FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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二日目バトルパート

大魔闘演武二日目、競技パートが終わった大魔闘演武の医務室には、ナツとウェンディが横になっていた。

 

「ナツ……大丈夫ですか?」

 

「何の心配もいらないよ、ただの乗り物酔いじゃないか。」

 

「あの、ウェンディは……」

 

「もうだいぶ回復してきたよ。」

 

「シャルルはもう回復したのか?」

 

「えぇ。」

 

そして、ナツとウェンディの様子を見にルーシィとマルクがいた。乗り物酔いで済んでいると聞いて、安心するルーシィ。そして、回復してきたと言われて安心するマルク。

 

「みんな待ってるから、あたし行くね?」

 

「はい、二人の様子は俺が見ておきます。」

 

「お願い!」

 

そして、もうすぐ試合開始のためにルーシィは医務室から出ていく。しかし、ルーシィが出ていったあとのシャルルの何か不安があるような顔を見て、少し席を立つ。

 

「飲み物、なにか貰ってきますね。二人は何か注文ある?」

 

「頼むよ、私は水で構わないけどね。」

 

「私は……あったら紅茶でいいわ。」

 

「温かいの貰ってくるよ。」

 

「……えぇ、ありがとう。」

 

そう言ってマルクは部屋から出ていく。大魔闘演武観戦の為の、売り子のところにでも行ってもらってこようと思い、そっちの方面に歩き出したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、冷める前に……ん?」

 

医務室の前まで戻ってきて、違和感を感じるマルク。気になって部屋の扉を無理やり開く。

そこには、寝ているナツ以外()()()()()()()

 

「……何だこの匂い。知らない人の……!」

 

貰ってきた飲み物を乱雑において、マルクはすぐさま部屋を出る。その直後にナツが目を覚ます。

そして、マルクと同じように嗅いだ記憶のない人物の匂いがあることに気づく。

 

「マルク!」

 

「ナツさん!?寝てなくていいんですか!?」

 

「問題ねぇ!それより誰の匂いだ!」

 

「分かりません!けど、ウェンディやポーリュシカさん、シャルルの匂いまで一緒に外で臭うってのは……!」

 

「誰かが連れ去った……!」

 

知らない人物の匂い、そしてそれと同じような道筋をたどってるウェンディたちの匂い。

特に、ウェンディは未だ寝ているはずなので、外に無理やり連れ出された可能性がある。

 

「っ!!いました!」

 

「お前らウェンディ達をどこに連れていくつもりだ!!」

 

目の前にいる4人の謎の男。起きていたはずのポーリュシカやシャルルまで寝ているのに運べているということは、一度眠らせた可能性があるということだ。

 

「うわー!!滅茶苦茶速ぇっ!!」

 

「あのピンク髪、さっき競技でトロトロ走ってたやつじゃねぇのかよォ……」

 

「マルク!」

 

「はい!!」

 

並行しながら、少しだけ間を空けて走り始める二人。男の内の一人が、振り向いて拳銃を構える。

 

「俺に任せろ!魔導士相手にはコイツが一番━━━」

 

「どけっ!!」

 

通りすがりざまに、殴り付けるナツ。それと同時に、マルクは足に魔力を貯めて一気に放出して軽く空を飛ぶ。

 

「逃がさねぇぞ!!ウェンディを離しやがれ!!」

 

「げっ!?コイツ飛ぶのかよ!?」

 

「ど、どうするよ!」

 

「仕方ねぇ!二人捨ててその間に逃げる!!依頼は『医務室にいた少女』だ!」

 

男の一人が口走ったことに反応するマルクとナツ。反応した瞬間にマルクはウェンディを担いでいる男を殴り飛ばしていた。

 

「よっ……と…」

 

「ひっ!!」

 

投げ出されたウェンディを優しくキャッチするマルク。ついでに、と言わんばかりにそのままシャルルを担いでいる男を殴り飛ばして、同じようにナツもポーリュシカを担いでいる男を殴り飛ばしていた。

 

「……こいつらどうする?」

 

「……とりあえず縛り上げて王国に引き渡しましょう。ウェンディ達の様子を見てもらっていいですか?」

 

「おう。」

 

気絶した男達を全員縛り上げていくマルク。しばらくして、縛り上げられた男達を引っ張りながら王国兵のいる所へと向かう。

 

「ん、んん……?」

 

「私達は……」

 

「……下ろしな。」

 

「お、ばっちゃんもう平気か?」

 

「自分の体のことは、自分がよくわかってるよ。」

 

ナツに担がれていたポーリュシカ、そしてマルクにお姫様抱っこをされていたウェンディと、そのウェンディの上にいたシャルル。三人はほぼ同時に目を覚ましていた。

 

「マルク……マルク!?」

 

「ちょ、暴れるなってウェンディ……」

 

お姫様抱っこが恥ずかしかったのか、すぐさまマルクから降りるウェンディ。

 

「こ、これ……何がどうなって……」

 

「3人とも連れ去られてたんだ……とりあえず今から王国に突き出すだけだ。一応、ウェンディ達も一緒にいた方がいい。」

 

「そうね……また医務室に戻って襲われるのは勘弁よ。」

 

そう言って王国兵達の元に一緒に来る3人。少し歩いたら、すぐに王国兵の姿を見つけた。

 

「ん?妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士か……その男達はなんだ?」

 

「この4人、ウェンディ達を連れ去ろうとしていたんです。」

 

簡潔にマルクがそう伝えると、その王国兵は少し考えこんでからマルク達の方に振り向く。

それと同時に、気絶した4人も目を覚ます。

 

「う、うぅ……?うわっ!?」

 

「おい答えろ、誰に言われてこんなことをした。」

 

ナツが拳に炎を纏わせながら、睨みつける。男達はさっきの瞬殺劇を思い出したのか、一気に怯え始める。

 

「俺達は頼まれただけなんだよ大鴉の尻尾(レイヴンテイル)の奴に!!医務室にいた少女を連れて来いって!!」

 

「……お手柄だったな、コイツらは我々が引き取る。早く戻るべきだ、今は妖精の尻尾Aのエルフマンという男と、四つ首の番犬(クワトロケルベロス)のバッカスが戦っている。」

 

「え!?エルフマンさんが!?」

 

「早く見に行こうぜ!ほら、ばっちゃんも!!」

 

「年寄りを急かすもんじゃないよ……」

 

先程までの事は一転……するのは難しかった。エルフマンが闘っているのは、『早く見に行かないと』という気持ちは嘘ではない。

しかし、やはり大鴉の尻尾のやったことは全員の頭の隅に引っ掛かりを残していたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━どうしたァ!!?」

 

「へへっ!面白ぇ奴だ!!魂が震えてくらァ!!」

 

激突するバッカスとエルフマン。しかし、今エルフマンは一切攻めようとせずにバッカスの攻撃を受けるだけだった。

 

「何してんだエルフマン!?」

 

「……あれ、リザードマン?」

 

「マルク、知ってるの?」

 

「うん……素手を使う相手にはほぼ無類の強さを誇るって聞いた。体にある無数の鱗が、素手できた相手にダメージを与えるらしいけど……」

 

見れば、受けに回ってるエルフマンは血を流し、さらには鱗も一撃ずつ食らう度に剥がされ、壊されていた。

 

「……なんでエルフマンさんはあれを選んだんだろう……」

 

「……他じゃああいつに攻撃が当たんねぇんだ。見えねぇくらいに、あいつは早ぇんだ。」

 

ナツが真面目な顔でそう告げる。確かに、バッカスの攻撃はどれも一撃一撃がとても重いのに対して、それが高速で、さらに連続で打ち出されていた。

 

「相手の人の魔法って……」

 

「ただ掌に魔力を集めてるだけ……けど、それと組み合わせた酔拳が上手く合ってあれだけの攻撃を生み出せてる。」

 

「受けるが果てるか攻めるが果てるか……ってところか。」

 

少し見守った中、エルフマンのビーストソウルが解ける。しかし、バッカスの方も攻撃が止む。

二人共、息が上がって膝をついていた。

 

「━━━わははは……わはははははっ!!」

 

「立ち上がったのはバッカスー!!」

 

実況の声と、バッカスの笑い声が響く。大健闘した……よく頑張ったと、見ている者達はエルフマンに同情を向けていた。

 

「お前さァ……」

 

だが、笑い声が止んだかと思えば……バッカスの体はそのまま傾いていき━━━

 

「━━━『漢』だぜ!」

 

そのまま、地面に倒れた。ダウンである。そして、エルフマンは膝立ちであっても尚、未だその背を立てていた。

 

「ダウーン!!バッカスダウーン!!勝者エルフマン!妖精の尻尾A10p獲得!!これで12pとなりました!!」

 

「オオオオオオオオオ!!」

 

「この雄叫びが妖精の尻尾復活の狼煙かーっ!!エルフマン!強敵相手に大金星ー!!」

 

「COOL!COOL!COOL!!」

 

両腕を上げ、咆哮するエルフマン。その雄叫びは大魔闘演武の全てのものに響きたるほどに大きなものだった。

 

「うおっ!すっげぇ歓声!」

 

「やりましたねエルフマンさん!!」

 

「受けてだけで勝つなんて……」

 

三人が興奮する中、シャルルとポーリュシカは少しだけ真面目な顔に戻っていた。

 

「ウェンディ、もう大丈夫なの?」

 

「うん!もう平気、グランディーネもありがとう。」

 

「だからその呼び方は止めな……それよりも、さっきの連中……」

 

「大鴉の尻尾……!」

 

先程のことを思い出し、大鴉の尻尾に対して怒りを向けるナツ。だが、ここで一同にあった引っかかりが、ようやく判明し始める。

 

「医務室に『いた』…少女……過去形?」

 

「一人いたじゃないか……ナツを運んできた……」

 

「ルーシィ……!?」

 

「確かに、医務室にいたのはルーシィさんだけど……なんでルーシィさんが……?」

 

「さぁね……戦力低下がわかりやすいんだろうが……」

 

「……兎も角、この事もみんなに話しておきましょう。妖精の尻尾全員で対策するべきだわ。」

 

「そうだね……」

 

シャルルの提案により、一同は一旦医務室へと向かうことにした。エルフマンが怪我をしているので、ウェンディが治癒させる必要があるからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、医務室。流石に全員は入れないので全員に話をしたあとに一部のメンバーだけが医務室を訪れていた。

 

「私はエルフマンという漢を、少々見くびっていた様だな。その打たれ強さと強靭な精神力は我がギルド一かもしれん。

エルフマンの掴み取った勝利は必ず私達が次に繋ごう。」

 

「エルザにそこまで認めてもらえるなんてね。」

 

「それだけの事をしたってことだ。」

 

「いや……マジで震えたぞエルフマン!」

 

ベットで体の殆どを包帯で巻いているエルフマンに、賛辞を送るナツ達。

しかし、当のエルフマンはあまり嬉しそうではなかった。

 

「よせよ……死者を惜しむようなセリフ並べんのは…いてて……」

 

「まぁ、昔から頑丈なだけが取り柄みたいなものだからね。」

 

「なんか寂しい取得だな。」

 

「おめーも似たようなもんだろ!!」

 

リサーナが茶化すように言うが、ナツがその取得を笑う。しかし、ナツは本当にエルフマンの勝利に感動していた。

 

「でも、本当に凄かったですよ。」

 

「情けねぇが俺はこのザマだ……後は任せたぞウェンディ。」

 

「はい!」

 

「さ…次の試合がもう始まってる。さっさと行きな。敵の視察も勝利への鍵だよ。」

 

「ばっちゃん、気をつけてな。」

 

「安心しな、ここは俺達雷神衆が守る。」

 

「術式にて、部外者の出入りを禁じよう。」

 

「もう二度とここは襲わせないわ。」

 

ウェンディ達が先に向かったあとに、マルクが連れてきた雷神衆。妖精の尻尾の中でも術式の使えるフリードは、とても守りに適していた。

それに安心した一同は、部屋から出て試合会場へと向かう。

 

「……にしても、大鴉の尻尾の奴ら……やることが露骨に汚ぇな。」

 

「1人1人戦力を潰していくつもりか。」

 

「……その件なんだけど、ちょっと疑問が残るわね。」

 

「俺も、違和感がある。」

 

「どうしたの?二人して。 」

 

『大鴉の尻尾がルーシィを攫おうとした』という件に対して、シャルルとマルクが疑問の声をあげる。

 

「事件の概要は既に聞いたが……大鴉の尻尾が、山賊ギルドを使って()()()ルーシィの捕獲を試みた。

だがそれは、目標の誤認とナツの追撃により、二重の意味で失敗に終わった。」

 

「筋は通ってるんじゃない?」

 

「捕まってたら何されてたか分からんがな。」

 

「やめてよ~……」

 

「私が気になるのは、その捕獲方法よ。

大鴉の尻尾には私達を襲ったやつ……相手の魔力を一瞬で0にする魔導士がいる。」

 

「確かにな……マスターの推測では、1日目にルーシィの魔法が掻き消されたのもそいつの仕業と見ている。」

 

歩きながらも、シャルルは自身の疑問を並べていく。

 

「そんなに捕獲に適している魔導士がいながら、なぜそいつが実行犯に加わらなかったのかしら。」

 

「それはバトルパートのルール上参加者は闘技場の近くにいる必要があるからだろ?」

 

「誰がバトルに選出されるか直前までわからない、ってルールね。」

 

「考えすぎだよシャルル。」

 

「うん…あいつらにとって方法より結果の方が大事ってよく分かったもん。」

 

「まぁ……いずれにせよ、私達を場外でも狙うつもりなら、警戒を怠ることなくなるべく1人にならないように心がけよう……マルクの疑問というのは?」

 

シャルルの事が一応答えが出たので、マルクに話を振るエルザ。マルクは頷いて、話し始める。

 

「……なんでルーシィさんが、って事です。医務室で寝ている妖精の尻尾の魔導士全員を狙えばよかったはず……実際、ナツさんが体調崩して寝てましたし。」

 

「それは……途中で目を覚ましたら厄介なことになるからじゃないの?」

 

「それは、そうなんですけど……わざわざルーシィさんを一人狙う、って言うのがよく分からなくて……」

 

「マルクも考えすぎだよ。」

 

「そうだな、ルーシィは星霊魔導士……星霊が強くても、本人は弱いという認識が向こうにあったかもしれない。」

 

「それはそれでちょっと……」

 

複雑そうな顔をするルーシィ。しかし、一応理屈自体は通っているために、話はここで終わった。

だが、シャルルもマルクも未だ本当の疑問があった。

シャルルは『ルーシィが狙われた』ということ。マルクは『大鴉の尻尾が他ギルドに依頼をした』ということであった。


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