「ただ投げ飛ばしてるって訳じゃねーぜ?」

 

「何………ッ!?」

 

突如としてラクサスに訪れる異変。何かが引かれるような、引き合うような感覚。触れ合っているのは危険だと直感的に感じ取ったラクサスは、棺がぶつかってきた勢いを利用してそのまま後ろへと飛んだ。

 

「今のは…!?」

 

「ふー……この棺に君を入れるって話をしたが…あれは冗談だ、ここには既に魂が入っている。王の魂がな……」

 

再度、棺を背負うキリン。そしてぶつかりあったおかげか、背負われた棺から謎の威圧を感じとれるようになったラクサス。そこから感じる威圧は、彼の本能が危険だと囁くほどの物であった。

ディアボロス黒滅竜騎団、黄龍のキリン。彼はディアボロス最強の男…今ここにぶつかりしは、各ギルド最強と名高い男達の対決。迷宮内の戦いは…より一層、混沌を極めるのであった。

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