炎との戦い
ビエルネスとの戦いの後…ナツ達は港町ホーソーンへとやってきていた。ジェラールとマホーグがイシュガルへと帰るための見送りと、イグニアに通じるであろう場所…『炎神の城』を調べるためにやってきているのだ。
「━━━俺達はイシュガルへ帰る。みんなの旅の無事を祈ってるよ」
「ふ、2人とも…また…ね」
「うん!元気でね!」
「あんたはマルクとウェンディ一筋ねぇ……というか一緒に行かないの?」
「そういう訳にゃいかねぇだろ…こりゃ、
「そもそも本来100年クエストの内容は本来受けた人達以外に知られたらダメですしね…今は完全な例外ですけど…」
見送りで和気藹々としている一同。そんな中で、じっと光景を見ていたナツが一言話す。
「……つーかよー、セイバーと帰ればよかったじゃねぇか」
「あんた馬鹿ねぇ……」
「ジェラールはエルザと、マホーグはマルクとウェンディといたかったに決まってるじゃん」
「ッ!!!!」
「そ、それはある…けど…言わないで欲しかった、な……」
ハッピーの一言により、2人は顔を真っ赤にしていた。特にジェラールに関しては、内心に留めておいたにも関わらずすぐにバレてしまっていたから余計に…である。
「……じゃ、積もる話もあるだろうから俺達は宿でも探しておくか」
「ついでに炎神の城についても聞き込みね」
「……?つもる話ってなんだよ」
「はいはいあんたはこっちね〜」
「ナツさん…」
「とりあえず行きましょう行きましょう」
「……あ…わ、私は…ウェン、ディと…マル、ク…と……もう、話、てる…から……船、乗っておく…ね」
そう言ってジェラールとエルザを残し、一同は解散していく。そこに残されたのはジェラールとエルザだが……どんな話をしたのかは、2人のみぞ知る話である。
,
酒場、ビーコック。そこに一同はやってきていた。こう言った大衆酒場は色々な人物が集まる。さらにこの街は港町。より一層の人員が集まると期待して、情報を求めてやってきていたのだ。
「…炎神の城?さぁ、聞いた事ないねぇ…ここは土地柄冒険者がよく集まる…色んな迷宮や怪物の話は聞くがねぇ……」
「土地柄って事は近くにギルドがあるんですか?」
「……こんな子供を酒場に連れてくるんじゃないよ、んー…あんたらの子か?」
店主はナツとルーシィを見て、2人がウェンディの子だと勘違いをしていた。年齢差的な話ならばルーシィとナツ、そしてウェンディは親と子と言われるほど年齢は離れてないが………ウェンディが年齢の割に幼く見えるのも要因の一つだろう。
「違うわ!!」
「よく見ろよ、髪の色が全然違うだろ……俺とルーシィの子供なら桜色と金髪だから……………何色になるんだ?」
「知るかー!!!」
「赤と黄色って考えたらオレンジですけど…桜色と金色だし…ピンクゴールド…?」
2人の髪の色を混ぜた色を真面目に考えるマルク。だがその時、グレイがふと思い出したかのように話に入り込んでくる。
「お、そういやエドラスにいたじゃねーか。ナーシャちゃん」
「え!?エドラスのナツさんとルーシィさん子供いるんですか!?」
「…あんたとジュビアの子供もいたわよね」
「あ!!あれは、別世界で…!!」
「え!!!!?エドラスのグレイさんとジュビアさんにも子供いるんですか!!!!!?」
マルクはエドラスでは別行動だった。2度エドラスに言ったが、二度とも別行動だった。
エドラスで出会った顔の知っている別人はウェンディ、エルザ、そしてマルク自身とミストガンである。
「……まぁいいわ、それで?近くにギルドがあるの?」
「━━━あー、るよー」
「「「ッ!!!!!?」」」
シャルルが再度聞き直していた所…急に話に入り込んでくる声が1つ。その声に驚く一同だが…それよりもその声に対して店主が、まるで恐れるかのように焦り始める。
「ブ、ブライアン!!こいつらは余所者だ!放っておけ!」
「腹減ってんだよナー、パラペリパラペリ」
ブライアンと呼ばれた白面の、まるでピエロの様な男。席をゆっくりと立ち上がり、ハッピーとシャルルへと近づいていく。その笑みは、非常に不気味であった。
「なんだ?この猫…美味そうじゃねぇか」
「オイラ達食べ物じゃ……うわっ!?」
「パラペリパラペリ…お?」
ブライアンとハッピー達の間に立ち塞がるはナツとマルク。明らかに単なる一般人でもない怪しい男に、警戒を募らせていたのだ。だがブライアンと言われた男は、その様子に焦る様子もない。
「俺の友達だ、謝れよ」
「お、おい!お客さん!やめなよ!ブライアンは━━━!!」
「いいんだマスター、確かに今のは俺が悪い……『美味そう』だなんて、失礼だったよなァ……
そう言いながら、ブライアンは手を広げハッピー達に向ける。その手には大きな口が出来ており、手が肥大化すると同時に手の口がハッピー達を喰らおうと━━━
「━━━勝手に喰らおうとするとは、傲慢で強欲で…暴食だな、あんた」
「グ、ガッ…!?」
「ふんっっっ!!!!」
「それ以上手を伸ばしたら代わりに手が食われて……って意味ないか。ナツさん殴って吹っ飛んだし」
そして、マルクが説明する前にナツがブライアンを殴り飛ばしていた。言葉も交わさぬコンビネーションの前に、ブライアンは一切防御や回避行動を取れずに攻撃を受けてしまっていた。
「うわっ、あいつら…!」
「ブライアンに手を挙げやがった!!」
「命知らずがよ…!」
周りの客が逃げ惑うように離れていく中で、ナツ達はそれらを一切意に介さずブライアンを警戒し続けていた。ハッピーとシャルルはウェンディの側へと寄り、ウェンディは2人を庇うように前に立つ。
「なんなのこいつ…!」
「やべー感じのやつだな…」
「━━━うんっまっっ!!パラプクパラプク!!」
警戒している中で聴こえるブライアンの声、その声とともにナツが拳に纏っていた炎を…ブライアンは倒れながらにしてその身に収めていた。まるで、炎を食べるナツのように。
「なんだよこの炎!プメーっ!!パラプクパラプクー……ご馳走さん」
「い、今こいつ…ナツの炎を食べたの!?」
「どうやって!?」
「体から吸収してるように見えました……」
「そういう魔法ってことかぁ…?俺と丸かぶりじゃん……」
「じゃ、今日はこれで失礼〜」
マイペースに、まるで何事も無かったかのようにブライアンはバーを出ていく。だがそれを許すナツではなかった。ハッピーに対する攻撃行動は、ナツに取って許し難いものなのだ。
「待てよテメェ!!」
「お客さん…あいつには関わらない方がいいよ。あいつはブライアン、この辺りじゃ極悪で知られる…闇ギルド
「━━━待てって言ってんだろこの野郎…!だあぁぁぁぁぁぁー!!!!!」
「ちょっとナツ…!?はぁ、もう…もう行っちゃった…仕方ないわねほんと…」
そう、許し難いことであるからこそ……ナツは店主の話を一切聞かずにブライアンを追いかけてしまう。だが一同は慌てない。一瞬で互いに目を見合わせて、一瞬で相談を終わらせていく。
「じゃ、俺ナツさんのとこ行ってきます」
「頼むぞ、マルク」
そう言ってマルクは1人、ナツを追いかける為にバーを出るのであった。
,
「ナツさん動くの早すぎだろ……一体どこに…………ん?」
それから少しの時間が経ち、マルクは一人で街を走り回っていた。匂いを頼りに動いてるものの、思いの外かなり遠くまで走っていたらしく…それでマルクは少し疲れを感じ始めていた。
だがその時、ナツの弱い匂いがマルクの近くにいることに気がついた。てっきり通ったところの匂いかとも思ったが…違う、弱い匂いが近くにあるという感じ。まるで、ナツに殴られたか何かで触られた人物が近くにいるかのような匂い。
「……どいつからナツさんの匂いが…?」
キョロキョロと見回すマルク。そこでふと気がついた。まるでパイナップルみたいな頭の男が、ニヤニヤとマルクを見ている事を。そしてその人物からナツの匂いもしていた。殴られたような焼けたあとがあり、きっとナツに殴られたのだろうとマルクは推測していた。そんな人物が自分を見てじっと立つ……罠である。
辺りは一般人も多く、下手な魔法を使えば恐らく巻き込んでしまうだろう。それ狙いか、はたまたそれによって十全に動けないことを狙ってのことか。
「……まぁあんま関係ないけどな、俺には」
「━━━━はぁッ!?んだこれ、壁!?」
「檻にすると隙間から出されそうだしな……」
男は突如として、黒い箱の中へと閉じ込められる。それは傲慢の呪力によって出来た箱であり、魔法での干渉は一切不可能となっている。そうしてようやく、マルクは男へと近づいていく。
「……へへっバーカ!!わざわざこっちに近づくなんてよ!!」
「っ!!」
突如として炎が吹き上がる。どうやら地雷のように炎の魔法を仕込んでいたらしい。まともに受けてしまえば、体の芯まで燃やされていたことだろう……
「ふんっ!!」
「ハハハ!!この魔法は炎で幻覚を見せんだよー!!俺が好きな漫画のキャラで〜ボコボコに〜………ん…?」
相手は箱に閉じ込められているのもあり、目で状況を確認することはできない。しかし何やら違和感を察知したのか、何かを疑問視しているようである。無論、マルクには関係ないが。
「魔龍の〜………鉄拳!!!」
「ぼがぁ!!!?」
「さーて、拘束拘束………………ッ!?なんだ!?」
傲慢の箱を解除すると同時に、マルクは相手の男を殴り飛ばす。よーく狙った一撃だったので、相手はすぐさまノックアウトしていた。気絶したことを確認し、マルクは男を拘束しようとして……その瞬間、『異変』が訪れた。
空まで伸びる黒い光、それがある地点から伸びていたのだ。マルクは考えた、ナツを探すべきかそれとも仲間と先に合流をするべきか。
「……先に、みんなと合流だな」
ナツはどこにいるか分からないが、他の仲間のいる場所は凡そ把握している。そして同時に、マルクは向かうべきならエルザのところだと判断した。
恐らくグレイ達もおなじ景色を見ていることだろう。ならば場所の分からないマルクよりも場所のわかるエルザのところへ向かうと考えたからだ。故に、エルザがいるであろう港に向かうことにしたのである。
「こいつ放置はアレだけど……まぁ、いいか」
そう言って、マルクはその男をその場に置き去りにして…エルザの所へと向かうのであった。