FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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突入

セレーネの魔法。それは空間の違う異世界同士を繋げることが可能な程強力な空間を繋ぐ『門』を作れる物である。まるで呼吸をするかのようにどんな場所にでも簡単に繋げてしまうこの魔法は、相手の罠などを完全に無視して直接本拠地へと送ることが可能であり…それによって改めて闇ギルド『致命的な美徳屋(デッドリーバーチュー)』がいた村へと突入する……予定だったのだが。繋がった門の先へと出た一同は驚愕していた。

 

「んだこりゃあ…!?」

 

「おいおい……村って言ってなかったか?」

 

「たしかに、そうだったはずなのだ…森の中に村があって…」

 

「…だとすれば、これは異常な自体だと見受けられる」

 

森の中にあった村。それはナツ達も確認していたはずだが……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…おかしくなーい?こんな場所、ボク達知らないよ〜?」

 

「どうなっとんじゃこりゃあ!!」

 

「違法建築は━━━」

 

「罪、って言いてぇんだろちょっと黙ってろ……レーク、なんか分かっか?」

 

ダーツに聞かれ、冷静に分析するレーク。この中では情報に長けた彼だが…周りの絶壁と、目の前の城を少し眺めてから首を横に振る。

 

「いや…ほとんど詳細な情報は分からない。だが目の前の城の材質…それは記憶にあるよ、『ドグラ大迷宮』だ……正確にはアレの石材だけどね…だから、生半可…というかこっちの陣営で壊せる人物はいない」

 

「━━━なるほど、情報戦に強い魔導士………いや、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)か?素晴らしい力だ」

 

軽快な拍手の音が鳴り響く。その拍手の音の方向…目の前に、ギルドマスターであるシンがいた。否、気づけばそこには『7人』の幹部と大量の覆面の雑兵が存在していた。

 

「馬鹿な…!?いつからそこに…!」

 

「たった今…と言えばたった今、先程から…と言えば先程から…というのが答えだ」

 

「何をふざけて…いや、そうかこれが…!」

 

「そうだ、これが…魔呪法という物だ。まぁ主だった力をの名称を2つくっつけている…というだけで、実際には色々掛け合わせているが…ナツ・ドラグニル達も味わった『アレ』によって、先程から空間を切り分けてここにいたのさ」

 

つまるところ、視認も感知も不可能な隠れ方をしていたということになる。まともな探知法では探すことさえ不可能なのだ。その事実を全員が噛み締めながら……もうひとつの事実も、噛み締めていく。

 

「マホーグ……!」

 

「…?私の、事?私の名前はグラサス・グーラ…だよ?」

 

シンのそばに控えていた少女…自らのことをグラサスだと謳うマホーグは、不思議そうに首を傾げていた。自分に目線が向けられていると思い答えたが、マルクのことが分からない様子でもあった。

 

「…マスター、あれは…誰?」

 

「敵だよ、全員ね」

 

「お前ら…マホーグに何をした…!」

 

「分かっているだろう?洗脳だよ、そう簡単に解けるものでもない…そもそも解除されるかも怪しいがね」

 

「んだと…!?」

 

「落ち着けマルク…だが、仲間をいい様にされるのは………腹が立つ…!」

 

マルクを静止するジェラール。しかし、その顔は仲間を手を出されたことによる怒りに満ちていた。その瞳がシンを睨みつけた瞬間……()()()()()()()()()()()()

 

「傲慢な奴だ…空を変えるとは」

 

「これはァ……ちょーっと、私じゃ対処できないですねぇ」

 

「ふむ…憤怒の一撃、と言った所でしょうか…」

 

「あぁ…いいですねぇ…!怒りによる殲滅を希望しますか…!強欲豪胆…!それもまた人…!」

 

「んー…………でもぉ…これ、ちょっと……まずくなぁい……?」

 

「関係ないさ……いけるな?グラサス」

 

「はい…!」

 

致命的な美徳屋側も、ジェラールの魔法に困惑と焦りを浮かべていた。かつての戦争の際、ジェラールは一人で…もっと言うのであればたった一度の魔法で船軍を殲滅させたのだ。今回はその時よりも……過激である。

 

「七つの罪に裁かれよ!!グランシャリオ!!」

 

怒りに満ちているのは本当だが、ジェラールは冷静に判断を下していた。それは、この場にいる雑兵の殲滅である。幾らこちらの質が高いといえど、数の暴力というのは得てして質を上回るのである。

故に、ついでの殲滅を行うのだ。

 

「ならば俺も混ぜてもらおう!!!!!滅竜奥義!!聖天霹靂!!!」

 

そしてそこにスァーヴァクも乗っかる。彼の滅竜奥義は、彼が悪と断じた者全てを貫く光線を四方八方に放つ技である。周りのエーテルナノを吸収する事でエネルギーを確保し、どれだけ大勢いても関係なく貫ける技なのだ。仮に断じていない者、又は悪では無いとされた者に関しては貫かれてもダメージは発生しない。

この2つの魔法で、敵は壊滅する……かと思われた。だがその時、グラサスが空中へと飛び上がる。

 

「私の呪法は全てを食らう暴食の呪法……()()()()()()()()()()()()()()()()()()…!」

 

「何っ!?」

 

「そんな事をして何になると…!!」

 

スァーヴァクの言葉の直後、全ての攻撃はグラサスへと集中する。人数分以上に放たれた光線が、幾重にも降り注ぐ隕石が彼女へと全て命中する。それだけの攻撃を一人の身で受けてしまえば…戦闘不能になることは目に見えているだろう………だが、そうはならなかった。

 

「ん゙っ………!!」

 

「なんだ、何かを…?」

 

「ッ…!!()()()()()()()()()

 

全ての攻撃を受けきった直後、半透明な謎の液状のような『何か』が手から分泌されていた。それを見て、レークが吠える。それと同時にその『何か』を一同目掛けて放ったグラサス。それと同時にスカリオンが一同の前に現れて━━━

 

「骸には、させない」

 

「何っ!?ぐあっ!!」

 

…骸にしてしまえば、完全に防げていた『何か』だったが…グラサスはそれを読み切りスカリオンを吹き飛ばす。その手口は、グラサスがマホーグだった時と一緒であった。

 

「未来視か…!」

 

「開け!白羊宮の扉!アリエス!」

 

「モコモコウール!!」

 

一同の目の前にモコモコのガードができ上がる。それと同時にモコモコに『何か』が降り注ぎ…完全に吸収し終えたと同時に、モコモコも消えていた。

 

「…防がれちゃった」

 

「防御できるメンバーがいて助かったな」

 

「…今までの魔法も据え置きかよ…!」

 

「そうだが…()()()()

 

「……んだと?」

 

シンの言葉に、マルクは眉を顰める。マホーグの時として仕えていた魔法も使えるということを否定されなかった以上、恐らく間違っていないのだろうが…少し違うという言葉の意味を、理解しきれていなかった。

 

「だが、それを私の口から説明するのは…辞めておこう。自分達の目で、頭で見て考えることだ」

 

そう言った瞬間、致命的な美徳屋達…その幹部達とマスターの姿が掻き消える。恐らくここに現れた時と同じ方法を、逆に使うことで姿を消したのであろう。

そして残されたのは、殺意で満ち溢れた覆面の狂人達である。

 

「…へっ、おもしれぇ…肩慣らしさせてもらおうじゃねぇか」

 

「魔力は消費しすぎんなよ」

 

「って…何人いるのよ…!」

 

「100…いや、それ以上か?」

 

「オイラもやってやるぞぉ!!」

 

「下がってなさいハッピー!」

 

「こっちにも人数はいるのに…!」

 

「ギヒッ…全員ぶっ飛ばしゃあ話がはええじゃねぇか」

 

「そういう事だな」

 

「さっさと全員で…」

 

「いや…皆さん下がってて!!()()()()()()()()()!!ルーシィさん!ジェミニ出してほしいです!」

 

全員が戦闘態勢に入る中、マルクが越魔を解放させながらルーシィに頼み事をする。ルーシィは言われた通りジェミニを召喚すると、いつの間にか錬金術によって解放していた悪魔の力の1つがジェミニに触れ、マルクの体から生えたラクリマへと取り込まれる。

 

「一気に…()()()()!!」

 

ラクリマから光線となった魔力が四方八方に飛び散っていく。それらは数えるのも億劫になるほどの本数となり、そして瞬時に人型を取っていく。それはこの場にいるメンバー全員分の姿を取っており、同時にその数はこの場にいる人数とは比較にならないほど一気に増える。

それらが同時に魔法を放てば…当然どれだけの数がいようとも関係なく、一瞬で相手は殲滅できるだろう。そう思っている内に、カタがついていた。

 

「くはっ……流石に越魔でも一気に消耗するとキツイ…!」

 

「凄……マルク、何したのよ今…」

 

「……ジェミニの魔法を、彼自身の強欲の力でコピーした。魔力に強欲の力を上乗せして、一時的に魔力単体でこの場にいる全員に変身…そして瞬時に魔法を放たせて敵を一掃した…そうだな?」

 

「解説役いると便利だわほんと……全員が浪費するよりも、魔力量が多くて回復しやすい俺がやるのが一番手っ取り早かったんだよ」

 

言葉にすれば、やっていることは単純な話である。魔力そのものをこの場の人物に変異させて技を放たせる。しかしこれによる魔力消費量は凄まじいものなのだ。

強欲の力は魔法のコピー、その魔法を使うためには魔力が必要なのである。つまり消費量は、ジェミニのコピーの魔法とそのコピーが放つ魔法×変身させたコピー体の人数分である。魔力が実質無尽蔵であるマルクだからこそできる技だが、普段使いできるほど使い勝手がいい技でもないのだ。仮に強敵一人にコレをしようものなら、大量の魔力の消耗による虚脱感で隙を突かれて敗北は免れないだろう。

 

「……で、どうすんだ?」

 

「中にいるのは間違いないわよね…流石に、今の流れでどこかに行かれたら探しようがないけど」

 

「じゃあ…」

 

「入るか」

 

黒滅竜騎団の4人がそう言い、それに送れるように全員が目の前の建物に視線を移す。一介の闇ギルドが持つにしては立派すぎるほどの城。強大な力に緊張を孕みつつも、一同は中へと入っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一同が入った建物内。それは一目見て異常だと思える作りをしていた。確かに大きな建造物ではあったが、遠近感が狂うと感じてしまうほどに中もまた広かったのだ。中身はなくて、ただ外側の為だけにある建物…そうも感じとれた。

幸い無機質な作りではなく不気味な程に白く、明るく、所々にステンドグラスが張り付けられており一見すれば神秘的な建物だろう……よく見れば、360°それぞれの方向にあるステンドグラス全てから明かりが差し込んでいる異常性があるのだが。

 

「………しかも」

 

「馬鹿でかい扉、バカみてぇに1段が長い階段…扉も何も無い奥行きの広い廊下……」

 

「センスを疑いたくなるわね……」

 

一同で見渡すが、まるで来ることが見越されていたかのように()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その時点でまともな建築物ではないのだろう。

 

「手分けするっきゃねぇだろうよ……行くぞハッピー!」

 

「あいさー!!!」

 

ハッピーがナツを掴み、そのままどうやってはいるのか分からない高度にある扉へと飛び込んでいく。しかし一同は慌てない。ナツ・ドラグニルとはそういう男なのだ。

 

「…それに、いざとなったら建物ぶっ壊しながら戦うだろアイツなら」

 

「だから材質が……いや、こんな変な空間なら逆に内部にかけられているであろう魔法や呪法を溶かすことも有り得るわけか……」

 

「ギヒッ……ならよォ、全員手分けして行きゃあいいじゃねぇか」

 

「ま、そうだな」

 

その言葉で全員がそれぞれの方向へ行こう……そう決めた時に、マルクがガジルの腕を軽く叩く。何事かとガジルはマルクの方に振り向き、それに対してマルクは軽く深呼吸をしてから目を合わせる。

 

「ガジルさんに、渡したい対策があるんです━━━」

 

その後軽く話した後に、全員が離れる。エクシードを相棒に持つ滅竜魔導士三人は、それぞれ一緒に進むが…それ以外は全員バラバラである。だが、絶望も恐怖もない。あるのはただ、全員無事に帰るという思いのみ。勇気を持って、全員が戦いへと挑むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「━━━来たか」

 

ある一部屋。そこに立つは傲慢担当スペイルヴィ・アロガンティア。腕を組み仁王立ちしている彼の上から現れたのは『炎』である。

 

「離せハッピー!!火竜の!!!咆哮ォ!!!!」

 

「無駄だ…我が魔法と呪法に、叶うもの無し!!!」

 

「ッ!!」

 

放たれたブレスが、一刀両断される。咄嗟の直感で攻撃を回避したナツだったが、相手の身に纏うものすらまともに燃えていなかった。それはナツ自慢の熱ですら簡単には通さないという事である。

 

「へっ…!燃えてきたぞ…!」

 

「戦いを楽しむか…傲慢な奴だ」

 

よく見れば、何の変哲もない剣を装備しているスペイルヴィ。だが恐らく何かあるだろうと直感を働かせたナツは、決して舐めはしない。その上で…炎で戦うのだ。

 

火竜(サラマンダー)に集中してっと命取りだぜェ!?」

 

「敵が一人だけたァ思わねぇ事だ!!」

 

「ッ!!」

 

「んなっ!?テメェらなんでここにいやがる!!」

 

左からは鉄の剣、右からは轟雷の一閃がそれぞれスペイルヴィに襲いかかる。そう、現れたのはガジルとラクサス…そしてリリーであった。

 

「━━━有象無象が、何人集まってこようと…!」

 

「うおっ!?」

 

「…効いてねぇ、か…いや確か…結果的に無かったことにするって感じだったか?」

 

「我が正義に、一片の揺らぎなし…我が魔法、我が呪法…そして魔呪法によって…貴様らを殲滅する…来い、悪党共…!」

 

「上等だ……てめぇらを倒して、仲間取り返してやるよ」

 

ここに、傲慢担当と3人の滅竜魔導士が戦うこととなったのであった。そしてほぼ同時刻、別部屋にて━━━

 

「……なんだ、子供…?」

 

「………ふふふふ」

 

グレイが訪れた部屋では、薄着の…と言うのもはばかれる程の…まるで水着姿や下着姿と言っても過言ではないほどの肌面積の少女が、そこに立っていた。

 

「おにーさん、『愛』って……なんだと思いますぅ?あぁ、親愛友愛家族愛…なァんてのは今は関係なくてぇ…恋愛感情的な話で」

 

「……人を好きになるって話か?そりゃあ、一緒にいてぇとか…ドキドキするとか…そんな話じゃねぇか?」

 

「ではでは……性欲と恋愛感情、これは一緒だと思いますぅ?」

 

「は!!!?」

 

子供の口から放たれるには、少々過激な言葉。突然の言葉に、グレイはつい驚いてしまっていた。だが同時に、わかったこともある。目の前の少女が被害者や迷い人の立場ではない……敵である可能性である。

 

「いや……『そういうこと』をしたくねぇって奴らもいんじゃねぇの…そういうのが愛ってもんで……逆にそれしかしたくねぇって奴らは…性欲とか…んな感じじゃねぇの」

 

だがその可能性を考慮しているにも関わらず、何故か談笑してしまっていた。グレイは、その違和感に気づけない。おかしなことだと、認識できなかった。

 

「ではでは、別の質問…身分を越えた愛、年の差がある愛……片やフィクション作品ではよくある話ですけどぉ……片や禁忌と言われるほどに非難されることとして扱われる……」

 

「……それがどうしたよ」

 

「…どちらも、愛の可能性と性欲の可能性がある。しかし先程言った通りフィクション作品としては鉄板な方と、愛だけでも非難される……果たして、愛と性欲とは…どう違うんでしょうねぇ」

 

頭の中で、グレイは時間稼ぎをされていると理解はしていた。だがこのくだらない話に何故だか付き合ってしまう。意識が操られているとかではなく、頭では理解しているのに続けてしまうのも理性で行ってしまうのだ。

 

「私はァ…結局人の…思考の差だと思うんですよォ」

 

「……で?」

 

「プラトニックに付き合っている大人の男と子供の女…けれど世間はそれを性欲だと非難する、何故か?自分が同じ立場に立った場合『その可能性』を考慮するから…

王女を性的に蹂躙したいがために求婚する王子…けれど世間はそれを愛だと囁く。それは何故か?王族にそんな下列な感情は無いと信じたいから…」

 

「結局、何が言いてぇ」

 

「貴方が抱くのは愛か性欲か……それを今から、私と確認しましょうね……色欲担当エストラス・ルクスシア…性に愛に訴えてあげますよ………そこにいる2人も合わせて、ね」

 

そう言って彼女が視線を向けた先にいたのは、エルザと黒滅竜騎弾の1人であるハクの二人であった。エルザは相手を睨みつけているが、信じられないと言った表情も混ざっていた。何故なら自分が戦っていた同姓同名の相手は、自分と同年代の年齢だと思えるほどに成熟していたからだ。

 

「…どうなっている」

 

「私の姿は、色んな愛に様々な性に訴える…戦闘能力はないですがァ……これが本当の姿…これもまた一つの愛と性に訴えられますけどねぇ…ま、今はそんなことはいいんですよ…この部屋だけに絞れば、出力は元の通り…見せてあげますよ…貴方たちを最初に閉じ込めた村の結界…あれの真の力を━━━」

 

そう言って少女が、部屋が霧散していく。そうしてほんの少しだけ経って現れた光景に、一同は飲み込まれていく。そしてさらに同タイミングに…同じように各部屋にいるそれぞれの幹部達を相手に、仲間達が相対していく。

しかしたった一人…マルクだけが誰とも再開せずに、長い時間を歩いた先に出た部屋にて、目の前の敵を見やる。

 

「…誘い込んだか」

 

「あぁ、その通りだ…この城は呪力と魔力で作られた粘土のような物でな…あぁ、だからと言って貴様が吸収できるものではないぞ?」

 

「だから変なとこに階段とか、扉とかあったわけだ……通路に至っては壁や天井歩かされたしな…」

 

「そういう事だ…そして、ある程度はこちらが操作できる」

 

「…そのでけぇラクリマでか」

 

マルクが少し視線をずらすと、部屋には綺麗な直方体で切り抜かれた大きなラクリマがあった。マルクが10人いてようやく越す程の大きさである。

 

「あぁ、そうだ……そしてその機能だけではない」

 

「あ?」

 

「このラクリマは…言わばこの建造物の心臓部分、他の部屋に繋がれているラクリマから吸収した魔力や呪力を届ける役目を持つ」

 

「……お前に、ってことか」

 

「その通りだ」

 

「そうか……なら、さっさと潰せばいいだけだな」

 

「やれるのか?少し対峙しただけで勝てなかった子供が」

 

「そん時の俺から成長してねぇわけないだろうが……1分前の俺よりも、1秒前の俺よりも強くなってるんだよ」

 

「そうか……くくく、それならこちらも同じだ」

 

「……あ?」

 

何がおかしいのか、少し笑いを零すシンにマルクは苛立ちを募らせる。さっさと終わらせてマホーグを取り返す。その為にここまで来た。その考えが焦りを無意識に煽っていたからである。

 

「さっきも言ったが…各部屋のラクリマが、この部屋に…正確には私に魔力と呪力を届ける」

 

「……で?」

 

「単にラクリマが空気中の魔力の残滓や呪力の残滓を吸収する訳では無いのさ……知っているだろう?『生体リンク魔法』を」

 

「…!」

 

マルクの頭の中で、ある推測が立つ。生体リンク魔法とは、文字通り生体…主に人間と魔法を何かで関連づけて、魔法をまるでいつ爆発するかも分からない不発弾として扱う魔法様式である。

マルクはあまり詳しくは知らないが、かつてラクサスが行ったバトル・オブ・フェアリーテイル……その際に使われてもいるのだ。

そしてその魔法が使われているということは、人の意識もしくは生命の有る無しで何かが起こってしまうという事である。

 

「まぁ厳密には様式を採用していると言うだけだが…各部屋に入った者は全て、勝手にラクリマとリンクさせられている。万が一やられでもすれば、間違いがない限りやられたものの魔力や呪力が私に宿る……魔法も、呪法もセットでな」

 

「……皆が敵を倒す前に、やれってことか…!」

 

「その通りだ……だが、それが簡単に出来るとは、思わない事だ…!かなり長い間歩いただろう?さて、何人かはやられているかもしれないなぁ…!」

 

「それなら、その上でてめぇを倒してやる!!」

 

そうして…皆とは遅れているタイミングで、マルクとシンとのバトルが始まるのであった。

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