「ナツさんはどこいったか探し出せていなくて、エルザさんは港にまだ居るはず…そう思って、走り出してたら…エルザさんの匂いが着いてる甲冑で身を包んだ奴がいた。それよりも前にナツさんの匂いが着いてた奴がいたから叩きのめしてたから、てっきりエルザさんに何かあったのかと思って、そいつと戦って情報収集しようと思ってたところで………………なんでこうなった?」
「ご丁寧に説明してくれてどうも」
マルクの説明口調に軽く礼をしながら、何故か目の前にいるアイリーンがマルク……『達』の前に座り込む。ここは
「しかも何か話進んでるっぽいし…俺ちょっと省かれすぎじゃないですか?」
「だって貴方戦う直前だったせいでエレフセリアの魔法で移動できなかったんだもの」
「じゃあなんで俺ここにいるわけ?」
「ほら昔、私フィオーレの土地ぐちゃぐちゃに入れ替える魔法使ってたでしょ?あれの応用で、あなたのいる場所だけここに持ってきたのよ」
という訳で、ここに連れてこられていたマルク。怪しい人物とのバトルを前に肩透かしを食らった気分だったが、一旦頭の中を切り替えて今の事情を把握しようとしていく。
「……で、えっと…ここに連れてこられた瞬間にまくし立てられて説明されましたけど…時系列まとめるために改めて細くとかしてもらっていいですか?」
「いいわよ」
「私達もなるべく事情は把握しておきたいからな…」
マルクの言葉に、ルーシィとエルザが頷く。どうやらナツ、マルク、そして残りのメンバーという形で色々な事情が動いていたようだ。
「まずナツさんですけど…はぐれた後どこ行ってたんです?」
「あの口ヤローを追いかけた時に、炎版グレイみてーな奴とよくわかんねぇのが俺をイグニアんとこ連れてってよォ」
「よくわかんねぇのって……なんか頭パイナップルみたいな?」
「そうそう、ンな感じ」
ナツはどうやらイグニアの拠点…炎神の城という場所に連れていかれてたとの事。そして何人かと戦闘を行ってたという事で、匂いの着いたやつがいたという事実に補足が入ったようでマルクは納得をしていた。
「私の匂いがついていた、というのは恐らくウェドだな…剣士だった様だが…炎神の城に異変が起こったらしく、戻ろうとしていた。後炎版ハッピーがいたな」
「炎版ハッピー…?」
「可愛い子だったよ」
「お前…シャルルがいながら………それは兎も角、ええっと…異変っていうのは多分あの空から降りてきた黒い光ですよね」
マルクは記憶を辿り、あの異変を思い出すマルク。異常な魔力と、あからさまな異変。炎神の城にいたであろうナツだけが、恐らくその異変の内容を知っているのだろうと思い目を向ける。
「あー、それあれじゃねぇかなぁ。ファリス」
「…ファリス?なんでアースランドに………あ、いや…そっか…アースランドのファリス」
「そうそう…で、そのファリス…アクノロギアの腕くっつけてたんだよ。イグニールがもぎ取った、アクノロギアの腕がな。ンで、黒魔導士を名乗ってたんだ」
「………なるほど…ん?なんでナツさんイグニアに連れていかれたんですか?」
「なんかよー、仲間になれって言われちまってさ。真・竜王祭ってのをおっぱじめるつもりとかなんとか…ファリスとは俺がこっち飛ばされる時にァ一撃入れようとしてたな」
マルクは頭の中で整理を続ける。単なる炎神竜の討伐かと思っていたが、思いの外話が複雑化していたためである。突如として現れたアクノロギアの腕をくっつけたファリス、それと敵対しさらに自分達とも敵対をしているイグニアと彼が立ち上げたギルド。そして謎のワード、真・竜王祭。
「……ナツ…いや、イグニアの言う真・竜王祭…心当たりがある。見よ、この石版を」
「これは…前に一回見せてくれた五神竜の奴か」
「あぁ…これが輝き始めた後、空が光り…エーテルナノ粒子が蒸発した…それは、つまり…」
「てーへんでがすよー!!」
光り輝く五神竜の紋章。何かまた別の異変が起こっていることは明白だが、その理由は分からない。けれどそう悩んでいた時に…その答えは旅カラスのヒカゲによって持ち込まれる。
「…誰だこいつ……」
「カラスが喋ってるぞ…」
「やっば……どーしよ、思い出せない…」
「誰だっけお前」
「旅カラスのヒカゲさんですよ〜!」
「俺も忘れてた…」
最も…あまりにもメンバーと接点が薄すぎたためか、ウェンディ以外のメンバーからはすっかり忘れ去られてしまっていたが。しかしそれを気にする暇も無く、ヒカゲは報告を続けていく。
「あっしの情報網によりますと、倒したはずの五神竜……いや、
「この前倒したビエルネスも…」
「メルクフォビア、セレーネは暴れだし……ドグラマグでさえも蘇っている」
「へっ…1度倒したやつらだ、もっかい倒してやるよ」
「…ですね、それしかない」
1度は倒したことのある相手…メルクフォビアとセレーネは和解しているので明確に倒した訳では無いが…それでも、6体の内半分は仲間との協力で倒せている。勝てないわけではない…全員がそう考えていたが、それに対してエレフセリアは首を横に振っていた。
「いや…奴らの力は増している。そもそも今の力こそが本来の力かもしれぬ……それだけではない、六神竜のいた地には巨大なラクリマが現れ、人間を竜化させているという」
「何ッ!!?」
「人間がドラゴンに!?」
「…
「どういうことなんだ…」
「………あ!まさか、イグニアが言ってた真・竜王祭ってこの事か!!?」
人間が竜になり、倒したはずのドラゴンが復活する。イグニアによる、ドラゴンの為の祭り。ドラゴンが再び世界を跋扈するのを竜王祭と呼んでいるのなら…と、全員がどこか納得のいく答えだと確信していた。
「…とにかく、そのラクリマが人を竜化させるなら壊せば元に戻るんじゃない?」
「セレーネさんやメルクフォビアさんの凶暴化も止まるかもしれませんね…」
「よし!!全部の巨大ラクリマを壊していくぞ!敵は6人!俺たちも6人だ!!」
「オイラとシャルルもいるよ」
ナツの言葉に、全員が頷く。負けることは考えておらず、全員を倒す又は無力化する。その目的が全員の中で明確にひとつとなっていた。
「……あ、でもファリスもいんだよな」
「聞いてる限り第3勢力ですし、無視しときましょう。何が目的なのかもイグニア以上にわかんないんですし」
「…ま、それもそうだな。この大陸の人間が全員ドラゴンになっちまう前にラクリマを壊すんだ、1人1個!いいな!」
「ちょ…ちょっと待て、別々に行くつもりか?」
「そっちの方がはえーしな…安心しろよ、受けた依頼はきっちりこなす。行くぞ!!100年クエストは
ナツの号令と共に、全員が別れて移動する。エレフセリアやアイリーンの魔法により、全員が各地へと転送される。こうして始まった神のドラゴンVS妖精の面々は…苛烈な戦いとなることを、全員が予感するのであった。
,
「……ちっ、イグニアの奴…予定じゃ俺の復活は無かっただろうによ。まぁ俺自身やられるつもりは無かったが……」
かつてあった迷宮、ドグラ大迷宮。そこの辛うじて通れる通路を、人間の姿となっているドグラマグが闊歩する。巨大なラクリマは洞窟の奥深く。よりにもよって、地面の中に埋まるような形で生成されてしまっていた。そして、彼自身がナツ達と戦った際にあった大穴は陥没してしまっており、今ではそこから太陽が覗けるほどの巨大な大穴となってしまっていた。彼は1度外に出るために、そこへと向かっていた。過去形とはいえ、長い間染み付いた自分の魔力の痕跡が追えないほど、ドグラマグは馬鹿では無い。そうして辿り着いた大穴だったが……
「………………夜か?いや、にしては光の一切が入らねぇってことは……」
暗闇…否、暗黒とも呼ぶべきほどそこは暗かった。ドラゴンの目にはそもそも昼や夜では関係なく物や人が綺麗に映る。故に例え星の光が一切入らないような空間であっても、関係なくその場所を見渡すことができる。そんな目を持ってしても
「
それに思い至ったドグラマグ。そう、目の前に…上にある暗闇はマルクの『暴食』の力にひたすらに魔力を注ぎ込んで巨大化させたもの。穴よりも大きな全てを食らうその球を、マルクは上から落としたのだ。魔力感知は彼の得意分野…ドグラマグが真下に来たことを見越して放った、必殺の一撃である。
そうしてどんどんと音もなく周りの外壁を削り取っていく巨大な『暴食』は…ドグラマグがたっていた場所まで、降りてくるのであった。
,
「━━━━今ので仕留められたら楽だったんだけどな」
「ぶはっ……!てめぇ、やってくれんじゃねぇか…!」
大穴より上…地上に立っていたマルク。そこに、地面を無理やり掘り進んできたドグラマグが這い出てくる。そのドグラマグに対して、マルクは煽るような笑みを浮かべていた。
「よう
「舐めた真似してくれやがって……いいぜ、あの時はドグラコアを破壊されて弱っていた…今はそんな縛りもねぇからよォ…存分に叩きのめしてやる…!」
「お前一人倒せない程度じゃ、ナツさん達の仲間って二度と言えなくなるしなぁ…!俺一人で、てめぇを倒しきって終わってやる!!」
土神竜、ドグラマグ。悪魔の龍、マルク。今ここに、苛烈な一撃が合図となった2人の戦いが…今まさに始まろうとするのであった。