FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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青き次元(ブルーディメンション)

「……さっきまでのあの熱気も気になるが…」

 

「エルザの殺気も気になるな…」

 

他のメンバーが戦っている中、今ここではエルザとディアボロスのミサキが睨み合っていた。既にエルザは上半身の鎧と服を何らかの魔法により引きちぎられ、髪までもちぎられ短くなってしまっていた。

 

「…お前達、手を出すな……私一人で十分だ」

 

「ッ!?」

 

鎧を換装させ、黒羽の鎧を身に纏うエルザ。相手がどのような魔法なのかがまだ不明な以上、使い勝手のいい鎧で相手をするつもりなのだ。

 

「あら、随分と舐められたものね?私としては全員まとめてかかってきても構わないのだけど」

 

「舐めてんのはどっちだよ…」

 

「けどこの魔力…只者じゃないわよ」

 

「そいつは分かってる…この感じ、ラクサスやギルダーツと対峙してるみてーだ」

 

対するミサキは、この場にいる全員を相手取るつもりでいた。だがその言葉も実力の裏返し。実際全員でかかっても、ミサキは戦えてしまうだろう。グレイ、ガジル、シャルル…3人が感じ取れる魔力の高さが、この場の全員にそれを理解させていた。

……その上で、エルザはミサキを1人で相手するつもりなのだ。

 

「……まぁ、どうしても一対一でやりたいならいいでしょう。5秒で片付けて差し上げます」

 

「っ…!?」

 

ミサキは腕を横に振るう。その瞬間、エルザの姿がまるで空間に溶け込むかのように消えていく。そして、直ぐにその姿は完全にその場から消えてしまう。

 

「エルザ!!」

 

「き、消えた…!?」

 

消えたエルザ。しかし、死んだ訳では無かった。エルザ自身は、気がついた時には異空間へと飛ばされていたのだ。その空間は全てが青い空間。

 

「なっ……!?これは…」

 

青き次元(ブルーディメンション)…私と、貴方だけの世界です」

 

「体が浮いてる…!?足に力が入らん…!!」

 

「この世界では……私こそが絶対!!ブルーストリーム!!」

 

「ぐあああああああ!!!!!?」

 

まるで水中の様な浮遊感。だが本来の水中のように泳げる訳ではなく、その場から動くことさえ不可能。そのまま激流のような激しい衝撃が、エルザを襲う。

 

「ぅぐっ!!」

 

「エルザ!?」

 

「何があったの…!?2人とも消えたと思ったら…」

 

「エルザが、やられて…!!」

 

そして、きっかり5秒…エルザは空間から排出され傷だらけのままに床に伏していた。何があったかも分からないグレイ達には、今起こった攻防さえわからない。何せ、エルザでさえ理解しきれていないのだから。

 

「くっ…」

 

「━━━5秒です」

 

「…?ッ……!?が、あぁ…!?ぐあああああ!!!!」

 

エルザに突如として襲いかかる激痛。だが、その衝撃は先程味わったダメージと同じ衝撃。唯一違うのは『時間』だった。直ぐに終わった秒単位のダメージが、先程よりも明らかに長い時間でエルザにダメージを与えていた。

 

「ブルーディメンションでの5秒は、()()()()()()()()5()()()。たった5秒のダメージが、5時間分の拷問となってダメージが加算されます」

 

そして、その言葉と共に更にボロボロとなったエルザが倒れる。明らかに極度のダメージ。何が起こったのか分からないままに、グレイ達はエルザへと駆け寄っていた。

 

「エルザ!!」

 

「どうなってんだこりゃあ!!」

 

「……あいつが言った通りなら、別空間に連れていかれたらそこで受けたダメージが何倍にもなるってこと…!?」

 

「んー……まぁ、そういう事かしらね……さぁ、威勢のいいお嬢さんはもう戦えません。つぎは貴方達の番です」

 

覚悟自体は決めているが、それでも対策の一つも浮かばなければ話しにならない。ミサキの強力な魔法に対し、グレイとガジルはどうすればいいか頭を回す。だがこんな土壇場でいきなり思いつくほど、現実は甘くはなかった。

 

「やつの空間に連れていかれたら終わりってことか…!」

 

「どうやって防ぐんだヨこんなの!!」

 

「こっちから仕掛けるしか━━━!」

 

「待て!!!」

 

響き渡る大声。それは、先程戦闘不能になったと思われたエルザ自身の声だった。片膝をつき、息を荒らげ、満身創痍の体なれども…その瞳には一切の諦めは存在していなかった。

 

「……私一人で、十分だと言ったはずだ」

 

「エルザ…!」

 

「お前その傷で…!」

 

「無茶だ!!」

 

「……まさか立ち上がるとは。中々に面白い方…なら次は24秒。これは丸1日拷問されるのと同じ痛み」

 

並大抵の人物であれば、実質の処刑宣告。だがその言葉を聞いてもエルザの戦意は衰えるどころか…逆に膨れ上がっていた。その意志の強さ、覚悟の硬さ…ミサキは本能的にエルザにトドメを刺さなければ…と感じ始めていた。

 

「1日…?ぬるいな…私は、もっと辛い拷問を知っているぞ…!」

 

「………その口、きけなくして差し上げますわ」

 

そして、再びミサキのブルーディメンションにエルザが連れ込まれる。青く輝く水中のような世界。だがエルザには考えがあるのか、既に先程のような困惑した表情は一切浮かべていなかった。

 

「ここはね…私の世界。私だけが一方的に敵を嬲れる世界ですの。貴方はもうおしまいです…!ブルーストリーム!!」

 

エルザにダメージを与える原因となった魔法。一切の遠慮なく、ミサキは魔法を放つ。この空間内で自在に動けるのは自らのみ、敵は動く事さえ叶わない。そう思い放った技は……()()()()()()()()()()()()()()()

 

「かわした…!?ばかな…!」

 

「同じ魔法を二度も見せたのか間違いだったな!!この空間…私は自在に動けぬが、鎧は動かすことが出来る!!」

 

「まさか、魔法で鎧を操作して…!?」

 

「鎧を動かし……私を動かす!!」

 

そのまま換装を行い、天輪の鎧を纏うエルザ。幾千もの刃を携え、そしてそのまま鎧を動かし、一気にミサキに迫り…一撃を繰り出す。

 

「天輪・繚乱の剣(ブルーメンブラット)!!」

 

「ぐううう…!!!私の世界を、否定するつもり!!?」

 

「このまま…!」

 

エルザは自らの魔法にしまってある剣達を呼び出し、ミサキに向けて放っていく。だが、ミサキは手を振りぬきその剣達を弾く。素手で弾いた…様に見えたが、直前で弾かれている為に空間を操作して弾いたのだろう。

 

「私の世界を……否定させぬぞ!!」

 

「なっ…何…!?空間から、剣が…!?」

 

先程とは立場が入れ替わる。エルザの周りに剣が現れ、ミサキにしたのと同じ様に剣達が襲いかかってきたのだ。エルザは鎧を操作して避けていくが、付け焼き刃で行っているこの体の操作に段々と剣達が追いつき始めていた。

 

「くっ…!!」

 

「言ったでしょ…ここは私の世界。私の想像が力となる」

 

「ぐっ…!」

 

追いつかれ始め…手に持っていた剣で応戦し始めるエルザ。だがそれは、大きな隙を産む要因となってしまっていた。

 

「━━━そこ!!」

 

「━━━うぁ!!くっ…!」

 

そして、隙を突かれ…一気に連撃を受けてしまうエルザ。それにより天輪の鎧は破壊されてしまい、再び身動きが取れなくなってしまう。

 

「鎧がなくては動けまい!!今度こそ砕け散りなさい!!」

 

「まだだ!!換装!海王の鎧!」

 

「ッ!!」

 

鎧がなければ、別の鎧を使用する。エルザは別の鎧を纏って何とか動きを取り戻す。そしてそのままミサキに迫り、再び一撃を入れる。

 

「私の鎧は瞬時に鎧を換装する力!鎧があればこの空間内でも自由に動けるぞ!!」

 

「ぐはっ…!!」

 

決して軽くない一撃を2度も受けたミサキ。ミサキの魔法は、今まで敵無しだった。だが付け焼き刃とはいえ、この空間内で動ける者がいる。そして、動くどころか自分にダメージを与えてくる。エルザという存在の強さに、ミサキは更に力を増していく。

 

「久しぶりに……本気になれそうだわ…!」

 

「っ…!?がはっ!!」

 

「な、なんだ今のは…空間ごと切り裂いた…!?」

 

突如として襲いかかる衝撃。目には見えず、そして突然に発生する衝撃はエルザに新たな困惑を産んでいた。だが空間はそれを待ってはくれず、エルザに追撃がどんどんと入っていく。

 

「がはっ、がっ…!い、いや…と言うよりも…この空間、その物が襲ってきて……ぐああああああ!!!」

 

「━━━ディアボロス黒滅竜騎団、蒼竜のミサキ。かつてこの力を使ったのは、黄竜キリンとの手合わせの時のみ…光栄に思いなさい…!」

 

「くうう…!がはっ…!」

 

「また鎧が壊れたわよ?」

 

「ッ…!換装!!」

 

「そう何度も…同じ手が通用すると思う…!?」

 

ミサキが、エルザを睨みつける。海王の鎧が砕けたエルザが別の鎧に変えようとした一瞬の隙。その瞬間に鎖が現れ、エルザを完全に縛り上げる。

 

「くっ…!?」

 

「あぁ……やっと私の世界が戻ってきた…そう、この空間内で好き勝手していいのは私だけ……()()()()()()()()()()()()()()

 

「なっ…!?傷が…!」

 

そう言いながら……()()()()()()()()()()()()()()()()。確実に手応えはあった、今まで与えたダメージが幻覚のものでは無いはずだとエルザは確信していた。

 

「……スザクはいらないと言ったけれど…スザク以外の今回のメンバーは皆、別の魔導士の力を得ているの…一人魔導士じゃないけど」

 

「マルクがドラシールで戦った魔導士か…!」

 

「そう…私が受け取ったのは…天神の滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)の魔法…それだけで分かるでしょ?」

 

「っ…!ラミアのシェリアの魔法か!!」

 

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のシェリア…ウェンディの友達で、天空の滅神魔導士という肩書きを持つ少女。神と竜という差はあれど、出来ることは基本ウェンディと同じ。違うところと言えば…自分さえも回復ができるということ。それにより受けたダメージを、ミサキは回復したのだ。

 

「念の為、と受け取っといてよかったわね…レークに感謝しないと」

 

「くっ……」

 

「さて……これで終わりよ。24時間分の痛みを喰らいなさい……ブルーストリーム!!!!」

 

「━━━金剛の盾!!」

 

ミサキの魔法が届くかと思われたその瞬間、エルザは盾だけを呼び出して魔法を防ぐ。まさか鎧以外のものが現れるとは思っていなかったのか、ミサキは驚愕してしまっていた。

 

「何っ!?」

 

「魔導士を封じるのなら、魔封石を使うんだな!!

━━━換装!妖精の鎧(アルマデュラフェアリー)!!!」

 

妖精の名を冠する、エルザの手持ちの中でも最強の鎧。だが幾ら最強の鎧であっても、相手は自らを回復させてしまう。疲弊した今のエルザでは、消耗戦に持ち込むのはあまりにも不利。だが中途半端に一撃を当てて気絶させるのも無謀。ならば、どうするか……簡単な話である。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、これに限るのだ。無論、そのような事はなかなかできることでは無いが。

 

「一気に、削らせてもらう!!ウェンディ直伝高位付加術(ハイエンチャント)!!」

 

「何をされようとも!!」

 

「━━━悪魔龍の紋章!!」

 

「ッ…!?その魔法は……!?」

 

迫るエルザの剣に禍々しい…ドラゴンの様な、悪魔の様な紋章が現れる。ミサキはエルザの持つその剣に、異様な恐ろしさを覚えてしまう。だが、それが仇となる。

 

「夢魔剣・龍魔喰紋様斬(ドラグマイーター)!!」

 

「がはっ…!?これ、は…魔力が抜けて…!?」

 

「私の仲間から借り受けた力…!魔力の流れを歪ませ、魔法を妨害する力!!」

 

エルザは剣を放り投げ、別の剣へと持ち替える。持ち替えたその瞬間に再びハイエンチャントをかける。息のつかぬ連撃に、ミサキの体力もエルザの魔力も勢いよく消耗されていた。

 

「天竜の暴風!!」

 

「別のエンチャント…!?」

 

「風速剣・暴天照破穿(スカイレンスブレード)!!」

 

「ぐああああ!!!くっ、少し、でも……ッ!?」

 

纏った風の一撃を受けるミサキ。少しでも抵抗しようと体を動かそうとするが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「この一撃を受けた者は…少しの間、意識が遅くなる…!氷魔の冷気!」

 

「また、別の……」

 

「天眼・氷魔祓剣(アイスレイブソード)!!」

 

「ぐはっ…!!」

 

徐々にダメージによって削られ、エンチャントによる効果で更に疲弊していくミサキ。意識は加速し、体は鈍足になる。魔力は阻害され魔法が使えなくなる。そして今度の刃は━━━

 

「ッ…!」

 

「全身を氷点下にまで下げる剣…その代わり、全身の感覚だけが鋭敏になる…次の攻撃を、感じ取るがいい…!」

 

「ッ………!!!!」

 

エルザの言う通り、ミサキは指一本動かせなくなってしまったが…それでもなお抵抗しようとしていた。ブルーディメンションが解除されていないのが、その証拠…感覚が鋭敏になり…皮膚からの感覚だけで次の攻撃が読めてしまう程敏感になったが、それでも少しでもブルーストリームを発動させようと必死になっていた。それがわかっているからこそ、エルザは徹底的に攻め立てていた。ほんの少しだけ、私怨も混じっているが。

 

「火竜の炎…!火毒(かどく)炎竜双頭斬(イグニルズスライサー)!!」

 

「━━━!!!」

 

2つの刃に炎を灯し、1度で2度斬る技を繰り出すエルザ。斬られた痛みもそうだが、まるで火傷のような痛みがミサキの体中に広がっていく。感覚が鋭敏になってしまっているからこそ、余計にその痛みが突き刺さっていた。

 

「天使剣・紅女王斬り(スカーレットゼレル)!!」

 

剣を投げ捨て短剣へと持ち替え、高速で切り刻む。噴き出した血が、まるで翼のようにミサキを中心として広がる。だが…だがこれでもミサキは諦めていなかった。ダメージを受け続けながら、魔法を発動させようと必死になっていた。それが遂に叶ったのか━━━

 

「ぐっ!?」

 

「はー…!はー…!私、の世界…まだ…まだ…!!」

 

ミサキは執念で魔法を発動させて、エルザに一撃を与える。本来であればこんなすぐに動けるどころか、最早戦闘不能でもおかしくないのだ。だが、これが黒滅竜騎団というものなのか…とエルザは畏怖を覚えながらも立ち向かっていく。

 

「これだけやってもまだ意識があるのか…!ならば、元の世界に戻るためにも……星霊の輝き!!」

 

「なぜ、ここまで…私の世界で━━━━」

 

虚茨(きょし)十二星道斬(トゥエルブスプリット)!!」

 

12の輝く光弾と共に切り裂かれながら、ミサキは『どうしてここまで』と考えていた。いくら強い魔導士と言えども、空間を支配されてなお戦える。そんな事はありえないと、ずっと思っていた。

だが、ここまで来てようやく気づいたのだ……()()()()()()()()()()()()()()。エルザの魔力が、ミサキの空間を支配し返していたのだ。

 

「スカー…レッ……ト、ディメン…ション……!?」

 

「これで終わりだ…!私の髪をちぎった恨み、この剣で思い知れ…!エンチャント!天体魔法!!」

 

「ぐっ…!!」

 

先程の一撃で発生した光弾が伸び、ミサキを拘束する。12の鎖がミサキを縛り付けたのだ。奇しくも、先程のエルザと似たような構図となってしまう。だが、エルザは構わず…そこに一撃を叩き込む。

 

「妖精剣・流星(ながれぼし)!!!」

 

強力な天体魔法による一撃が、ミサキを切り裂き飲み込んでいく。だが、まだ諦めきれないと…自らの空間を支配されたにも関わらずミサキはまだ勝ちを望んでいた。

エルザのその一撃が、ミサキの拘束ごとミサキにダメージを与えたお陰で…ミサキは体を動かせるようになっていた。既に満身創痍だが、回復よりも攻撃に意識を向けていた。

 

「まだ、まだ終わって…ない…!この空間は、私が支配…して…!トドメを、刺しきれなかった自分を…!」

 

「━━━いいや、終わりだ」

 

「は…?……ぐっ!!?」

 

最後に使った剣を、エルザはミサキの元へと投げる。それに意表を突かれて、ミサキは隙を作ってしまう。だが最後の一撃を放った剣がミサキの傍に寄った瞬間、ミサキの体は6本の鎖が突き刺さっていた。だが、それ自体にダメージは無い。

 

「こ、この鎖は…」

 

「6度の攻撃…エンチャントした剣をその都度空間内に投げていた。その理由は、それ自体がこのトドメの…布石だからだ」

 

「なっ…!?」

 

「6つの祈りで7つの星に裁かれよ…!六魔七星剣(オラシオンシャリオ)!!」

 

「ぐあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ━━━━━!!!!!!」

 

投げ捨てた剣を含め7つ…最後の剣がトリガーとなり発動する。今まで受けたエンチャント全てが、再びミサキの体に放たれていき…そして強大なダメージを与える。これが完全にトドメとなり、ミサキは完全に意識を失う。直ぐに元の空間内へ戻されるだろう、その事を考えて…エルザは少し安堵しながら…戦いが終わったことを実感するのであった。




エンチャントは仲間の、技は仲間と六魔達のイメージの掛け合わせ技です。
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