FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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強きを欲する

少女は何年も試練に臨んだ。それが自分の望みだから。それによって力を手に入れ、望むものを可能な限り手にしてきていた。だがそれで周りの関係性が失われることは望んでいなかった。故に周りとの関係性も良好であった。現在の幹部達との関係性も、険悪という訳でもなくチームプレーができる程度にはその関係性は良好である。

しかし、彼女自身が空っぽな事は誰もがわかっていた。愛想良く、都合よく、気持ちよくしてくれるだけの存在。愛を望まれれば相手に与え、勇気を望まれればいの一番に身を乗り出し、知恵を望まれればその知恵を貸し出し、信仰は既に望まれているのでし続けており、節制を望まれれば水さえも口にせず、正義を望まれれば間に入り第三者として周りを諌める。それが彼女、全てを欲する空っぽな彼女……アヴァルティア・コピディタスという女である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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魔呪法『強生希(ゴウセイキ)』という技。それは空間内の全ての欲望を叶えすぎてしまう技である。相手に敵意を向けるだけで相手は死に、相手の死を望めばそれでも死ぬ。しかし本人達が無意識にでも生きることを望めば、その後の蘇生が可能である。無論、他の願いも出すことはできるだろう。しかしそれを許すほどアヴァルティアは甘くは無い。

この空間内で、彼女に挑んでいるキリンとミサキが勝つ方法はただ1つ……自分を正面から打倒するか、自らの生を諦めるか……そうアヴァルティアは考えていた。しかし打倒するというのは、彼女自身の願いによって…蘇生と即死が即座にやってくるこの空間内で、無理な話だと決めつけていた。

それが彼女の中の初めての慢心だと気づくことは……ない。

 

「かはっ…!?い、今俺は…!?いや、俺達全員…!?」

 

「確実に、死んでた…!!」

 

原理は不明、しかし原因究明はあとに回すべきだと2人は即座に判断した。 結果として死んだのだから、それの対策を考えるべきなのだ。原因なんて今は『この技で死んだ』以上はいらないのだ。

 

「望みを叶える希望の魔呪法…それに臨み勝つ事を貴方達は成し遂げねばならない……じゃないと、心が死にますよォ?こんな風━━━」

 

今度は同時に3人同時に倒れる。そして数秒後には蘇生が入り全員が立ち上がる。2度目の死、キリンとミサキは必死に対策を考えるために頭を回そうとするが…生死を文字通り行き来しているせいか頭が働かなくなってきていたのだ。そうしている間に…また死ぬ。

この間未だ30秒すら経過していないこの技…アヴァルティアが望んだことはただ1つ。『私が生きるために全員死んで欲しい』という願いだ。屁理屈のように聞こえるが、彼女には生死を行き来してもその精神も魂も摩耗することはない。故に自らが生きるために自死を選ぶ事に躊躇がないのである。九尾の狐というわかりやすい異形へと化けた彼女は、その精神性も異常であった。

 

「━━━━!!!」

 

「……おや、逃げましたか…しかし次に戻ってきた時のために…()()()()()()()()()()━━━━」

 

しかし2度目の蘇生時、ミサキは対策を後回しにした。正確にはキリンを巻き込んで、自らの魔法を使い異空間へと逃げたのである。下手をすれば死にたて生き返り立てほやほやのキリンに深刻なダメージが訪れてしまうが…その辺の調整は、当たり前にしていた。今まではする必要性がなかっただけなのである。そうして離れた2人のことを考えながら…再びアヴァルティアはその心臓を止めるのであった。

 

「ッ………はぁっ!!はぁっ…!はー………ふう……」

 

「…ックソ、最低な気分だぜ」

 

「…こっちもよ……けど、今回は来てないわね」

 

「この空間内までは…対象外ってことか」

 

「けど戻れば恐らく……」

 

「…だな、どうする?」

 

咄嗟に逃げ込んだものの、これは単なる逃げの一手。根本的な解決になってないのだ。力を貸すとなった以上、相手を倒さず逃げるというのは却下である。しかし倒し方が分からないどころか、いつまでかかるかも分からないのだ。

 

「……何回くらいならいける?」

 

「………種がわかってるとはいえ、何回も続けられたらキツイわね。最低限10は持つと思うわ」

 

「同じく、だ。数回程度なら我慢ができるが…それ以降は否が応でも『そっち()』を意識せざるを得なくなる…」

 

「…そう言えば、何か言ってたわね彼女」

 

アヴァルティアの言葉は、キリンの頭にも残っていた。いざこうやって腰を落ち着けてみると、その言葉の意味が何となく理解できた。

 

「…望みを叶える、か。使ってた魔法はダメージやら死への回避…みたいな魔法だったが…その逆、か。法則は一緒なのに性質が逆か」

 

「けどそれも制御が効いてないんじゃないかしら…いえ、そもそもする気もなさそうね…」

 

「あいつの使った技は魔法とも呪法とも違う…万人に等しく与えられる…あー……」

 

「法則、かしらね…」

 

一定の空間内にルールを敷き、中にいる者にそのルールを課す。そういう技である。その法則はアヴァルティア本人にも変えられない。2人はそう考えていた。

 

「だが、あいつが死んでるのにも関わらず解除されてねぇ…なんでだ?」

 

「…なにか理由があるのかもね…多分だけれど。ひとまず、彼女のあの技は元々の操る魔法や呪法からは大きく外れた性能にはならないと思うわ」

 

「…ッてぇと……」

 

祈りと欲望、その2つから大きく外れることはない。キリンとミサキは頭を回し続ける2度目の死の際、あそこでは全員が同時に死んだ。1度目の際、死のタイミングがズレていた。その差は何か?

 

「………敵意?」

 

「…ん?」

 

「1度目に私達が死んだのは…多分敵意か殺意があったから、じゃないかしら」

 

「敵意とか殺意を叶えた結果…その意識の先にあるやつを殺した、と?」

 

「えぇ」

 

「2度目は?」

 

「彼女が『全員死ぬように』と願ったんじゃないかしら…イカれてる、とは思うけれど」

 

キリンも、完全な否定はできなかった。1度目は自分が1番初めに死んだ為に認識できなかったが、詳しく聞いてみれば順番はキリン、そしてアヴァルティア、ミサキのほぼ同順だったらしいのだ。アヴァルティアがキリンに対して殺意や敵意、それに対してミサキが敵意…という順であれば納得がいく。状況証拠による推測でしかないが。

 

「…だがその程度で死ぬくらいに願いを叶えんなら…俺達があの技の制御権を奪うって願えばいいだけじゃねぇか?」

 

「…そうなのよね」

 

キリンの言葉にミサキは頷く……が、2人は同時に『そんな安易な技か?』という疑問があった。そうそう簡単に見破られる技でもないとは思えるが、しかし制御権の確保程度で何とかなるとは思えなかったのだ。

 

「………多分、即取り返されるな」

 

「技の解除も同様かしらね?」

 

「多分な……つっても再度発動させたらいいだけでもあるからな…」

 

堂々巡りである。うんうんと考えている中で、ふとミサキは感じた。死んでも自分達が復活したのは、果たして相手の要望通りなのか?と。先程出した疑問だったが……改めてふと疑問に感じたのだ。

 

「……殺したのに復活させた、じゃなくて……殺しても復活する条件なのかしら」

 

「あ?」

 

「単に殺すだけなら…そのまま終わらせておけばよかった。彼女が相手をいたぶる趣味を持っているなら話は変わってくるけど……もし、そうじゃないなら…?」

 

『願いを叶える空間』を発生させる技。それは具体的な願いを出さずとも、意に沿うかそれ以上の結果をもたらす技。その技によって殺したにも関わらず、自分達は復活し生きている。

自分達は死ぬ気はなかった、つまるところ生きたいという無意識の願いがどこかにあったのだ。故に今も自らを殺そうとする凶行には走らない。

 

「…死ぬ前の生きたいって思いを、叶えてるってことか?」

 

「えぇ……」

 

「…つまり、殺しても基本的には死なねぇ空間と」

 

死にはするのだが、実質同じ事だ。千日手である。だがキリンはその言葉がヒントになった。死んでも、無意識の生の渇望で生き返るのであれば……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。不死同士になって死ぬわけではない。死んでも願いで生き返るだけだ。

相手が『命が意識が蘇りますように』とかなら、それも通じないだろうが……

 

「━━━何とかなりそうだな」

 

「…ほんと?」

 

「外に出たら…そうだな、速攻だ。その為にも……今は俺に全賭けしな、ミサキ」

 

「ふふ……いいわよ、仲間だもの」

 

そうしてミサキとキリンは同時に笑みを浮かべる。その後キリンはミサキに作戦を話し…ミサキはその作戦に、自分の全てを賭けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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━━━1秒経過。アヴァルティアはまだ死んだままである。そのまま2秒経過。ピクリ、と死に絶えた体に命が宿る。3秒経過、アヴァルティアは起き上がり空間全体を見渡す。4秒、5秒…そしてまたアヴァルティアは命を落とす。同じくらいの時間が経過し、また蘇る。

 

「まだ出てきませんか━━━」

 

「何をしているのやら━━━」

 

「楽しみですよ━━━」

 

「何をしてくるのか━━━」

 

この間にも、文字通りに生死の境を彷徨っていた。どちらかと言えば往復に近いが……楽しみにしつつも、アヴァルティアな疑問に感じていた。ミサキの魔法は、別空間に相手を連れ込みダメージを与える魔法。それは既にミサキの魔法をコピーしたが故に理解していることである。

1秒のダメージが、1時間受け続けたという事になるのだ。つまり1分が経過する頃には60時間…2日以上の時間ダメージを受け続けたことになる。今のアヴァルティアは度々死んで意識が飛んでいるために正確な時間は測れてないが……

 

「━━━意識がある間……数えてる時間は………約5秒…………既に2分近く……………経過しています………………」

 

2分、120秒、120時間……つまり約5日。向こうで何をしようとも変わらず、また逃げれるとは思っていないはずであり、そして別空間に隠れたところで意味がないのも理解してるはず。では、一体何をしているのか?そう考えていた矢先に……事態は動いた。

 

「━━━よう…!」

 

何度目かの蘇生時、アヴァルティアは感動した。彼女が目覚めると同時に、キリンとミサキが現れたのだ。ミサキは特に変化はないが…キリンはその体に蒼い電流を纏っていた。つまり……

 

「食べたのですね…!!相方の魔法を…!」

 

ナツの雷炎竜、ガジルの鉄影竜の様な二重属性の魔法。ミサキの魔力を喰らい自らの力としたのだ。つまり、魔力を喰らい続けたのだ。もしミサキの魔法の効果がダメージ以外にも反映されるならば……約5日間、ミサキの魔力を喰らい続けた事になる。こればかりは推測でしかないが……どちらにせよ、未知の力なのは間違いがないのだ。

 

「しかし意味がありません!!!私の魔法は生きており、コピーも容易━━━」

 

「オラァ!!!!!」

 

「ぶべっ!!!?」

 

九尾の狐となったアヴァルティアの顔に、拳がめり込む。その事実にアヴァルティアは困惑しきっていた。恐らく雷炎竜の様な、そのものはコピーできない状態なのだというのは理解していた。故に劣化再現しつつ、願いによってその命をまた消そうとした。しかし()()()()()()()()()()

 

「ハッハーッ!!!!願いは叶えられたかァ!!!?」

 

キリンの提示した作戦……その作戦にミサキは全てを賭けた。そして今その賭けに勝ったのを、両者は認識しながら……この戦いの終幕を感じているのであった。

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