「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
炎が舞う。敵は異形化した故に生まれた悪魔であったドラゴン…名を悪獅子竜ディアボライオ。最早その存在は魔呪法という枠を超え、根っこからその存在が変化していた。
しかしこの場には3人の竜狩りがいる。その3人が今、全力で力を発揮しているのだ。
「直線的だと!!?舐められたものだ…!このまま噛み砕いてやる!!」
「「「━━━滅竜奥義!!」」」
大きく口を開くディアボライオに飛び込んでいくナツ。そのままいけば食べられてしまうのは明白。しかしそれを阻止せんと、
「雷竜方天戟ィ!!!」
「ゴァ!!?」
横っ面に強力な雷の一撃が与えられる。それは大きく口を開けたドラゴンの顔を逸らすのには実に丁度いい一撃だったのか、少しバランスを崩していた………だがこれで終わりではない。
「業魔鉄神剣!!!」
「━━━━!!!」
足に強力な範囲攻撃を放つガジル。それはバランスを崩したドラゴンに与えるには随分なダメージと、バランスの崩させ方であった。
「紅蓮…!火竜拳!!!」
「ゴオアアアアアアアアアアア!!!!!?」
炎の連撃、しかし鱗に焼けた跡こそついたものの中の肉にはその攻撃はいまいち届ききっていないのは明白であった。だがそこで臆する者たちではない。故に、だからこそ、なればこそ…再度更なる1点を超えていく。
「モード雷炎竜!」
「モード鉄影竜!!」
「モード赩雷竜!!!」
「またそれか!!貴様らのそれは自らの分別を超えた烏滸がましい技と知れ!!悪獅子竜の、制裁!!!」
魔力と呪力を伴った一撃が、未だ攻撃によって空中へと投げ出されたままのナツへと向かう……が、その攻撃は空中で急に挙動を変えたナツによって避けられてしまう。
「何っ!!!?」
「オイラがいるって言ってるでしょ!!ナツ!離すよ!」
「おーけい!!まだまだ行くぞ!!紅蓮爆雷刃!!!」
攻撃を避けたナツとハッピー。そのままハッピーはナツを手放し、ナツ自身は再びディアボライオの顔面を捉えていた。そうして繰り出されるは速度と破壊の一撃。
「我が鱗にそのような攻撃は……ぬぐううううううう!!」
雷と炎の強力な一撃が再び顔面を穿つ。炎と雷の灯りが、ディアボライオの目を潰す。そしてそれにより奴は気づくのが遅れたのだ…鱗自体にも攻撃が入っている為に、ナツの攻撃によって
「━━━ギヒッ…!!業魔・
スルリと影となり移動し、鱗の隙間に自らをねじ込ませたガジル。そのねじ込んだ場所から……一気に大量の鉄竜棍がまるで雑草のように大量に
故に鱗は剥がれ、持ち上がり……床へと落下していく。
「がッ…!?ガァァァァァァァァァァァァ!!!!!?」
「テメェの鱗は、随分と硬ぇみてぇだからなぁ!!邪魔だァ!!」
「いいぞガジル……剥がれた部分なら…!
「━━━━!!!!」
剥がれた箇所に与えられるは、赤黒く激しい雷。遂に本体そのものに与えられたダメージは生易しい物ではなく、ディアボライオの意識すらも刈り取りかけていた。
「ば、馬鹿な…!?なぜ、何故こうも一方的に押される!!?俺は竜だ!ドラゴンになったのだ!それが、なぜ!どうして!!」
「あァ…?なぁに言ってやがる」
「ギヒッ…随分とまぁ、自己評価の高ぇトカゲだな」
「お前……自分の体がでかくなったせいで、元々のデケェプライドも更にでかくなったみてぇだな」
「なんだと……!!?」
雷によって、鱗の剥がれた部分が焼かれてしまったディアボライオ。その痛みに耐えながらも、彼はなぜ自らがここまで押されているのかを理解していなかった。だが相手取っている3人は、その答えに既に気がついていた。
「ドラゴン成り立てのひよっこが…ずーっと同じ力を使い続けていた俺達に勝てるわけないだろ」
「あのままだったら、まだ分からなかったがよォ……使い慣れてねぇ体と力振るって勝てんなら、全人類でかくなり続けてんだろうぜ」
「要は…テメェはてめぇで勝手に弱みを作り出しちまったってこった」
「なん、だと…!?」
ディアボライオは驚愕していた。得たのは確かに強力な力とそれに見合った図体だが、自身が未だにそれを使いこなしていなかったのだ。使いこなせていない力ならば、勝てないのも道理。しかし彼の持つ魔法や呪法では…即死級のダメージすら回復できるが、それだけなのだ。彼にそれを使いこなせるだけの力は…与えられないのだ。
「━━━いや!まだ、まだだ!!まだ負けていない!!俺は、俺はァ!!!」
「うおっ!?」
「ブレス!!?吐き方とかいつ理解しやがった!!」
「無我夢中なんだろうよ…!」
吐き出されるブレス。三者はそれを避けるが、自らの一番理解したくないことを理解してしまったためか…ディアボライオは暴れ始めていた。その精神に正気なし、ただでさえ押され気味であったこの戦いだったが…唯一の武器であった傲慢さを支える理性でさえ、失いかけていた。
人間から悪魔に、悪魔から竜に…その過程で力強さこそ手に入れたものの、その使いこなせない力に彼は振り回され続ける。振り回され始めた彼は、最早それに流されるように動き始めてしまっていた。そうなってしまえば……
「暴れたくれーで勝てんなら…」
「苦労はしないってもんだ…!」
「やるぞ、皆!!」
そして再び3人は散開する。ハッピーとリリーは互いのパートナーを支えることだけを考えて、彼らを掴んで動き始める。相棒のエクシードがいないラクサスだけは、地面を文字通りの雷光のごとく動き始めていく。
「いい加減…くたばるんだな!!」
「ちょこまかと………!!」
金色の雷光から血の混ざりし赩雷へ、そして赩雷から…紫電へと変わる。見様見真似、しかしその力の根源は正しくドラゴン。速さの雷、攻撃力の赩雷、そして圧倒的な連撃の紫電。それを足元に入ったラクサスは目の前の巨体に向けて、放つ。
「
一撃が百撃へ、百撃が万撃へ…感電した体にいつまでも電流が流れるかの如く、放たれた衝撃は凄まじい速度で勢いを増しながらディアボライオへ与えられていく。
「ガッ!!!!!?ガッッッッ!!!!!!ガアァァァァァァァァァァアアアアアア!!!!!!!!!?」
与えられる衝撃は増え続ける。その勢いは止むことはなく、次第に巨体であるはずのディアボライオの体を浮かせ始める。徐々に浮いていたはずの体は、その浮く速度を増していく。
「すうぅぅぅぅぅぅぅぅぅううううううううう━━━━━!!!」
「ッ!!!?」
空中で大きく息を吸い始めるナツ。明らかに通常のブレスとは違う強力な魔力の揺れに、ダメージを追い続けているはずのディアボライオの意識はそちらへと向けられる。
「炎竜王の、崩哮ォォォオオオオオオ!!!!」
巨大かつ、凄まじい熱量のブレス。この熱量が縦横無尽にばら撒かれでもすれば、ガジルやラクサス…ハッピーやリリーですらその被害を受けるだろう。
しかし受けることはなかった、ナツは無意識にではあるが…その熱量を全てブレスへと注ぎ込んでいるのだ。つまり…本来のブレスよりも、この熱量は果てしなく…高い。
「━━━━━━!!!!!!?」
熱が、鱗の禿げた肉を焼く。そして同時に鱗でさえも融解させ、下の肉を焼け爛れさせていく。ドラゴンを滅する魔法の、ありとあらゆるものを溶かす炎。直撃を受けてしまったディアボライオは、最早死を覚悟せねばなるまい。しかしその死への直面が、よりにもよって彼に……
「━━━まだだ!!!」
肉体が燃え尽きようとしてる中で訪れる『ならばこそ』は、せめてナツ達の命と引替えにせんと言わんばかりの覚悟である。こちらを一方的に嬲っておいて、向こうは五体満足で帰ることが彼にとっては酷く傲慢に思えて仕方なかったのだ。故にブレスを吐くナツに向けて、起死回生の爪をお見舞いしてやろうと腕を振るう━━━
「━━━ギヒッ」
「━━━━は…!?」
炎の中で、
「業魔━━━」
「このまま消し飛ばしてやる!!」
迫り来るガジル。それに合わせて振るわれるディアボライオの爪…その爪がガジルを切り裂くと思われたその瞬間に、ガジルの体はまるで竜巻のように急速に回転していく。しかしただ回転しているだけではなく、その体からは四方八方に飛び出している刃が現れる。
それは融解した鱗をいとも簡単に吹き飛ばし、爪を砕き、そして肉を弾き飛ばし……一直線に進んでいく。
「
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!?」
ナツのブレスが吐き終わるのと同時に、ガジルによってディアボライオは吹き飛ばされる。その肉体は既に焦げ付き溶けた鱗が追い打ちのように肉を焼いていく。
「……ふぅ」
「終わりか……」
「俺がトドメだったな…ギヒッ」
「は?俺の魔法がトドメでテメーは追い討ちかけただけだろうがよー?」
「は?」
「あ?」
「「やんのかコラァ!!!!」」
「……やめろ、めんどくせぇ」
2人の喧嘩を、2人の頭に拳を振り下ろすことで雑に終わらせたラクサス。その視線の先には、倒れたディアボライオがいた。意識を失っているのは間違いがないが、未だ警戒をし続けていた。
「……あれぇ?」
「なんだ、どうしたんだハッピー」
「見てよリリー、何かあのドラゴン…溶けてない?」
「ナツのブレスで鱗を溶かされて居たからな…それがそう見えて…………いや、確かに溶けているな」
リリーとハッピーの言葉に3人が改めてディアボライオに意識を向ける。そして目の前の異常事態に、若干の嫌悪感を抱いていた。あまりにも目の前で起きていることが凄惨的に感じたからである。
「うげぇ…流石にきしょいな…」
「ちとしばらく頭に残りそうで嫌だな……」
「……大方、完全にドラゴンになりきる前だったんだろう。それか最後の最後で…人間に戻ることを望んじまったか、だな」
ラクサスの言葉に『なるほど』と納得を示すナツとガジル。しかしどちらにせよディアボライオ……もとい、スペイルヴィ・アロガンティアの意識はとうの昔になくなっていた。
「…ま、いいや!勝ったしな!」
「だな……」
「よし……さっさと他ンとこ行くぞ」
「でもさぁ、オイラ達が来た道全部塞がってて……」
「…出入口が一つだけになっているな」
目の前に現れた新たな出入口。本来は異常な光景ではあるものの、既にここに来るまでの間で散々おかしな通路の通らせ方をさせられたのもあって、3人は既に反応するのも馬鹿らしくなっていた。
「まー、こういうとこなんだろ」
「だな…」
「おら、はやくこい」
ラクサスが率い、残りの全員がその通路へと入っていく。残されたのは、残っていたただひとりの幹部。その幹部も敗れ、残りはマスターただ1人。
そのマスターと対峙するは、魔龍の滅竜魔導士であるマルク・スーリアただ一人。今、その最後の戦いの火蓋が切って落とされようとしているのであった。