FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

182 / 226
長めです


迷宮の崩落

「悪魔が竜の真似事なんかしてんじゃねぇぞ!!」

 

「さっきは負けたがなァ!!今度はそうはいかねぇぞこの野郎ォ!!!」

 

ドグラマグと悪魔龍の力を解放したマルクの押し合い。ドグラマグが復活した頃は押し負けたマルクも、今は互角の勝負を繰り広げていた。ドグラマグが全てのコアを破壊されたのもあるが、マルクは今凄まじい執念で戦っているのだ。

 

「な、なんだこいつ…!?でかくなって…!!」

 

「俺の中の悪魔の力はァ!!俺を強くし、硬くし、でかくすんだよ!!お前にそう簡単に押し切られるほど今の俺の勢いは衰えねぇぞゴラァ!!!」

 

「━━━へへっ、えらくやる気じゃねぇか」

 

「だが…それくらいがちょうどいい…!」

 

「だな…!炎竜王の崩拳!!」

 

「クルヌギ流抜刀術!冥界輪廻!!」

 

「ぐおおっ!!」

 

2人の攻撃がドグラマグにダメージを与え、鱗を砕いていた。それによりよろめいたところを、マルクが更に追撃する。

 

「暴食龍の…暴食咆哮(グラトニーバースト)!!」

 

「ぬおおおおお!!?俺の鱗が…いや、体が食われ…!ぐぐぐ…!どけぇ!!」

 

「ぐぅ!?まだこいつこんな力が…!」

 

マルクのブレスを受けて、必死になりながらマルクを押しのけるドグラマグ。彼は気がついていないが、彼らを相手にするのに『必死』になってしまっている。もはや冷静さ等は存在していなかった。

 

「くそが…!クソがクソが!!てめぇらごときに…!土神竜の━━━」

 

「させん!!クルヌギ流抜刀術━━━!!」

 

ドグラマグが技を放とうとした瞬間、マルクとドグラマグの間にスザクが割り込む。抜刀術によりダメージを与えようとしているのだろう。攻撃の瞬間、マルクは援護する形でスザクの刀に…嫉妬の黒き炎を与える。一瞬驚いたスザクだったが、そのまま抜刀術へと移行する。

 

「━━━━黒炎天下(こくえんてんげ)!!」

 

「ごぶっ!?」

 

顎下から黒炎を纏った一撃で切り上げ、さらにそのまま二撃目を脳天に当てる。高速の抜刀術が、ドグラマグの頭と顎下に黒い炎を点火させる。

 

「ごの゙ッ…!程度でぇ!!!」

 

「倒せるなんて…微塵も思ってねぇよ!!」

 

「ゴァッ!!」

 

付与された黒い炎は、ドグラマグが大量の魔力によって消し飛ばす……が、その一瞬の事でマルクに一手を許した。ドグラマグは顔面を掴まれて壁に叩きつけられてしまう。

 

「━━━モード雷炎竜!!」

 

「しまっ…」

 

「滅竜奥義!!紅蓮爆雷刃!!!」

 

「ぐおおおおおお!!」

 

そして、叩きつけられた直後に与えられる炎と雷の一撃。壁に叩き付けられている為に逃がすことの出来ない衝撃が、ドグラマグを更に削る。

 

「ほっ…!モード越魔龍!!」

 

「ッ!!」

 

「飛びながらなら色々関係ねぇんだよ!!越魔龍の轟砲!!!!」

 

そしてマルクは空中で越魔龍を解除、そのまま空中からブレスを放ちドグラマグを滅竜せんと凄まじい勢いで全身を包み込む。だがドグラマグは無理矢理そのブレスから抜け出していた。

 

「ぐぅ…!クソが…!鬱陶しいぞ…さっさと、死にやがれ…!!」

 

「モード悪魔龍…!罪なる七悪魔(セブンスシンズ)!!」

 

「がはっ…!」

 

しかし、抜け出したドグラマグの上から再び悪魔龍を使ったマルクが落下してくる。本来7つ全部解放したこの姿は翼があり飛ぶことが可能なのだが……敢えて飛ばず、自由落下で肘打ちを決めていた。本来であれば弾き飛ばすくらいは出来ただろうが、弱体化した上にボロボロになりつつある今のドグラマグでは一切の抵抗が出来ないままなのである。

 

「随分と弱ってんなァ!ドグラマグ!!」

 

「クソが…!」

 

「散々見下して!馬鹿にしてきた結果がこの末路だ!!舐めんじゃねぇぞ俺達を!!」

 

「そうだな…!!」

 

「これで、終わらせる…!」

 

ドグラマグの顔目掛けてナツとスザクの2人は迫る。ほぼ無傷の状態から、満身創痍にまでされたドグラマグは本能的に理解する。『このままでは本当に滅竜される』と。死ぬことに恐怖している訳では無い、自らが格下と思った相手に負けるのは…どれだけ傷ついていても彼にとっては、我慢ならぬ出来事なのだ。

 

「まだだ……まだ、終わんねぇぞ!!!」

 

「ぐおっ!!?まだこんな力が…!」

 

「まずはァ!!!てめぇからだ!!!」

 

「ぐはっ!!!」

 

魔力を解放し、その勢いでマルクを吹き飛ばすドグラマグ。そしてそのままマルクを殴り飛ばし、先程の自らのようにマルクを壁に叩きつけていた。

 

「マルク!!」

 

「てめぇらも!!潰れろや!!土神竜のジ・コルメア!!!」

 

「しまっ!!」

 

「くっ…!?防ぎ切れるか…!冥界輪廻!!!」

 

ドグラマグの足が2人に向けて振り下ろされる。それに合わせて、スザクが抜刀術で何とか鍔迫り合いまで持ち込むが、如何せんサイズ差と重量差による攻撃の大きさの差は無視出来ないほどであった。

 

「スザク!?」

 

「これしきのことで…!負けてられん…!こちらは、ドラゴンイーター……竜を狩り、竜を食らう……存在だァァァァ!!!!」

 

「ぬおっ!?」

 

全身の力を振り絞り、スザクは抜刀術にてドグラマグの前足を弾いただけではなく更に吹き飛ばしてもいた。だが魔力さえも今ので使いきったのか、片膝を着いてしまう。

 

「うおおおおおおおおおおお!!!」

 

「ぐっ……ナツ!!我が剣に炎を纏え!!!朱雀とは火の鳥故!!!」

 

スザクの奮戦を無駄にすまいと、ナツはハッピーに掴まれて空を飛ぶ。それに合わせスザクは自らの刀をナツに預ける。ナツは受け取り…その刀に炎を宿す。

 

「ユニゾンレイド…だと…!?だが正面切って飛びかかるのは、バカの仕草だ!!」

 

そう言って、ナツに殴り掛かるドグラマグ。だがその拳は空を切り、空振りに終わっていた。先程までいたナツ達の姿は、霧散したかのように消えてしまっていた。

 

「なっ…!?どこに…」

 

「へっ……()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ッ!!この悪魔もどきが…!」

 

悪魔龍の力…色欲の力をドグラマグに向けて放っていたマルク。それにより幻覚を見せられていたドグラマグは、ナツ達がいないところに攻撃をしてしまっていたのだ。

 

「ばかな、いつから……」

 

「さてな……で、俺に意識割いてていいのかい?」

 

「ッ!!」

 

ドグラマグは上を見上げる。そこには、1度急上昇してさらに速度を上げながら落下しているナツとハッピーの姿があった。その時点で、ドグラマグには防げないタイミングとなっていた。

 

「へっ……いけえええええ!!ナツさん!!ハッピー!!!!」

 

「━━━炎竜斬!!!!」

 

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」

 

ドグラマグに大きな炎の刀傷が出来上がる。コアの破壊による弱体化、更にそこから散々に攻撃され満身創痍となっていたところにナツとスザクによるユニゾンレイド。これがトドメとなり、ドグラマグは吠えながら倒れてしまう。

 

「ば…馬鹿な……この俺が、人間…如きに……」

 

「そうやって…上から見てる、から……わからねぇん、だよ…!」

 

攻撃を受けたところが完全に崩れ落ち、そしてそこからドグラマグの全身にヒビが入り始める。最早ドグラマグの命は風前の灯火となっていた。

 

「人間も…ドラゴンも……生きてるって事に、変わりはねぇだろ…!友達にだって、親子にだってなれる……強さだって、変わんねぇんだ…!」

 

そして、ナツも力を使い果たしたのか倒れ込む。元々満身創痍な所に、全力に全力を重ねていたのだ。当然その分の反動が、今来ているのだろう。

 

「それに……戦いで相手を舐めて、今出せる全力を出さなかった……それがお前の敗因だ。人間も、ドラゴンも…相手を舐めて全力を出さなかったら…勝てるもんも、勝てなくなるってことだ」

 

「あ……が……なるほど、な……」

 

マルクが悪魔龍を解除し、ドグラマグへと近寄る。既に動く事すらままならないドグラマグは、マルクを見て…その後ナツを見て僅かに口角を上げていた。

 

「イグニアが…執着するわけだ……だが、種は…撒かれた……」

 

「…種?」

 

「まもなく人間の時代は、終わりを告げる……あとは頼んだぜ…イグニア……」

 

そう言って、ドグラマグの体は崩れ去る。そして、それがトリガーとなったのか…迷宮が一気に崩落を始める。主たるドグラマグを失ったのだから当然だが、ここは地下迷宮……脱出しなければ、生き埋め必死である。

 

「迷宮が…崩れる…!!」

 

「崩落すんの早すぎだろ…!くそっ!3人とも今から俺が担いで連れていくから……」

 

「……ん?誰だオメー!?いや待て……マルクかー!?何で女に…」

 

「今ですか!?また後で話しますんで!!」

 

何度目かの悪魔龍の解放。マルクは腕に満身創痍となったスザクとナツ、そしてハッピーを抱え、上を見上げる。ただ問題は、どれだけ速度を出せば脱出できるのか…という点である。暴食のブレスを使い天井までの道を作るのは簡単な話である。ドグラマグが倒れた以上、残滓が残っていても問題なく破壊ができる。

しかしそうなると━━━

 

「崩れんのが早くなるよな…!速度を出して2人に負担はかけられねぇが…!」

 

「━━━なら、私達の力を使いなさいな」

 

「え、誰…!?」

 

「ミサキ!ハク!!」

 

「やっほー」

 

現れたのはディアボロスのミサキとハク。そして2人が現れたのと同時に、周りの瓦礫が一時的に落下を停止していた。

 

「私が全員まとめて包む空間を作って…」

 

「ボクがそれを毛糸で囲む!」

 

「なるほど…!なら2人を頼む!俺はそれを持っていくだけだ!!」

 

「えぇ、任されたわ……!」

 

ナツとスザクとハッピーは、ミサキとハクと共に彼女の魔法によって包み込まれる。それをハクが多い…毛糸のボールができ上がる。すぐさまマルクはそれを抱えて、一気に飛び上がるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

,

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「地震か…!?」

 

「ひっ!?」

 

その頃、地上では既に脱出していた妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーとキリアが皆の帰りを待っていた。満身創痍の中ゲートを開き続けていたセレーネが気絶し、ウェンディに治療されていた……彼女が気絶したのが原因か、別空間に閉じ込められていたエレフセリアが出てきており…同じく気絶していた。

迷宮内にあった彼の心臓…イグニアがそれを破壊してしまっていたらしく、一時的に意識を失っているのである。

 

「ちっ…でけぇな…!」

 

「エレフセリア殿を守れ!」

 

「任せろ!」

 

「おい!セレーネ!しっかりせぬか!!」

 

「傷が塞がらない…どうして…!?」

 

キリアが必死にセレーネに呼びかける中、ウェンディも治癒魔法をかけていた。しかし、血は止まれど傷が塞がる様子が全く見えなかったのだ。マルクの体質が原因で治癒が効きづらかった…という事もあったが、セレーネはドラゴンと言っても魔法を受けない体質では無い。原因が分からないことに、ウェンディは困惑を抱いていた。

 

「迷宮が崩れてるでがす!!」

 

「ドグラマグっつードラゴンを倒した…って事か?」

 

「わからん…だが、ナツ達が何かをしたのだろうな」

 

「ナツ……」

 

「マルク……」

 

様々な思いが交錯する中……ディアボロスのメンバーが次々と迷宮から出てくる。しかしそれに合わせて揺れも地響きも大きくなりつつあった。だが、その中で一際大きな音が鳴り響き始める。

 

「なんだ!?」

 

「近づいてくんぞ!!」

 

「ちっ…全員満身創痍だぞ…」

 

「いや…これは……」

 

段々と大きくなる音。それに合わせて大きくなる揺れ。だが、それが限界を迎え爆発したかのように……迷宮の中から、悪魔龍のマルクが姿を現した。

 

「マルク!!」

 

「ナツさんとハッピーもいるぞー!!あとディアボロスの3人!!」

 

そう言いながら、マルクは皆の元に着地する。それと同時に追加で揺れと地響きが一際大きくなったかと思えば……ゆっくりと納まっていった。それは、完全なる迷宮の崩壊を意味しており……つまるところ、今回の事件は一件落着━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

,

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━とはならず、一同は近い事もありディアボロスのギルドへと足を運んでいた。セレーネの本格的な治療、全員の療養、今回の件を踏まえて…以降お互いとどう接するか。諸々込で向かったのである。

 

「………今回の迷宮の崩落、それで起こった地震はギルティナ大陸全土に及んだみたいですね。1部地形が変形するほどだったとか…結局ドグラマグの言う『種』とかあれだけ広げた意味とか…イグニアの目的とか……色々気になる事はあるけど…全部推測の域を出ない答えしか出せないですね」

 

新聞を広げながら、全員に伝わるようにマルクは伝える。一部を除き、しっかりと聞いていたのか頷く者もいたが……その『一部』が問題なのであった。

 

「まだやられたりねぇってのか?あ?」

 

「ちょっとぉ…ラクサスやめなよぉ……」

 

「あんなせめぇ場所じゃ俺の魔法の本気は出せねぇんだよ」

 

キリンとラクサス。ギルドに戻るまでもそうだが、この2人はどうやら犬猿の仲に近いらしく…睨み合い、いがみ合い…喧嘩していたのであった。同じ雷の滅竜魔法…元の力がエレクシオンというのもあり、どちらかと言えば同族嫌悪というのもあるだろうが。

 

「オウ!!俺と勝負しろラクサス!!」

 

「なんであんたはそっち側なの……」

 

「ミサキだってそうさ、本来広い空間でこそ本気になれる」

 

そう言ってキリンはミサキを見るが…当の本人は用意された食事を満足そうに食べていた。どうやら、キリンの意見とは完全に一緒という訳でもなさそうである。

 

「私は普通に負けを認めるけど?だって私より強い女の子にあったのセレーネと貴方(エルザ)だけなんだもの……残り『4人』共戦ってみたいわね」

 

「女の子……」

 

女の子、と言われて頬を赤らめるエルザ。強いと言われたのもそうだが、年下扱いされることにあまり慣れていないので照れと恥ずかしさで赤くなっているのだ。

そして、マルクは4人と言われエルザ以外のウェンディ、ルーシィ、シャルル、マホーグを思い浮かべる。

 

「4人……まぁ4人か」

 

「………癪に障るけど、多分その内の1人はアンタよ」

 

「ッ!?」

 

マルク本人が完全に無視をしていた事実だが、未だにワールに掛けられた錬金術は解ける気配がなかった。なので未だにマルクは女子のままである。

 

「あ、あはは……あれ、という事はミサキさんは大陸一の女性魔導士って事ですか!?」

 

「流石だねウェンディ!頭いいね、なでなでしてあげる!!」

 

「絶対に触んないで!!」

 

「へ、変なこと…したら…殺す…!!」

 

「やっぱりお姉さん過激だね!!」

 

治癒魔法を掛けられてもなお、メンバーの中でトップクラスに満身創痍のマホーグ。しかし眼力でハクを睨んで牽制していた。

 

「…まぁ、魔導士ではな」

 

「オイコラ!!ミサキ姉さんにケチつけんのかスカリオン!!」

 

「ケチじゃない、事実だよキリア」

 

「アァ、ベクトルと相性の問題もあらァ…」

 

スカリオンが何か思ったようだが、キリアがすぐにキレる。スカリオンに加勢する形でレークとダーツが援護に入るが、事情を知らない者達の為にマッドモールがフォローを入れる。

 

「この大陸には魔導士ギルドと肩を並べる錬金術士ギルドがあるっちゃ」

 

「錬金術?」

 

「あの…あれか!物質を他の者に変えられる力!!」

 

「えー!?焦げたお魚を生にできるの!?」

 

「それは知らんが………できそうだな」

 

「あー」

 

「オイリリー!ハッピー!!なんで俺見てんだァ!!!!」

 

マルクを見ながら、ハッピーとリリー…それどころか他のメンバーも内心納得してしまっていた。目の前に凄まじい錬金術の成功例がいるのだから。

 

「あいつら!マジ!!許さん!!人の体!弄んで!!ふざけんじゃ!!!ねぇぞぉおおおおお!!!!!」

 

「ま、マルク落ち着いて……」

 

「俺も妙なやつにあったな…」

 

迷宮にいたのは3人。元スプリガン12(トゥエルブ)のゴッドセレナと、ワール。そしてサイと呼ばれる男。少なくともこの3人が、錬金術士ギルドに属しているのは明確である。

 

「クソが…ゴッドセレナと言いワールとかいう機械野郎といい…!後でぶっ飛ばす…!」

 

「ゴッドセレナ…?あいつは死んでいるはずだ」

 

「そうだね…コピーした物とはいえ、屍のヒストリアは死者を一時的に甦らせる魔法だ。逆に言えばこれで甦らない人物は生きている」

 

エルザのセリフにフォローを入れるかのように、レークが話す。つまり、死んでないということ自体はありえないのである。

 

「……けど、こうも考えられる。『後から何らかの方法で蘇った』とね」

 

『彼の言う通りだわ、ナインハルトの魔法は嘘をつかない…ゴッドセレナが生きている事はない…ともすれば、誰かが後から蘇らせた…その可能性が高いわ…ワールも同じね』

 

「なるほど……」

 

今はウェンディにしか聞こえていないが、ウェンディの中にいるアイリーンが補足を入れる。同期だった以上、信頼できる情報である。ウェンディは事情を知ってるマルク以外には喋れないが。

 

「……まぁ、死人が生きてるってんならウチのレイスもある意味そうだったんだが……てめぇらが殺したんだ」

 

「お前も殺してやろうか?」

 

キリンがそれをきっかけに、ラクサスに喧嘩を振る。そしてすぐさまラクサスはその喧嘩を買う。あまりの喧嘩っ早さに、他のメンバーはどうしたらいいかと若干頭を悩ませ始めていた。

 

「……レイスは所謂成仏したんですよ」

 

「ちゃ!ウチ等に書き置きもあったっちゃ!」

 

「正しく罪だ!!きちんと挨拶をしていかないとは…あまりにも罪!!しかし、成仏できた以上…既に罪は精算し終えている…か」

 

手を合わせ祈るスァーヴァクに、素直に感心するマルク。因縁吹っ掛けられている所しか知らないので、仲間を思う心があったのかと感じたのだ。

 

お前(罪罪煩い癖に)まともなこと言えたんだな」

 

「現在進行形で罰を受けているお前(玉無し野郎)に言われたくないな」

 

そして2人は殴り合いを始める。満身創痍のスァーヴァクだったが、慣れてない体のマルクと互角に殴りあっていた。最早一同はそれをスルーしていた。

 

「つーか奴は元々死人じゃ」

 

「死人が仲間にいたのね……」

 

「……そのお前達が見た死人は恐らく人体錬成かもしれぬ」

 

少し考えていたミサキだったが、思い当たることがある様でそれを口にしていた。条件付きとはいえ人との入れ替え、性別の切り替え等を成し遂げれる錬金術……それさえも可能かもしれない、と全員が納得していた。

 

「人体錬成…」

 

「詳しくは知らんが……死人を蘇らせれる可能性を秘めているのが錬金術さ」

 

「……話がだいぶ逸れているぞ、今は我々のこれからについて語る日だ」

 

「そりゃあもうお友達になったんだし、仲良くすればいいじゃん!」

 

「それとも再戦がお望みなら全員まとめて相手してやるぞ!!」

 

「話がややこしくなるから黙ってて!!」

 

スザクが話を戻し、ハクがサッと結論を出す。ナツは悪ノリをしてしまっているが……現状、それができるほど簡単な話ではない。問題が幾つかあるのだ。

 

「……まぁナツさんの意見はともかく…全員が仲良く、ってのは無理ですよ」

 

「あぁ、その通りだ」

 

殴り合いを終えたボコボコのマルクとスァーヴァクが、再び席に着く。2人が言っていることを分かっているメンバーは、その意見に反対の意見を出すことは無い。

 

「……んだよ、なんかあんのか?」

 

「うーんと……」

 

マルクは事情を説明したいところだが、この場にいるラクサス、リリー、ガジル、マホーグの4人は100年クエストを受けていないメンバー。そして他言無用というのがエレフセリアとの契約。ディアボロスのメンバーはともかくとしても、この4人に話すことは難しかった。

 

「……………今のこのディアボロスのギルドは、見た通りドラゴンがマスターのギルドだ。そして、そちらのメンバーは『とある事情』でウチの現マスターを倒すことになっている……だろう?」

 

「……まぁ、そういう事だ」

 

「……なる、ほど…?」

 

レークが咄嗟に言い訳を考えて話してくれて、おおよその事情を察したのか4人とも納得はしてくれていた。が、これはあくまでナツ達の事情である。

 

「……だが、我々のマスターである以上彼女は守らなければならない。単にマスターだけ、という訳でもない…彼女の望む世界を叶える為だ……」

 

「……ん?あれ、もしかしてこれって……」

 

「……はい、立場だけで言うなら…俺達の方が悪者です……」

 

ディアボロス側はマスターを守るために動く、ナツ達はギルドマスターを殺すために動く。これだけを書けば、たしかに悪いのはナツ達の側……という事になる。

 

「…セレーネの望む世界ってなんなの?」

 

「この世から全てのドラゴンを消し去ること…そして彼女は、人間として静かに過ごしたいという事だ」

 

「だが、今まで色々な世界を滅茶苦茶にしてきたのも事実だ」

 

「その願いとやら…簡単には信用出来ねぇな」

 

「迷宮ではあれだけ必死にお前達を助けていたじゃろう」

 

どれも事実。エレンティアを滅茶苦茶にしたのも、この世界で五神竜として恐れられ悪名を轟かせているのも、迷宮でナツ達を助けたのも、他の五神竜を倒そうとしているのも全て事実。つまり、最早平行線になってしまうのだ。

 

「………よぉく分かった」

 

「ナツ?」

 

「皆間違ってるって事だ、ドラゴンも人間も関係ねぇんだよ…心を見て決めればいい。それが前に進む……って事だろ」

 

「ナツ……」

 

全員が正解であり、全員が間違い。ならば必要なのは話合い……お互いが、納得出来る着地点を見つけることが必要。一同はナツのその意見に納得し、全員が腹を割って話せる場を改めて作るのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。