FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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魔天竜

「━━━なんだと?」

 

「……おい、何で立ってやがる。てめぇ…惚れた女だからって…」

 

「僕の命令は絶対だ…例え仲のいい親子の関係性でも殺し合いを命令すれば必ず遂行できる…それが僕の能力だ。それ以前に…魔龍の力は魔導士にとっては毒……その塊を食らったのだから……」

 

レークとダーツは、信じられないような表情を浮かべていた。目の前にはフラフラと立ち上がる、ウェンディの姿があった。

レークの力により越魔の力を使っているマルクを再現され、手も足も出ないままにリリーと共に倒されたウェンディ。その時、苦し紛れに越魔の力が漏れだした証拠でもある…体から生えた魔水晶(ラクリマ)を食べ、その力に魔力が犯され倒れてしまったのだ。

てっきり、魔力欠乏症を発症してしまったと…2人は去ろうとしていたが、そのウェンディが…立っていたのだ。

 

『━━━ウェンディ、貴方…』

 

ウェンディの中にいるアイリーンさえも、驚きの表情を見せていた。アイリーンは、立ち上がったウェンディに一切の手を貸していない。そもそも貸したところで相性が悪い相手で勝つのは難しいと判断していたからだ。

 

「……この、力は……」

 

「…おい、嫌な予感がすんぞ」

 

「マルク・スーリア!殺れ!!」

 

「おう!!」

 

命じられたマルクの偽物は、一気にウェンディへと近寄る。フラフラと立っているその姿は、どう考えても弱っている相手である。しかし2人は嫌な予感がしてしまい、命令してウェンディを始末しようと考えた。実際、この選択は正しかったのだろう……()()()()()()()()()()()()

 

「━━━がは…!?」

 

「なっ…!?」

 

「ッ………ん、だと…!?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そして、そのままマルクの偽物は瓦礫へと姿を変えて…床へと落下していた。

 

「い、一撃…!?ばかな、天竜は攻撃も強いのは理解していたが…一撃で相手を葬れるほどの強さはない!それに、仲間の顔だぞ!?そう簡単に……」

 

「……ちげぇ、ちげぇぞレーク…」

 

「何がだ!!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

「なっ…!?」

 

驚く2人を他所に、ウェンディの周りに風が集まり始める。その風は暴風となり、竜巻を起こし…嵐と錯覚するほどの強烈な風を起こしていた。だが、ただの風じゃないことはこの場にいる全員が直感的に理解出来た。

 

「……アイリーンさん、何か、しましたか…?」

 

『……いいえ、何もしていないわ。全部、貴方がやった事…貴方の魔力が、思いが……覚悟が、この奇跡を引き起こした』

 

「奇跡…?」

 

ウェンディの藍色の髪が、紫色へと変貌していく。そして、紫色の髪の中に黒のメッシュが乱雑に入るかのような髪色へと徐々に変貌していく。ただの髪色の変化だけでは無いことは、既に相対している2人は理解していた。

 

『彼の力が、奇跡的に貴方の力と融合を果たした。まさか…根本的に性質的に…違う力が混ざるなんて……』

 

「それって……」

 

『貴方に、力が宿ったのよ……そうね…名付けるとしたら━━━』

 

━━━モード魔天竜、それがアイリーンがウェンディの新たな力に付けた名であった。それを聞いたウェンディは、ただ敵対している2人を睨みつける。

 

「く、くそっ…!?またこんな、こんな馬鹿げたことが…!」

 

「だ、だが!!あいつよりかはマシなはずだ!!あんな無法地味た力はそうそう出ねえだろ!!」

 

「…エレフセリアさんの為、ごめんなさい。貴方達を、倒します…!」

 

「やってみろやガキが!やんぞレーク!」

 

「あぁ!!」

 

二人は息が合った動きで、即座にお互いに力を付与する。これが出来るからこそ、2人は入る時に力を獲得していなかったのだ。そして今回、2人が得たのは…()()()4()()()()()()()()()

 

「モード白影竜!!」

 

「モード雷炎竜!!」

 

レークはスティングの、ダーツはナツの力…2つの属性を持った時の力を再現し、戦うつもりであった。だが、それでもウェンディは怯まない。更に1歩、踏みしめ近づいていた。

 

「雷炎竜の咆哮!!」

 

「白影竜の(あしぎぬ)!!」

 

強烈なブレスと、切り裂く攻撃がウェンディに襲いかかる。だがウェンディは焦り一つ出さずに、合わせるようにして構え…そして技を放つ。

 

「魔天竜の、鉤爪!!」

 

その一振は、地をも削り尽くす爪の一撃。雷炎は暴風によって消し飛ばされ、白影は魔を持って滅された。本来であれば強力な一撃だったそれぞれの攻撃は、呆気なく消されたのだ。

 

「なっ…!?」

 

「馬鹿な…!」

 

「……ナツさんや、スティングさんの方が…もっと強い攻撃を出せます。その表面上だけを見て、繰り出された技なんて…私には通用しません」

 

「ちっ…!!だったら4人分の力を合わせてやりゃあいいだけだ!!いくぞレー━━━!?」

 

「なん、だ…!?」

 

突如として、2人が膝を着く。そして先程まで纏っていた借り物の魔力は剥がされ、霧散してしまっていた。何が起こったのか理解出来ていなかった2人だが…レークはすぐに何が起こったのかを把握した。

 

「ッ…………!!!アイリーン・ベルセリオン!!!貴様かァ!!!」

 

『あら、バレちゃった』

 

「分離付加(エンチャント)ですか?」

 

『えぇ、貴方が巻き上げた魔力で…ちょちょいっとね。あなたの魔力も私の魔力も使わないの、助かるわね』

 

相手にはアイリーンの声は聞こえていない。だが、それでもレークには勝ち誇ったような顔をしているアイリーンがイメージできていた。

 

『私、彼嫌いだわ…人のプライベート覗き放題だなんて…女の敵よ』

 

「…言いたいことはわかりますけど……」

 

「亡霊と話し合ってんじゃねぇぞ!!奪竜の咆哮!!」

 

灰色のブレスが、ウェンディに襲いかかる。ウェンディは直ぐに向き直り、瞬時に両腕に魔力を貯める。空気中のエーテルナノが、この迷宮に満ちている高濃度の魔力が…今のウェンディに力を与える。

 

「魔天竜の!!風喰(フウショク)!!」

 

「バカめ!ブレスに対して……なっ…!?」

 

ブレスに対して、風を纏った腕で殴り掛かるウェンディ。それを馬鹿にしていたダーツだったが、その顔はすぐに驚愕へと染まる。本来ダーツのブレスは、ぶつかりあった相手の魔法に込められた魔力を『奪う』事により威力を増し、相手にカウンター地味た攻撃を先手で行えるものである。しかし起こったことは真逆、ウェンディが突っ込んだ場所からダーツのブレスが消えて…否、()()()()()()()()

 

「地面を削り!魔力を削り!天の力は、こんなにも強いんです!!」

 

「クソ、が……!?ぐおおおおお!!!」

 

「ダーツ!!」

 

あっという間にブレスは暴風へと代わり、吹き飛ばされるダーツ。レークは直ぐにウェンディへと向き直るが、ウェンディから感じる覚悟にほんの少しだけ…威圧されてしまっていた。

 

『……ウェンディ、今から私が言うことをしなさないな…大丈夫、悪いようにはしないわ』

 

「…?分かりました……」

 

突然ウェンディに話しかけるアイリーン。その後、アイリーンの言う事を聞き、その内容通りにウェンディは行動を起こし始める。

 

「……降伏、しますか?」

 

「……倒すんじゃないのかい?」

 

「可能なら降参して欲しいです、私達はエレフセリアさんの心臓を確保出来ればいいので」

 

「……そうか、なら降参だ」

 

両手をあげるレーク。それに対して、ウェンディは少し待った後に…無言でレークの横を通り過ぎる。相手に戦意がないのであれば、戦う必要が無い…そう言わんばかりの態度であった。

そして、通り過ぎていき…10歩は離れたであろうその瞬間。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「━━━滅竜奥義!!無限経験思考室!!」

 

「っ!!」

 

「滅竜奥義!!奪盗(だっと)(いただき)!!」

 

「もう1人も…!」

 

レークがウェンディの頭を、ダーツがウェンディの腕を掴む。無限経験思考室は、触れた対象のこれまでの記憶を凄まじい速度でループさせ何度も何度も同じ経験をさせる技。マルクにも似たようなことをしていたが、あれとは違い完全な対象の記憶のみで行われること、思考速度は1秒につき2倍加速…つまり経過時間が1/2となる。つまりは速度が累乗されていくのだ。1分が経過する頃には…1秒が2の60乗倍されてしまうのだ。しかもそれを延々と繰り返す…破る方法があるにはあるが、本人に知る術はなく脳が加速に耐えきれなくなれば…死である。

一方ダーツの滅竜奥義奪盗ノ頂は、触れた相手の触れた部位の支配権を永遠に奪う技。つまり、触れられた箇所は一生動くことは無いのだ。今回触れたのは腕だが、胸…特に心臓のある部分に触れてしまうと簡単に心臓を止められてしまう技だ。驚異である。()()()()()()()()()

 

『━━━触れたわね』

 

無論、今のウェンディは本人の実力もそうだが…状況そのものがまともでは無いのだ。触れられることは作戦の内、これはアイリーンが立てた作戦である。相手から触れられること…後はアイリーンがやるために細かいことは聞いていないウェンディ。命を奪う真似をするつもりがない…それだけは、何となくは理解していたため全て任せることにしたのだ。

 

『今のウェンディの力を解析して手に入れた力よ…有難く受け取りなさい、魔龍痕(まりゅうこん)!!』

 

「っ!?」

 

「何だこの痣は!?」

 

触れた2人の体に突如として現れた痣。黒い長いドラゴンのような痣が全身に拡がっており、その頭が触れた腕で大きな口を開けていた。そして、2人は急に現れた痣に驚いた為に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『今よウェンディ!!』

 

「はい!!」

 

「っ!!大技が来るぞ!!」

 

「ちィッ!!」

 

ウェンディを中心に、迷宮内に風が吹き荒れる。ただの技では無い、滅竜奥義の類だと言うのは直感的に2人は理解した。天竜の滅竜奥義は照破・天空閃とミルキーウェイ。戦闘に使える技は、前者のみ。そしてその技をレークは知っている、記憶を読んだからだ。

 

「お前の風相手なら!!これが一番向いているのだろうな!!」

 

「これは…!!」

 

レークの腕から現れる、大量のネバネバ。そう、アルドロンの上での戦闘の際に得たある種の弱点…天竜の技では、ネバネバは切り裂きづらいという弱点である。事実、切り裂けてもすぐに繋がってしまうのだ。そこをレークは利用したのだ。

 

「風の動きに合わせてネバネバを出していれば、お前の技は怖くない!逆に、周りを囲まれて拘束されて終わりだ!!」

 

「へっ、だったら完全に止まった瞬間に終わらせて……おい、レーク…お前ネバネバ止めてんじゃねぇよ」

 

「は?何を言って……ッ!?」

 

ダーツに指摘され、驚くレーク。魔力を込めてネバネバを出していた筈が、彼自身も気づかない間にネバネバを出すのをやめていたからだ。

 

『魔龍痕はね、相手が魔法を発動すると魔力の流れを勝手に変えて自らの成長に当てちゃうのよ。因みに…魔法をぶつけられても同じ…魔力を吸って、成長する。成長しきった魔龍痕は…溜め込んだ魔力を爆発させる。つまり大きな時限爆弾ね、まぁ死ぬことは無いけど暫くは動けなくなるほどだから…『倒す』がぴったりね』

 

「……いきます…!」

 

「だ…だが!多少はネバネバも出せた!!切れずともくっついて伸びていくネバネバがあれば、お前の動きを阻害するくらいなら…!!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なっ…!?」

 

ウェンディの言う通り、今起こっている風は…いつもの技で起こる風では無い。いつの間にかレークの出したネバネバは消え去り、風の勢いは更に増していたのだ。

 

「まさか……魔力を吸収する、風…!?」

 

「なっ…!?」

 

「空気中や、相手の魔力を吸って…強さを増していく…今の私の出せる魔法は、そういった魔法達です!!」

 

『そう…今のウェンディはさながら山や島を削る嵐そのもの…災害級の強さだと、私も太鼓判を押しておくわ。さぁ、決めなさいウェンディ!! 』

 

「滅竜奥義!!」

 

更に強く、凄まじく。人が吹き飛ぶと感じ取ってしまう程の強い風が、2人を襲う。そして、強い勢いのままに風は1箇所に集まっていき…竜巻を生み出す。迷宮内に、荒れ狂う竜巻が生まれたのだ。

 

「馬鹿な!!また、こんな…!!」

 

「クソが!!なんだって2度もこんな…!」

 

「無限・魔天牢!!」

 

「「ぐおおおおおああああああああああああ!!!!!!!」」

 

竜巻が2人を飲み込む。竜巻の勢いで2人は迷宮の奥へ、奥へと吹き飛ばされていく。ただの竜巻では、こうはならない。今の特別の彼女が起こした特別な一撃が、彼らを吹き飛ばしていく。角に当たろうがそれは止まらず、彼らをぶつけてはさらに奥へと運んでいく。そうしていく内に━━━

 

「ッ!?痣が、膨らんで━━━」

 

「クソが、アイツに…いや、あいつらに喧嘩を振ったのが間違いだった、ってことかよ━━━」

 

そうして、ウェンディの起こした竜巻が消し飛ぶほどに大きな爆発が起き…完全に2人は戦闘不能へと陥ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『魔龍痕が爆発したわね……お疲れ様ウェンディ、よく勝てたわね』

 

「私も…勝てるとは思いませんでした」

 

「…ウェンディ、色々聞きたいことはあるが…よく勝てたな」

 

起き上がるリリー。偽物のマルクとの戦いで傷ついていたが、少し回復したようで座り込んでいた。ウェンディが駆け寄り、回復魔法をかけて更に傷を癒していく。

 

「…きっと、マルクのおかげ…かも」

 

『敵になってたけどね』

 

「……回復したら、さらに進むとするか」

 

「うん…!」

 

こうして、ディアボロスは2人減った。だがまだディアボロスは全滅しておらず、目的のエレフセリアの心臓も見つからない。リリーとウェンディは、体制を建て直してから…再び奥へと向かうのであった。




無限魔天牢は地上で使うと空気中のエーテルナノとか相手の魔力とかを食らって大きくなり続けます。最終的にとんでもない高さからとんでもない速度で放り出されます
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