FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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傲り慢心する

敵はありとあらゆる者全て。しかし自分以外の全ては自分以下だと考えてもいる。故に仲間と呼ばれる関係性は彼には存在しておらず、無論友と呼べる関係性も構築されていない。初めからそのつもりはないし、以降もそのつもりは無い。彼は自分と並び立てる人間はこの世に存在していないと思えるほどに、傲慢なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「随分とでけぇ図体になりやがったなぁ?」

 

「全くだ」

 

「ギヒ……的が狙いやすくなったけどな」

 

傲慢担当スペイルヴィとの戦い。魔呪法を発動させた彼は二足歩行の獅子のような姿となったが、ナツ達との戦いにおいてその姿を肥大化かつ更に変化させていた。

下半身は獣のような四足でありながらも、上半身は現在…更に腕が2本追加されている事によりその見た目はモンスターとも言うべき異形へと変貌していたのだ。

 

「これでもう……こちらを掴んで落とすなどということはできんぞ…!」

 

スペイルヴィの魔呪法は本来、範囲内の魔法、呪法、霊術、錬金術の使用不可と除去。外から範囲内に向けて放ったものでさえも消え去ってしまう技なのである。

それを圧縮し身に纏うことで相手の物理攻撃もかなりの軽減率を誇るようになってしまっていた。唯一、落下ダメージなどは多少の衝撃が入るようでダメージを受けていたが……それも今や、難しくなってしまっていた。

 

「物理は受けねぇ…だったかぁ?」

 

「それがどうした…!通じるまで殴りゃ済むだけだろ!!」

 

「真理だ…なッ━━━!!」

 

「どこに行こうと…!」

 

鉄影山棍(てつえいざんこん)!!」

 

ラクサスは赩雷を纏いつつ壁伝いに天井へと上がる。それを目で追ってしまったスペイルヴィだが、その瞬間に影となったガジルからの一撃が炸裂。足元の影から大量の鉄竜棍が生えてくる。

 

「ぬ゙っ…!?」

 

ダメージこそない、しかし大量に生えた鉄竜棍はスペイルヴィの体に一時的な拘束を与えていた。数々の鉄竜棍はスペイルヴィの体を動かすのに、非常に邪魔になってしまっているのだ。

 

「今更拘束具か…!?このようなもの、すぐに破壊して…!」

 

「おせえよ…!ふんっ!!!」

 

「ニッシッシ…魔法も物理も通じねぇなら熱と電気ならどうなんだろうなぁ………うおおおおおおおおおお!!!」

 

鉄竜棍に向けてナツは燃え上がり熱を、ラクサスは赩雷を落とすことで電気を伝えさせる。2種類とも魔法で発生させているものではあるが、しかし何かを間に挟んでの干渉であれば通じるのでは?と3人は話し合いもろくにせずに通じあっていた。

結果として━━━

 

「ぐううううあうう…!?」

 

「電気は通じず、ナツの炎…いや熱が通じてんのか」

 

「ギヒッ……」

 

「ま、電気は俺の魔法そのものだしな…ナツの場合は炎自体は魔法だが…その熱自体は魔力がねぇ、か……」

 

ガジルの生み出した鉄竜棍はあまりの熱で溶けだし始め、その高熱にスペイルヴィの体は悲鳴を上げ始める。ナツの炎から出る温度は、衣服すらも溶けだす程の高温なのでその熱によって溶けだした鉄を浴びる羽目になっているスペイルヴィ。その熱は彼の魔呪法では……防げない。

 

「あっちぃのは防げねぇみてぇだなぁ!!」

 

「こうなりゃただのデカブツだな」

 

「ギヒっ…さっさとボコボコにしてやろう…ぜ!!」

 

その言葉と共に3者は一気に飛び上がる。それぞれがそれぞれの技を構え、少しばかり特殊な戦い方をする。通じないのは物理攻撃そのものだけ、それを超える衝撃を与える事でダメージは少しの期待ができるのだ。

 

「鉄竜棍!!!」

 

「赩雷撃!!」

 

「雷炎竜の鉄拳!!」

 

巨大な棍が、大威力の雷炎の一撃が、雷となり速度がのった一撃が……それぞれスペイルヴィの顔面を穿つ。単純な強さよりも、与える衝撃の強さを載せた一撃。点で穿つよりも、面で穿つ。与えられる一撃にスペイルヴィの頭が……ようやく揺れる。

 

「がァッ…!?この、傲慢者達が…!!」

 

しかし彼の呪法と魔法が、強制的に彼を奮い立たせる。如何なるダメージも彼には通じず、いかなる攻撃方法であっても彼の思う通りに攻撃が出るのである。

 

「グッ……!舐めるなよ…!『獅子粉刃(ししふんじん)』」

 

4本の腕と4本の足から爪を振るい、見えぬ斬撃を飛ばすスペイルヴィ。この技は手足を動かし、その軌跡を斬撃として扱い飛ばす技…なのだが、空気中に舞うホコリや塵…挙句の果てには空気の粒子も剣として扱い四方八方に見えぬ斬撃を飛ばす技なのだ。仮にほかのメンバーの誰かしらがいた場合、一切防ぐ手段を持たぬままにめったやたらに切り裂かれて粉微塵となっていただろう。

 

「もう通じねぇ!!」

 

「俺ァ鉄だぞ!!」

 

「全部ぶっ飛ばせばいいだけだ!!!」

 

ナツの炎により全てが燃やされ、ガジルの鉄の表皮には歯が立たず、ラクサスの雷撃で全てが消し飛ばされる。まさに猛攻、これが竜をも屠れる滅竜魔導士の力なのである。そして━━━

 

「この化け物共が…!」

 

「よー…!()()()()()()()()()()()

 

「ッ!!!?何故だ!!?」

 

ナツが浮かべた笑みとその言葉が、スペイルヴィを焦らせていく。事実、スペイルヴィの体が…正確にはスペイルヴィの纏った魔呪法による異形化が一部溶けていたのだ。文字通り、まるで溶解するかのように。

 

「何回もナツの熱を浴びてんだ……当たり前だろ」

 

「魔法の熱で…魔呪法を溶かすだと…!?それはもう、魔法の領域を超えて━━!!」

 

「関係ねえ…よ!!!紅蓮雷炎竜拳!!!」

 

雷と炎をまとった拳の連撃が、鉄を被ったスペイルヴィの体を叩いていく。魔法自体は、スペイルヴィには通用しない。しかし炎の熱は通用するし何より…熱を与えれば与えるほど、彼の魔呪法は溶けていくのだ。

 

「ぐ、ううぅ…!?」

 

「鉄竜棍!!!」

 

「赩雷竜の鉄拳!」

 

殴る、殴る。ひたすらに殴る。溶解した鉄によって身動きが取りづらくされつつ、更にちょこまかと動き回るナツ達にスペイルヴィは翻弄されていく。翻弄されていくにつれて、そのストレスは凄まじいものへと変貌していく。

 

「邪魔だ雑魚共がァァァァ!!」

 

「うおっ!?」

 

「なんだァ…!?」

 

「ついにブチ切れたか?」

 

全てを吹き飛ばすかのように、大きな咆哮をあげるスペイルヴィ。その叫びに衝撃波が存在しているのか、3人は部屋の壁にまで吹き飛ばされてしまっていた。

幸いにもその咆哮自体にダメージはなかったために、壁には上手く着地することで不要なダメージを負うのを防げてはいたが…しかし、訪れたスペイルヴィの異変に、3人は警戒を高めていく。

 

「ギヒッ…単にもう後がねえって分かったから無茶苦茶やりたいだけだろ…見ろよ、段々体が溶けてやがる」

 

「おー…なんか溶けてる時のジュビアみてぇ」

 

そう言って余裕綽々と言わんばかりに、ガジルは顎でスペイルヴィを指し示す。事実、纏っていた毛皮はまるで泥のようにぼとり、ぼとりと塊となって落ちていく。だがその様子に…ラクサスは違和感を覚える。

 

「……なんか、おかしくねぇか?」

 

「ア?」

 

「何がおかしーってんだよラクサス」

 

「━━━いや、確かにおかしいぞ」

 

「ナツー!!なんかあいつ、おっきくなってる気がするよぉ!!」

 

ラクサスの言葉の真意を訪ねようとしたナツとガジルだったが、その前にリリーとハッピーが彼らに駆け寄っていた。そしてハッピーが放った言葉に、全員が改めてスペイルヴィに視線を向ける。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

 

「…溶けてる、よな?」

 

「あぁ…」

 

「アイツ、あの姿になる前って…肌白かったっけ?」

 

「普通の肌色だったよー!!オイラの白い部分くらい白いとこなんてなかったよー!!」

 

「それに……ハッピーもさっき言ったが…」

 

『肥大化している』というハッピーの言葉。それが真実と言わんばかりに、徐々にだがスペイルヴィの体はさらに巨大化を始めていた。さらに、溶けて落ちたはずの毛皮の下…その下からは同じ色の白い肌が現れて━━━

 

「…オイ、どういうことだヨ…なんで………()()()()()()()()()?」

 

ガジルの言葉を、この事実を、今の現象を……全員が視認していた。元のサイズに縮小するはずが、逆に巨大化する体。毛皮の下からは人間の皮膚は現れず、現れたのはまるで蛇のような鱗。獅子の顔だったそこの下から現れたのは、口と鼻がひとつになって飛び出したような…それこそ、蛇のような…トカゲのような…そんな顔つき。

 

「俺ァ…!俺はァ…!!俺はァあああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「クククッ…!素晴らしい、素晴らしいぞスペイルヴィ…!」

 

部屋で一人、マスターシンはほくそ笑む。スペイルヴィに訪れた異変は彼の想像を絶するものであり、同時にそれは結果として現実に彼の目の前にあった。

 

「今代の一部の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)はならないらしいが……昔の滅竜魔導士は、魔法のデメリットとして竜化することがあったそうだ。だが悪魔化の方は、そうしなければ呪法を使えなかった。長年の研究結果で、悪魔因子を適合さえ出来れば…悪魔化による耐性が付与できた…まぁ、未だ確定結果にはなっていないが……しかし、それではただの少し強い悪魔程度……そこから更に1歩、覚醒しなければならなかった。その覚醒の例が…やっと一つ、生み出せたとはな」

 

感じ取れるスペイルヴィの異変は、シンに取って僥倖だった。その結果を持ってして、彼はまたどこかで被害者を作るために動くだろう。

彼の目は今、子供のように輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「オイオイ…!?」

 

「あいつドラゴンだったのかー!!?」

 

「ちげぇ!!間違いなく人間だったろ!!」

 

「だがなるとしたら話を聞く限り悪魔だろう!?」

 

「なんでドラゴンになってるのさー!!」

 

一同が驚愕するのも無理はない。なぜならそこには…ドラゴンがいたのだ。図体は優に10mは超えているであろうその巨体。白金のような色合いを思わせる輝く白の体、美術品とも思えるほどに美しい鱗、獅子を思わせるタテガミ…そして極めつけは金の瞳。

スペイルヴィは今、正義の魔法と傲慢の呪法で…自らを無我夢中で再構築した。無から有を……何も無い状態から、滅竜因子を生み出したのだ。しかし同時に悪魔因子もその身に宿している…言わば、悪魔であり、竜でもある。

 

「…この体…そうか、ドラゴンか…俺は今ドラゴンとなった…!名付けるならそう……!我が名!魔獅子竜『ディアボライオ』!!!この爪が!この牙が!貴様ら全てを殺し尽くす!!我に逆らうもの全て!皆殺しにする!!!」

 

高らかに咆哮を放つ。だがその言葉に…3人は萎縮しない。それどころか、逆にワクワクしたような顔でスペイルヴィを…魔獅子竜ディアボライオを睨みつけていた。

 

「ドラゴンだって〜?」

 

「ギヒッ…悪手だろーがョ、それは」

 

「あぁ…ここにいる3人をなんだと思ってんだ?」

 

「オイラ達も忘れないでよ!」

 

「硬そうな鱗だが…やりようはあるか」

 

3人…いや、5人はドラゴンに恐怖しない。この大陸に来て既にドラゴンとは雌雄を何度も決しているのだ。今更目の前に竜化した程度の存在がいたところで、相手にならない。

 

「俺達は滅竜魔導士だ……」

 

「ドラゴンは…」

 

「滅竜する…!」

 

「オイラ達も手伝うよ!」

 

「だな」

 

「さーて……燃えてきたぞ!!!」

 

突如として変質し現れたドラゴンを目の前にした全員が今、最終決戦へと向かうにつれてその覚悟を決めるのであった。

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