FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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破滅

爆発する戦艦。屋根が吹き飛び、パーツが吹き飛び、まだギリギリ戦艦の形を保っていてるだけの別の何かへと変貌するほどに、その爆発は強大だった。

そして、爆発が晴れると共にマフラーが宙を舞う。そこで皆が見たのは、マスターハデスを殴りつけるナツだった。

 

「ナツ!! 」

 

「ば、馬鹿な!!裏魔法が効かぬのか!?ありえん!私の魔法は……!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

パンチがさらにマスターハデスの顔面に叩きつけられる。先程までに感じていた膨大な魔力の質。

マスターハデスのもそうだが、マスターハデスの魔力が消えた時に感じ取れた魔力さえも感じ取れなくなっていることに、マルクは気づいた。

 

「……そうか、被ってたんじゃなかったのか!!」

 

「な、なんだよ急に……」

 

「詳しいことは後で説明しますけど……要するに━━━」

 

「……あれ?」

 

マルクが軽く興奮しながら軽く説明しようとした瞬間、ウェンディが何かに気づいたかのように、視線を別方向に向けていた。その視線を追って皆が同じ方向を向いて、その答えがわかった。

 

「なっ、そんな……天狼樹が元通りになっている!?」

 

倒れていた島の巨木天狼樹、巨大なそれは1度アズマによって倒されていたが、何故か元通りになっていた。

そして、天狼樹が元に戻るということは即ちその加護が復活するという事であり━━━

 

「魔力が元に……」

 

「戻っていく!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!勝つのは俺達だーーー!!」

 

「否ー!!」

 

ナツの言葉を否定するかのように、そしてまだ諦めずにマスターハデスはナツを殴り飛ばす。

 

「魔道を進む者の頂きに、辿り着くまでは……悪魔は眠らない!!━━━いがっ!!」

 

更にマスターハデスを否定するかのように、ラクサスがマスターハデスを殴り飛ばす。

 

「いけぇ!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!」

 

ラクサスのその言葉に全員が動き出す。本当に、真の決着をつけるための戦いである。

 

「契約まだだけど……開け!磨羯宮の扉!カプリコーン!!」

 

「うぬは━━━」

 

「ゾルディオではありませんぞ…(メエ)はルーシィ様の星霊、カプリコーン!!」

 

ルーシィの新たな星霊。磨羯宮、つまりは山羊座なのだが、見た目は山羊の形をした人間みたいな姿であった。

カプリコーンの一撃はマスターハデスを怯ませて、二撃目を叩き込んだ。

 

「見様見真似!天竜の翼撃!!」

 

そしてウェンディの攻撃で、上に吹き飛ばされるマスターハデス。さらにその上を行くかのように、グレイがマスターハデスの上に飛ぶ。

 

氷魔剣(アイスブリンガー)!!」

 

グレイの一撃でマスターハデスが身動きできないように凍らされる。氷の刃の一撃は、それほどまでに重かったのだ。

 

「━━━天輪・五芒星の剣(ペンタグラムソード)!!」

 

さらにエルザの一撃で氷が剥がされるとともに、氷の上からでも受けるほどのダメージが与えられる。

 

「魔龍の……尾撃!」

 

そして、膨大な魔力を足に貯めた一撃をマルクはマスターハデスに叩きつける。その一撃はマスターハデスの中にわずかに残っていた魔力すらも、奪い取っていく。

 

「ナツさん!!」

 

そして、マルクの一撃により床に叩きつけられんばかりの速度で落下していくマスターハデス。

その直線上には、右手に炎左手に雷を携えたナツがいた。

 

「うおおお!!滅竜奥義…改!!紅蓮爆雷刃!!」

 

ほとんど魔力が残っていない状態で受ける滅竜奥義。マスターハデスは綺麗に吹き飛ばされ、完全に伸びていた。

魔力が回復する様子も無く、その一撃は全員に勝利をもたらした。

 

「━━━これが俺達のギルドだァ!!」

 

ナツの叫びは、全員に勝利を確信させるには丁度いいものとなった。この瞬間、マスターハデスは……悪魔の心臓(グリモアハート)は負けたのであった。

 

「終わったな……」

 

「あぁ……」

 

「私達勝ったんですね。」

 

勝利を噛み締め合う皆。しかし、それも束の間の出来事であった。

 

「みんなー!!」

 

「うわあああ!!助けてナツー!!!」

 

走ってくるハッピーとシャルル。その後から、悪魔の心臓のメンバーと思わしき者達が大量に走ってきていた。

 

「待ちやがれー!!ネコーー!!」

 

「よくもマスターの心臓を!!」

 

「マズイぞ……」

 

「くそ、流石にもう魔力が0だ……」

 

走ってくる者達に、こちら側は対処法が無くなってしまっていた。だが、走ってくる者達の反対側から、影が現れる。

 

「そこまでじゃ!!」

 

現れたのは防衛チームと怪我をした妖精の尻尾のメンバー達だった。

 

「うおお!増えたァ!!」

 

「あ、あれはマカロフか!?」

 

「てか……あそこ見ろ!マスターハデスが、倒れてる!!」

 

マカロフが現れたこと、そしてマスターハデスが倒れてることのふたつで悪魔の心臓の残党は完全に怯えきっていた。

 

「今すぐこの島から出ていけ。」

 

「ひいいいい!!わ、わかりましたー!!」

 

「信号弾だ!!」

 

そうしてマスターハデスを連れて、悪魔の心臓はボロボロになった戦艦ごとこの島を去っていく。

それを見届けてようやく、全員に安堵が訪れていた。

 

「そう言えば……戦ってる時、マルク何か言いたかったみたいだったけど……」

 

「あぁ……マスターハデスがどうしてあそこまでの魔力を持っていたか、って話だ。最後に魔力が消えたことも……説明がつけられる。」

 

「どういう事?」

 

ウェンディに質問されて、マルクは少しだけ考えてから話し始める。

 

「多分……マスターハデスはあの船のどこかに、自分の魔力をずっと生産できるような装置を作っていたんだ。

ナツさんが一回マスターハデスを倒した時に、船にとんでもない魔力を感じたから……きっとそうだと思う。」

 

「別に強い人がいた……って思わなかったの?」

 

「最初は思ったけどな?マスターハデスの魔力がいきなり消えた瞬間に、それも消えてたんだ……だから、多分きっとそうだと思う。

それを……ハッピー達が壊してくれた。」

 

「そう言えば……マスターハデスの心臓を、って言ってたもんねあの人達。」

 

「あぁ……まさに、ギルド名がそのままマスターハデスの強さに繋がっていたわけだ。

やられた時には、魔力を急いで生産させたんだと思うし。」

 

そう言ってマルクは視線を向ける。そこには騒いでいる妖精の尻尾のメンバー達がいた。全員ボロボロで、満身創痍という言葉が全員に似合っているくらいには。

 

「……とりあえず、キャンプまで戻りませんか?」

 

「少しは休まないと体がもたないわよ。」

 

ウェンディとシャルルが声をかけて、皆が一斉にキャンプ跡地へと目指す。

マスターハデスも倒し、悪魔の心臓も撤退……それまでして尚、マルクは心配事があった。

頭に引っかかること、何かとてつもないことが起きるような不安感。マルクは一体自分が何に怯えているのかわからないまま、戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が戻ってきて、いつの間にやらいなくなっていたジュビアも戻ってきて……マルクはただ1人、キャンプ地から少し離れた場所で木にもたれかかっていた。

 

「……この、言いしれない不安感は……」

 

誰もが、安心したような顔で今を楽しんでいる。マルクだけが何かに怯えていた。

ウェンディが全員の怪我を治すところを遠目で見つめながら、時折空を眺める。

 

「マールク。」

 

ウェンディの声、そして聞こえてきた声とともにマルクの顔を覗き込むように、ウェンディの顔がマルクの視線に入る。

 

「ウェンディ……みんなの治療、終わったのか?」

 

「うん。あ、無理はしてないから大丈夫だよ?」

 

「そうか……」

 

「……マルクの傷も、治してあげたいんだけど……」

 

「止めとけ、無駄に魔力を消耗するだけで終わるからな……そうやって心配してくれるだけでも、結構安心できるしな。」

 

その言葉に笑顔で返すウェンディ。マルクの隣に座って、マルクの肩に頭を軽く乗せる。

 

「……何か、不安でもある?」

 

「……あるっちゃあ、ある。けどそれが何かまでは分からない。もしかしたら、ただ俺が考えすぎなだけかもしれない。」

 

「……なら、その不安を紛らわすためにみんなと話そう?今からラクサスさんのところに挨拶に行くから……マルクも一緒にどう?」

 

「……そうだな、なら一緒に行こうか、ウェンディ。」

 

ウェンディの手を握り、マルクは歩き出す。握った小さな手を話してはいけない気がして、優しく…しかし絶対に離さないという意思で強く握る。

不安は隠す。今みんなに余計なことは教えない方がいいと判断したからだ。

だからこそ、今この時間だけでもマルクは安心感で満たそうと思ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━曰く、破滅とは唐突であり理不尽である。天災による破滅だろうと人災による破滅だろうと、それは変わらず唐突に現れては理不尽にすべてを破壊していく。

起こった原因が不明であろうとも明確であろうとも、それは関係なく全てのものを平等に破壊していく。男だろうと女だろうと、子供であろうとも老人であろうとも、病体であろうとも健康体であろうとも、奴隷であろうとも貴族であろうとも平民であろうとも。

破滅の前にはすべては無価値、自然が起こせば理不尽に感じるものもいれば仕方ないと思う者もいる。しかし、それが人災や何らかの生物による破滅ならば……人はそれをただひたすらに理不尽に感じるだろう。

しかし、どれだけ唐突で理不尽であっても、破滅というものは大抵その警鐘を自ら鳴らして存在を証明していく。

天災ならば空模様などで、人災ならば大声を張り上げて。それがただの現象に見えるのか、はたまた警鐘に見えるのか。

だが、少なくとも━━━

 

「━━━━━━!!」

 

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「ドラゴンの鳴き声……」

 

「え!?」

 

「ドラゴン!?」

 

響き渡る何かの音、否……ドラゴンの咆哮。その鳴き声の特徴に、聞き覚えのあるものはいた。

 

「みんなー!大丈夫ー!」

 

「おまえら!」

 

突然の事で、妖精の尻尾のメンバー達は1箇所に集まっていた。この声1つで不安が出たのだ。

 

「あそこだ!!」

 

リリーの指差す先、天狼島上空に黒いドラゴンの姿あり。その姿に全員が驚きを隠せなかった。

 

「黒い、ドラゴン……!?イービラーが言ってた……」

 

「マジかよ……!?」

 

「本物のドラゴン……」

 

「やっぱり……ドラゴンはまだ生きていたんだ……」

 

「黙示録にある黒き龍……『アクノロギア』」

 

「アクノ、ロギア……?」

 

その名前に聞き覚えのあったマルク。彼が悪魔の心臓の戦艦へと乗り込む際に出会った、黒髪の青年がポツリと零していた名前だった。

 

「お前!イグニールがどこにいるか知ってるか!?後グランディーネとメタリカーナとイービラーもだ!!」

 

「よせナツ!!」

 

「降りてくるぞ!!」

 

「あいつは、あいつは━━━!」

 

降りてくるアクノロギア。そして、降りてきたとともに雄叫びをあげる。敵意あり、殺意あり。捕食者が餌を食べるために獲物を殺す、などといったものであはなかった。

人間が餌にするでもなんでもなく、ただ殺すためだけに殺す……そういったものをアクノロギアからマルクは感じ取っていた。そしてそれは、他のメンバーもであった。

着地して、少し皆を観察したアクノロギアは高く飛び上がる。

 

「━━━逃げろぉぉぉぉおおおお!!」

 

ギルダーツの悲痛な声。その声に反応するよりも早く、アクノロギアは地面に再び着地する。しかし、それは安全のための着地ではない……すべてを破滅に導くための、『攻撃』だった。

地面が凹み、風圧で周りのものが全て吹き飛ばされていく。

 

「ウソだろ!?」

 

「なんて破壊力なの!?」

 

「何なのよこれ……なんなのよこいつ……!」

 

「船まで急げぇ!!」

 

アクノロギアの攻撃から、全員は逃げ始める。アクノロギアはそれを追い始める。

 

「走れ!みんなで帰るんだ妖精の尻尾に!!」

 

「ウェンディ!あんた竜と話せるんじゃなかった!?何とかならないの!?」

 

「私が話せるんじゃないよ!竜は皆高い知性を持ってる!あの竜だって言葉を知ってるはず!!」

 

「例え知ってるとしても……あいつは言葉を話さない!!滅ぼす奴らにかける言葉なんて……持ち合わせちゃあいないんだろう!!あいつは、破壊の竜だ!」

 

マルクが吐き捨てるように言う。そして皆は走り続ける、ひたすら走り続ける。だが、図体が大きいあちらの方がやはり早く、だんだんと距離を詰められていった。

 

「━━━船まで走れ。」

 

「じっちゃん!」

 

「マスター!?」

 

マカロフは、自らの魔法で体を大きくしてアクノロギアを抑える。しかし、ウェンディの魔法で傷は治っているとはいえ完治とまではいえなかった。

 

「無茶だ!かなうわけねぇ!!」

 

「マスター!やめてください!!」

 

グレイとエルザが、声を荒らげる。しかしそれでもマカロフはアクノロギアを押さえ込んだままだった。

 

「走れ……!」

 

「かくなる上は俺達も!!」

 

「あたってくだけてやるわー!」

 

「最後くらいマスターの言うことが聞けんのかぁ!クソガキが!!」

 

「俺は滅竜魔導士だぁー!!そいつが敵って言うなら俺が……うがっ!!」

 

ラクサスが、ナツの服を掴んで走り出す。その心に悲しみを押さえ込みながら。

 

「マスター……」

 

「う、うう……!」

 

そして、マカロフを残して全員が退却する。マカロフの意志のために、全員が下がったのであった。


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