「一先ずこっちに……うわっ!?」
「マルク!?きゃっ!!」
マルクは最初捕まっていたが、脱出。同じく囚われの身になっていたウェンディとハッピー、シャルルをナツに任せてマホーグと共にワールを撃破。
後はナツ達の所へと戻るだけなのだが、その瞬間彼らは光に包まれる。光が消えたかと思えば……黄金の梟内に彼らは移動していた。
「な、なんだ…!?」
「み、みんないる…!!」
「マホーグ!無事だったか!」
「マルク!外で待っていたのでは…」
「別れた直後に襲われて…変な空間に閉じ込められていたんですが…」
そこに居たのは、乗り込んだメンバー達……と何故かローグとフロッシュがいた。囚われていたウェンディ達はともかく、ナツの姿だけが見当たらないと探そうとした矢先……聞き覚えのある声が響く。
「━━━シグナリオ姉妹の世界が解かれたか、しかし一足遅かったな……欲しいものは、手に入った」
「ナツ!?」
聞こえてくるは黄金の梟マスターデュークの声。そして現れた彼の手が掴んでいたのは…ボロボロになったナツであった。そしてよく見ればデュークの傍でアテナが倒れており、彼らがデュークにやられたであろうことは予想しやすい事である。
「アテナまで…!」
「欲しい力は手に入った、もう用済みだ」
「てめぇ…!」
「ッ…!」
デュークに向けてグレイが魔法を使おうとして…マルクが何かを察知する。咄嗟に飛び上がり、上から跳んでくる『何か』に攻撃を仕掛けに行く。当然、越魔の力は使う。
「こいつ…!!」
「…男に戻っているからもしや、と思ったが……ワールが負けていたか…だが問題は無い」
「黒いアテナ!?」
空中でぶつかり合うマルクとアテナII。何か魔法を使おうとしたのか、アテナIIから魔力のブレをマルクは感じ取ったが…すぐさま自らの魔力を解放してそのブレを取り込んでいく。
「だが魔法の力は俺には通じねぇぞ!!」
「知っている……だが、関係ないな…
その言葉と共に、気づけばマルクは地面へと降り立っていた。目の前にはデューク。そして後ろにはアテナIIと仲間達。錬金術で位置の移動をさせられたようである。
「やれ!!」
「ぐあっ!!」
「グレイさん!!くそっ!!今そっちに…ッ!?」
アテナIIが仲間達を蹂躙し始めた瞬間、マルクはそちらへと向かおうとするが…今度は目の前にデュークが現れ……否、マルクとデュークの位置が入れ替えられてしまいマルクがさらに離されてしまったのだ。
「てめぇ……」
「付け焼き刃の錬金術でどうにかしてみるか?」
「………上等!!」
デュークを視界に入れつつ、アテナIIの方に少し意識を向けるマルク。炎、風、影…取り込んだ力を使っているのだろう、アテナIIはアテナよりも攻撃的な印象をマルクは受けていた。
「てめぇをさっさとぶっ飛ばせば……済む話だ!」
「出来るものならな」
越魔を発動させたまま、直線的に飛び込んでいくマルク。デュークはその場から動かず、ただ腕を動かして少し開いただけの握り掛けの拳をマルクの方へと向ける。
「私には戦う技術がない、とでも思われていそうだ」
「越魔龍の━━━」
「だが……戦わなくても
「ぅおあぶねっ!?」
その拳にフィットするかのように、突如としてデュークの手には柄が握られていた。当然、柄があるならば刀身も存在する……つまるところ、マルクが拳を振りぬこうとした瞬間に剣を錬成することで一撃で貫いて絶命させようとしたのだ。何とか回避はしたものの、即死では流石のマルクも対処のしょうがない。よって、無理矢理剣を回避していた。
「くっ…!?」
「逃がさんよ」
だが避けた所で剣の範囲にいることは間違いがない。マルクはそのままの勢いで距離を取ろうとしたが、デュークは剣を投げていた。マルクの方角ではあるが、投擲のセンスは無いのか投擲直線上ではマルクには当たらない……が、マルクの近くに来る前に剣は煙へと変える。
「煙…!?」
「空気を剣に、剣を煙に」
「ッ!!」
嫌な予感を察知したマルクは、越魔のラクリマの1部を煙から放り投げる。だがデュークの方角には飛んでいかず、飛んでいく姿だけを見たあとにそのまま視界をマルクへと戻し…錬成を行う。
「煙を鉄に」
その瞬間、マルクの周囲に大きな鉄の箱が錬成される。つまりマルクは閉じ込められてしまった訳だが、このままではなんの意味もない。きっと暴食の力ですぐに出てくるだろう。故に。
「空間を無限大に」
「ッ……これは…!」
鉄箱内の空間を、錬成し直す。外側からでは変わらないが、中の空間は果てしなく広がり壁に辿り着くには永遠の時間を要する空間が錬成される。内側からでは、決して脱出することは出来ないだろう。
「しばらくそこに捕まっているといい。後で力を回収し直させてもらうと……む…!?」
突如としてデュークに巨大な魔力のブレスが襲いかかる。何事かデュークが飛んできた方向を見ると、そこに居たのは1人の少女であった。
「何…!?まだ動けないはずでは…!」
「━━━マルクが、魔力を分けてくれたんです」
そこに居たのは、ウェンディであった。魔力を失い意識も朦朧としている中で拘束されていた筈のウェンディが、拘束を外してデュークの前に立っていたのだ。
「━━━あれ?なんで皆いんだ?」
「ッ!?」
後ろから聞こえてきた声に、デュークは振り向く。そこにいるのはアテナIIと倒れている
「邪魔すんなよ…アレは俺の獲物だ、いい感じに燃えてきたとこなんだ」
「くっ…負け惜しみを…アテナIIに勝てなかった小僧が…」
「ここからさ」
「無駄だ…貴様の滅竜の力は既に吸収して━━━」
「けど、それは恐らく火竜の力…だけですよね」
デュークの言葉に、ウェンディが被せる。デュークはその言葉に少し苛立ちを覚えた…が、ふと疑問がでてきた。マルクの魔力で回復したと言ったが、ウェンディの攻撃で飛んできたのは風ではなく…魔力の塊。天竜の力ではなかったのだ。
「…まさか」
「ナツさん!取られているのは…!」
「おう、わかってんよ……吸収したのが炎だけなのは、間違いだったなぁ?」
瞬間、ナツの体に稲妻が迸る。それはナツの体の中で強力になりながら迸り続け、段々とナツの体を輝かせる。その姿はまるで雷そのものと考えられる程の輝き。
「まさか…」
「何…!?」
「ビリビリ〜…」
「妖精の尻尾の聖地でラクサスから貰ったこの力…単体で使うのは初めてだけど、何とかなんだろ…モード雷竜だ!!」
モード雷竜。ナツのラクサスから受け継ぎし力。そう、奪ったのはたった一つの力だけ…もう一つの力は奪えてなかったのだ。つまりウェンディが今発揮している力は天竜でも同時使用の魔天竜ではない。
「2対1では分が悪いか…アテナII!!」
「はっ…!」
アテナIIがナツ襲いかかり、同時にウェンディがデュークに向かって跳ぶ。直接的な攻撃力こそ無いものの、デュークはマルクを翻弄することによって隔離することに成功していた。
「魔龍の…!」
「ふっ…!」
「魔龍の、翼撃!!」
魔力を腕に貯めて、デュークに向かって振り抜こうとしているウェンディ。振り抜く前にデュークは互いの位置の入れ替えの錬成をし、防ごうとするが…その錬成の直後に明後日の方向から何かが破壊される音が聞こえてきたのだ。
「何ッ…!?まさか…」
この場で破壊できるのはギルド内の何かしらと…先程錬成した鉄箱のみ。その鉄箱の中にいるのは、閉じ込めたマルクである。つまりは…はなからデュークは攻撃対象ではなかった。
そして、箱内の空間の錬成は箱が破壊されたことで崩壊。吹き飛ぶ勢いで中から追加で箱が破壊され、越魔のマルクが現れる。
「てめぇ…良くも上下左右前後全部広がった空間にしてくれやがったな…!飛んでるか落ちてるかしっぱなしだったんだぞこちとらァ!!!」
「貴様ら…!」
マルクは状況の確認の為に、瞬時に周りを見回す。アテナIIは傷だらけのアテナと交戦を開始したところであり、雷竜の力をまとったナツはデュークに向かって突撃していた。
「……行くぞウェンディ!!」
「うん!!」
デュークは今はマルクとウェンディの方に意識を向けており、ナツは意識を向けられていなかった。その隙を利用して、マルク達は一気に飛び込んでいく。
「越魔龍の滅殺拳!!!」
「魔龍の鉄拳!!」
「無策で正面からなぞ…!」
2人がかりで殴ろうとしたその瞬間に、デュークは位置替えを使う。2人のいる空間と自らのいる場の空間の入れ替えを行い、同時に自らが元々いた場所の直上には大量の剣を錬成しておく。
このままでは2人は串刺しにされてしまうが━━━
「へっ…危ねぇもん、忘れてんじゃねぇぞ!!」
「ッ!?ナツ・ドラグニル…!?」
ナツが来た。マルク達のすぐ上を通り、錬成された剣を全て破壊しながらデュークに飛び込んでいく。何度目かの錬成で相手をしようとするが…雷の速度には、到底追いつかない。
「雷竜の劍角!!」
「おぉぉおおぉぉお!!!?」
「マス━━━」
「よそ見すんじゃ…ねぇぞ!!」
「やぁ!!」
「がはっ…!?」
そして、2人はそのままアテナIIへと飛び込み一撃を与えていく。そのまま吹き飛ばされるアテナIIを眺めているだけでなく、マルクはウェンディを上に跳ばしてウェンディに上からの攻撃を任せていく。
「ウェンディ!」
「うん!!」
「私が、私がこんな所で…!」
吹き飛ばされながらも、2人に対抗しようとするアテナII。そしてデュークもナツの一撃を受けて、痺れながらも同じように対抗しようとする。
「お前…とっくに死んでんだってな…いやデュークですらねぇって話か…誰なんだよ、お前…!」
「俺は…!ビエルネスの代弁者…!」
「直接話せよ!!話なら聞いてやんよ!!」
「どこから、こんな力が…!?」
ナツの拳に雷が宿る。その拳を認識していながらも、デュークにはもはや止める術は残されていなかった。そして、ウェンディとマルクも同じようにアテナIIにトドメの一撃を与えようと魔力を貯める。
「馬鹿な…!滅竜の力を、3つも手に入れて…何故、私が…!」
「借り物の力で勝てる程…!」
「私達は、甘くない!返してもらいます!!」
そして、デュークとアテナIIの2人に同時に攻撃が突き刺さっていく。雷と、2つの『魔』の力が敵を討っているのだ。
「雷竜の鉄拳!!」
「越魔龍の滅殺拳!!」
「魔龍の鉄拳!!」
「「ぐああああああああああああああ!!!!!!」」
アテナIIがそのダメージで戦闘不能となり、同時にデュークも戦闘不能となる。そして錬金術が維持できなくなったのか…力を奪われていた全員に、力が戻っていく。
「おっ」
「これは、力が…!」
「良かったねローグ〜」
「戻ってきた…!」
黄金の梟の実力者は軒並み倒した。そしてアテナIIもデュークも倒し力を取り戻した。こうなれば後はやることは一つだけ、金神竜ビエルネスの討伐に向けて動くだけである。
あまりにも長時間放置していればデューク達も回復するだろうが、その時間がかからないことだけを祈るしかない。
「…ミネルバ達を待つしかないな」
「だー、早く来ねぇかなぁあいつら」
「ナツさんビエルネスと戦いたいだけでしょ…」
「……しかしどうする、待つにしてもこの2人を放っておくわけにもいくまい」
ジェラールが目を向けた先は、デュークとアテナIIの2人である。全員が同じことを考えているようで、悩んでいた。単なる拘束では破られる可能性が高く、気絶させるにしても途中で目を覚まされたら厄介になるのも目に見えている。気絶させたと認識して気が抜けてしまうことも防ぎたい。
「…ならこうしておこう、これならそもそも意識の有無は関係ないからな」
そしてマルクは色欲の力を長めの縄へと錬成して2人をまとめて縛りあげていた。色欲ならば触れている間は幻覚を見て意識を酩酊に近い状態にさせることも可能なので、きちんと意識が戻っても問題は無いのである。
「んじゃあ後はアイツらが賢者の石持ってくんの待つだけか」
「おまたせー!!」
「お…噂をすれば」
グレイが待ちの体制になった瞬間に、ギルド入口から声が聞こえてくる。そこに居たのはスティング、ミネルバ、ユキノ、レクターの4人であった。その手に持っているのは、おそらく賢者の石だろう。
「な、なんか……予想と違う…見た目……あ、あれに…ウェンディが…?」
「うん…分離エンチャントでビエルネスの石を引き剥がして賢者の石に取り付かせるんですけど……」
「あのサイズくらいなら、ビエルネス倒すの楽そうね」
「作ってもらってきたぞ!賢者の石!」
「お待たせしました!」
「賢者の石、だと…!?馬鹿な…」
かろうじて聞き取れるだけの余裕があったのか、聞こえてきた単語に反応を示すデューク。しかしその反応も当たり前のものであり、錬金術において賢者の石とはトップクラスの存在なのだ。それ故におとぎ話の様な存在にさえ成り果てている…そんなものがこうも簡単に作られることは、本来ありえないのだ。
「そんな物は、存在しない…錬金術をやる者なら、誰でも知っている……」
「……」
マルクはうわ言のように呟くデュークをじっと見ていた。幻覚を見てても聞き取れる程に、意識に刷り込まれている言葉になっていると思っていたが…ふと思えばビエルネスがある程度反映されている存在ならば、そもそも幻覚がこのデュークには通じていないのではないか?という話である。
動いている人形になにかしたところで、動かしている本人には何も影響がない…その様なものである可能性をマルクは否定できなかった。
「始めるぞ、ウェンディ」
「はい!」
しかし今はアテナIIとデュークはどうでもいいのだ。一同は一旦その2人を外の木に拘束し直して、外から分離エンチャントを初めて行く。
「このギルドと一体化しているビエルネスの思念を、分離します!」
「分離出来たら、賢者の石を使う」
「そうすればビエルネスが実態化するのですね!」
「問題はその後なんだけどね…」
「五神竜の一匹と戦うことになる」
「問題ない……こっちには滅竜魔導士がいるんだ」
ウェンディが戦闘に立ち、その後ろに控える滅竜魔導士達。エレフセリアが気を利かせてくれたのか、復活したクォーリも気がつけばその場に転送されてきていた。
「すー……分離エンチャント!!!」
「何か出てきたよォ!?」
「幽霊ですかね!?」
「フロー怖い!!」
黄金の梟から現れる強烈な魔力の気配と異様なオーラ。それは分離エンチャントで確実にギルドから剥がれてきている…と、全員が直感で感じ取っていた。
「今だ!!」
「よ、よせ!やめろ!!賢者の石など存在しないぃぃーッ!!!」
「━━━いいえ、賢者の石を作れるたった一人の錬金術士を私は知っています」
「何…!?」
焦るデュークを前に、何かを悟ったようなアテナ。その言葉にデュークは誰であるかという確信と、それを認めたくないという気持ちが出てきていた。
「握った瞬間にわかりました…これは私の…アテナの、最後のパーツ……これを作ったのは
デュークの顔が驚愕に染まる。死んだと思われていた、本物のデューク。それが生きていたとなればビエルネスに取っても、予想外の事だろう。だが時すでに遅し…現実は刻一刻と進んでいくのである。
「実態が現れるぞ!」
「構えろ!!」
「そして…賢者の石は思念体をただ実体化できる道具ではありません…
「━━━え?」
アテナの言葉に、目を見開くルーシィ。アテナをビエルネスの依代とした場合、アテナ本人はどうなるのか?ルーシィもそれが分からないほど、馬鹿では無い。しかし、それ以上に信じられないのだ。
「それが、この石の力…」
「ま、待ってよ…じゃあ、貴方はどうなるの…?」
「……それは問題ではありません。これが兵器として作られた宿命」
「ッ…!!問題よォ!!勝手にそんなこと…あたし達友達じゃないの!?」
「よせルーシィ!!」
自らを捧げようとするアテナを、ルーシィは止めようとする。しかし、その覚悟は全員に伝わっていた。アテナは泊まるつもりは微塵もないのだと。
「ありがとう……その言葉だけで十分です。ビエルネスを、倒して…!」
「止めてェーッッッッッ!!!!!」
ルーシィが叫ぶも、それと同時にギルドから光が飛び出しアテナへと取り憑くように動く。その体は急速に肥大化し、白から金へと様変わりしていく。そして、地面へと降り立つ。その姿の正体は全員が瞬時に察していた。
「金神竜……」
「そんな…アテナ…」
涙を流すルーシィだったが、ビエルネスはそれを待ちはしないだろう。覚悟していたとはいえ、突然の喪失に一同は心を揺さぶられながらも…金神竜との戦いに身を構えるのであった。