FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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三叉雷

迷宮が崩壊するかのように、揺れ動く。だが、そんな揺れの中でも二人の男は微動だにせず睨み合っていた。片方はディアボロス最強格の1人、黒滅竜騎団のキリン。もう1人は妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強格の男ラクサス。

互いが睨み合う。互いのギルド最強をかけた戦い…勝った方が、真の最強。緊迫した状況の中……最初に動いたのは、キリンだった。

 

「ふんっ!」

 

「ぐぅッ…!」

 

背中に担いだ棺を振るい、ラクサスに当てる。いつものラクサスであれば、雷をまとい高速で動くことによって回避はしやすかったかもしれない。だが今はキリアの一撃による痺れと怪我により、いつものように動くことが出来ないでいた。

 

「ぐ…!またか…!」

 

「フッ………」

 

ラクサスは吹き飛ばされながらも、勢いを利用し上手く力を受け流す。だが棺をぶつけられる度に、ラクサスは謎の脱力感を覚えていた。これはキリンとの初戦でも覚えた感覚であり、何故そうなっているかが全くの未知数であった。唯一関係があるとすれば、初戦に言ったキリンの謎の一言。

 

「『棺には王の魂が眠っている』か……いや、関係ねぇ…破壊しちまえば済むことだ…!雷竜の咆哮!!」

 

思考から余計な情報を落とす。棺が原因なのは明確であり、ならば破壊してしまうのが手っ取り早いとラクサスは考えた。故に、力が出ないなりにもブレスを吐いて破壊しようとする。だが、キリンは一切焦りを見せることはなく━━━

 

()()()()()!!」

 

放たれたのは、ブレス。それも雷属性のブレスであった。そう、ラクサスと同じ、雷属性の滅竜魔法……それが真のキリンの力なのである。

 

「雷…!?てめぇの魔法は大気の魔法じゃなかったのかよ」

 

「ありゃサブだ、そんで重力はサブのサブ…メインはこっちだ。さて、改めて自己紹介させてもらおうか……ギルド『ディアボロス』黒滅竜騎団の1人、黄竜のキリン。

俺達ディアボスは全員が滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)であり、竜喰らい…ドラゴンイーターでもある」

 

「竜喰らい……竜を食らう、だと?」

 

「そう……俺が食ったのは黄竜エレクシオン、そいつは『雷竜王』と呼ばれていた」

 

「雷の王……」

 

「あんたと戦う日が来るのは…運命だったのかもなァ…!」

 

そう言いながら、キリンは片手をあげる。それが合図と言わんばかりに、室内にも関わらず大量の雷が辺り一面に降り注ぎ…当然ラクサスにもその雷は降り注いでいく。

 

「ッ…!!ぐああああああああ!!!!!」

 

そして、雷のダメージは()()()()()()()()()()()()()()()。本来滅竜魔導士は、自らの使う属性のと同じ属性の魔法は通じない。ナツならば火、ガジルならば鉄と言った様に。しかし、あくまでもこれは原則程度の物……同格以上であれば通じることもある。

 

「馬鹿な!?俺に雷は通じないハズ!?」

 

「それが王の雷さ」

 

未だ落雷は降り注ぎ続ける。ラクサスは何とか避け続けているが、迷宮という狭い密室内。そして雷はそれ自体の速度も凄まじいものである。加えて、ラクサスはダメージ等で本来の実力を発揮しづらい状態……ラクサスからしてみれば、かなり面倒な状況である。だがそんな状況でもラクサスは不敵に笑みを浮かべる。

 

「……『王』ね。その棺の中は、そのドラゴンの魂ってわけかい?」

 

「………」

 

何かが琴線に触れたのか、無言でキリンは棺をラクサスに向けて振るう。だが段々と見切れてきているのか、その攻撃をラクサスは避けることが出来た。

 

「魂ってのはそんな乱暴に扱っていいものなのかい?」

 

「王を食った者の特権……さ!!!」

 

煽るようにキリンに話しかけるラクサス。冷静さを失わせて隙を突こうとするつもりだったのだが、キリンは逆に冷静さを取り戻してきているのか逆にラクサスに一撃を棺の一撃を当てていた。

そして、先程までと同じように…ラクサスに謎の脱力感が襲いかかる。

 

「ッ……!またこの感覚…何だ、これは……!!引き寄せられそうな……ッ!!まさか…!」

 

「あれ?気づいちゃった?」

 

「ッ!?」

 

「確か…お前の体の中には滅竜の魔水晶(ラクリマ)が埋め込まれているよな?」

 

ラクサスは第二世代の滅竜魔導士である。第二世代の特徴として、竜のラクリマを体内に埋め込み滅竜魔導士と化した存在…竜を取り込む、という点では第五世代のドラゴンイーターが近い存在とも言えるが……当然、ラクサスはこの情報をキリンには漏らしてはいない。

 

「何故それを…」

 

「あー、まぁ情報担当のやつがいるんだよ…重力の魔法をくれたディアボロスのメンバーがね……マ、そんなことはいい。

お前のそのラクリマはある竜の心臓を加工した物……それが雷竜王エレクシオン、俺が食ったドラゴンだ」

 

「なんだと…」

 

「共鳴しているのさ、魂と心臓が」

 

「バカな…」

 

「言っただろ?運命だと……エレクシオンが心臓を返せと叫んでいる」

 

デマではない。現にラクサスにキリンの雷の魔法は通じている。そしてキリンにもラクサスの雷の魔法は通じている。つまり魔法の質は完全に同じ。それが、同じ竜から得た力だと言うのならば…納得もできる話である。

 

「体を食ったやつが何を言ってやがる……」

 

「俺はエレクシオンと1つになった……ただ1つ足りないのは心臓だ…!」

 

飛び上がり、キリンはラクサスに向けて拳を振るう。回避よりもガードが確実だと踏んだラクサスは、その拳を受け止める。瞬間、凄まじい雷が2人の間から放たれる。

 

「よこせ…!」

 

「………こいつは俺がガキの頃に無理矢理埋め込まれたもんだ。正直今更こんなものは要らねぇが……逆に、俺がその棺から魂を解放してやるよ……!」

 

そして、お互いに距離をとる2人。少しばかり睨み合いを行うが…さっきがぶつかり合うかのように、雷がお互いの間に降り注いでいた。

 

「……」

 

「……」

 

この睨み合いの中……先に動いたのはキリンであった。雷を通した棺を、再びラクサスに振るう。既に何度も見た動き、ラクサスはすぐに避けることが出来た。それどころか、カウンターを決める余裕まであり…キリンに蹴りを入れ込んでいた。

 

「いいね…だが()()()()()()()()

 

「ッ!!」

 

ほとんど行っていなかったキリンの肉弾戦。今までは大気の魔法と棺を振るうことで戦闘を行えていたのだ。だが、今からは肉弾戦も完全に交えた…本気の戦い。キリンは拳に雷をまとったかと思うと……ラクサスですら反応しきれないほどの連続の殴打を見せる。

 

「ッ━━━━!!!」

 

「王に勝てるとでも思ったかァ!!」

 

空気が連続で破裂したかのような音。近くで銃を乱射されたのかと思うほどに、その音は連続し…ラクサスにはその分の拳が全身に叩き込まれていた。

 

「がはっ…!」

 

「今だエレクシオン!!!!」

 

キリンは棺を投げる。投げられた棺は一人でに開き、ラクサスを閉じ込めんとそのまま迫る。だがそれを避ける程の余裕はラクサスには残されておらず……ラクサスはそのまま棺に飲み込まれてしまう。

 

「今度はお前が食え!!自らの心臓を!!!ラクサスを食って1つになれ!!!」

 

「ぐああああああああ!!!!」

 

ラクサスは棺内の電撃に苦しみながら、ふと既視感を覚えていた。雷の竜とは、実質これで二度目…1度目は大魔闘演武優勝後始まった『竜王祭』にて━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━チッ…ここまで通じねぇとなると、流石に滅入ってくるな」

 

「何だ何だ!!その程度か!?それでは静電気にすらなりえんぞ!!あっしを痺れさせたくば!!もっと本気を出してみい!!」

 

辺りに紫電が降り注ぐ。砕かれた全ての瓦礫は帯電し、ラクサスでさえその一撃は体を痺れさせるものだった。そして何より、襲ってくるのは1度や2度ではない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ビカビカ光って…バチバチと喧しい……過剰にも程があるぞ…!」

 

「それこそが紫電!!あっしが飛べば後の道にはぺんぺん草も生えることは無い!」

 

「それにしても変な喋り方をするドラゴンだ…」

 

「くはははは!!文句があらば電撃のひとつでも通してみるが良い!!ほうれ動くぞ動くぞ!!」

 

そう言いながら蛇のような体を動かし、まるで踊るようにラクサスの周りを飛ぶヴァレルト。だが、宣言通りその通り道…ヴァレルトが飛んでいる所は凄まじい勢いで落雷が降り注いでいたのだ。

 

「紫電は怒涛の如く!!目を潰し!体を焼き!魂を砕く!!潰せぬなら焼けぬのなら砕けぬのなら!!!!全てが通るまで通すだけよ!!」

 

「ぐ、ぐうぅ……!!」

 

ラクサスの体は雷の魔法は通じずらい。だがヴァレルトの宣言通り、連続して落ちる紫電の前にラクサスにダメージが蓄積していき、ついには膝を着いてしまっていた。それでもなお紫電は降り注ぐ。避ける場所を用意する気は無いと言わんばかりに、そこら一面に全て紫電が降り注ぐ。

 

「体が、痺れ…!」

 

「雷に耐性があろうとも!雷を食えるとしても!!当てていけばいずれは通る!!現に貴様は膝を着いている!!そうだ!!我が紫電は全てを砕き全てを焼き全てを潰す!!貴様の命尽きるまで、存分に落とそうぞ!!」

 

受ける度にラクサスの体は痺れをふやしていた。そう、()()()()()()()。そしてこの時得た痺れは、ラクサスの中に未だ上がいるというのを改めて実感させてくれたものである。そう、そして同時に━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

,

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………()()()()()()()()()()()()()

 

「今こそその時だ!!エレクシオン!!」

 

「なるほどな…覚えはねぇが…またあの電撃を受けていたか……」

 

「これがお前の求めていた━━━」

 

「…今砕くのは、棺と…妄執、そして俺自身の過去だ…!!」

 

「心臓を持つ男!!」

 

棺がひび割れ、そして完全に砕け散る。その様子に、キリンはエレクシオンが心臓を…ラクサスの中のラクリマを完全に食らったと判断した。だが、現実は違った。

 

「……は?」

 

「………言っただろ、俺の体に埋め込まれてるラクリマにはなんの未練もねぇと」

 

現れたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。つまり、魔力の源を抜いたも同然。その行為に、今起こっている現実に、キリンはパニックを起こしかけていた。

 

「馬鹿な!?それはお前の魔力の源の筈!!それを取り出すなど…!」

 

「あぁ……食わせろ食わせろうるせぇから捨てる事にした」

 

そう言いながら、ラクサスは手に握っていたラクリマを離して床に落とす。元から未練がない物にこだわる必要一切無し。ラクサス既に興味が失せていた。

 

「エレクシオン!!」

 

「━━━てめぇは1つ、大きな勘違いをしている」

 

「何…!?」

 

「………棺の中で、エレクシオンの声を聞いた。長年共に居たせいで…情が湧いたんだろうな、お前がエレクシオンに。だが…当のエレクシオンはお前の事なんて何も思っちゃいねぇ、誇り高き雷竜の王…本能のままに心臓を求め続けていた」

 

ラクサスの周りに、魔力が集う。これは棺の中にあった魔力を、ラクサスか食べる為に集めているだけなのだが……その行為は、どうやらキリンには全く別の行為に見えているようであった。

 

「己が尊厳を守るため、己が肉体を蹂躙した者を滅する為…魂となり彷徨い続けた」

 

「俺を…殺す、為…!?」

 

「そして今、お前を滅する者に…出会ったわけだ」

 

「━━━━()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

「雷轟の如きこの魔力…!これでお前を、滅してやるよ…!」

 

ラクサスの体から、3つの雷があちこちに放たれる。1つは元々持っていた雷、2つ目は目覚めた力赩雷竜(かくらいりゅう)、そして3つ目は━━━

 

「お前の全てを、この紫電を持って…滅してやろう…!エレクシオンの為にな…!」

 

「馬鹿な…!エレクシオンが俺を…馬鹿なことを…抜かすな!!黄竜の━━━━!!」

 

()()

 

キリンが技を出す直前まで目の前にいたラクサスは、()()()()()()()()()()。そして、それを認識したキリンは一気に頭の中を混乱で埋めつくしていた。だが、その混乱を塗りつぶすかのように━━━

 

「ぐおおおおおおおおおお!!!!!?」

 

「紫電は、相手を潰す。何でか体に帯電してたんでな……通りで魔力が流れづらい筈だ…杭みてーに残ってたわけだ」

 

「馬鹿、な…貴様…いつの間に…」

 

「………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そして…その全てに紫電が追撃を入れた」

 

「一瞬で、そこまで…!?」

 

紫電の力により、ラクサスは今まで以上の速度を手に入れていた。そして、一撃を入れた場所全てに追撃が入る。それにより、同じく先程まで通じずらかったキリンに対して致命傷を入れることが出来ていた。

 

「どうだ?今度はお前が追い抜かされたみてぇだが…」

 

「クソ…!」

 

「…時間をかけるわけにゃ、いかねぇんでな…エレクシオンの為、このまま終わらせてやるよ」

 

3色の雷が、ラクサスの周りを迸る。まるで舞う竜かのように雷がラクサスの周りを上下しながら回転し、そして同時に拳に凄まじい雷が集中し始める。

 

「このまま、終わる訳には…!」

 

「終わりだ……!『三叉(サンサ)紫赩雷(シカクライ)!!!」

 

「ぐああああああああああああ!!!!!!!!」

 

拳がキリンの体を吹き飛ばし、紫電がキリンの体に降り注ぎ、拳から遅れて放たれた赩雷がキリンを貫き…そして本命の雷がキリンを痺れさせていく。それにより完全に意識を失ったキリンを見ながら、ラクサスは不敵に笑みを浮かべる。

 

「………くくっ、エレクシオンの声がしたって?全部冗談だ…そこに魔力があった、だから食った。それだけの話だ……丁度クソ親父からの呪縛からも解放されたかったしな」

 

ギルド最強を掛けた戦い……制したのは、ラクサス・ドレアー。つまるところ、妖精の尻尾の勝利であった。




最近目に見えて読まれていると感じている時がありますが、嬉しいものがありますね。
7年越しに更新を始めた作品ですが、これからもよろしくお願いします。
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