━━━五神竜、否六神竜が復活した。各地で巨大なラクリマが現れたと同時に、暴走を開始した。ナツ達は手分けをすることでそれぞれのラクリマと六神竜の無力化を図ることを画策する。
「はっはー!!そんなもんかぁ!!!?」
「ちぃっ…!」
そして、マルクはドグラマグとの再戦に挑んでいた。理由としては1つ、今のドグラマグがどういう戦闘能力なのかが1番謎だからだ。ナツ達が倒せたのは、ドグラマグが迷宮内に配置していた『ドグラコア』を全滅させたからだ。けれど、全滅させる前はろくに攻撃も通る事がなく苦戦一方だった。
「よりによって後者か…!マジで俺が来ててよかった…!」
「何がなんだってぇ!!?」
そして2つ仮説が建てられた。①ドグラコアが全滅したあとのドグラマグとしての復活。この場合倒す目処が建てれるので問題はない。
けれど②ドグラコアはなしだが、復活基準は『ドグラコアを配置してたドグラマグ』で復活した場合。こうなると、他の者達では倒す手段が無くなってしまう。
マルクの暴食の力を使えば、まだ目処がある。それ故に彼はここに配置されている。そして開幕に暴食を落としてぶつけることが出来れば、ほぼ勝ちだった。成功しなかったが。
「てめぇらが戦ってた時とは…大違いなんだよ!!」
「良かったなぁ、『あの時は全力が出せてなくて負けた』って言い訳が出来てなぁ!!」
煽る、不必要なまでに煽る。完全に格下だと思われている相手から煽られることで、怒りを出すのをマルクは望んでいる。今回の戦い、無論負けるつもりはないが…一番の勝ち筋は『巨大ラクリマ』の破壊なのだ。そしてマルクはやろうと思えばそれが一瞬でできる。
……ふつうなら、だ。ドグラマグが守っている巨大ラクリマは地下にあり露出していなかったのだ。
「がぁ!!」
越魔の咆哮がドグラマグを焼くが、無傷。耐久力はやはり尋常ではないのだろう。いくら成長したからと言っても、ドラゴンはやはり強力な存在である。
………こういう相手だからこそ、一直線にラクリマだけを壊すのは憚られた。下手に背中を見せようものなら、潰されるのが目に見えていたからだ。
故に今マルクは、
「……へっ、おいおいあの巨大なドラゴンもどきの姿になんねぇのか?」
「お生憎様だな、越魔だけでいい」
「仕留めきれてねぇのにか?」
「そんな俺を倒せてねぇお前が相手だから全然いいなぁ?」
青筋を立てる音が聞こえてくるようだ。そもそもドラゴン相手にまともな攻撃方法が通用するとは、マルクも思っていない。『まとも』じゃない攻撃方法もあるにはあるが、それでもそれで勝てるかどうかは分からない。未だこいつを1度は倒したエレフセリアに今更ながら尊敬の念をマルクは抱いていた。
「てめぇ…勝てねぇ癖して…!」
「勝つさ」
━━━故に、本来の勝利条件であるラクリマの破壊を狙いはしつつも…マルクはドグラマグに完全勝利することを決めた。勝負に勝つのではなく、試合に勝とうとしていた。
「………………舐められたもんだな━━━」
ドグラマグの体が巨大化していく。竜としての姿が、マルクの目の前に現れる。前と変わらない巨大な岩石の塊が、そこには存在していた。
「食い意地が張りすぎだ、雑魚が」
「こちとら食うのが仕事なもんでね」
見上げる視線は獰猛で、まるで首を噛みちぎらんとする強さだった。対するドグラマグは、油断しない。腹立たしいことに負けたことは本当に事実なのだ。なれば、一人で来たということは、本当に勝つ算段があるということ。
「━━━徹底的に叩き潰してやるよ、ネズミが」
「窮鼠猫を噛むってな……ま、噛むのは…ドラゴンだけどなぁ!!」
力をさらに解放するマルク。越魔を解放したマルクと、完全体のドグラマグ。2人の戦いは激化の一途を辿っていくのであった。
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明確な勝ちの算段はない。しかし狙っている事はあった。『神の竜の魔力』である。
イグニアの炎、ビエルネスの金、ドグラマグの土、セレーネの月、アルドロンの木、メルクフォビアの水。6つの力が残滓のように彼の体の中にこびりついていた。けれど魔力に還元されてないその力は、まるでこびりついた汚れのような落ちず、ましてや力として使える訳でもなかった。マルクは何とかして使い方を模索しようと考えていたが…今、ふと思い至った。
「ちょこまかしやがって!!!」
「無駄にでかい図体だな!!木神竜にでもなれるんじゃねぇか!?木偶の坊ってな!!!!」
「口だけは減らねぇネズミだな!!鳴き声がやかましいぞ!!人間に滅ぼされる程度の悪魔の分際でよォ!!」
「でけぇ口からちっちぇこと言ってんじゃねぇ!そんな器だから六番目なんだよお前は!!」
争いあいながら、散々に言い争う2人。しかし互いの最後の一言で我慢の限界が来たのか、互いに互いを睨みつけていた。そうして遂に、改めて目の前の敵を叩き潰すことを目標と定める。
「「━━━━ぶっ潰す!!!」」
ドグラマグのブレスが地を薙ぎ払う。マルクは敢えて迎撃せずにそのブレスを避けて、魔力を取り込む。確証はない、確信もない。けれど神の竜の魔力は間違いなくマルクの体に負荷をかけていく。
「越魔竜の、咆哮!!」
「ぬぐぐ…!?」
ドグラマグは図体が大きいためか、避けれずに掠っていた。しかしほんの少し怯む程度でダメージらしいダメージは期待できていなかった。
「…はっ!確かにほんの少しマシにはなったみてぇだが…本気を出さねぇやつに負ける道理はねぇよ」
「………」
マルクの今の本気…悪魔の力と越魔龍の併用である。その2つを併用出来れば、今よりも遥かに強い規模で戦うことができる。けれど今は地面の中にある巨大ラクリマを探すために回してしまっていた。確かにドグラマグを倒さなければならないのは本当だが、ラクリマも壊さなければならない。というかなんなら、おそらく主題はラクリマを壊すことだろう。
だから、はっきり言えば……ドグラマグは完全に無視すればいいのだ。それが出来たら、苦労はしないだけで。
「でけえ図体ゴロゴロ転がしてんじゃねぇよドラ猫が、ご主人様のイグニアが来なくて不機嫌なのか?」
「………あ?」
「俺がネズミならてめぇはネコだ、飼い主はイグニアだ」
「てめぇ…あいつをバカにしてんのか?」
「は、そりゃそうだろ。あいつの為にせっせと迷宮を広げて、あいつの為に他の神竜を手駒にして、んで今はイグニアに復活させられた……………あぁ、これ猫じゃなくて飼い主のために働く犬だな!いやぁ悪い悪い!」
煽る、煽る。おそらく今とんでもない地雷を踏んだことは、マルク自身も理解している。だがもっとだ、もっと強い攻撃を誘わなければならないと考えている。
「……………いいだろう、てめぇの口車に乗ってやるよォ!!!」
地面が隆起した。まるで土地の書き換えが起こったかのように、地面の形が変わっていく。突き上がった地面に打ち上げられ、空中に飛ばされる。
そして、間を突くようにドグラマグがマルクを食い殺そうとその口を開けながら迫っていた。このままでは食べられて一貫の終わり。だが、開けられた口に下手に反撃するのを誘うのも手だろう。その場合、尻尾や手で攻撃して終わりなだけである。
「だったらこうだ!!」
マルクはブレスを横向きに吐いていた。その一瞬後に、ドグラマグの胴体が通り過ぎる。危うく食い殺されるところだっただろう。だがしかし、このまま終わりではない。
「土神竜の━━━!!」
「越魔龍の━━━!!」
「「咆哮!!!」」
互いのブレスがぶつかる。単なる魔力の本流、越魔の真価は圧倒的なまでの魔力質量。対してドグラマグは神の竜。その魔力そのものの質は圧倒的にマルクより高い。
「ぐあっ!! 」
マルクが落とされた。空中にいる時にブレスのぶつけあいと合戦は、彼にとってとても分が悪い戦いだったのだ。それでもまだ、終わらない。
「潰れろやぁぁぁぁぁ!!!」
「ッッッ!!!」
大きな足が振り下ろされる。一撃で叩き潰されることはなかった。だがジリジリと、マルクの体は地面へとめり込み始めていた。このままでは、結局潰されて終わるだろう。
「ぐ、ぐうううううう!!!?」
「ハッハッハー!!!てめぇのことをネズミと言ったがなぁ!!訂正してやるよ!!この…ノミ野郎が!!!」
潰れる、体が。越魔によって生えていた翼やしっぽが、砕けていく。終わる、全てが。このままだと何もできてないままに、潰される。
「終わって……たまる、かぁぁぁぁ!!!」
抵抗を続ける。魔力を込める。溜め込んだ全てを使う。奥の奥のもっと奥、全てを吐き出してでも、こいつは倒す。そうして手を伸ばし続け…
「ッ!!?ぐおおお…!?ンだ、ンだこれはァ!!」
ドグラマグの、岩石よりも強固な皮膚が裂けた。中から鮮血が溢れかえり、ついドグラマグは仰け反っていた。その傷には…僅かながら『金』が付着していた。
「これ、は…」
「てめぇ…その力…ンで、なんで、てめぇがその力を使えやがる…!」
翼は月のように輝き、両手は燃え盛り、尻尾は金色に輝き、足には水がまとわりついていた。そして、頭からは角のような木が生えており、胸部には鎧のように着いた土が存在していた。
「そりゃあ…神竜たちの力…!てめぇ、取り込んでやがったってぇのか…!」
「……みてぇだな…けど、ちょっとでも気い抜いたら…」
分かる、この力は再び奥の方にしまわれてしまうだろう。今は、きちんとこの力を扱えているわけではない。恐らくがむしゃらに発現した、雑な力。
「━━━だが、通じりゃあ十分だ!!」
不十分な覚醒、けれどこれでいい。マルクは今この場を持ってドグラマグを倒すと誓うのであった。