「さて、と…色々あったが…改めて……エレフセリア、一つだけ尋ねたいことがある」
改めて集まったディアボロスと
「む…?」
「神竜をも貫く人間界最強の兵器『アテナ』は何処にある」
「アテナ?」
「それがじーさんの心臓に記録されてる、って言う兵器なのか…」
「可愛い名前だね」
「女の子の名前みたいですね」
「神竜をも貫くって……」
セレーネの放った『アテナ』という兵器の名前。その言葉に対し、エレフセリアは首を横に振る。心臓にはドグラマグの力でエレフセリアを超えた力を持つ結果となっていたが……エレフセリア自身には、その兵器の場所は分からないようであった。
「あれは今は亡きワシの弟子が作った兵器、ワシにもその居場所は分からぬ」
「そうか……」
「……つーかよォ、そのアテナってのがあれば神竜ってのを倒せるものなのか?」
「ウム…人間にそんな兵器が作れるのか?」
「…確かに。滅竜魔法無しで神竜を……それどころかドラゴンを倒せるとは到底思えないが……」
ガジルが出した疑問に、マルクが乗っかる。ギルティナ大陸での戦いは一同を強くしてくれていた。だが、それでも神竜に明確に実力が届いていたかと言われれば……少し思うところもあったのだ。
明確に倒したのはアルドロンとドグラマグの2人。アルドロンのトドメはナツがアルドロンの脳に分類される個体の破壊に成功したからであり、外で戦っていたマルクがトドメを刺した訳では無い。
ドグラマグは彼のコアの破壊をして弱体化していたからであり、心の強さはともかくとしても実力では難しいものがあっただろう。
「……セレーネ、お主は何処でその情報を手に入れた」
「様々な世界を転々とした。そこにはここと似た世界もあった……」
「他の世界にアテナが!?」
「いや…アテナは何処でも失われていた。この世界以外ではな」
「……ふー……あれは、人類の負の遺産じゃよ」
「そこまで言うか……」
エレフセリアの力は法竜。簡単に言えば様々な知識を身に付けられる能力であり、似た能力としてかつてのイシュガルの評議員の議長も似た力を保有していた。しかしエレフセリアの力はそれを遥かに凌駕する能力であり、存在する物の大抵の場所や知識が宿っている。そんなエレフセリアからして『負の遺産』と評されるアテナ。フェイスやエーテリオン等と同じ扱いをする程に強力な兵器なのだとマルクは少し戦慄していた。
「んなのどーだっていいよ、ぶん殴って倒す」
「いいや……金神竜ビエルネスは
「「「「……………は?」」」」
セレーネの言葉に言葉を無くす一同。存在しているのにも関わらず、存在しない。矛盾の孕んだ一言に絶句するしか無かったのだ。
「なーに言ってんだオメー……」
「もう死んでるってことか?」
「いや……気配、というか…魔力は感じとれる。だが姿だけが見えない。まるで、モヤの中にうっすら影だけが見えるような…それに近い……何せ、殆ど会ってないのもあってな……」
「……その魔力の感じって、どの辺から……」
魔力が感じとれるならば、とマルクはセレーネに尋ねる。セレーネはしばし考えた後に地図を開き、ある地点を指さす。そこには一つの街が存在していた。
「この辺りに来た時に……少し、強く感じとった……様な気がする」
「曖昧だなー……」
「おや…ここは…フィランの街ですね。錬金術師の街です」
指をさされた地図に、ミサキが反応を示す。偶然にも、ドグラマグとの戦いの時に乱入してきたも同然な錬金術師達の街との事である。
「錬金術師〜!!!?」
「マルクの顔が凄いことに……」
「……けれど貴方が近くを通って、『気がする』程度にしか気配を感じ取れないなら…何かカラクリがあるのかもしれないわね」
セレーネの隣に座り、アイリーンが真剣な顔で考える。存在自体は既にない…しかし気配としているなら、存在はしている。『そういう事か』と一同はなんとなくだが理解していた。
「……だが、ビエルネスにしろイグニアにしろ…まず最初はアテナを見つける所から始めるべきだろう」
「んァ?何でだよ、ンなもん無くても俺がどっちもぶっ飛ばすっての」
「だからビエルネスはぶっ飛ばせないんだって」
「よく考えてご覧なさいよ。神竜って呼ばれる者達ですら倒せるって話のアテナよ?それがどっちかの手に渡った時……どうなるかしら?」
アイリーンの例え話に、全員の顔が少し青ざめる。エレフセリアをして『負の遺産』呼ばわりされる者である。
「……確かに、そりゃあ考えたくないな」
「うむ…しかし如何せん情報がないな……」
「……なら、ここで話し合ってるより建設的な方法を考えればいいわ」
「それってどんな方法なんですか?アイリーンさん」
「残る五神竜の居場所と、アテナの居場所を手分けして探せばいいのよ。つまり━━━」
アイリーンの言葉を要約するなら、これにてお開き…という事である。既に両組の話し合いは終わっており、これからやる事の話し合いを延々とする訳にも行かないのだ。故に、お開きなのだ。
.
「……という訳で我々は失われたアテナを探す」
「俺達はビエルネスとイグニアを探す、ってこったな」
「また、いずれ会おう」
ディアボロス入口にて、一同は集まっていた。ナツ達の見送りということで集まっており、そこにはエレフセリアとアイリーンの姿もあった。
「あんまり人間の仲間を困らせんなよ、新人マスターさん」
「…?困らせているか?」
「いえ、特には」
「困っては無いけど、前のマスターを踏み殺しちゃったからな〜」
「それについては謝罪した、ギルドを手に入れるにはそうする他無いと思っていたのは確かだが」
「殺ったのは知ってたけど踏み殺したのかよ……それを謝罪しただけで終わらせんのも流石に……」
若干ドン引きしていた一同だったが、マルクはディアボロスのメンバーを見て…謝罪だけで済んだ理由を察していた。何せ全員特に気にしてなさそうだったからだ。
「いいや、ワシはスッキリしたわい」
「ウム…不謹慎ではあるっちゃが某も少し…」
「俺は世話になったがあのパワハラは勘弁だったな」
「セクハラも酷かったのよ」
「残念なのは刑法で罰せなかったことだね」
「出来りゃあ俺が力奪ってやりたかったんだけどなァ」
「困惑……だが仕方なし、横暴な者の末路故」
「罪には罰をの典型的な形だな!!」
「あんまし知ってる訳じゃねぇけどスザクから諦められるのは相当な気がする」
「ほんと散々な言われようね…」
どうやら色々と酷かったようで、死んだことですら特に気にされていないのが一同をより引かせていた。ここまで嫌われるのは余程の事がないと駄目だろう。
「またいつでも遊びに来い」
「うん!」
「世話になった」
そして、最後の挨拶でセレーネがルーシィとエルザに挨拶をしており━━━
「またね、ウェンディちゃん!」
「う、うん…」
「む……」
「ウェンディに色目使うなよ…!?」
「こ、このガキ…まだ諦めてなかったのか…!」
ハクがハートマークを飛ばさんとする勢いでウェンディにデレデレしているが、マルクとシャルルとマホーグが庇うように前に立ちハクを睨みつけ━━━
「ガジル・レッドフォックス、これを渡しておこう」
「んだコレ」
「僕が資料としてまとめた子育て関連の分かりやすい知識だ、使うといい」
「へっ……サンキューな」
レークがなんの気の回しようなのか、ガジルに育児関係の資料を渡し━━━
「へへ、どうせなら子供のうちから可愛がっておけばそれなりに甘えてもらえるんじゃねぇか?」
「残念だがガジルとレビィの立場を奪うつもりは無いのでな」
リリーとダーツが冗談を交わしながら笑い合い━━━
「グレイ・フルバスター」
「んだよ、俺テメェとそんな仲良くねぇだろ」
「滅悪の力は強大だが、悪の力に飲まれ…罪を重ねないようにな」
「…へっ、んな事わかってるっての」
スァーヴァクとグレイが意味深な話題をして、全員の挨拶が終わり……と思いきや、セレーネとアイリーンがマルクに手招きをして誘う。首を傾げながらも2人の傍に近寄り、マルクは顔を上げる。
「なんだよ」
「貴方のその体は、多分貴方が錬金術を覚えれば解決する…」
「まぁそうだろうな」
「短い戦闘の中でだが、何度もその力をその身に受け…そして一度はその力を自らの体で扱った……成功はしたが、如何せん経験値がまだ足りない」
「…何が言いたいんだ?」
「単に錬金術を覚えるよりも、
体を治すこともその通りだが、錬金術を自分なりに扱うという発想はマルクには存在していなかった。どうすればいいかはまだ答えは出せないが、しかし選択肢の一つとして用意されたそれは…マルクの中で何か閃きのような大きな衝撃となって頭の中に響いていた。
「だから、どう扱うか…どう覚えるか…考えておく事ね」
「なるほどな……」
「それと私からだが…」
「まだなんかあんのか?」
「……確認する、『イグニアの炎を喰らい』『メルクフォビアの魔法をコピーし』『アルドロンの魔法を受け』『私の魔力を吸収した』んだな?」
「……お、おう…まぁ大体そんな感じだが」
今までの戦いで、マルクは五神竜の4人と何らかの関わり合いを持っている。正確に言えば、ドグラマグのコアから魔力を吸収したりもしてたので……5/6の神と呼ばれたドラゴンと関わりがあった。
「私の魔力を吸収させたのは、強くさせる為だ。他の五神竜を倒す為にだ……しかし、今ビエルネスを残して他の神竜達の魔法や魔力を受けたり放ったりしてるとなると……」
「な、何だよ……」
「……未知数、という事だ。他の者なら一切気にする事はないだろう、しかし…神竜の魔力を受けて様子が一変した例を既に見た筈だ」
そう言われて、マルクは思い出した。メルクフォビアとの戦いの際に、ナツがイグニアの炎を食べて暴走しかけた事を。あれは単にナツの体内でイグニアの炎が処理しきれなかったのでは?と考えていたマルクだったが……それが自分にも適用される可能性を考慮していなかったのだ。
「……」
「体質的に、魔法から魔力は吸い取ってしまうだろう。しかし、ビエルネスの魔力を吸収した後…何かのスイッチが押されてしまった時、どうなるかは全くの未知数だ」
「……けど、今更この度を辞める気は無いでしょう?」
「まぁ、な」
「だから…守りたい者を考えておくのよ、意外とそういうので何とかなったりするんだから」
アイリーンが茶化すように言うが、事実今までの戦いでもナツは同じようにして誰かのことを考えて勝っていた。だから、マルクもそれをバカにするつもりは一切ない。
「……おう、ありがとう2人共」
「いいのよ、あなたには恩があるし」
「……そういや、ウチに来ないのか?」
「暫くはディアボロスにいるわ、ギルドメンバーになるつもりは無いけど…エレフセリアとの橋渡し役にでもなっておこうかしら」
アイリーンは、ギルティナに残る判断をしていた。無論、エルザに大して思うところがあると言うわけでもなく、エルザが拒否したという訳でもない。今までの数百年をドラゴンとして苦しんだ彼女が、人間としての時間を楽しむ……それだけの話である。
「………」
「どーしたでがす?エレフセリア様」
「……いや、なんでもない…ゴホンッ…また会おう、セレーネ」
「ふふ、また会おう…戦い続ける者よ」
こうして一同は別れた。しばらく歩いたところで、エレフセリアがふと思い出したように声をかける。
「……ビエルネスとイグニアの居場所を探すという話じゃったが、アテはあるのか?」
「ない」
即答するナツに引いているエレフセリア。しかし、情報等はセレーネでさえも知らない事。故に今残り二人の情報は全く残っていないのである。
「だからよ、一旦情報集めも兼ねて一旦帰るわ……妖精の尻尾に」
こうして一同は、一旦イシュガルにある自分達のギルドへと帰っていくのであった。新たな戦いがそこに迫っていることを、心のどこかで覚悟しながらも…前に突き進むのであった。