イシュガル大陸北の海ブラスト海…ナツ達はソラノの情報提供により、1度アテナの情報を求めて動く事となった。ギルティナに繋がる航路を進みながら、目的の街まで動く。
錬金術師ギルド
「……何であんた達がいるの?」
「ギルティナには行ったこと無かったので…その、一度行ってみたかったんですよね……」
「乗りかかった船だ」
何故かいる
「そうだぜ、折角ナツさんに敢えたんだしな」
「俺達もチカラを貸そう」
「フローもそーもう」
「まぁスティング君は1度決めたらこうなので」
移動は船である…つまり本来であれば、
「…これ俺の上乗る必要あります?」
「飛んで行った方がはええと思うんだけどな」
「全員載せて飛ぶには背中の大きさ足りませんよ…まぁ俺も酔わないで済むからいいんですけどね」
マルクが悪魔龍の力を解放し、船に併走する形で泳いでいたのだ。飛んだ方が良かったのだが、付いてくるセイバーのメンバーは乗せきれないので仕方なくこうしたのである。そのついでに、乗り物酔いを発症せずに済んでいるので快適な旅が出来るようになっていた。
「うぐ…ぷ……てめ…何、で……」
「素直に乗っときゃ良かったんだよ」
……因みに、除かれた1人はクォーリである。マルクの背に乗る事を断固として拒否した為にこうなっていた。
「やれやれ…遊びじゃないんだぞ?」
「まぁ…味方は多いに越したことはないからな」
「そういう事だ……白魔導士はゼレフと対を成すと呼ばれた存在だからな……」
「ち、力になる…よ」
そして、更に何故か着いてきているジェラールとマホーグ。今回は厳密に言えばアテナ…錬金術師との戦いがメインなので、五神竜が関係ないメンバーを連れて行ってもいいだろうという判断である。
「…何でこの2人も来てるんだろ」
「好きな人の傍にいたいだけでしょ」
「そ、そういうアレではない!」
「わ、私は…そうッ……だ、だから……す、素直…に…なろ?ジェラール……」
「だから違っ……」
「そんな事より…少し情報をまとめようぞ」
ジェラールとマホーグのやり取りを無理矢理止めて、ミネルバが話を切りだす。今回のメイン…つまりはアテナに関する情報である。
「その白魔導士アテナは兵器として作られた人形、エレフセリアとやらの弟子が作った…そうだな?」
「そのお弟子さんはどうなっているのですか?」
「遥か昔の話だからな…もう無くなっていると聞いている」
「エレフセリアもアテナが兵器としか分かってなかった…存在は知ってたけど、実際に見た事は無かったのね」
「実際の所、どうかは分かりませんけどね…エレフセリアの力を考えても、場所は兎も角詳細位は知ってないと変な話ですけど……ほら、あの人この間心臓持ってかれたじゃないですか」
「あ、そっか…あれで何か弊害が出ててもおかしくないのか……」
エレフセリアはイグニアによって、心臓を燃やされている。そして彼の心臓はドグラマグに喰われた事によって、彼自身の制御下を離れより強くなっていた。そして、彼自身の力は『法竜』…兵器の詳細等が分かるのが力の一端だ。
しかし、イグニアによって心臓を燃やされる…強力になっていた魔法の根幹を無くしてしまったのだ。それによって起こる弊害が…彼自身が意識していないタイミングで、起こっていてもおかしくはない。
「…兵器として生まれたアテナはやがて白魔術教団リベリアスを創設する」
「人形が人の上に立つってのもすげー話だな」
「……特殊な力を持っていると、祭り上げられるか排斥されるかの2つよ。単に前者だったってことね」
シャルルは自分の母親のことを考えながら、そう呟いた。彼女の母親…シャゴットは、予知能力を持っている。エドラスでは、その力を使って人間達から恐れられていた時期もあったのだ。
「だが突然失踪……今は錬金術士ギルドの一員となっている」
「…全く経緯がわからんな、どうしてそうなる?」
「それに…その黄金の梟ってギルド、ギルティナでは有名なんですよね?」
「うん…ディアボロスの反応だと、有名人とかもいるみたい」
「だけどアテナの存在までは知らない…となると……」
「最近まで隠されていた…あるいは最近加入した……」
「フローもそーもう」
アテナ存在そのものは、現在のエレフセリアも覚えていた。だが居場所までは把握していなかった。兵器だが、生きた人形…目立たぬように細工がされていたのかそもそも隠されていたのか、はたまた直近での加入なのか……何も分からないままであった。
「……兎に角、フィランの街に行こう」
「念の為セレーネに手紙を書いておくとするか!」
「そ、それはあたしがやるから!」
セレーネへの手紙を書く事になったルーシィを見ながら、マルクは考える。セレーネが感じたというビエルネスの気配、それはフィランの街付近にあるという。果たしてこれは偶然なのか?アテナの事と言い、全てが分からないまま……状況だけが刻一刻と変化していくのであった。
「……ところで、さっきから気になってたんですけど…何で女性陣大半水着なんですか」
「海だからね」
「あぁ、まぁ私はタダのラフな格好だが……」
「私も水着じゃないけどね……」
「わ、私は見せ…たいッ…から……!へへ……」
「まぁいいじゃねぇか!!別に減るもんでもねーし!」
「………まぁ、確かに気にしてても仕方ないですね」
マルクは呆れ顔で聞いていた。遊びでは無い…というか遊ぶ時間を設けていないし設けられないのだが、何故かエルザとウェンディとシャルル以外は女性陣は水着姿だった。この後は港からそのままフィランの街に本格的に向かうのだが…しかし、オシャレだったり気分的なものもあるのだろうと理解して…マルクはナツの言葉の通り、特に気にしないようにするのであった。
「………あれ…?あの…マルク…?」
「ん、あれ……マ、マル…ク…?」
「へ?何?2人して」
だが、ウェンディとマホーグがほぼ同時に声をかける。2人同時に声をかけるのが少し珍しくて、マルクは聞き返していた。悪魔龍解放時はパッと見の見た目はドラゴンの様になるので、首が長く…乗っているウェンディとマホーグそれぞれに
「……あの、セイバー大図書院にいた時から思ってたんだけど……」
「て…照れない、ね……?」
「照れないって何の……………………………………………あれ?」
2人の意図が伝わり、マルクは海中の温度関係なく体が冷たくなる感覚を味わっていた。今までのマルクだったら、水着姿を見ただけで顔を真っ赤にして慌ててしまうことが多かった。暫くすれば何とか見れない事もないが、慣れて見れるようになった…ということは1度もない。だが、今はマルクが意識しなくとも…何の高揚も無しに水着姿を見ることが出来ていた。そうなった理由は何か?考えられる原因は━━━━
「ま、まさか思考から…!?」
「……急いで貰うとしよう」
━━━錬金術による性別変換、それはマルクの脳に『元から女性だった』という変換を行わせ、肉体の変化を脳に手伝ってもらうというもの。つまり、最初の頃は大丈夫にしても…その内思考回路や精神が段々と変わっていくのだ。つまり照れなくなったのは……同性の体だったから照れない…という理屈なのだ。
マルクは背筋が冷えるような恐怖を味わいながら、錬金術を一刻も早く覚えれるように、と願うのであった。
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ギルティナ大陸南東……そこにフィランの街はあった。錬金術士の街、とも言うべき存在の街であり…フィオーレ王国やアタラキシアとはまた違った街の作り方をしている。
有名なのは宝石や薬、業種で言えば薬剤関係や炭鉱夫等が主な街の収入源である。それ故か、それを主な仕事としてるギルドも数多く存在しており、宝石の加工や薬の加工なども相まって機械的な街並みとなっていた。
「━━━それに、この街自体にも鉱脈があってね?錬金術で使う貴重な鉱石も沢山取れるんだって」
「正しく錬金術の街…ですね」
「錬金術ねぇ……」
「この街は……やはりギルド共深い繋がりがあるんだろうか」
「そうだろうな、そりぁよ……」
全員が物珍しそうに周りを見渡す中で、やはり物珍しい物もそこら中に販売していた。フィオーレ等ではあまり見ないタイプの店も多く、物色していた。
「おい見ろよ!かっけぇ石がいっぱい売ってんぞ!」
「綺麗…!」
「ガジルは宝石も食べれるのかな?」
「鉄と宝石は全く違うわよ、ハッピー」
「宝石に加工はしてるけど…アクセサリーとかの加工はしないんだな……」
「…ふむ………よし!宿を中心に情報収集といこう!」
ミネルバが全員の様子を確認し、そう提案する。情報収集も勿論大事だが、何割かは観光目的も入っていた。セイバー側からしてみれば、息抜きに近いところもあるので…ある意味仕方ないことではある。
「ミネルバ様!この街には素敵なカフェがある様ですよ!」
「観光する気満々じゃねぇか……」
「フローもそーもう」
そして、一同は探索を開始した。マルクはグレイ、ウェンディ、シャルル、マホーグの4人と共に行動する事になり…情報収集をし始めるのだが━━━
「…にしてもなんでセイバーの奴らが着いてきたんだ」
「まぁまぁ…偶にはいいじゃないですか」
「ていうかグレイ!服!!」
「ウェンディの前で脱がないで貰えます?」
「や、やっぱ…り……変態…」
いつものやり取りをしながら進む5人。だが、突如としてグレイの顔が緩みに緩んでいく。
「にしてもフロッシュは可愛いよなぁ」
「キモッ!!顔キモっ!!!」
「シャルルだって可愛いよ?」
「張り合ってないわよ!!」
「ほんと好きですよね…フロッシュの事」
「キモイ……」
可愛いのは確かにそうだが、グレイはフロッシュに対してかなり甘いところがある。可愛いもの好きと言うべきか、愛玩的可愛さがあると緩みやすいのかもしれない。エレンティアで巨大な虎になったハッピーとシャルルを殴れてなかったのも、それが原因かとマルクは1人引いていた。
「…にしてもほんとに多いですよね、宝石店とか薬の販売店とか」
「そうね、宝石もアクセサリーまで加工してないのもあるし…ほんとに錬金術の素材に、って感じ」
「か、加工…出来たら……ウェン、ディ…に……あげ、る…のに」
「た、高いから…!!」
「…ふむ」
「…ん?どうしたマルク」
ふと考え込むマルク。グレイが声をかけるが、マルクはキョロキョロと見渡した後に適当な露天商へと話しかけに行く。4人はそれを疑問に思いながらも追いかけていく。
「おや…どうしたんだいお嬢ちゃん、アクセサリーの店じゃないよここ」
「おじょ……んんッ…えっと…この街、錬金術の街って聞いたんですけど…宝石も、材料なんですか?」
「お、そうだよよく知ってんね…口振りからしてあんまり知らないんだろ?」
『お嬢ちゃん』と呼ばれたことに手が出そうになったが、堪えて丁寧に話すマルク。錬金術の情報と、可能なら黄金の梟の情報も手に入れようとしているのだ。
「えっと…黄金の梟っていうギルドの名前を聞いて〜、錬金術ってどんなのかな〜……って…調べるために来たんですよ〜」
声が上ずってしまうが、何とか丁寧に話していくマルク。怒りやら恥ずかしさやらで体が震えて顔が赤くなっているが、露天商はそのまま話を続けていく。
「……おぉ、そうかい。そうだねぇ、その通りだ。錬金術って言うのはイメージの世界だからね。やろうと思えばこの宝石を好きなアクセサリーに加工できたりもするんだ」
「そうなんですね〜、すご〜い」
「後はね、この宝石を相手に見せて意識させたあとで入れ替えたり……なんて事も出来る」
「わぁ〜怖〜い」
イライラしているのが、残りの4人には何となく伝わっていた。何とか保てているが、若干息も荒くなっていた。そんなマルクの様子に気づくことは無かったのか、店主はマルクの後ろにいた4人にも宝石を見せびらかすように見せつけていた。
「ほれ、よーく見ときなよ?素人ながら錬金術ってのを見せてやるから……ほーれほれほれ…この宝石が変わるぞ変わるぞ〜……ホイッ!!」
その瞬間
「「「「「ッ!!!!?」」」」」
「な、なんだ…!?」
「体が…」
「宝石に…!?」
「しまった…罠…!?」
「み、見えなかった…!!」
全員が喋ろうとするが、言葉として出ていない。当たり前だ、宝石には喋る口は付いていないのだから。そして、宝石となった5人の前に一人の男が現れる。
「━━━後はこの宝石を回収して、本部で戻す。おかげで簡単に遂行できたぜ、助かった」
「へっ、黄金の梟に借りを作れるってんなら安いもんだ……なぁおい、さっき一人だけいた男と猫はともかく…残りの女は分けてくれよ?」
「マスターが決めることだかんな、あんま期待されても困る」
男の名はサイ。黄金の梟のメンバーの1人で…ドグラ大迷宮にて、グレイと戦った錬金術士である。サイは宝石となった5人を回収してポケットへと入れていた。
「……にしても、上手くいったな…他の奴らも上手くいってんだろうな…捕獲」
こうして、5人はサイに捕まり…どこかへと連れていかれるのであった。
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「遅ぇ!!皆して迷子になりやがって!」
「意外だなぁ、1番ナツさんが時間にルーズそうなのに」
「エルザさんなんかは時間をきっちり守りそうですもんね」
少しばかり時間が経過し…一度宿に集合した面々。しかし、宿に戻ってきたのはナツとセイバーのメンバーだけであり、他のメンツは戻ってきていなかった。
「…少し心配だな、誰1人として帰ってこないというのは」
「フローもそーもう」
「探しに行きましょうか…」
「…待て、それより1つ確認したい事がある。ナツ、炭鉱ギルドなる輩に絡まれたと言っていたな」
「…?あぁ、全員燃やしちまったけどな」
宿に集合する前、ナツは炭鉱ギルドのメンバーの1部に襲われていた。しかし、魔法も錬金術も使わず金属製の武器を使って襲ってきたが為にナツに手も足も出ないまま即座に返り討ちにあってしまったのだ。
「…奴らは妖精の尻尾だとナツに確認した上で、ナツに絡んだ。その上錬金術で鍛え上げた武具を持っていた…」
「何か引っかかりますか?」
「…ま、きな臭ぇな」
「昼間、街を回って気づいたことがあるだろう?」
ミネルバの言葉に、全員が思い返す。ここは錬金術の街と言っても過言ではないくらいに密接に関係しているというのは、情報として頭に予め入っていたが…実態は想像を遥かに超えるものだった。
「穴がいっぱいあるー」
「炭鉱だ……だが確かに想像よりも多かったな」
「宝石屋も多かったです、ハイ」
「それだけじゃねぇ…薬屋も多い」
「……チラホラギルドも見かけたな、後は。1つの街にそれなりにある……1つ1つの大きさはフィオーレ王国の魔導士ギルドよりは小さいがな」
「うむ…この街は錬金で扱われる素材を多く取り扱っており、そしてそれらに関係するギルドも多い……予想通り黄金の梟と深く繋がってる街と言えよう」
「それがなんだって言うんだよ」
「もし、黄金の梟の命令で街全体が妖精の尻尾を見張っていたとしたら?」
黄金の梟は有名な錬金術のギルドである。そして錬金術の街で、有名な錬金術ギルドが鶴の一声を上げる……それにより街の住人が何かしらの動きを見せる。『ありえない』と言えない程には、可能性は存在していた。
「…なんの為に」
「それは分からん…だが、もしそうなら…ナツが襲われている以上他の者も襲われているだろう。結果として、ナツは撃退できたが…他の者達はやられてしまった」
「バカ言うなよ!グレイさんやエルザさんがそう簡単に…!」
「あぁ、俺も奴らがやられるとは思えない……」
「相手は錬金術士、魔導士ではない。今までの道理が通じる相手では無いのだ……既に見ているだろう?」
魔法その物に耐性の高いマルクが為す術もなく困らされている。その事実が、全員の頭に他のメンバーがやられたという可能性を高くしていく。
「…仮にそうだとしたら、何故黄金の梟が妖精の尻尾を…?」
「そりゃあ色々やりすぎるギルドだしなぁ」
「どこかで恨みを買っていてもおかしくはありません」
「………!俺と戦ったヤツら、どっかに連れて帰るみてーな話してたな…まさか、捕まったのかみんな…!」
「何…!?」
「クソ、アイツら…!皆、今すぐ助けに行くからな…!」
やり合った炭鉱ギルドの所へと向かおうとするナツ。だが、それを止める者がいた。スティングが、ナツの肩を持って静止をかけていた。
「待ちなよナツさん」
「妖精の尻尾はお前一人しかいないんだ」
「剣咬の虎が力を貸すぜ」
この場にいるセイバーの面々が、ナツの味方だと言わんばかりに覚悟を決めていた。ナツは面々の顔を少し見てから…一言だけ言い放つ。
「いや…セイバーに入る気はねぇぞ」
「誰が入れるか!!」
「こっちもそんな気は無いが」
「フローも」
「いらねぇよ、暴れん坊なんざな」
入る入らないはともかく、セイバーの助力を得られる。それにナツは安心感を覚えながら…まずはナツを襲ったギルド、炭鉱ギルドガガロックへと向かうのであった。