「━━━行くぞ!!」
ナツのその言葉により、ルーシィ以外の全員が動く。アテナの体を依代として復活した金神竜ビエルネス。既にアテナの意識は存在しているようには感じられず、そこにいるのは五神竜であった。
「待って!あれはアテナなのよ!?」
「だったら戦わずに逃げんのか!?アテナの為にも、アイツを倒すんだ!!」
ナツがビエルネスに飛び込もうとした瞬間、ビエルネスは口からブレスを吐いてナツを狙おうとしていた。しかし、吐き出される直前にその口には巨大なラクリマが突き刺さる。
「━━━暴食の力を付与済みの、越魔のラクリマ爆弾だ」
本来であればそのラクリマ爆弾が爆発すれば、爆風に巻き込まれたところは暴食の力によって食い尽くされるだろう。しかし、爆発する前にそのラクリマは
「アレ!?」
「くっ…!?避けろォッッ!!!」
そして金となったラクリマは霧散し、先程貯めていたブレスがそのまま吐き出される。そのブレスに仲間達は当たることは無かったが、ブレスが当たった箇所は金色へと変色……ではない。
「奴は触れた物を金に変えることが出来るのか!?」
「名の通り全部純金に変えるってことですか!!」
だがこの程度ではビエルネスの攻めは終わらない。直後にビエルネスは大きく雄叫びを上げて空気を震わせる。目の前にいる者達を自らの敵と認定しての戦いだからだ。
「今度は何だ!?」
「これは……!」
空が光り輝く。太陽の光が乱反射を起こし、眩い輝きを放っているのだ。何によって乱反射を起こしているのか?簡単な話である。それはまるで雨粒のように振り注ごうとしている……『金の雨』なのだから。
「全員俺の下に!!」
マルクが支持し、全員が一切躊躇無くマルクの元へと駆け寄っていく。そして同時にマルクは暴食の力を大きく広げて、まるで傘のように広げていた。降り注ぐ金は周りの地面を砕いていたが、マルクの達のいる所は一切の被害をもたらしていなかった。
「…あいつ、ホント規格外だな」
「この金の雨…1つでも当たれば致命傷になってしまうぞ」
「ちっ…!何から何までピカピカしやがって…!」
「ナツさん?」
「ッ…!炎の光も食らってみるかァ!?」
そう叫びながら、ナツは炎を纏って飛び出していた。余りの高熱に金の雨は融解して勢いをなくし、地面へと飛び散っていきその高熱の凄まじさは見ただけで判別できるほどだった。
だが…ナツの叩き込まれた拳は、ビエルネスには微塵も通じていなかった。
「ッ…………!!!いってええええ!?」
「ナツ!!」
「硬そうな気はしていたが…!」
「ナツ様の拳も効かないなんて!」
「まぁ通じるならそもそもイグニアに負けるだろうしな…」
ナツにとっては不服な話だが、ナツの炎の温度は金属は簡単に融解してしまう。それに加えて凄まじい一撃もある以上、並大抵の防御力ではナツには歯が立たないのだ。
だが、ビエルネスは耐えた。ならば力の上下はともかくとしても、ビエルネスには衝撃と熱に対しての耐性があり、それ故にイグニアと同じ五神竜という括りになっているのだろう。
「ならば私の剣なら…!」
「滅竜属性エンチャント!」
「俺達も行くぜ!!」
「「オウ!!」」
エルザがビエルネスに飛び込み、それに合わせてウェンディがエンチャントを付与する。同時にセイバーの
「はァっ!!」
「「「白影氷竜の
地面から巨大な氷の円錐が数本生え、更にそこから何本もの棘のように氷が生える。それをスティングの『白』が反射と屈折で乱雑に増えていき、同時に氷のせいでぶれている『影』からも幾重もの攻撃が滅多刺しにするかのようにビエルネスに飛び込んでいく。
その合間をすり抜けて、エルザが斬撃を行おうとする……が━━━
「微動だにしねぇ…!」
「逆に折られただと…?!」
「こ、こっちは3人分の滅竜魔法の
「ローグぅ…」
エルザの剣は折られ、スティング達の攻撃は細かな傷すらも作られることは無かった。単なる硬度。しかしその単純なものだけで…一同は翻弄されていた。
今まで攻撃を当てれば多少なりとも効いていたが、一切の手応えがビエルネスからは感じられなかったのだ。
「そ、その硬さ…流石、に…魔法……で、でしょ…!」
「天体魔法!!」
「アイスメイク━━━!!!」
だが攻撃の手は緩めない。ショートワープにより上に出たマホーグ、ジェラール、グレイの3人はそれぞれ自らの攻撃を構える。マホーグは自らの魔法破壊の武器を、グレイはせめてと滅悪の力を付与させた造形魔法を、ジェラールは天体魔法を。
「やぁッ!!」
「
「
しかしマホーグの武器は通らず、2人の魔法もそよ風を受けているかのごとく反応すら示さない。純粋な肉体硬度が、彼らを苦しめていた。生物から逸脱したドラゴンから更に逸脱した存在…これが五神竜なのだと全員が改めて感じ取っていた。
「━━━ルーシィ!お前も…一緒に、戦ってくれ!!」
「ッ…!わかってる……これが、アテナの望みなら…アタシ達は負けられない!!」
アテナが依代となっている事で、1歩が踏み出せなかったルーシィ。だがアテナの願いはビエルネスを倒す事…それが、ルーシィに一歩を歩ませる。
しかしルーシィはどちらかと言えば一撃の強さよりも、エルザの様に豊富な手数で戦うタイプなのでビエルネスには残念ながら通じることは無い……のだが、ここで彼女の知識の豊富さが強みとなる。
「ッ!またブレスか!!」
「くっ…!」
「なんて破壊力だ…!」
「しかも、攻撃が効かない…こんなのどうやって……」
「……けど、本来ナツとは相性がいいはずよ…!?」
「え、何で!?」
「金って、熱や電気の伝導率が高いの!」
ルーシィのその言葉に、先程ビエルネスの攻撃で降ってきた金がナツによって溶かされたのを一同は思い出していた。そして今もビエルネスのブレスによって金となった地面がナツによって熱を帯びていたのだ。
だが今のナツの攻撃ではビエルネスには届かない。
「……ならば、妾達の魔力をナツに送る事は出来まいか?」
「皆さんの魔力をナツさんにエンチャントしましょう!」
「頼むぞ!ナツ!」
「へっ……
しかし良くも悪くも…ナツはそれでは止まらない男であった。ルーシィの言葉を聞くなり、ナツはビエルネスに向かって飛び込んでいく。自分の攻撃が通用しない訳では無いと理解はしているが、その現状をやる気だけで解決させようとしていたのだ。
「ちょっとナツさん!?」
「面倒な男だ…」
「ナツだからな…」
「仕方ない、無理矢理ナツに魔力を送るぞ」
「はい!!」
こうして、ウェンディのエンチャントを使ってナツに魔力を送るという話は…無理やり送るということでまとまったのであった。そして、それを知らずしてナツは楽しそうに飛び込んでいくのであった。
「火竜の鉤爪ェ!!!!」
そしてビエルネスの前足に一撃を入れるが…通じず。そのまま虫を追い払うかのように、前足を動かしてナツは吹き飛ばされる。それでも諦めずにナツは宙返りをして地面へとバランスを取りながら着地していた。だがビエルネスも流石に鬱陶しくなってきたのか、ナツに向かって追撃を入れていく。
「へっ!ゥおらぁぁぁぁぁぁ!!!」
振り下ろされた前足にナツの拳が炸裂する……が、これも通じず。単純な重量差による一撃は、ナツの足元の地面を砕く。このまま押し合いを続けてしまうと金へと変えられることが分かっているナツは、敢えてその一撃の勢いを利用して体を回転させていた。そして一気にその勢いのままビエルネスの体を登っていく。
「まだまだァ!!炎竜王の崩拳!!」
爆発するかのような大火力が、ビエルネスの顔面に襲いかかる。それも通じず。尽くナツの攻撃が通じておらず、ナツは次はどう殴るかを考え始めるが…効かないのは、ここまでである。
「うぉっ!?」
「またブレス…!けど…!」
三度ビエルネスから放たれるブレス。ナツはそれをギリギリで回避し、直線上にいた仲間達はマルクの暴食の力で消し飛ばす。それで
「今です!ナツさんに私達の魔力を…虎と妖精の魔力をエンチャントです!!」
「…!あいつら…要らねぇって言ったのに…!ッ…!ガッ!!」
魔力を受け取ったことで意識が削がれ、そこをビエルネスに突かれる。前足で叩き落とされて地面へとめり込むナツだったが…受け取った魔力もあり、むしろ十分に満ち満ちていた。
「ナツ!!」
「よそ見、してっから…!」
「━━━けど、折角だ…貰っとく!!後は任せろォ!!」
めり込んでしまった地面ごと爆破していきながら、ナツが飛び出していた。そのままビエルネスの体を捉えるが……傷は、つかない。しかし先程までとは違い、それではまだ止めきれていなかった。
「ッ………!でも、硬ェ…!皆の魔力を炎に変えるんだ…!もっと熱く、熱く、熱く!!燃えろォオオオオオオオ!!!!」
ナツの炎が燃え盛る。温度は上がり、勢いは増し、燃え広がっていく。そうして大量の魔力が変換された炎の一撃を受けたビエルネスの体から……甲高い金属音が鳴り響いた。
「━━━割れたッ!!!」
「ビエルネスの鱗が…!」
「砕けた!!」
「いけるよナツー!!頑張れー!!」
「うおおおおおお!!」
ナツの炎は止まるところを知らず、ひたすらに連撃を繰り返す。爆弾が連続的に爆破されているかのような轟音を立てながら、ビエルネスは持ち上げられていく。
「お願い…ナツ…!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
勢い収まらず、周りの温度はさらに上がっていく。ブレス等で金に変質した木々が、ナツの炎で一気に燃え盛り焼却されていく。そして、一際大きな爆発音が鳴り響き……ビエルネス全体を炎が包み込む。
「へっ…!」
ナツはようやくダメージを与えられたことにほくそ笑むが、ビエルネスの逆鱗に触れていた。無言でナツを睨みつけつつ、前足を無理やり下ろして地面へと着地していた。
「終わりかァ!?ビエルネス!!」
「ナツ!」
「そいつ、まだ…やる気だ!!」
マルクの言葉に気を引きしめるナツ。しかしその瞬間、ビエルネスは光り輝き始める。そして翼を大きく広げ……飛び立った。
「飛んだ!!」
「逃げる気か!?」
「いや、攻撃を仕掛けてくるぞ!!」
「マズイぞ、俺らはもう魔力が…」
「………なら、俺が!!」
悪魔龍の力を全開放、
「捕まえたァ!!!」
「ッ…!」
驚愕の表情を浮かべるビエルネスだったが、その瞬間にマルクの周りから細かな金の光が現れる。そしてそれらはマルクへと向かって、勢いよく飛んでいく。
「ぐおおおおおお!!?」
「マルク!!」
「身の程を知れ、人間達よ…!」
ついに声を発するビエルネス。その表情は、怒りに満ちていた。その雰囲気や表情、攻撃の必死さから察するにマルクはビエルネスがキレていると確信していた。
「へっ…!喋れるんじゃねぇか、驕んなよ…!」
「神の竜に抗うなど、人間の分を超えている…!消えよ、目障りだ…!」
「ッ…!」
マルクの体が金に染まっていく。単なるダメージなら、ただ耐えるだけでいい。回復能力が高いので、気合いで耐え抜けはするのだ。しかし錬金術が相手となるとそうもいかない。あるものからあるものへの入れ替えな以上、回復ではどうしようもないのだ。
「テメェこそ…!コソコソやってんのは、こうやって負けんの……分かってるから、だろうがァ!!」
「ぬう…!?」
マルクは掴んでいた後ろ足を引っ張って、ビエルネスを下へとぶん投げる。勢いよく投げられたビエルネスは、バランスを取りながらも落下していく。
「ナツさん!!」
「おう!!!!」
「ッ!!」
だがバランスを取りきった頃にはもう遅い。ビエルネスの眼前に、飛んできたナツが迫っていたからである。ビエルネスはなりふり構わず、ナツに向けてブレスを放つ。
ビエルネスのブレスは錬金術でもあり、触れたものを金にする効果がある。そしてナツはそのブレスをもろに受けてしまった。
「ナツ!!」
「待て!あのブレス…!」
「━━━目を瞑れば、アテナの顔が浮かぶんだ…!」
ナツの声がブレスの中から響く。金にするはずのブレスで、金にならない。このことにビエルネスは驚愕の表情を浮かべていた。しかしこの時は冷静さを欠いてしまっていた為に、気づかなかったのだ。自分の吐いたブレスが…金にするためのブレスでは無い事に。
「これからを生きる奴だったのに、お前を倒すために1つになった!!お前は感じないのか!!自分の中にいるアテナを!!」
「ッ…!?」
「俺には!聞こえている!!」
『━━━ナツ、この
「あぁ!!」
幻聴か、はたまたアテナの意思は生きているのか。ナツに聞こえたその声はナツに活力を与える。そしてナツは…
「あのブレス!金じゃねぇ!!
「炎!?そんなの、ナツのパワーアップアイテムじゃない!!」
「何だと…!?何故炎が…!」
「ナツの炎が増幅されていく…!」
「うおおおおおおおおおおお!!!!!!炎竜王の!崩拳!!!」
金の炎によってさらに大幅に増したナツの一撃。それはビエルネスの顔面を捉え、巨大な爆発を巻き起こす。先程までの一撃だけで、ビエルネスを砕くまでに至っていた以上…それよりも遥かに増した一撃は当然の如く、ビエルネスを砕いていく。
「ビエルネスが…!」
「「「割れたァーッ!!!」」」
そしてビエルネスはナツの一撃によって…文字通りに粉砕されて、滅竜されたのであった。