FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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美しき七つの徳

向かい合うは、七つの大罪。その長。見た目に削ぐわぬ長命であり、その本質は悪魔に魅入られし最悪の男。真の名は既になく、その名をシン()と呼んでいる。

対するは悪魔の龍、人の体を持ち、竜の魔法を持ち、悪魔の性質を持った男。魔力を食らうその男はマルク・スーリア。仲間に手を出した目の前の男に、その償いをさせんがために今この場にいる。

 

「魔力は十分か?爺さん」

 

「くくく…君を我が仲間に引き入れるのが楽しみだ」

 

「寝言は寝て言え」

 

シンが望むはただひとつ、マルクを自らの手中に収めること。マルクが望むはただ1つ、シンの打倒。互いが互いの望みのために、今……戦いの火蓋が切って落とされる。

 

「「ふっ!!!!」」

 

ぶつかり合う拳と拳。余ったもう片方の腕同士でのぶつかりあいも、すぐに起こる。

マルクは錬金術により、悪魔の力…暴食の力を弾丸のように飛ばしつつ、傲慢を手甲として纏いながら殴り掛かる。

 

「避け…!」

 

「れないようにつかみ続けてやるよ!!」

 

殴りあった腕を即座につかみ返し、一気に仕留めにかかる。動きを制限しながらの2重の攻撃。並の相手ならば、ここで終わっていただろう。しかし相手は仮にもギルドマスター…それを避けれる術は、あるのだ。

 

「━━━仕方ないか」

 

「ぐうっ!!!?」

 

突如として起こる爆発。マルクは回避のために手を離すがその爆発によって、少しだけダメージを受けてしまう。しかし疑問なのは、シンの今の爆発。呪法と魔法を使えるのは知っているが、今のは知っているはずのどちらとも違うものであった。

 

「てめぇ…魔法隠してたのか?」

 

「隠していたわけではない、待っている間に起こった戦い……この部屋の巨大魔水晶(ラクリマ)から得た魔力と魔法を使い、新たな魔法を生み出しただけだ……」

 

「…何言って……」

 

「部下達はそれぞれ魔法と呪法が1つずつある、それら全て…7の魔法と7の呪法…そのままでは無いが、今の私にはそれら14の術が使用できる…………何がどう、までは言わないがな」

 

「………」

 

先程の爆発、あれに関してはマルクはシンの言葉を信じるのであれば七つの魔法の内の一つだと考えていた。理由はただ1つ、自分にあまりダメージが入っていないからだ。魔法であればほぼ無力化できるのがマルクである。しかしそれでも爆風を感じた以上、恐らく爆破の魔法ではなくあくまでも『何かを爆発させる魔法』なのだろう…という所まで答えを出していた。しかしそれも数少ない状況証拠からの、おおよその推測でしかない。

 

「しかし魔法は貴様に対しては効き目が悪い…呪法メインで攻め立てるとしよう……『傲慢』」

 

「………?ん゙ッ…!?」

 

突如として、マルクの体に違和感が生じる。警戒の為に纏っていた魔力が霧散したのだ。しかし魔力自体が無くなった訳ではなく、どちらかと言えば使用だけができない状態と言えるだろう。

 

「…だったら他の戦い方をすれば…!!」

 

「『強欲』」

 

()()()()()()()()

 

何かを発動させたシンに対し、マルクは飛び込んでいく。たった今頭の中で考えていた戦法をかなぐり捨て、素手で挑み始めたのだ。その事にマルクは気が付かない。

 

「ぐっ…!このっ!!」

 

「素手で戦う事に何ら違和感を得ないのかね?」

 

「何を…」

 

「『暴食』」

 

「がッ…!!!?」

 

矢継ぎ早に繰り出されるシンの呪法。3つ目の技では、マルクは呼吸が行えなくなっていた。突然の事に困惑しながらも、何とか呼吸の手段を探そうと思考を回し始めるマルク。

 

「『嫉妬』」

 

「…………?」

 

4つ目、マルクは呼吸が出来なくなっているにしても今ここで戦っていた意味が全く見いだせなくなっていた。何かがおかしいのかもしれない、と思いつつも、それを追求する意味を見いだせていない。

 

「『憤怒』」

 

5つ目、体外に出していた呪力…罪の錬成(シン・カラミネーション)を解除した。戦う事が突如として馬鹿らしくなったのだ。

 

「『怠惰』」

 

6つ目、マルクは動けなくなった。しかしそのことに危機感も何も感じることはなかった。

 

「『色欲』」

 

7つ目…良く考えれば、このまま呼吸が出来なければ自分は死んでしまう。しかし死んでしまえばこのまま終わることができ、このまま終われればこれから先の不安に押しつぶされることのない幸せな気持ちだけで追われるだろう。ならばそれをしようとしてる目の前のシンはとてもいい人物である。

マルクはそう結論づけて━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

,

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今まで彼は呪法を食えた試しがなかった。そもそも呪法を扱える者が少なく、その機会がほとんど無かったのだ。なので正確に言えば『食えるかどうか分からない』のである。

何せ使えるものは基本的に悪魔のみ、1度目は冥府の門(タルタロス)。この時はマルクは悪魔の力をまだ解放していなかった。

戦争の時に呪法を使う者がいたが、これはガジルが撃破。つまるところ、彼の二度目の呪法との戦いはアルドロンの上で戦った時まで飛んでしまうのだ。しかもこの際戦ったのは再現体…本人ではなかった故に倒せただけなのだ。その際も、結局は食べられたかどうかを考える暇はなかった。

故に、試そうともしていなかった。実際のところ、暴食の力であれば食べれるのは事実である。あれは触れたものを食らう力なのだから。但し今問題にしているのは、『魔龍』としての彼が食べれるかどうかである。暴食の力であれば何でも食えるが、触れなければならない。逆に言えば触れられない魔法や呪法などを使われると、ダメなのである。しかし…魔龍としての彼の魔力であれば━━━━

 

「━━━ぶはっ!!!?」

 

「…何?」

 

「はー…!?はー……!!」

 

「貴様………」

 

「ッ……づァ…!!何、しやがった…!!」

 

「……そうか、長年暴食の力を受けて魔力にもその性質が宿っていたか。無意識にもかけられた呪法を時間をかけて吸収した……まさか呪法にも耐性があるとはな…油断出来んか」

 

マルクは未だ満足に動けない体と頭で、何とか思考し動き始める。与えられた呪法は、何らかの制限をかけるものばかり。単純かつ強力な呪法、しかし直接的ダメージは無く目にも見えないものである。

 

「はぁ…はぁ…!」

 

「しかし、未だ影響は残っているな。ならば重ねがけさえしてしまえば…!」

 

「安全圏でぇ…!調子乗ってんじゃねぇ!!!」

 

「ッ…!」

 

罪の錬成再発動、即座に暴食の力を矢のように飛ばす。シンは一撃で決められなかったものの、当たれば防御不可…致命傷は免れない。安堵しつつもその警戒は解かずにいる。そうして改めて構えたところで……一手、遅れていることに気がつく。

 

「…!?腕が……」

 

「みょーに力が湧いてんだ…この特殊な空間と、呪法を食えたっててめえの言葉から察するに……ちょっとばかし、今の俺は…悪魔寄りだ…!」

 

━━━今のマルクは、呪力と呪法が強化されていた。正確には魔力も強化されているが、割合としては前者の方が強くなっている。原因としては、シンと同じだ。部屋に設置された巨大ラクリマ…あそこからシンは魔力や呪力を送られたことで強化を果たしているが、マルクは魔龍の力で無理やりシンと同じ強化を得ているのだ。無論…体質故の奇跡であるために、意識してやれていることでは無いが。

 

「錬金術は、何かと何かを置き換える技……俺はそれを使って悪魔の力に形を与えて使ってるが…今日は、思っていたよりその力を強く振るえる…!」

 

「……ふん…腕1本持って行っただけで随分と強気な物だ」

 

そう言って腕が生えるシン。魔法や呪法の何かだと思ったが、そのような雰囲気はなかった。つまるところ、人間としても悪魔としても異質な化け物へとシンは変貌しつつあるのだ。

 

「一撃で殺さなきゃ…ダメってことか」

 

「背負うか?咎を…貴様のような子供が、他者の命を、奪うのか?」

 

「関係ないさ、狙われてんなら狙われないようにするだけ…確実に、屠る━━━!」

 

『傲慢』で檻を作り、『色欲』の煙で中を満たし、『強欲』によって得た先程の爆発の魔法で追撃を入れる。出力も性能も上がったおかげか、その攻撃は即時の同時に行われる。

 

「ぶはっ…!?」

 

「越魔龍の━━━」

 

高濃度高出力のブレス、檻ごと吹き飛ばされたシンは直感で死を感じ取る。暴食の力は彼にもあるが、マルクのそれと比べれば雲泥の差である。越魔龍の質も量も桁違いの魔力を受けてしまえば消し飛ぶことは必然だろう。

 

「ならば!!『正義』!『信仰』!『勇気』!『傲慢』!『怠惰』!!」

 

即時に発動させた魔法と呪法。その組み合わせによりマルクの攻撃を決定的に削るという狙いである。

正義の魔法は、辺りに魔力をまき散らしそれを爆発させるというもの。

信仰の魔法は相手がその攻撃に乗せた思いが強ければ強いほど、それを失敗させやすくするというもの。

勇気の魔法は無色の瘴気を出し、それを取り込んだ相手の行動を逆にするというもの。

傲慢の呪法は相手の魔法を一時的に使用不可にするというもの。

怠惰の呪法相手が一時的に動けなくなるというもの。

既にマルクに十全に効くものでは無いとはいえ、それでもわずかながら効果は発揮されるだろう。

 

「ぐうっ…!?」

 

「ふっ…!!」

 

出力が、落ちる。越魔龍としてのブレスとしては、比較するのも烏滸がましいほどにその威力は下がってしまっているだろう。しかしそれはあくまで、単なるブレスであればの話だ。

 

「━━━なら!!!!」

 

暴食の力が、上乗せされる。マルクだけが使える合体技。出力が落ちたとはいえ、越魔から出された魔力の力…それが暴食の力へと上乗せされる。

そうして吐き出された力は、会費の間に合わなかったシンの身体の大半を消し飛ばしていく。

 

「ぐううううううう!!?」

 

しかし、それでも声は出せるし苦悶に満ちた表情をするほどの余裕がある。先程腕を生やした事といい、マルクは頭の中で少しでも残すと面倒だと再認識をする。再生するのもただではなかろうが、それでも……である。相手の呪力、魔力…その残数がどれほどあるかさえ分からない。

 

「ぶはっ…!!」

 

いつもであれば、ブレスで倒せていない相手は即座に追撃をしていただろう。しかしシンの呪法や魔法の重ねがけを受け、吐き終わりにほんの少しだけ隙を生んでしまう。そしてその隙を見計らい、シンは体の再生を一瞬で終わらせていた。

 

「ッ…!次は、消し飛ばしてやる…!」

 

「やってみるがいい…それよりも先に、貴様の息の根を止める…!肉体だけでも手に入れば御の字だからな…!」

 

耐性が着いてきているとはいえ、未だ本調子から遠いマルク。重ねがけされようものなら、次が無事という保証はどこにもない。対してまともに一撃を受ければ確実に絶命するシン。同じように次が無事という保証はどこにもない。

この2人の戦いは…まだ、始まったばかりである。

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