復活した土神竜ドグラマグ。彼を倒すためにナツとスザクが現在戦っているが、一切の攻撃が通じない。だがドグラマグを弱体化させる手が一つだけあった。それは、ドグラ迷宮にある 『ドグラコア』という宝石の破壊。幾つかはドグラマグが復活した際に取り込んだが、大半はまだ迷宮内に残っているのだ。それを破壊すればドグラマグは弱体化、そしてナツ達の攻撃も通る……その算段で動くととなった。
コアまではセレーネがゲートを開きショートカット、後は人数による手数の多さで破壊していくという至極単純な作戦。事実、作戦開始始めは順調に壊れていった。あっという間に破壊数が10を超えたのだ。だが━━━
「次はここか……ん?」
また新しいゲートの先へと飛び降りたマルク。だが、彼の
「…おい、誰だそこにいるのは」
「━━━━んん?イシュガルの…
目の前の人物は振り返る。声と見た目で男と判断、髪の毛は黒であちこちに跳ねており、歯はギザっ歯。オレンジの衣装に黒の袖。両肩にはどこかのギルドのマーク。やはりどこかでどこかで見たことがあるマルクだったが、どこで出会ったのかは皆目見当もつかない状態であった。
「そう言うって事はお前はイシュガルのギルドじゃない、かつウチに関わり合いのある誰かってことか」
「あひゃひゃ……その通り、一度はお前のとこのギルドの奴に殺されかけたもんでなァ」
「あァ…?」
つまり何かしらで敵対した人物。ほぼそれは間違いがないだろう。そして感じた魔力はどこかで出会ったような感覚。必死に頭を回し目の前の誰かの正体を考えていく。しかし、その答えはすぐに出てくる。
「『元』スプリガン
「うーん………んー…………んん…?あっ!!!」
ワール・イーヒト。かつてのアルバレスとの戦争の際にラクサスが倒したスプリガン12の一人である。そしてマルクが魔力を感じたのも、アルドロンの上で復活した彼と戦ったためである。そう、『復活』である。それもそのはず、
「…だとすると変な話だな。お前死んでる筈だろ」
「クククっ、我は
「国を裏切ったってか」
「それが大人の世界というやつだ」
「そうか」
目の前にいるワールの言う事を、マルクはあまり信用していなかった。分身がでてきたという話であっても、あの戦争時死んだ筈のゴッドセレナとブラッドマンとのセットで出てきたという話をマルクは後から聞いていたのだ。そしてそれは死者を甦らせる魔法のせいだと。つまり、目の前の人物は確実に死んでいるのだ。
だが、魔力に覚えがあるのもまた事実。目の前の人間はワールであってワールではない誰かなのだ。
「……まぁいい、そのコア。破壊させてもらう」
「そうはいかねぇ、こいつは
「…?黄金の梟?」
「あぁ、今俺がいる『錬金術師ギルド』だ」
「錬金術…?霊術と言い世界にはまだ知らんのがあるもんだな……」
どのような力かは、正直なところマルクもあまり分かっていない。アルドロンの上で戦った時に吸収はしたが、それで全てなのである。要するにほぼ未知数に近い。
「錬金術とは、魔法とも呪法とも霊術とも違う力…その戦い方において根源となる力は必要ない」
「…というと?」
「魔導士における魔力のような物が必要ないのだ。必要なのはこの世界にあるもののみ」
「へー、そりゃ便利だ」
越魔をすぐにでも発動できるよう、体の中で準備を整える。どのような技だろうが、一撃の元に倒してしまえば早いのだ。悪魔龍…暴食辺りの力で葬ることも考えたが、ここに来て第三者どころかさらに別勢力まで来てるとなると…情報を手に入れる方が先決だとマルクは考えた。
「……」
「……」
動かず睨み合う2人。静寂の空間に、2人の呼吸音だけが響いていく。ほんの数秒の睨み合いの末…先に動いたのは、マルクだった。
「越魔龍の轟砲!!」
「
「ッ!?」
ブレスを放ち、高圧の魔力によって一撃で決めようとしたマルク。だが、口から放たれたのは……
「
「か、雷…!?俺電気属性のブレスを…!?」
━━━━
「どうなってんだその体!!…いや、それも錬金術か…!」
「察しがいいなれば!しかしてどうにも出来ぬ!!」
「け、傾向がまるで分からねぇ…!!いや、そもそも既存の法則とかで考えねぇほうがいいか!!」
「今考えている暇があるのかァ!?けひゃひゃ!!」
「何かさっきより荒ぶってんなこいつ…!」
しかしマルクのブレスの変貌や相手の変貌ぶり、この2度では情報が足りない。と言うよりも『属性の変更』や『肉体の強化ないし増産』では繋がりが見えないのだ。
「ではもう少し戦いづらくしてやろう!
「今度は何を…!ん…?」
『何が起こるか』と身構え…というよりも身構えた時点で既に違和感を感じたマルク。自らの視界に入ってる腕は、何やら先程より肉付きがいい。何故か先程よりも身長も低く感じる。声も何故か妙に高い。身につけていた衣類が全体的に妙にキツイ。何故か胸が重い。そこまで思考停止してようやくたどり着く真実。
「…………
「けひゃひゃ!滑稽なれば!!」
「何だこれなんだこれ!?おまっ!?ふざけんっ…な…よ……」
焦っていたが、すぐさまワールに立ち向かおうと1歩歩くマルク。その瞬間胸が痛くなった。心臓が痛いという意味では無い。どちらかと言えば『根元』が痛い。『動いた』からだが、その動きがマルクにとって遥かに毒であった。
「……」
「けひゃひゃ!!無様!滑稽!男の癖にその程度で……」
「………こ…」
「……こ?」
「この体使わなきゃいいだけだろうが!モード悪魔龍
悪魔龍の力は彼そのものの姿を変える。肉体が女であろうがなかろうが、その事実は変わらない。暴食の力では腕が無くなる代わりにそこから追加の頭が生える。そしてその頭達は相手を食らうまで伸び、切り離されても相手を追いかける。本来であれば使うつもりのなかった力だが、今となっては仕方ないとマルクは頭で割り切っていた。
「…呆れるくらいのウブなれば……
「何しようがもう止まらね……うおっ!?」
更に追加で錬金術を受けるマルク。呪力の力は既に出していて、もはや何をされても止まらない気でいたが……またしてもその力に驚きを隠せなかった。
「今度は愛する異性……いや同性か?クククッ、とりあえず好きな女と入れ替えたなれば」
「ご、ごちゃごちゃしやがって……!!け、けどさっきよりはまだ戦いやすい!!ウェンディは強いからな!!」
「ふむ…可能性としてはあったが、相手も魔導士……実力次第では…失敗か」
.
「壊してきました! 」
「よし、次はこっちだ」
「はい…きゃっ!?」
こちらはセレーネのいる場所。つまりはメンバーがコアを破壊しやすいようにゲートが開いたり閉じたりしている場所だが……そこに一旦ウェンディが戻ってきており、別のゲートを通ろうとした瞬間
「何だ今のは…」
「あいたた……一体何が…おムネが…!?」
「何だ…!?今何が…」
姿の変貌したウェンディ。彼女達は知らないが、先程までマルクが変貌していた姿にウェンディがなってしまっているのだ。そして、その現象にセレーネも驚愕したが……すぐに真相に辿り着く。
「そうか、錬金術……」
「し、知ってるんですか!?」
「あぁ…かける技によっては離れた体同士を入れ替える技でもあるが…」
「わ、私知らない人の体を…あれ、でもこれ……」
ウェンディの見える範囲では、あまり変わってない視点の割に自分とはかけ離れた体。長い紫の髪に当たる知り合いはいなかった。しかし、妙に見知った体のような気がしていたのだ。そしてセレーネも体の持ち主が分かったのか、すぐに伝え始める。
「気づいたか…それはマルク・スーリアの体だ……」
「マルク女の子になってるんですか!?」
「実に可愛らしい姿にな……」
「れ、錬金術ってそんなことも出来るんですね……」
「……しかし、そうなると……一先ずコアの破壊を頼む。そして気をつけて欲しい……恐らく
そう、目の前のウェンディもそうだが…マルクにも異変は訪れているのだ。よく考えなくてもわかること、イグニアとは違うまた別の敵……錬金術師が今この迷宮内に入っているのである。セレーネはこの事実に少し歯がゆい思いをするのであった。
.
「せぇい!!」
「風…強力な風圧。本来であればかなり厄介な技…しかし、属性を変えてしまえば…!」
「
ウェンディとなったマルク。普段から魔法を見ているだけに、大凡の発動の仕方はイメージ出来る。それ以前に越魔龍で天竜の力を写取り使ったこともあるので、感覚としては既に掴んでいるのだ。
それにより、迷宮内の砂や塵を巻き上げワールの視界を塞ぐことに成功する。
「ぐっ…しまった…!」
「やっぱりな…認識してねぇと使えねぇ、な!」
後ろから飛びつくマルク。そしてそのまま離れないように抱きついて、ワールから完全に見えなくなる。
「貴様!何を!」
「天竜の━━━」
答えるつもりはなく、そもそもさっさと終わらせたいので聞くつもりがないマルクは一気にブレスで決着をつけようとする。どのような術であっても、術者が倒されたら解除されるというのは基本的な原理である。それに則り、天竜のブレスの一撃でワールを倒そうと考えていた…のだが。
「くっ…
「ッ━━━!!咆哮!!」
ワールは背中の武装をミサイルに変更。その上で一気に背中のマルクに向けて全弾発射していた。無論、その驚異に気づいていたマルクは咄嗟に抱きしめていた両腕両足離す。そのうえでブレスを放つ。爆風とブレスの暴風による反動に逆らわない事で、先程までいた場所とは距離を離しつつ無傷でいることにマルクは成功していた。
「危ねぇな……」
「ぐ、がっ……ぎぎっ……侮って、いた…なれば……」
「……お、姿も戻った」
ワールはマルクを離させる為に使ったミサイルの爆風、それとマルクが放ったブレス……その2つを同時に受けてしまった。苦肉の策だったが、それは成功しなかったとマルクは認識していた。
何故ならば目の前のワールは体に大きな穴が空き、今にもバラバラになりそうになっていたからだ。そして、そのダメージによってかウェンディから元の男の肉体へと戻ることが出来ていた。
「出来れば情報を引き出したかったんだがな……仕方ない、このまま倒させてもらうぞ…危険だからな…にしてもこれでまだ生きてるとはな…」
「……ぐ、がが……へ…」
「ッ…!」
一瞬だけ笑みを浮かべたワール。それに危機感を抱いたマルクが一気に拳を振りかぶりワールを破壊し尽くそうとする。そしてそれは成功したが……破壊できたのは
「ちっ…!悪あがきにもならんことを…!頭だけじゃ…!」
「━━━セク…サ、ス……チ、ェン…ジャー……キャ、ス……ター………チェン、ジャ……ァ……」
「は…!?」
残った頭部も破壊しようとしたが、突如として聞こえた声にさらに危機感を煽られたマルク。急いで破壊しようとするがもう遅い。先程と同じように、再び女性の体にされたマルク。だが、そのままの勢いで頭部を破壊。仮に頭だけで生存できる種族だったにしても、これで元に戻るだろう……そう考えていた。だが、残った口だけが動いていた。もはやその光景は、恐怖心すらも煽ってしまうものである。
「我…また、復活……する、なれば……今、回の…情報……は、ギル、ド…に………」
「お前何を…うおっ!!」
そして、残った口さえも爆散。意味深なことを吐いた為に言葉の真意が気になってしまったマルクだったが……今は時間が無いと頭を振る。そして、ここで気がついた。
「……
ワールが最後に唱えていた言葉の1つ。今回の戦いにおいて聞き覚えのない単語だったことにマルクは気づく。それが
「錬金術師はこんなのしかいねぇのかァァァァァァァァァァ!!」
今回ワールは本気出してません、完全に情報収集の為です。
いきなり筋肉量、脂肪量、身長体重スタイル諸々変化するので、普通ならまともに戦えなくなる。
今回はワールの性別変更の錬金術の術士をマルクへと変更、更に魔力を消費する限り錬金術が維持されるように工夫。スプリガン12となったワールだからこそできる芸当である。
身長はウェンディより少し高めくらい、後は何かと言いませんがエルザ〜ルーシィくらいです。