FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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知えの恵

彼は所謂『2番目』である。元からそうであった怠惰と、そうなるように生まれてきた憤怒と違い一応は元人間である。怠惰から研究され、生み出された憤怒も調査され生まれた存在である。

彼は根っからの妬み者であった。自分よりも強い存在を妬み、自分よりも賢いものを妬み、自分よりも優しい者を妬み、自分よりも美しい存在を妬み、自分よりも上の存在を妬んだ。

故に誰よりも強くあろうとし、誰よりも賢くあろうとし、誰よりも美しくあろうとし、誰よりも上であろうとした。しかしそれは努力の範疇で何とかなるものではなかった。越えられるべき壁は、妬む対象ではないのだ。なぜなら越えられるからである。越えられない壁こそが、彼が妬むべき本来の対象なのである。彼の過去にはなんら問題はなかった。一般家庭の出でありながら彼は闇ギルドへと移っていた。それは妬み者であるが故の自業自得であった。

故に彼は怠惰のような生まれを持たず、色欲の様な過去を得られず、憤怒のような性格を持たず、暴食のような愛を持てず、強欲のような優しさを持てず……傲慢のような実力を持てず、マスターの様な立場を得られなかった。彼にとっては悲劇すら妬む対象であり、彼が持たない物を持っている者は全て…彼が妬み忌み嫌う存在なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……チッ、またテメーかよデカ女」

 

「あん時の下品な男!!」

 

「なんじゃあ?知り合いか?」

 

「げっ……女が増えた……」

 

「…辺鄙、この組み合わせは一体……」

 

仲間達が数々の勝利を収めている中でルーシィ、キリア、スザクの3人はとある男と巡り合わせていた。致命的な美徳屋(デッドリーバーチュー)嫉妬担当、テリブレイショー・インヴィディアである。

 

「ちっ…どいつもこいつも見下しやがって……ふざけてんじゃねぇぞ!!」

 

「そりゃあんたが座り込んでたら見下ろす形になるでしょうよ」

 

「驚愕…何故今怒られた…?」

 

「知らん」

 

座り込み、ルーシィ達を見上げるテリブレイショーであったが…その顔は酷く歪んでいた。嫉妬による溜め込まれた静かな怒りが、彼の眉間に皺を寄せて荒れ狂わせかけていたのだ。

 

「つーかよぉ……どいつもこいつも甘ぇんだよ」

 

「……?」

 

「なんじゃあこいつ……一人でペラペラと」

 

「敵なら瞬殺できるようにしねぇとダメだろうがよぉ……それをどいつもこいつも様子見でやるから負けんだよ…戦いって言うのは1発で決めてなんぼだろうが」

 

「困惑…何を言っている?」

 

「つまり、だ…切り札は初手で切れって事だ…………魔呪法『シッ━━━━!!」

 

一閃。刀の煌めきが見えたかと思えば、テリブレイショーの体は既にめったやたらに切り裂かれており、彼の背後には…スザクが刀を既に収めているところであった。

 

「困惑…隙だらけだ」

 

「速っ…!?」

 

「流石スザクじゃ!!」

 

今となっては分からないが、少し前ではエルザですらその剣閃を完全に見切ることはできていなかった。当然ながら、見慣れていることはないテリブレイショーにスザクの剣閃を見切るのは不可能に近いだろう。

 

「……え…も、もう終わり?」

 

「呆気ないものだ」

 

「スザク一人でいい………ん…?」

 

「ど、どうしたの?」

 

「むっ……」

 

キリアとスザク。2人の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が同時に違和感を覚えた。呆気なさすぎるのもそうだが、何かそれ以上に大きなものを見落としているような感覚があったのだ。しかし、それが何なのか2人には皆目見当がつかない。

 

「違和感、妙な気持ち悪さがある…」

 

「ワシもじゃ…何かを感じ取ったのは感じ取ったが……何を感じ取ったのか、まで…は……」

 

ふと、キリアが視線を上げる。そして上げたと同時にその言葉尻は反比例するかのように音量が下がっていく。その目は大きく見開かれており、何か驚愕するようなものがあったのだろう。その様子にスザクもルーシィも、首を傾げるしか無かったのである。

 

「ふ、二人とも!頭からなんか生えておるぞ!い、いや待て…ワシもかぁ!?」

 

「へ?」

 

「疑問…何を言って……」

 

キリアのセリフに、疑問を抱きながら2人は頭頂部を触る。そうしてようやく気づいた。頭に、頭髪以外の『何か』があると。そして同時に互いが互いの頭を認識し、ようやく『何か』の存在に気づく。

 

「な、な、何これぇ!?なんなのよぉ!!」

 

「な、なんじゃこれは!!」

 

「驚愕!?いつの間にこのようなものが!?まさか、呪い…!?」

 

『━━━違ぇよ、バーカ。竜なんて食うから馬鹿になるし、そんな無駄にでけぇもん胸につけてっから思考力がそっちに行っちまうんだ』

 

そして上から声が聞こえてくる。大音量ではあるが、張り上げるような喋り方ではない。どちらかと言えば、相手が巨大すぎてこちらには大音量に聞こえると言った具合であった。

そして……3人は自分のいる地点から顔を見上げる。そこに居たのはあまりにも巨大な…蛇であった。

 

「なんじゃあああ!?」

 

「ドラゴン…!?」

 

「ち、違う…蛇!!蛇よこれぇ!!」

 

『嫉妬担当テリブレイショー・インヴィディア!既に魔呪法を発動させて貴様らを迎え入れたんだよォ!!』

 

「なっ…!?」

 

「なんでこんな蛇に私達気づかなかったのよぉ!!」

 

『当たり前だ!!そういう技だからなぁこれはァ!!馬鹿を見るのは楽しいもんだなぁおい!!』

 

大口を開けて笑うテリブレイショー。彼が思った通りに、相手が動くのを見て彼は笑う。彼が思った通りの行動をしなければ、彼は不機嫌になり相手に嫉妬を向ける。

そんな彼が使う魔呪法…名を『嫉焼知(シッショウチ)』という。結界内において、彼以外の全てから導火線のような紐が生え、それが燃えれば燃える程に知性や感覚が鈍くなっていくという技なのだ。雑に言えば、使用者を除いた結界内の生物全てが馬鹿になっていくのである。3人が頭から生える紐に気づかなかったのも、既に導火線が燃えており、『気づいていなかった』と言うだけのことなのである。天井に蛇となったテリブレイショーがいたのも、人間体の彼の姿が偽物だったことに気づけなかったのも……それのせいなのである。しかしそのことを彼は説明しない。何故ならこの技はあくまで『気づきづらくなっていく』が主な効果なのだ。無論、この導火線が燃え尽きるのにかかる時間は平均的には10〜20分ほどだが、頭を回されるとその分効果が落ちる。強力ではあるが、弱点もあるのだ。

 

「驚愕…!だが、目の前に相手がいるのなら…!」

 

「切り裂けばいいだけじゃあ!!」

 

「お願いサジタリウス!スコーピオン!ついでに私も!!」

 

スザクとキリアは構えを取り、ルーシィは遠距離で攻撃できる星霊を呼び出しており、同時に星霊衣(スタードレス)を纏っていた。布陣としては申し分ない配置である。ただし━━━

 

「それは…タウロスの星霊衣じゃねぇか…?」

 

「あ、あれ!?」

 

「何しとんじゃあ!!」

 

「珍しい間違えであるからして〜、もしもぉし」

 

ルーシィは着込む星霊衣を間違えていた。本来なら起こりえない事だが、この結界内では『うっかり』が多発しやすくなるのだ。何故なら考えなくなっていくものだから。

 

「…察知。もしや、我らの頭の回転を妨げる技か?」

 

『はぁ〜〜〜〜〜〜!!!!!!?今ので気づいてんじゃねぇぞエセ侍!!!』

 

「………のようだ」

 

「お前アホじゃのぉ!!」

 

「だから最初色々気付けなかったの…!?」

 

そして、スザクの機転により魔呪法の効果を察知した一同。嫉妬により怒り狂った表情を向けるテリブレイショーであったが、すぐに冷静になり一同を再び見下しながら見下ろしていた。

 

『へっ…そんなこと言ってもよぉ……お前たちじゃあ俺には勝てねぇぜぇ?俺よりも頭が悪くて、力も弱いお前たちがよぉ…!』

 

「…何を言っている…?」

 

「自分のことを頭がいいと思っとるアホじゃ」

 

「本当にね…」

 

「であるからしてぇ………ん?」

 

蛇の面でもわかるほどの、にやけヅラ。それに少し引いてしまっている一同だが、彼らは気づいていない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「どうしたの、サジタリウス」

 

「…早く攻撃した方がいいんじゃねぇか?ウィーアー!」

 

「もしもぉし!」

 

ルーシィがキョトンとしてしまっていたが、サジタリウスとスコーピオンは関係なくテリブレイショーに攻撃をしかけていく。砂の竜巻と放たれた正確無慈悲な矢が飛んでいくが……

 

『あめぇんだよ!!』

 

張り付いていた天井から離れ、器用にも体を丸めてその鱗と動きで攻撃を弾くテリブレイショー。ただの見た目だけではなく、その鱗と巨体は正しく生半可な攻撃を通じさせないという確信を与えるに足るものであった。

 

「デカすぎてふっとばせねぇぞ!!」

 

「鱗が硬く刺さらないとは…!」

 

「キリア!我らで斬るぞ!!」

 

「分かっとるわい!!」

 

『はっはー!テメェら如きに斬られるかよ!!』

 

颯爽とキリアとスザクは迫っていき、少し遅れてルーシィもタウロスフォームのまま突撃していた……が、ここでも3人は気づいていない。

蛇の体とは言っても、中身は人間。そして魔呪法は、基本的にはその技そのものに何かしらの耐性が付与されるというものではない。本人達のもつそれぞれの性質によっては、結果として耐性が着くことはあるかもしれないが…少なくとも、テリブレイショーには物理防御の高さ以外の耐性などは存在していない。

そしてキリアには戦闘能力以外でも、認識を切るという技がある。洗脳に近い技だが…エルザですら弱々しくなったりするほどの強力なものであり、これを使えば『テリブレイショーの性格』を斬りエルザと同様に弱々しくしてしまえば、面倒な魔呪法と戦うことはなくなるのだ。しかし今…キリアはそれを使うことを忘れてしまっていた。元より戦いたい性格なのも相まって、誰もその違和感に気づくことはできない。

そして、『気づくことができない』範囲は徐々に増えて大きくなっていく。

 

「オラァ!!」

 

「やああ!」

 

「はぁっ!!」

 

スザクが斬り、ルーシィがタウロスフォームの力を奮っている中で…キリアはただ一人爪で切り裂く…ことをしていなかった。その拳は握り締められ、無駄にも殴り続けていたのだ。しかしその違和感に本人を含め誰も気づくことはできない。

テリブレイショーの魔呪法は範囲内にいる本人以外の全てを『うっかり』させるもの。テリブレイショー以下にさせてテリブレイショーが嫉妬しない空間を作るだけのもの。知識を忘却させるものでは無いとはいえ、このままでは段々と影響が進んでいき…思考すらもしなくなってしまうだろう。

そうなる前に、打開策を思いつければ彼らの勝ち…このまま飲まれてしまえばテリブレイショーの勝ち……この理不尽なバトルを勝ち抜けるかどうかは、彼らの機転に掛かっているのであった。

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