FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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錬金術

錬金術ギルド黄金の梟(ゴールドオウル)に捕らわれたグレイ、ウェンディ、シャルル、マホーグ、マルク。そしてそれを助けに来たローグ、クォーリ、レクター、フロッシュ。その内エクシード組とマホーグが離れ、残った5人で錬金術士達を相手することになった。

下っ端を相手にしていると、現れたのはゲンナイとコウテツと呼ばれる2人の錬金術士……これから和解しよう、という空気は決して存在しておらず、互いに互いを睨んでいるのであった。

 

「オロオロ…ゲンナイさんは煙を練成するのよォ」

 

「煙の造形魔法だと思えばいいか…」

 

「オロオロ…錬金と魔法の決定的な違いを教えてやろうかね」

 

そう言って、ゲンナイは担いでいた巨大なキセルを構える。すると、そこから煙が噴き出していき周りの空間に絶え間なく拡がっていった。しかし、何かを燃焼して出している煙では無いようで視界妨害だけの簡単なものであった。

 

「視界がー!」

 

「何も見えない…!」

 

「もくもくー!」

 

「さ、3人…共、落ち着い、て…!」

 

「……滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)を甘く見るなよ」

 

「匂いのしない煙…視界の妨害程度で…!」

 

「匂いと音で場所は分かります…!」

 

「頭回せよなぁ…!もうちょい…!」

 

エクシード組は慌てていたが、滅竜魔導士組は一切慌てていなかった。無臭であるということは、他の匂いはするということ。聴覚や嗅覚が一般人よりも優れている滅竜魔導士には視界妨害は何の壁にもならないのである。

 

「フッ…!」

 

「遅せぇ!!」

 

煙に紛れ、ローグの後ろから現れたのはコウテツと呼ばれた男。ローグに殴りかかろうとした瞬間に、クォーリが二人の間に氷柱を生成する。しかし━━━

 

「甘い!」

 

「ぐっ!?」

 

「ローグ!?俺の氷を殴って壊しただと…!?」

 

一切躊躇することなく、氷柱へと殴り掛かるコウテツ。そのまま表情は砕け散ってしまい、ローグの腕にコウテツの一撃が直撃していた。更に、それだけでは終わらなかった。

 

「ッ…!?なんだ、腕が重い…!?」

 

「俺は鉄を錬成する…お前の腕を鉄に変えさせてもらった…氷の方は、自分の腕を鉄に変え…叩き壊しただけだな」

 

「つくづく鉄に縁があるな俺は…!」

 

「ちっ…面倒な野郎だ…!」

 

ゲンナイは煙を、コウテツは鉄を錬成する。それは無から生み出されるものでは無い、しかし人体であっても関係なく変えてしまうその技が厄介なことには変わりないのだ。

 

「くっ…ウェンディ!煙を吹き飛ばしてくれ!」

 

「はい!!天竜の……げほっげほっ!!」

 

吹き飛ばす為に一気に空気を吸い込むウェンディ。そう、周りが煙だらけなのにも関わらず吸い込んでしまっているのだ。当然煙も吸い込んでしまい、ウェンディは咳き込んでしまう。

 

「なんで吸っちゃったの!ブレス以外を使いなさいよ!!」

 

「うぅ…つい……て、天竜の翼撃!!」

 

腕に風を纏って、その一撃を放つウェンディ。しかし煙は吹き飛ぶことはなく、まるで受け流すかのように魔法を逃がし…元の場所へとゆっくり戻っていた。

 

「え…!?」

 

「煙が吹き飛ばねぇだと!?」

 

「オロオロ…そういう煙を練成したからよォ…!」

 

「っと…!」

 

「錬金術ってのはそういう細かい仕様変更みたいなのもありってか…!モード悪魔龍…!憤怒怒り(フューリー・ラース)…!」

 

憤怒の力で、マルクはゲンナイへと迫る。それと同時にマルクの後ろでグレイが魔法の準備をしていた。2人の同時攻撃、同時には錬金術は使えないだろうという発想を阿吽の呼吸で通じ合わせていたのだ。

 

「アイスメイク!鉄槌(ハンマー)!!」

 

「オロオロ…!学ばないねぇ…!」

 

上から振り下ろされる氷の鉄槌をゲンナイは煙へと変える。そのままの勢いでマルクは殴り掛かろうとして……煙によって、その拳はゲンナイに届くことは無かった。

 

「なっ…!?」

 

「オロオロ…衝撃吸収の煙だよォ、言っただろォ?()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ちっ…!モード越魔龍…!越魔龍の……!!ッ!?げほっげほっ!!」

 

越魔の力へと即座に切り替え、ブレスを放とうとするマルク。だが、口に貯めた魔力は煙となって霧散してしまっていた。

 

「フフフ…ゲンナイさんはァ、何でも煙に出来ちゃうのよォ?あ、オロオロ」

 

「クソッ…!」

 

「そしてここが魔法と錬金の違い、ゲンナイさんは錬金の際に魔力を消費しないのよォ…道具であったり素材であったり…そういうもので錬成している。つまり魔導士より……あ、コスパがいいのよォ」

 

その言葉に、マルクは嘘はないと確信していた。事実、たった一度だけその身で行った錬金術では魔力を消耗しなかったのだ。消耗はせず、あるものを在るものへと変貌させる。その理屈が、改めて身に染みていた。

 

「魔導士は魔力を使う度に力が消耗される…けれどこちらは何も消費しない、つまり力の劣化がないのよォ。となるとどうなるか…常に100%の力で戦える…それが錬金術なのよォ」

 

「…馬鹿言え、戦ってりゃ体力も減るし傷も負う。常に100%なんて有り得ねぇんだよ」

 

「あ、それがそうもいかず。ゲンナイさんにもコウテツにも…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、オロオロ」

 

「設定…!?」

 

「どういう事!?」

 

「フローもわかんない…」

 

人間である以上、戦っていれば傷を負い体力を減らす。人間どころか生物である以上それは避けられない。治癒がある魔法やマルクの悪魔の力のような再生能力でさえもそれは変えられない。しかし、ゲンナイの言葉はまるでそれ自体が存在していないかのような口ぶりであった。

 

「てめぇ、一体……」

 

「━━━無限にある、という事だ」

 

奥から、一人の男が現れる。その男は少し老いているように見える…が、それ以上に雰囲気だけでも分かる程に『格』が違っていた。

 

「マスター…」

 

「マスターデューク…」

 

「黄金の梟のマスター!?」

 

「登場か、主犯格がよ…!」

 

「……ゲンナイもコウテツも、俺が作った機械人形だからな…故に体力という物を設定しなければ、無限に動けるのだ」

 

戦っていた敵が人形、その言葉を聞き全員が驚いた。『機械人形』という言葉の割には、戦っていた2人はどう考えても人間のような存在にしか思えなかったからだ。

 

「人形…!?」

 

「ウソだろ…人間にしか思えねぇぞ…!」

 

「けど、それなら納得だ…!」

 

「…さて、申し遅れたな。改めて名乗ろう…俺の名はデューク。この黄金の梟のマスター……そしてかつてはエレフセリアの弟子であり、アテナを作った錬金術士だ」

 

さらなる事実。目の前の男がアテナを作った張本人であり、そして敵である黄金の梟のマスターだと言う。だが、それならアテナが黄金の梟にいた事にも納得出来る部分は多い。だがそれとは別で…疑問が残る。

 

「弟子…?おかしな話だな、死んだって聞いてんぞ?」

 

「だがこうして生きている…エレフセリアからは何を聞いているのかね?」

 

マルクの問に、自らの体を見せつけるようにして答えを示すデューク。こればかりは、一切マルクは何も言えない。目の前の男が弟子では無いという証明は出来ようがないし、エレフセリアの名を出した以上関係者であることは間違いがないからだ。

 

「そういえば何も聞いてないわね…」

 

「うっかり屋さんですね…」

 

「フローもそーもう」

 

「…エレフセリアがドグラマグを倒したのが100年前、100年前の時点であいつと同格なの(五神竜)がいたわけだ。だから少なくともそれよりも前から今までの間であんたとエレフセリアは関わり合いがあった…が、あんたはどう考えても80以上のヨボヨボ爺さんには見えねぇ…俺の考えすぎでなけりゃ、あんたはどうも若すぎるように見える…そう考えたらあんたが本当に弟子かどうかは疑わしいな」

 

マルクの推理に、デュークは表情を動かさない。はっきり言えば、マルクも口から出まかせだと自身でそう感じるほどに適当に言っていた。情報が無さすぎる為である。

 

「時系列の話は長くなりそうだ、だが若く見えるのには理由はある…俺は、人を作る錬金術士…人体錬成のプロなのさ。そうなるまでに勝手知ったる自らの体を実験体にして、若くしていた…というのが理由だ。若い体と脳は吸収が早いからな」

 

「………」

 

説明されれば、理屈は通っているとは感じていた。しかし全てを信用しきっている訳では無いので、マルクは無言で睨みつけていた。

 

「かつてエレフセリアの下で、魔導士として修行していた。だが才能が無くてな…奴から離れて錬金術士としての道を進んだ…やがて俺が有名になると、奴の方からやって来たのさ。『五神竜を倒せる兵器を作ってくれ』とな」

 

「…それが、アテナか」

 

「あぁ…俺のきちんとした最初の人体錬成…そして最高傑作だ」

 

「そ、そりゃねーですヨ」

 

「俺達は最高傑作じゃない……」

 

デュークの言葉に軽くショックを受けているコウテツとゲンナイ。だが、デュークは絶やさず口角を上げながら全員を見渡しつつ話を続けていく。

 

「すまんすまん…お前達も我が錬金術の誇りだよ…より、人間に近い存在だ。そう、アテナは処女作故作りが甘い…だがその不完全さがいい…そう思っていたのだがな」

 

「結局逃げられて、イシュガルに行ってんじゃねぇか」

 

「あぁ…最近になってようやく見つけたのだ」

 

「オロオロ…」

 

「うむ」

 

「ふん…さしずめ、兵器として作られた自分の嫌気が指したんじゃないのか?」

 

「逃げられるってことはその理由があるってこった」

 

ローグとクォーリがデュークを煽るが、デュークは首を横に振る。心は自分以外には真に理解は出来ないのにも関わらず、それはないと否定したのだ。

 

「アテナにそんな感情は無い……ただただ人間になろうとした結果、白魔導士となった」

 

「はっ……意味わかんねぇな。全く理屈として繋がってねぇぞ?親の癖にこの気持ちを理解してやれてねぇだろ」

 

「確かに…白魔導士になるのと人間になる事の繋がりは俺にも理解できねぇ…だが、ゲンナイやコウテツが『人間』なのだとしたらアテナはまだ『人形』なのだ。

俺はアテナを人間にしたい…アテナは人間になりたい。双方の夢を叶える為に、君達の協力が必要というわけだ」

 

「………協力だと?」

 

「は、出来るわけねぇだろ…無理矢理さらってくるような奴とよ」

 

メリットは無い。そしてこちらは既に危害を加えられている側。あまりにも協力する必要性が事実上でも人情上でもないのである。それは、全員同じ気持ちであった。

 

「それによ…魔力って話ならそっちにはスプリガン12(トゥエルブ)が2人もいるだろう。そいつらから貸してもらえばいいだろ」

 

「━━━呼んだかね!ゴッドフレンズ!!」

 

「ククク、こう見えて俺達も人形でね。死人の魔力では駄目というらしい」

 

「てめぇワール!!それにゴッドセレナ!!」

 

突如として現れたゴッドセレナとワール・イーヒト。軽く話していた内容を思い出したが、確かに死人を甦らせるという話と人体錬成という話は…噛み合いはするのである。

 

「ワールには別の目的もあったが…兎も角、魔力を集めようとドグラコアを集めようとしたのだがね、邪魔をされてしまったというわけだ」

 

「……?」

 

デュークの言葉に、少しだけ引っ掛かりを覚えるマルク。死人ではダメ、だが他の魔導士を狙う事も無い。アテナの完成を望むのであれば、探しつつも魔力は集めておけば効率はいいだろう。

だが実際は、一同がやってきた時に行動を起こしたのとドグラコアを狙ったことの2つ。あまりにも急すぎる行動……それらの共通点を考えて…ふと、突拍子もない推測が立った。

 

「……お前まさか滅竜魔導士の」

 

「所で君達を狙った…というのはほんの少しだけ語弊がある…魔力なら誰でもいい訳ではなくてね…必要なのは━━━」

 

「「「「ッ………!?」」」」

 

デュークが腕を振り上げた瞬間、グレイ以外の4人…()()()()()4()()()()()()()()()()()。本人達も何が起こったのか分からず困惑しきっていた。

 

「これ、は…ファリスの…!?」

 

「欲しいのは、ドラゴンの魔力でね……しかしドラゴンイーターは駄目だ。狙うと面倒なのもあるが…あれはどちらかと言えば人間との混ざりものに近いからな……」

 

「力、が…抜かれた…!?」

 

「魔力が、一瞬で…!?」

 

「馬鹿、な…!!」

 

「ウェンディー!」

 

「ローグぅ!」

 

「ま、マルク…!」

 

「クォーリ君!!」

 

クォーリ、ローグ、ウェンディが倒れる中で…マルクだけは膝を付きながらもデュークを睨みつけていた。当の本人であるデュークは、大層感心していたが。

 

「セイバーの三竜の内2人分の魔力…天空の巫女の魔力……そして魔龍。しかし魔龍の魔力がここまでとはな…ワール」

 

「はっ!」

 

ワールはマルクの魔力と思わしき巨大な球体を触ると…一気にそれを取り込んだ。本来であればその魔力量に押し潰されるにも関わらず、ワールは意に介していなかった。

 

「何故、俺達の事を…!」

 

「イシュガルの主要な滅竜魔導士は全て調べたからな」

 

「そんなの俺に聞けばゴッド教えたのによォ!」

 

「アンタ、他の人間に興味ねぇだろうよォ」

 

「ゴッドそうだった!さっぱり知らん!!わはははは!!」

 

高笑いしながら、ゴッドセレナは一同へと近づいていく。そしてその向かう先がウェンディの方向だと気づき…間にマホーグが魔法で入り込む。その腕は、震えていたが武器は握りしめていた。

 

「う、ウェン…ディ……にッ…!近づ、くな…!」

 

「ククク…ゴッドバカか?そのまま殺されたく………ッ!!」

 

何かを感じとったのか、一瞬で距離をとるように先程居た場所まで跳んで逃げるゴッドセレナ。彼が感じたのは、重圧にも等しい殺気であった。それは…マホーグの後ろに膝を着いていたマルクのものであった。

 

「はぁー…ッ…!はぁー…ッ!なんか、したら…死んでもらうぞ…!もう1回…!!」

 

「ゴッドびっくり……何でマスターデュークに魔力を取られてそこまでの圧を出せる?」

 

「ふッ…!ぐっ…!?」

 

「……そうか悪魔の力か。しかし、滅竜魔導士としての力は奪った以上…既にお前達全員に意味は無いな…ここで消してやろう」

 

「━━━お待ちください、マスター」

 

デュークが一同にトドメを刺そうとした瞬間…一同の後ろから声が響く。声の主はアテナ…それが、何故かルーシィとハッピーを助けに行ったナツとスティング、ユキノ…そして囚われていたルーシィとハッピーと共にやってきたのだ。

 

「……アテナ、何故そいつらといる?」

 

「ウェンディとマルクがやられてやがる…!やっぱりこいつら…!」

 

「ナツ!話がややこしくなるから黙ってて…!」

 

「マスター…この者達の魔力は必要ありません、私には既に感情があります…!後はマスターの力で完全に仕上げてもらえば…!」

 

「なんだと…!?それは本当か、アテナ…」

 

「はい…!」

 

「………こっちへ来なさい」

 

「はい!」

 

嬉しそうにデュークへと近づいていくアテナ。感情がない、と伝えられたグレイ達はその有り様に驚いたが…『これで終わる』と内心考えていた。既に目的が達成されているのだから終わりだと。だが……そうはいかなかった。

 

「私…多分、嬉しいという感情を…!」

 

「何も言うな……()()()()()()()

 

その言葉と共に、デュークは腕でアテナの体を貫いていた。その顔には後悔すら滲んでいないように感じてしまう程、あっけらかんとしていた。

 

「てめぇ…!」

 

ナツはその瞬間に炎を纏い、殴りかかろうとしていた。だがそれはゴッドセレナが割り込むことで止められていた。

 

「ウチのマスターに近づこうなんて、ゴッド100年早いぜ?」

 

「ぐっ!?火竜の咆哮!!」

 

殴り飛ばされるナツ。だが、すかさず身を翻し即座にブレスで攻撃を放つ。しかしナツは気づいていなかった。相手は八竜のゴッドセレナ…彼の持つ属性は文字通り8つ。それ即ち、それ以外の攻撃出ないとゴッドセレナにはただのご飯なのである。

 

「八竜の滅竜魔導士に属性魔法なんて通じるかよ!海王竜の水陣方円!とォ…!煉獄竜の炎熱地獄!!」

 

「こいつ、同時に2つの━━━!?」

 

ナツが回避する間もなく、2つの属性魔法が襲いかかり…巨大な爆風を巻き起こす。水は撒き散らされ、炎は飛び散る。あまりの衝撃に、黄金の梟側も耐え忍んでいた。

 

「ギルドを無茶苦茶にするんじゃない!!」

 

「…………」

 

コウテツの注意が響くが、ゴッドセレナは無視をしていた。いや、せざるを得なかった。なぜなら()()()()()()()()()()()()()()

 

「…ゴッド驚いたな、どうやって防いだ?情報は知っている、だが食ったのなら今みたいに飛び散らないだろう…そもそも力は取られたはずだ、食えないと思っていたんだが…」

 

「━━━マルク、お前」

 

「ふー…!ふー…!」

 

ナツの前には、マルクが立っていた。その手には、大振りの剣のような形をした『何か』を握りしめており…血では無い『黒い何か』がマルクの半身から滴っていて…()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛い、辛い、苦しい、吐きそう、破裂しそう、ちぎれそう。色々な気持ち悪さがあるが、一言で表すならば強烈な圧迫感。悪魔の体の頃はそんなことは無くなった……越魔を得た時に人間に戻り…同時に七悪魔と越魔で体のバランスが保たれていた。

それが今、一時的に崩れていた。悪魔の力が再び人体を脅かそうと脈動していたのだ。『圧迫感を外に出したい』という感情と共に、どす黒い感情が溢れかえっていた。それは圧迫感の元凶が生み出す感情の並だった。早く出さなければ、自分がおかしくなってしまう。

ドス黒い塊を、体外にそのまま出したい…そう考えて考えて━━━

 

「はー…!はー…!」

 

「…なんだ、それは」

 

「黙ッ……れよ、まじで……!勝手に、狙って…勝手に、作って…勝手に、失敗に、して…巻き込まれた、側の事…考え、やがれ…!」

 

「…ほう……」

 

「お前……殺━━━!!!」

 

その場で上から振り下ろすかのように構えるマルク。その範囲内には誰もいない。魔力を抜かれた影響で、遠近感さえ狂ったのか?と黄金の梟全員がそう考えていた。

そうして、一瞬で振り抜こうとして━━━

 

「━━━ッ!?」

 

「なっ…!?」

 

「奴らが、消え…いや、それよりもマスターデューク!ご無事ですか!!」

 

━━━━デュークの首元には、切り傷ができていた。深いものではなく、血管に傷がついて出血してしまっているだけで…すぐに治るものである。

だが、重要なのはそこでは無い。()()()()()()()()()()()()()()()()()という事実が重要なのだ。

 

「消えたのはエレフセリアの力だが……あれが、悪魔の力か。末恐ろしいな…」

 

デュークは自らの立っていた場所の真上を見る。それには傷がついていた。それは大きいものでは無いが、細長かった。そう、マルクの攻撃は…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…次に来た時には、確実にトドメをさしておくとしよう」

 

デュークは一旦消えた者達のことを頭の片隅に置き、そのまま奪った魔力で何かを実験するために、他の者達と共にギルドの奥へと戻っていくのであった。

そして、どこかへと消えたマルク…今の彼は無意識だったが…新たな悪魔の力の可能性の触りを得た彼は、この力をどのようにして扱っていくのか……その答えは、彼にしか出せない答えだろう。

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