「がはっ……!」
「ぐぁっ……!」
「フハハハハハ!ドロマ・アニム黒天は魔法の出力を数倍にも引き上げる特殊装甲!貴様らに勝ち目は無いぞォ!!」
ドロマ・アニム黒天の攻撃により吹き飛ばされる4人の
ナツには物理的な攻撃と魔導砲による炎を食べさせないための攻撃を。逆にガジルには装甲を食わせないために魔導砲や火器え類による攻撃。マルクには物理的な攻撃と火器類、つまり『魔力を回復させないための戦法』を取られていたのだ。
「みんな…魔力がねぇって苦しんでるのに……王様ってのは随分大量に持ってるんだな?」
「王が民から国税を取るのは当然であろう。
ドロマ・アニムは、常に世界中の魔力を吸収し続ける究極の魔導兵器!故に禁式!起動させたからには勝つ義務がある!!世界の為に!!」
「何が世界よ。」
「勝手に魔力を奪っておいて、よくそんなことが言えたもんだ。」
「勝手な理屈を並べるだけの、馬鹿な王様そのものだな……侵略者みたいだ。」
「俺達は生きるためにギルドに入ってるからな。世界のことなんか知ったことじゃねぇけど……この世界で生きる者のために、お前を倒すんだ。」
ナツの言葉に、王は声を荒らげる。ドロマ・アニムという絶対的な勝ちを確信しているものがあるからだろうか、それともアースランドから来た滅竜魔導士達がエドラスを語ることに不満を抱いたのか。
「この世界で生きる者のために……だと?笑わせてくれるな滅竜魔導士!この世界で生きている民達は、皆魔力を求めている!!永遠の魔力だ!それを阻止しようとする貴様らは……この世界における敵に他ならない!!」
「……どれもこれも、侵略者みたいな台詞しか吐かないんだな。王様ってのは、確かにみんなの気持ち考えなきゃいけないんだろうけど……自分の国だけ助かればいい、って言うのはあんたの理論で言えば……あんたこそアースランド全体の敵だよ。善の王じゃない、あんたは悪の王だ。」
「笑わせてくれる!生きるためには魔力が必要だ!その魔力が無くなろうというのだぞ!!永遠の魔力を体内に宿している貴様らには……一生分からんだろうなぁ!!」
その言葉により、ドロマ・アニム黒天はとんでもない速度を出して攻撃を開始する。ドロマ・アニムの時よりも、格段に上がったスピード、攻撃力。それを防ごうとしても、滅竜魔導士達の対応よりも早くドロマ・アニム黒天は行動していた。
「ぐぁぁぁぁあ!!」
「ふははははは!!地に堕ちよドラゴン!!絶対的な魔導兵器!!ドロマ・アニムがある限り!!我が軍は不滅なり!!ハァ!!」
さらに追撃をかけるように、滅竜魔導士達に魔導砲を放つドロマ・アニム。もはや爆炎が出ていてもそれを食べる余裕がナツには無かった。
「もっと魔力を集めよ!!空よ!大地よ!!ドロマ・アニムに魔力を集めよ!!」
「くっ!」
「サラマンダー!ブレスだ!!ガキ共!!お前らも手ぇ貸せ!!」
「よ、四人同時に!?」
「何が起こるか分からねぇから控えておきたかったが……やるしかねぇ!!」
ガジルの提案により、即座に全員ブレスの体勢に入る。4人の滅竜魔導士による一斉のブレス。ドロマ・アニム黒天を破るにはそれほどの力が必要ということである。
「火竜の━━━」
「鉄竜の━━━」
「天竜の━━━」
「魔龍の━━━」
「「「「━━━咆哮!!」」」」
4人のそれぞれのブレスは、重なり合いそして威力もとんでもないものとなりドロマ・アニム黒天に向かって飛んでいく。
それは地面をえぐり、巨大なクレーターが出来上がるほどの威力となっていた。
「……やったか。」
「ふははははは!!」
「上だ!!」
「あんなに跳躍力があったのか……!」
「四人同時の咆哮が、当たらない……」
空中に跳び上がったドロマ・アニム。魔力を尽くした攻撃が当たらなかったため、心が折れかかってしまった。
「もう一度だ!!」
「させんよ!!竜騎拡散砲!!フハハハハハハ!!」
王は、ドロマ・アニムの口にある砲口から出される魔導砲を拡散させる。それはナツ達のいる場所一帯を焼き払うには充分な範囲と威力を持っていた。
「ぐぁぁぁぁあ!!」
「きゃあああ!!」
「ウェンディ……!」
高く跳んでいたドロマ・アニムは、重々しい音を立てながら地面に着陸する。
ナツ、ウェンディ、ガジル、マルクの4人は満身創痍で地面に倒れていた。そして、傷だらけの彼らには既に魔力もほとんど残っていなかった。
「尽きたようだな。いくら無限の魔導士と言えど一度尽きた魔力は回復せんだろう……大人しく我が世界の魔力となれ。
態度次第ではそれなりの待遇を考えてやっても良いぞ?」
滅竜魔導士の攻撃でも沈まないドロマ・アニム。その脅威的なまでの固さと、攻撃力の前に諦めかけるのも致し方なし。
しかし、それでもまだ諦めない者もいた。
「諦めんな……!まだ、終わってねぇ……!かかってこいやコノヤロウ……!!オレはここに立っているぞ!!」
そう言いながらナツは立ち上がる。その姿、言葉に支えられていく。
「ええい、どこまで強情な小僧じゃ!!」
「んがっ!!」
ドロマ・アニムに踏みつけられるナツ。しかし、そこで耐える。諦めない心のように、ナツもまた倒れるようなことはしなかった。
「ナツさん……」
「バカヤロウ……魔力がねぇんじゃどうしようもねぇ……!」
「捻り出す!!明日の分もひねり出すんだ!!おらァ!!」
そう言って、ナツはドロマ・アニムを投げ飛ばす。投げ飛ばされたドロマ・アニムは、地面に叩きつけられるがすぐさま起き上がる。
「滅竜魔導士舐めんじゃねーぞ!!アァ!?」
「身分をわきまえよクソ共がァ!!ワシを誰だと思っておるかーーーー!!」
「ぐああああ!」
ナツは、ドロマ・アニムに吹き飛ばされる。だが、その瞬間にドロマ・アニムの懐に入り込むものが一人。
「ようやく見つけた……ここが中心点だろ!!!」
マルクだった。マルクは、ドロマ・アニムの懐に潜り込んで自身の足を魔力の限りを込めて叩きつける。そして、動かせば痛む腕を無理矢理動かして、叩きつけた場所に拳をめり込まし、突っ込む。
「なっ!?そ、そこは……!」
「魔力を吸い取ってんだったら!!その魔力循環させてる場所あるはずだろう!?いくら吸い取ると言っても、
更にありったけの魔力を、相手の魔力を食らう自身の魔力を送り込むマルク。吸収する速度よりも、吸収される速度の方が勝ったのか、ドロマ・アニム黒天はその黒色を失い、元のドロマ・アニムへと戻っていく。
「ど、ドロマ・アニムが!!っ!?」
そして、その隙を突いてガジルが鉄竜棍と化した自身の腕をドロマ・アニムへとめり込ませる。そして、杭のように抜けないようにする。
「足を……!!」
「ロックした!!これでもう空中に逃げられねぇ!!」
「魔力も吸ってる!!もう黒色になるのは無理だと思いな!!」
「行けェ!!サラマンダー!!」
「行ってください!!ナツさん!!」
「お前しかいねぇ!!お前がやれ!!」
吹っ飛ばされ、空中に投げ出されていたナツ。ガジルのその声で、自身に喝を入れる。
そして、ウェンディに向かって叫ぶ。
「ウェンディー!!俺に向かって咆哮だ!!立ち上がれ!!」
「……はい!!」
ナツの言葉で、ウェンディも立ち上がる。そして、ブレスの準備を行う。
「小癪な!!離れんか……!!」
「「離すかよクズ野郎ォォォ!!」」
マルクとガジルは、ドロマ・アニムによる妨害を受け始めるが、むしろドロマ・アニムに対する拘束と吸収を強める。行動を制限され、行動のエネルギー足る魔力を吸われてほとんど身動きが取れない状況になっていた。
「天竜の……咆哮!!」
ナツは、ウェンディのブレスを受けてウェンディのブレスの性質『回転』を利用することにより貫通力を上げる。更に、自身の炎も付け足すことでさらに攻撃力を上げる。
「なっ……!!」
「うわあああああああ!!!」
「火竜の━━━!!」
「うおおおおおおお!!」
「ああああああああああぁぁぁ!!!」
全員が死力を尽くす。ナツの攻撃はドロマ・アニムの体を突き破る。その光景に、エドラス王は4体のドラゴンの姿を見た。ドロマ・アニムという機械仕掛けのドラゴンもどきが、ドラゴンに敗北したのだ。
そして、ナツはエドラス王をドロマ・アニムを貫通する一瞬で引っ張り出す。
「ふぎぃ!!」
しかし、ナツもそのままエドラス王を無傷で下ろすほどの余裕がなかったのか、それともわざとなのかは分からないが、エドラス王を投げ出させる。
「ひ、ひいぃぃ……!!た、助けてくれ……!!」
王の目の前には、四体のドラゴンがいた。恐怖に取り憑かれてしまった王にとっては、ナツ達はそういうふうに見えるのだ。
絶対的な力の差、ドラゴンという生物の恐怖を身にしみて理解した王は、そのまま恐怖により、気絶してしまう。
「かーっはっはっはーーーーっ!!王様やっつけたぞー!!こーゆーのなんてゆーんだっけ?チェックメイトか!!」
「それは王様をやっつける前の宣言ですよ。」
「ギヒッ……バカが。」
「あぁでも、確かに……終わりなんです……よね……?」
四人が安堵に包まれる中、それに水を差すかのように地面が揺れ始める。まだ何も終わっていない、と言わんばかりに。
「………地震?」
「ま、まさか敵の増援!?冗談じゃねぇぞ……流石にま、魔力が空っぽだぜ……」
「ち、違います…アレ……」
ウェンディが向いている方向に、三人も視線を向ける。その地震の元凶が、目の前に
「浮いてる島が……落ちてきた……」
「な、何で……お、俺達周りの島に影響与えるくらい暴れましたっけ……あぁいや、暴れてたかも……」
「………いや、俺達というより原因があるとしたらあのデカ物だろ。『あれ』は流石に関係があるかどうか疑わしいがな。」
一人で反省会を開きかねないマルクに、ガジルがツッコミを入れる。原因があるとすれば、ドロマ・アニムにあると言ったガジルの言葉でマルクはある事を思い出していた。
「……あっ……!こ、この世界の浮遊島は……魔力で浮いてるって、城の本で読みました!!」
「あぁ……じゃあ、やっぱり
「い、いえ……魔力が尽きたら落ちてくる、という話なら確かにその通りなんですけど……既に止まってるこいつが今も魔力を吸ってないと今このタイミングで落ちてこないと思います……」
「……あぁ?じゃあ何で浮いてる島が今こうして落ちてきてんだよ。」
ガジルの最もな疑問に、マルクは答えを出すことが出来なかった。ドロマ・アニムが原因ではない、というのはあくまでもマルクの推測なので、明確な答えが用意出来なかった。
「……ん、あれ?」
「どうした?ウェンディ。」
何かに気づいたウェンディが、空を見上げる。ナツ達もそれに釣られて上を見上げるが、上には巨大なアニマがあるだけだった。
「……って、アニマ!?」
「おいおい……またどっかからラクリマが送られてくるんじゃねぇだろうな……」
「……あ、あれ?」
ウェンディと共に、マルクもなにかに気づいた声を上げる。ナツとガジルはアニマが開いているということ以外、何もわからないでいた。
「んだよ、今度は何に気づいた?」
「……
「逆ゥ?よくわかんねぇから一から説明しやがれ。」
ガジルの言葉で、マルクは説明を始める。明らかに動揺している顔で。
「
「……あ?どういう事だ?」
「サラマンダーちょっと黙ってろ……おいおい、なんだ?ここにいる王様以外の誰かが、アニマを開いて……いや、逆展開か?ともかく、それをしてこの世界から魔力をなくそうとしているってことか?」
「はい……!私も空気の流れで分かりました!」
「この世界の魔力は土地やらラクリマなんかにほとんど詰まってる……それが動いてるから、魔力を伴った空気が移動して……ウェンディにも分かったんでしょう……多分。」
マルクの説明でナツはよく分からない、という顔になっていたが、ガジルは深刻な顔になっていた。
「おい!つまりどういう事だよ!!」
「……この世界から、魔力が消えるってことですよ。」
マルクの要約で、ナツはようやく理解して、同時に驚愕の表情になっていた。だが、その驚く時間も残されてなかった。
「っ!!誰かきます!!」
ウェンディの声ですぐに警戒態勢になる3人。しかし、飛んできたのは一匹の猫……いや、一人のエクシードであった。
「ぼ、ぼきゅだよ!」
「な、ナディさん?」
顔が長く、何故かいつも片腕を振り続けているエクシード、ナディ。彼は大急ぎで飛んできたかと思えば、とても真剣な表情でナツ達を見上げる。
「い、今起こってることを……ぼきゅが説明するよ。それで……
このナディの説明で、ナツ達は一つの決心と彼の協力を受け入れるのだった。
この世界を、去る前に行うラストの大仕事であった。